対談 2017.08.08
夏生さえりさん×伊佐知美さん|【第1回】“恋愛と食事”は密接につながっている!? 妄想広がる女子トーク
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- 夏生さえり
- フリーライター。山口県生まれ。大学卒業後、出版社に入社。その後はWeb編集者として勤務し、2016年4月に独立。Twitterの恋愛妄想ツイートが話題となり、フォロワー数は合計15万人を突破。難しいことをやわらかく表現すること、人の心の動きを描きだすこと、何気ない日常にストーリーを生み出すことが得意。2017年8月9日(水)に、アマノ食堂の人気連載『口説き文句は決めている』(kraken)がついに書籍化!
- 「ティファニーで朝食を食べられなかった私たち」
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- 伊佐知美
- WEBメディア『灯台もと暮らし』編集長、フォトグラファー。1986年新潟県生まれ。横浜市立大学卒。三井住友VISAカード、講談社勤務を経て㈱Waseiに入社。どうしても書き仕事がしたくて、1本500円の兼業ライターからキャリアを開始。2016年は世界一周しながらのリモートワークに挑戦。これまで旅をしたのは国内47都道府県・海外30カ国以上。著書に『移住女子』(新潮社)。
- 灯台もと暮らし[もとくら]
アマノ食堂に訪れる、お客さんの“おいしいお話”をお届けする「お客さん対談」。今回は、アマノ食堂の人気連載『ティファニーで朝食を食べられなかった私たち』の書籍発売を記念して、その著者でライター・夏生さえりさんと、WEBメディア『灯台もと暮らし』編集長・伊佐知美さんのスペシャル対談を実施!トークテーマは連載テーマと同じく、ずばり「食と恋」。
お2人がこれまで体験した、ときめきの出会い、甘酸っぱいエピソードの数々。日々のくらしと切り離すことができない“食”と“恋”。妄想&理想が炸裂する女子トークを全2回でお届けします。
—さえりさんと伊佐さんは、以前からお知り合いだそうですね!
はい。初めてお会いしたのは一緒にトークイベントをした時ですよね。
そうそう。その時は「旅」をテーマに話をさせて頂いて。私はさえりさんが以前勤めていたLIGさん(※株式会社LIG)が運営しているシェアオフィスにいたので、存在はもちろん知っていたんです。Twitterでやり取りすることもあったし。
そうでしたね!その頃、私はスペインのバレンシアを旅していて。同じ時期に伊佐さんは世界一周をされていたんですよね。
今から1年くらい前かな。リモートワーク(遠隔で仕事を行う勤務形態)をしながら、10日に1度のペースで国や宿泊先を変えて、世界を旅していた時期ですね。
お互い同じ時期に海外にいて、日本との時差が7時間くらい。夜中になるとTwitterのタイムラインが急に静かになってしまうんです(笑)。その時は、伊佐さんがロンドンにいたので、時差もあまり変わらなかったし、Twitterを見ながら「あ、伊佐さん活動してる」って不思議と安心感がありました。
—お2人は文章を書く仕事をされていますが、日常のどんな時にインスピレーションを受けますか?
小さいころからの夢は、旅をしながら働くこと
「旅」が自分を変えてくれた!
(伊佐知美さん)
旅が与える影響って本当に大きいですね。もはや別人になりましたもん(笑)。
国内や海外に働く拠点を複数持つことで、自分の基盤がグラついてしまうことってないんですか?ちょっとした息抜きで遠くまで足を伸ばしてみるのではなく、環境をあまりにもガラリと変えてしまいすぎると、そのバランスをどうやって保っているのかなって。ずっと聞いてみたかったんです。
私の場合は、環境の変化を純粋に楽しんでいますね。父親が転勤族だったから、小学生の頃に上海に住んでいたこともあって。海外の言葉や文化に触れるうちに、旅をしながら働きたいと感じるようになって、それが小さい頃からの夢だったんです。
村上春樹さんの旅エッセイ『遠い太鼓』(講談社文庫)が好きで、その影響も大きかったかも。作中ではイタリア・ギリシアに滞在していた日々が綴られているんですけど、幼心に夢が広がったんですよね〜。
すごいなぁ〜!私は環境をあまり変えたくないタイプなので…(汗)。尊敬します。最近もふと「いつも同じ道を通っているな〜」って(笑)。
私はその真逆!「この前、ここを通ったから今日は違うルートで行こう」って思うタイプかな〜。
何気ない日常が一番大切!
「日々の小さな変化」を楽しみたい
(夏生さえりさん)
その感覚のほうが共感されると思います。今まで知らなかったお店を見つけたり、きっと面白い発見があるだろうとわかっていても、結局同じ道を選んでしまう。
同じ道を通るほうが落ち着くから?
無意識に同じ道を通っているわけじゃないんですよ。あくまで意識的にというか。「今日もこの道を歩きたい!」ってあえて選んでいるんです。
その理由を考えてみたんですけど、昔からあるお店が変わらずにある安心感とか、季節が変わると木や花が育っていたり、同じ場所を定点観測しながら小さな変化を楽しむのが好きみたい。
ダメだ!全然違う〜(笑)。さえりさんはやっぱり美しき人ですね…!
えぇー(笑)!?
