対談 2017.12.11
せきしろさん×セパタクロウさん|【第1回】ハガキ職人から放送作家に!僕らが「ラジオ」に魅了された理由
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- せきしろ
- 1970年北海道生まれ。主な著書に『去年ルノアールで』や『不戦勝』(共にマガジンハウス)、『妄想道』(角川書店)、などがある。共著に、『カキフライが無いなら来なかった』や『まさかジープで来るとは』(又吉直樹との共著。共に幻冬舎)、『ダイオウイカは知らないでしょう』(西加奈子との共著。文集文庫)など。近著に、『たとえる技術』(文響社)などがある。今年7月にラジオ好き号泣必至の半自伝的小説『1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった』が発売。
- 『1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった』
- せきしろ (@sekishiro) | Twitter
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- セパタクロウ
- 構成作家。『アンタッチャブルのシカゴマンゴ』のハガキ職人から、番組に見出されて放送作家に転身。現在は、TBSラジオで『JUNK山里亮太の不毛な議論』を担当。2010年4月の番組スタート当初から製作に携わる。
- 『JUNK 山里亮太の不毛な議論』
- セパタクロウ (@sepadesu) | Twitter
アマノ食堂に訪れる、お客さんの“おいしいお話”をお届けするお客さん対談。今回のテーマは、「ラジオ」。テレビやWEBなど、さまざまなメディアの中でも独自のカルチャーを創り出しているラジオの魅力に迫ります。
ゲストは、放送作家・コラムニスト・脚本家としてマルチに活躍するせきしろさんと、ハガキ職人から放送作家に転身し、現在はTBSラジオの人気番組『JUNK山里亮太の不毛な議論』の構成作家として活動しているセパタクロウさん。元・ハガキ職人だったお2人がラジオに魅了された理由とは?変化を遂げる“ラジオの今昔”を全2回でお届けします。
—お2人は以前、同じ番組を担当されていたそうですね。
今担当しているTBSラジオの『JUNK山里亮太の不毛な議論』がスタートした時に、一緒に番組を作らせていただきましたね。
※『JUNK山里亮太の不毛な議論』…2010年4月からTBSラジオで水曜深夜放送されている南海キャンディーズ・山里亮太がパーソナリティを務める番組。
そうそう。セパちゃんは何歳になったんだっけ?
33歳になりました。初めてお会いしたのが25歳の時なのでもう7年前ですね。せきしろさんは、お会いする前は「厳しそうな人だな〜」という印象だったんですけど、会ったら全然そんなことなくて。一緒に仕事をしている時もずっと優しかったです。
—7年前に一緒に番組を担当していたお2人。ラジオを聴くようになったきっかけと、欠かさずに聴いていた番組を教えてもらいました。
ラジオを聴き始めたのは小学生時代
ラジオキットを自作した
(せきしろさん)
親が運転する車に乗っていると、ステレオからよくラジオが流れていて。自然と耳には入っていたけど、自分の意思で聴くようになったのは小学5年くらいの頃。たまたま近所に科学クラブみたいな活動ができる施設があって、製作キットでラジオを作ったりしてました。
僕も元々は親の影響です。うちの親は掃除や家事をしながらよくラジオを聴いていたんですけど、当時は団地住まいであまり広くなかったから自然と僕の耳にも入ってきて。
そこからラジオにハマったんだ?
好きな番組を選べるラジオが楽しかった
(セパタクロウさん)
テレビのリモコン争奪戦に勝てなかった、というのも大きいです。当時、テレビはリビングと子供部屋にあったんですけど、5歳上の姉が絶対的な権力者だったから僕にはチャンネルを選ぶ権利がなく(笑)。子供の頃の“5歳差”って大きいじゃないですか。
あ〜(笑)
ラジオはイヤホンしてれば邪魔にならないし、好きな番組も自由に選べた。それからどんどんラジオの世界に引き込まれていきましたね。せきしろさんは、当時どんな番組を聴いていたんですか?
