対談 2017.09.13
林家彦いちさん×春風亭昇々さん|【第2回】意外とアウトドア好き!!人気落語家2人のアクティブな休日♪
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- 林家彦いち
- 1989年、林家木久蔵(現・木久扇)師匠へ入門。2000年に若手落語家の登竜門と呼ばれる『NHK新人演芸大賞落語部門』で大賞を受賞。2002年に真打に昇進後も数々の賞を受賞。現在は数多くの落語を創作し、ひとり会「喋り倒し」や新たな試みを行う「彦いちラボ」開催つつ、全国各地で独演会を展開中。創作落語「熱血怪談部」(あかね書房)、「長島の満月」(小学館)は絵本化に。その名はアウトドア通としても知られており、国内外の山や川を制覇中。好きなおみそ汁の具材はなめこ。
- hikoichi.com
- 林家彦いちTwitter / @hikoichikumite
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- 春風亭昇々
- 2007年、春風亭昇太師匠へ入門。2011年、二ツ目に昇進。アグレッシブでユーモア溢れる語り口で若い世代を中心に人気を集め、近年の落語ブームを牽引する若手落語家のひとり。2015年、2016年の『NHK新人落語大賞』では100人を超える参加者のなかから5名が残る決勝に勝ち進むなど、人気に裏打ちされる実力を兼ね備えている。また、落語のみならず「ポンキッキーズ」(BSフジ)ではメインMC、「ミライダネ」(テレビ東京)ではナレーションを務めるなど多岐に渡ってマルチに活躍中。好きなおみそ汁の具材はあおさ。
- 春風亭昇々ブログ
- 春風亭昇々Twitter / @shoshoa2011
注目のあの人の“おいしいお話”をお届けする「お客さん対談」。今回のテーマは「落語」。対談ゲストは落語家・林家彦いちさんと春風亭昇々さんです。
弟子入りエピソードや稽古の仕方など、落語の「入門編」をお届けした前回に続き、今回は“落語家の休日の過ごし方”について!実は山登りや釣りなど、アウトドア好きな共通点も明らかに(!!)。落語におさまらずアクティブに活動する、落語家の意外なプライベートを深堀りしちゃいます!
—第一線で活躍する落語家のプライペート事情とは?早速ですが、休日の過ごし方を教えてください。
登山によく行きますね。なかでも中央線沿線の山が好きで、レンタカーを借りて長野まで行くこともあります。
中央線沿線の山?
中央線沿線の「日帰り登山」
(春風亭昇々)
中央線沿線には面白い山がたくさんあるんです。“中央線沿線上の山登りガイド本”みたいなものを買って、高尾駅までは電車に乗って、そこからバスを乗り継いで目的地まで行ったり。今までで1番良かったのは、「陣馬山(じんばざん)」!ほかにも、「石老山(せきろうざん)」や「景信山(かげのぶやま)」とかありますね。午前10時に家を出れば、夕方には戻ってこれるんですよ。
いいね~。僕も山が好きだからさ。エベレスト街道(※1)に行った時、6000m、7000mの山がいくつもあるんだけど、山がみんなキラキラして見えるの。歩いている人も、みんなそれぞれ好きな山があるから生き生きしていて。すごく面白かったな〜。
※1世界最高峰エベレストを擁するクーンブ山群のトレッキング・コース
師匠はエベレストのベースキャンプ(※2)にも行っていますもんね。僕は日帰りで行ける山にしか行かないので、その行動力をすごく尊敬します。1年前、「蓼科山(たてしなやま)」と「谷川岳(たにがわだけ)」の雪山に1人で行ったことはあるんですが、山頂はマイナス7度…!防水装備もいろいろ必要で、結構大変でしたね…。
※2 エベレスト登山の基地となるキャンプ地。世界最高峰のエベレストを間近に体験できる。
1人で行くとね…。僕もよく月1くらいで、冬になると近場のキャンプ場にテントを持って行ったりしていたけど(笑)。大学が地理学科だったから、目的地は地形図を見ながら、気になる場所を探して決めるんだよね。人気のキャンプ場を調べて行くようなことはしない。
えっ!?それは斬新な決め方ですね!
地形図で目的地を決めることも!