私は海外で初めて見る日本にはない色彩の花や、珍しい鳥の鳴き声を聞いて「すごい!!!」って、そういうものに感動したり、テンション上がったりしますもん。
それはそれで楽しいじゃないですか。私、すごく地味なんですよね。自由が丘に住んでいた時に、近所に大好きな白木蓮 (ハクモクレン)という白い花が咲いていたんですよ。それが陽の当たる場所から順番に咲いていくんです。「こっちはもう少しで咲きそう」って、毎日その場所を通るのが楽しみでした。小さな変化で、いつも通りの日常を感じることが落ち着くし、それが一番のインスピレーションになっています。
—お2人は似ているようで、意外にも真逆なタイプのよう。果たして、それは恋愛にも通ずるのでしょうか。ここからは、さえりさん&伊佐さんの“恋”にまつわるエピソードを教えていただきました!
食と恋は日常に結びついている
(夏生さえりさん)
『ティファニーで朝食を食べられなかった私たち』の書籍化、おめでとうございます!このコラムで“食と恋”をテーマにしたのはなぜだったんですか?
元々は、アマノ食堂の方に「食と恋にまつるわるエッセイを書きませんか?」とお話を頂いたのがきっかけで。連載を始めて気付けばもう1年以上経つんですよね。あっという間でした。
そうだったんですね。
面白そうだなって思いつつも、正直、私に書けるのかなって最初は不安でした(笑)。私は食事に関してはすごく保守的で地味だし、一度気に入ると同じものばかり食べ続けたり、おしゃれなお店に行くことも少ないし…。
そっか。毎日同じ道を歩きたいタイプ、ですもんね。
そうなんですよ!ロマンチックな食事デートとか…“食と恋”が結びつくようなエピソードって私にはないと思っていたんです。でも、よく考えてみると、恋に落ちた日も恋に破れた日も食事をするし、“食と恋”ってどちらも日常的で欠かせないもの。だから、特別なエピソードじゃなくていいのかもって。恋人と行ったお店やその時に見えていた景色、会話とか。
(『ティファニーで朝食を食べられなかった私たち』の過去連載に書き下ろしを加えたエッセイ集、『口説き文句は決めている』(kraken)、2017年8月9日発売予定)
あと、自分の実体験じゃなくても「妄想」っていう手段もあるじゃん!と思って(笑)。実際にあったらいいなって思う理想的な“状況”を交えたら、自分にも書けるかもと思って書いてみることにしたんです。
私も読んでいますけど、すごく面白い!日常にありそうなシーンが多いからこそ、共感できるんだと思うんです。毎回どうやってストーリーを決めているんですか?
書き始める時に、「今回はこんなストーリーにしよう」って決めて、それを自分の頭で映像化するんです。第三者として、そのまま映画を観ているような感覚かなぁ。
頭のなかで、さえりさんが女性役を演じているわけではないんですね。
自分ではない別の誰かですね。頭のなかの彼と彼女の状況や会話をイメージしながら、そのまま文章にする。たまに疲れている時は、妄想なのか、実際の思い出なのかわからなくなることが悩みでもあるんですけどね(笑)。
さえりさんの実際の思い出も詰め込まれているんですね。
そうですね。でも、きゅんとした経験より、どちらかと言うと、切ない思い出のほうが詰め込まれているかも。作中の物語にも登場するんですけど、当時付き合っていた彼に振られて、泣きながら食べた「ステーキ定食」とか。元気を出さなきゃ…と思って無理してファミレスで一番ボリュームのあるメニューを頼んだり。そういう切ない記憶のほうが、意外と残ってるんですよね…。
「失恋したらごはんが喉を通らない」とか言うけど、人間ってそんな単純じゃないですよね。「失恋したからステーキ定食を食べる」っていうのが、逆にリアルで人間らしい。
伊佐さんは “食と恋”にまつわる印象的な思い出ってありますか?
海外での「非日常な状況」にキュンとします
(伊佐知美さん)
うーん…いざ聞かれると難しいですね(笑)。私の場合、日常生活よりも海外での思い出のほうが色濃く印象に残っているかも。旅をしていると、偶然の出会いから広がることも多いので。
日常と非日常、ここでもやっぱり逆ですね(笑)。
(笑)。恋愛とは違うかもしれないけど、印象的なのはラオス北部・ルアンパバーンでの出来事。何気なく歩いていたら、日本人の男性に「1人旅だとお店で料理をたくさん頼めなくない?一緒にご飯を食べようよ」っていきなり声をかけられて。
わ〜なんだかドラマチック!
日本だったら、ただのナンパだなって断るような出会い方でも、その時はなぜか受け入れてしまって(笑)。一緒にラオス料理を食べに行ったら意気投合して、その後にクァンシーの滝を見に行ったりもしました。
すごい!それは旅先ならではの出会いですね。
あとは何だろう…。食といえば、料理上手な知人の男性が料理を振る舞ってくれるというので、私が「何か買っていくものある?」って聞いたら、「“キュンとする野菜”を買ってきて」と言われたことがあります(笑)。
“キュンとする野菜”!やばい!その言葉に今きゅんとしちゃいました。
聞いた時は「え〜どうしよう…」って思いましたけど。
どんな野菜を買ったら良いのか迷っちゃいますね。普通に白菜じゃキュンとしないですし(笑)。「あまり見かけない珍しい野菜のほうが喜ぶかな〜」とか妄想が膨らみます。結局、伊佐さんは何を買ったんですか?
普段は手に取らないような珍しい野菜を数種類。あとは、ブルーベリーがたくさん売っていたのでベリー系を買っていったら、そのベリーはお肉のソースにしてくれましたね。
素敵!私、将来はごはんを作ってくれる人と結婚したいなぁ。
わかる!料理男子、かっこいいですよね。もう少し欲を言えば、彼は料理を作りながら「君はここに座ってるだけでいいからね」って優しく言われるのが一番の理想。
!!もうそれ、最高すぎます(笑)。
(つづく)
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