子供の頃は『中島みゆきのオールナイトニッポン』をずっと聴いてたな。北海道の田舎に住んでいたから電波が入る局は限られていて、よく聴いていたのが二ッポン放送だった。当時はオールナイトニッポン漬けだったから、TBSラジオや他局の番組はあまり聴いたことがなかった。
僕はせきしろさんと逆で、ニッポン放送が入りにくい地域だったからTBSラジオや文化放送が多かったです。ラジオを聴き始めた当時は声優の椎名へきるさんの番組をよく聴いてましたね。
—ラジオに魅了され、いつしかハガキ職人に。お2人がハガキ職人になったきっかけは?
深夜ラジオの投稿コーナーが好きで、最初は「ちょっと送ってみようかな〜」くらいの軽い気持ちでした。もともとネタを考えたり書くことは好きだったから、ひょっとしたら読まれるかも!って淡い期待をしながら。でも、これがいっこうに読まれないんですよ(笑)。採用される人ってやっぱり特別なんだな…ってがっかりしたのを覚えています。
初めてネタが読まれたのはいつ?
転機になったのは
『アンタッチャブルのシカゴマンゴ』
(セパタクロウさん)
TBSラジオの『アンタッチャブルのシカゴマンゴ』です。放送が始まった時、好きな芸人さんの番組だし送ってみようと思って。読まれないかもな〜とか思いつつもドキドキしながら聴いてたら、そこで初めて読まれたんです。「うわ〜こんなことあるんだ!」って感激して。そこから定期的にメールを送るようになりました。
※『アンタッチャブルのシカゴマンゴ』…2005年4月〜2010年4月までTBSラジオで木曜深夜放送されていたアンタッチャブルがパーソナリティを務める番組。
セパちゃんはメールが最初だったの?
最初からほぼメールでした。ハガキで送ったのは、La’cryma Christi(ラクリマ・クリスティー)の番組に送った1回きり。せきしろさんはどうでした?
たまたま弟のネタが読まれていた
『とんねるずのオールナイトニッポン』
(せきしろさん)
僕は『とんねるずのオールナイトニッポン』。偶然、番組で弟のネタが読まれたのを聴いたんだよね。
※『とんねるずのオールナイトニッポン』…1985年10月〜1992年10月までニッポン放送で火曜深夜放送されていたとんねるずがパーソナリティを務める番組。
え!よく弟さんだってわかりましたね。
当時は今と違って住所も詳しく読まれてたから、すぐに弟だって特定できたんだよね(笑)。弟が番組を聴いてるのもなんとなく知ってたし。その後、たまたま面白いことを思いついた時に「僕も送ってみようかな」と。まさか自分のネタが紹介されるとは思わなかったから、読まれた瞬間はびっくりするよね。
「あ、本当に読まれるんだ」ってなりますよね。それまでは、心のどこかで疑ってましたから(笑)
僕もセパちゃんと同じで、毎回読まれるレジェンド的な常連は自分とは別次元の人だって思ってた。一度読まれると嬉しくて、どんどんハマっちゃうんだよね。
ちなみに、なんていうラジオネームだったんですか?
絶対言わない(笑)。でも最初の頃は、本名で送ってたかな。
余計に気になりますね。自分の名前に近いラジオネームですか?小説の名前とか?