冒険のように全力で楽しむ
(林家彦いちさん)
目的地を決める時に何より気にするのは「等高線」。地形図を見て、目的地近くの等高線の間隔が狭くなってると、「この場所に行けば、良い斜面が見られるだろうなぁ~!」とか、勝手に想像するのが面白い。
でもね、そうやって目的地を決めると想定外の出来事も起きてね。たまたま等高線を見て決めた場所が「富士の樹海」だったこともあったし(笑)。
え〜大丈夫だったんですか?
青木ヶ原っていう森深~いところだったんだけど。寒い時期で雪もちらちら降っていて、路線バスも止まっちゃって交通手段もなくて。結局、途中からタクシーに乗って運転手さんに「河口湖のほとりで止めてください…」って伝えたら、全然降ろしてくれないんだよ。
「この人、なんか危なっかしいな」って誤解されたんですかね(笑)。タクシーの中で運転手さんと何か会話はしたんですか?
一方的に「いろいろ辛いことはあると思うけどさ…」って励まされたから、「いや、そんな辛いことなんてないですよ。今は楽しいことしかない!」って言ってやった(笑)。それでも、なかなか降ろしてくれないのよ。心配してくれていることはさすがに気付いてるから、「いやいや、僕はキャンプで来たんですよ!」って説明をしたら、ようやく降ろしてくれてね。
場所が場所だけに、完全に勘違いされてますね(笑)。
タクシーを降りると、もちろん周りには誰もいないわけですよ…。で、テントを張って明かりをつけて休んでいると、「ザッザッザッザッ…」って人が近づいてくる気配がしてきて。何だか怖くなってテントの外を見てみたら…、さっき降ろしてくれたタクシーの運転手さんが目の前にいたんだよ。「さっき、キャンプ目的だと言っていたけど、本当なのか確かめたくて。大丈夫かい?」って。すごく優しいよね(笑)。
優しい…!自分のお客さんだし、運転手さんもいろんな責任を感じたんでしょうね。でもそれ、ちょっとびっくりするなあ。(笑)
—仕事も趣味も全力で取り組むお2人。“落語×アウトドア”は意外な組み合わせのように感じるのですが、具体的にどんな楽しみ方をしているのでしょうか?
山登りって「人生」と似てるような気がしますね。登っている途中で良い景色が見えるけど、頂上までは結構距離がある。途中できついなって思っても、さらに良い景色を求めてみんなが頂上を目指す。そんなことを考えているので、山登りは1人のほうが好きなんです。
わかるな〜。その時間が大切なんだよね。落語家でアウトドア活動が好きな人って多いよね。落語協会にはアウトドアクラブ「ビッグマンタクラブ(※3)」っていうのもあって、みんなで一緒にキャンプや旅行に行くこともあるし。
※3 彦いちさんが隊長として、仲間を集めてアウトドア活動を行う落語協会のアウトドアクラブ。
「山登り」で人間の本質が見える
(春風亭昇々さん)
あと、気になる異性をもっと知りたい時は、一緒に山を登るのをおすすめしますよ。登る時にお互いに支え合うのか、相手を気にせずに先に行っちゃうのか、そこで人間の本質が見えるような気がするんです。「この人とは、どんな結婚生活になるのかな?」って、具体的なイメージが湧くと思います。
山では嘘や誤魔化しが効かないよね。恋人に限らずさ。その人の価値観や考え方までわかる気がする。
まだ早くない?っていうタイミングでビスケットとか食べたがるやついるじゃないですか(笑)。そういうのを見ちゃうと、「こいつは自分に甘いタイプだな」とか。もう少し登ってからに食べようよ!って、喝を入れたくなります。
あるね〜。
アウトドア活動は「無」になれる時間
(林家彦いちさん)
釣りをしていても、いろんなタイプの方がいますよね。黙々と魚を釣る人もいれば、ずっと騒いでいる人もいる。僕はすぐに竿をあげてしまうんですけど。師匠はじっと待てるタイプですか?
いや、基本動き続けてしまうし、じっと待ってられないタイプ。僕は特に川釣りが好きなんだけど、魚がかかった瞬間は安心して無の状態になれるなあ。
“無”になれる時間って必要ですよね。
そうそう!日常生活で、本当に無でいられる時間って少ないじゃない?ただ街を歩いていても何かが視界に入ると「あの看板、面白いな」とか、細かいことでも気になってしまってさ。その点、山登りは自分の頭のなかを整理することができるし、釣りは無我夢中になれるし、無の状態になれる唯一の瞬間がある。日常から離れて“無”になれるアウトドアは、僕の生活に欠かせないものなんですよ。
(つづく)
撮影協力/池尻セレクトハウス
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