読み物 2015.08.26
【第3回】超高速でわかる!日本味噌汁MAP
味噌汁飲んでますか?
発酵デザイナーの小倉ヒラクです。
「手前みそTIMES」、気づけばもう3回目。そろそろ専門家っぽい記事をお届けしないとマズいぞ!ということで、今回は「味噌って色々あるけど、何が違うのかしら?」というみんなの素朴なギモンにお応えするぜ。
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いや、そんな「素朴なギモン」なんて誰からも寄せられちゃあいねえ。
さも「みんなお味噌のこと知りたくてウズウズしてる」的な状況をでっち上げることで、自分の都合のいいように論旨を展開したいだけなのであるよ。
白状しよう。みんなそんなにお味噌のことになんて興味ない。
何味噌だろうが、別になんでもいい。そんなことよりも、仕事や、恋愛や、人間関係や、国際情勢や株価の変動のほうが人生における優先順位の高い問題なのである。お味噌は、人生のSEOにおける、ニッチ中のニッチワードなのである。それを素直に認めたうえで、味噌の種類を解説したいと思う。
どれだけわかりやすく説明したところで、皆さまの人生には役に立たないかもしれないので、「お味噌の種類を職場の同僚の生態に例える」という仕掛けをご用意しましたので、そのページ離脱しようとする人差し指を、クリックでなくスクロールに切り替えてください_| ̄|○ ←土下座
味噌は、和食の多様性における「ノアの方舟」である
ではまず概説ね。
お味噌は、大豆と麹(こうじと読みます。あとで説明する)、塩だけという超シンプルな原料ながら、味のバリエーションがものすごーく幅広い。北は北海道から、南は沖縄まで。味噌汁の飲み比べをしてみるとその味わいの違いに驚愕します。
同じお味噌といっても、その地域の食文化や気候にあうようにそれぞれ進化していった結果そうなったわけであって、えーと、例えて言うなら…初期テレビゲーム文化におけるガラパゴス進化林立状態(ファミコン・メガドライブ・PCエンジン・ネオジオetc.)みたいな感じ(←微妙な例えですいません)。
同じ発酵食品でも、醤油や日本酒などが時代を経るうちに均質化していったのに対し、お味噌だけはなぜか「業界標準」に統合されない不思議な存在。
そう。お味噌は和食の多様性を守る「ノアの方舟」なのです。
分類A:原料による分類
先ほど「大豆と麹と塩が味噌の原料である」といいましたが、その中の「麹」の種類による分類。
麹は、穀物に「麹菌」というカビの一種をくっつけた、パンづくりにおけるイーストのように「発酵のスターター」のようなもの。カビを何の穀物にくっつけるかで、味噌の種類が変わってきます。
・米味噌(代表ブランド:信州味噌など)
米粒にカビをくっつけた麹でつくる味噌。東北をはじめとして、日本中広く食べられている、「お味噌といえばコレ!」的なポピュラー味噌。塩をたくさん入れて、半年〜1年以上かけてゆっくり発酵させるので「塩気があってコクのある味わい」になります。
職場の分類でいえば、下記のイラストのようになります。
日本という社会における多数派は、やはり真面目&勤勉な性格。下積みからコツコツとキャリアを積み上げ、年齢とともに味わいを増し、寡黙ながら安定感抜群なその背中に「日本の古き良き精神性」を感じさせます。
・麦味噌(代表ブランド:薩摩味噌など)
大麦にカビをくっつけた麹でつくる味噌。九州一帯と、瀬戸内海に面した中国・四国地方のスタンダード。塩が少なく、半年以内でスピーディに発酵させるため「甘くて旨味が強い味わい」になります。
多数派ではないものの、一定数いるこのタイプ。米味噌と違って社交的で、自己主張も強く、要領もいい。入社直後から職場で存在感を示す「うまいことやるアイツ」、それが麦味噌(←旨味強いし)。しかしその性格のせいか忍耐力に欠け「コイツ、深ぇ…!」と思わせる人間性にたどり着かないことも。
・豆味噌(代表ブランド:八丁味噌)
大豆に直接カビをくっつけた味噌。愛知・岐阜などの東海地方の一部で愛好される個性派。長いものでは3年間寝かせるので、まるで「砂糖の入っていないカカオチョコレート」のような色&質感&味わいになります。その「コクしか感じない」という独特すぎる味わいは人を選ぶので、離婚の原因になるとかならないとか…(東海文化圏の人には気をつけろ!)。
甘みや旨味を調整した「赤だし味噌汁」が有名です。
いやどの職場にも1人はいますよね。こういう人。自分の業務に並々ならぬこだわりを持ち込む人。そしてプライベートでも趣味を突き詰める。0.1ミリ単位まで突き詰めた設計図を描き、休日は野鳥観察に日本各地の山を登る。同僚からは「◯◯センセイ」と呼ばれる孤高の存在、それが豆味噌。
以上が原料による主な分類。
他にも、複数の原料をミックスした「合わせ味噌」や、蘇鉄(そてつ)の実の麹をつかった味噌(主に沖縄で食べられる)など、全国各地にユニークな味噌がたくさんあります。
分類B :色による分類
原料とは別に「色による分類」も。分類Aの「米味噌」で使われます。
・赤味噌
ご覧の通り赤っぽい色の米味噌。数ヶ月以上発酵させることにより、大豆のたんぱく質が変性。色が濃くなっていき、コクや辛味が増していきます。
通常の「米味噌」はこの赤味噌のこと。信州味噌や仙台味噌などの「東北ブランド」が強い。
・白味噌
赤味噌よりも塩を少なくし、麹の量を増やした状態で、1週間〜2ヶ月ほど発酵させると、大豆のもとのベージュ色をキープした状態の味噌になります。赤味噌と比べて甘味が強く、コクよりもアッサリ感が引き立ちます。関西名物の西京味噌に至っては、数日間で完成する「お菓子のように甘い味噌」です。
社会人でもありますよね。白味噌・赤味噌。
フレッシュでスイートな理想を語る、真っ白でピュアな若者が現実を知り、何度も挫折しながらも風雪に耐え、酸いも甘いも噛み分けたタフさと奥深さを身につけ、コクのあるオトナになる…。
どちらもまた、違った魅力があるのであるよ(たまに腐っちゃう人もいるけど)。
それでは次回「タラレバ娘に飲ませたい!二日酔いレスキュー味噌汁」でお会いしましょう。
発酵デザイナーの小倉ヒラクでした。
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