名前とは全然かけ離れてる。今はYoutubeとかで過去に放送された音源が残ってたりするから、すごく怖いよね(笑)。20年前は面白いと思ってたものが今になって聴くと、全然面白くなくて。
僕、あまり深く考えずに「さすらいダーリン」っていうラジオネームでやってたんですけど、今思うと恥ずかしいですね…(汗)。当時はこうやって人に自分のラジオネームを名乗るなんて思ってもみなかったですし。
当時のアウトプット手段が「ハガキ」
今は発信する方法が増えた。
(せきしろさん)
今ハガキ職人をしている人は、「もしかしたらいつか人に名乗ることがあるかも…」って念頭に置いておいたほうがいいかも(笑)。今って発信する手段がたくさんあるから羨ましい。当時はアウトプット方法がハガキしかなかったから。
今だと、ラジオネームでTwitterやってる人も多いですしね。
僕の頃は投稿してるって絶対に人には言えないと思っていたから(笑)。でも今だとそれでキャーキャー言われたりすることもあるんだろうね。
キャーキャー言われるなら羨ましいですね〜。今はスマホ一つで、テレビやラジオ、ゲームも楽しめる。ラジオも『radiko(ラジコ)』で気軽に聴けますしね。
最近は“かけもち”っていうか、いろんな番組に送る人も多いよね。ラジオだけじゃなくケータイ大喜利とかにもネタ出してみたり。僕の時は1つの番組に捧げている感があってさ。だから違う番組に送る時はラジオネームを変えて送ったりもしてた。それで読まれたら本当に面白いんだなって自信がつくというか。
僕は違うラジオネームで送ってみたら、全然読まれなかったです…(笑)。
—どれくらいのペースでハガキを送っていたんですか?また、採用されるコツみたいなものはあるのでしょうか。
週1ペースでハガキを送ってました。でも、それだとハガキ代が結構かかるから、そのためにバイトをしたりもして。
ハガキ送るためにバイト…すごい熱量。ハガキのほうが、意思が強くないと送れないような気がします。メールは思いついたらその場ですぐに何通だって送れるので。でもその分、たくさん送って読まれたとしても、“本当にそれが面白いかどうかの判断”は自分でしないとだめな気がして。それからは考えて送るようになりました。
「本当に面白いか」は自分で判断する
(セパタクロウさん)
具体的にどうしてたの?
たくさんネタを考えて、そこから5つくらいに絞って送っていました。一度、50通くらい送ってみたんですけど1通も読まれなかったことがあって。量をたくさん送るより“考える作業”が大切だなって、その時に感じました。
偉いね。真面目だね。
いえいえそんな…(汗)。
今は基本的にメールだけど、簡単に送れる分「ふるいにかける」ってことをしなくなるよね。だからセパちゃんがやっていたその作業って実はすごく大事。
ハガキの場合、読まれるためにどんな工夫をしてましたか?
番組のパーソナリティが読みやすいように文字を丁寧に書いたり、改行の入れ方にも気をつけたり…とにかく読みやすさにはこだわってたよ。
ハガキは書くだけでも時間がかかりますもんね。
まずは、番組をよく聴いて、どういう内容でどんなネタが主流なのかとか、コーナーの特性を知ることからだよね。1枚のハガキに5つネタを書くとしたら、あえてバラバラの切り口にして書いたり。最後にパーソナリティだけ笑えばいいと思っているネタを入れたりもしてた。
読まれなくても、細かいこだわりが出ますよね。ネタはどうやって考えてましたか?
よく聞かれるけど、自分でもわかんないんだよね(笑)。セパちゃんは?
一番時間をかけたのは、「振り分ける作業」
(せきしろさん)
この時間で考えようって30分や1時間とか、思いつくための時間を自分で作っていました。でも、深く考えずにパッと思いついたネタのほうが面白かったりするんですよね。
僕は思いついたことを振り分ける時間が一番多かったかも。何か1つ面白いネタを思いついたら、「このネタはあのコーナー向きかな〜」とか、どこに振り分けるかをよく考えてた。
それ、わかります!既存のコーナーありきでそこに当てていくんじゃなくて、面白いネタを思いついた後に振り分けたほうが一辺倒になりませんよね。
そうそう。セパちゃんは真面目だからね〜。
…真面目って褒め言葉じゃないですよね。
褒めてるよ(笑)。
撮影協力/池尻セレクトハウス
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