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文筆家・甲斐みのりさん×小説家・山内マリコさん|【第2回】祇園のバイト経験も作品に繋がる?2人の上京物語

甲斐みのりと山内マリコ
  • 甲斐みのり
    甲斐みのり
    1976年、静岡県生まれ。旅、散歩、お菓子に手土産、クラシック建築やホテル、雑貨と暮らし…と、女性が憧れるモノやコトを題材に書籍や雑誌に幅広く執筆。昨年は、地元パンを特集した『マツコの知らない世界』に出演して話題に。近著は『地元パン手帖』(グラフィック社)、『京都おやつ旅』(監修/PHP研究所)など。和歌山・田辺市の観光ガイドブック『朝・昼・夕・夜 田辺めぐり』を手掛ける。
  • 山内マリコ
    1980年、富山県生まれ。2008年「16歳はセックスの齢」で女による女のためのR-18文学賞読者賞を受賞。2012年に刊行した初の単行本『ここは退屈迎えに来て』は、オール富山ロケで2018年秋に映画化。ほかの著書に『アズミ・ハルコは行方不明』『さみしくなったら名前を呼んで』『パリ行ったことないの』『東京23話』『買い物とわたし』などがある。
甲斐みのり

アマノ食堂に訪れる、お客さんの“おいしいお話”をお届けする「お客さん対談」。今回の対談テーマは、「地方の魅力」について。

ゲストは文筆家・甲斐みのりさんと、小説家・山内マリコさん。ともに“地方”にフォーカスした著作やガイドブックでも話題です。そんなお2人の「地方」を訪れる時に大切にしていることを教えてもらった前回に引き続き、後編では意外な共通点や上京秘話を教えてもらいました♪

 

—以前から親交のあるお2人。実は共通点もたくさんあるそうですね。

マリコさんとは、仲の良い女性作家と一緒に数名で食事したり、普段から仲良くさせていただいていて。あと、大阪芸術大学の卒業生っていう共通点もあるんです。

甲斐さんが文芸学科で、私は映像学科ですよね。

文芸学科は一番地味な学科でした(笑)。当時は使うものはペンと原稿用紙だけだから、映像学科の学生さんがみんなでワイワイ楽しそうに制作しているのを羨ましく思っていたんですよ。

私は逆に、その雰囲気に馴染めなかったんですけどね(笑)。話が合う人っていました?

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同じ学科には3〜4人くらいですかね。

多い!私は1人だけしかいなかったな…(笑)。今思えば、文芸学科のほうが合っていたのかもしれない。

地元の静岡にいた頃はなかなか本当に話したいことを話せる人、趣味を共有できる人がいなくて。この状況から一刻も抜け出したくて、仕方なかったんです。当時は「芸大に行けば気の合う人がたくさんいるだろう」という幻想を抱いていました(笑)。

甲斐さんは、学生時代から文章を書いていたんですか?

授業で論文や詩を書くことはあったけど、それ以外で書くことはほとんどなかったんですよ。大学時代は音楽や本や映画や、自分の好きなものに触れながら自由に過ごしていました。

私も学生時代は、映像学科だったといっても、映画をたくさん観ていたわけではなかったな〜。

本や小説のほうに興味があった?

大阪芸大の書店が1年中、村上春樹さんの文庫を平積みにしたフェア状態で(笑)。気づいたらファンになって読破してましたね。私、映画のストライクゾーンは広いんですけど小説は狭くて、全作品読んだのは村上さんくらい。「最高!」って思えるものを自分で作りたくて、作家を目指したのかもしれません。

 

—お2人とも学生時代を大阪で過ごし、卒業後は京都に移り住んだそう。その理由は?

甲斐みのり

祇園の料亭でのアルバイト経験で

食への興味が深まりました

(甲斐みのりさん)

当時から文章を書いたり、本に携わる仕事をしたいとは思っていたんですけど、すぐに東京へ行く自信がなかったんです。

わかります。私もなんとなく京都が合ってるかもって。そういえば、最初に住んだのは祇園でした。

えっ!? 祇園って住めるんですか?

たまたま物件があったんですよ。今思えば、ちょっと怪しかったかも(笑)。その後、七条に引っ越して。

七条か〜。またディープな場所!

結局3年半ほど京都にいたけど、間違いだらけの京都滞在記だった気がします(笑)。甲斐さんは?

私は大阪に4年、京都に2年です。絵本の出版に携わったり、自分で雑貨ブランド「Loule(ロル)」を始めたのも京都にいた頃でした。マリコさんは京都ではどんなことをしていたんですか?

京都の雑貨屋でバイトをしていましたね。その当時、お店でたまたま見ていたカタログに「Loule(ロル)」のことが載っていたんですよ。そこで甲斐さんのプロフィールを見たら、大阪芸大卒って書いてあって。

ふふ。すごい偶然。

「こんな素敵な人が同じ学校の先輩なんだ!」って衝撃を受けたのを覚えています。卒業生には中島らもさんや古田新太さんとか、キャラが濃くて渋い方が結構多いじゃないですか。

たしかに濃いですよね。今振り返ってみると、京都でのいろんな経験はすごく大きかったですね。祇園の料亭でアルバイトをしたことで器や食に興味が湧いて。その時の経験が初めての著書『京都おでかけ帖〜12ヶ月の憧れ案内』(祥伝社)を出すきっかけにもなりました。

東京に拠点を移したのはいつですか?

2001年に思い切って上京しようと決めて。最初はフリーライターさんのアシスタントから始めたんです。男性誌の仕事も多かったですよ。

男性誌とは意外ですね。

新しくオープンした店舗の記事も書いていたんですけど、お店側から定型文のような文章に修正されるのがすごくストレスで。そこで、自分の肩書きを「ライター」から「文筆家」に変えたんです。それからは文章をある程度任せてもらえるようになって。振り返ると良い転機になったのかも。

私もライター経験あるので、そのストレスわかります。当時は作家でなくても、文章を書く仕事で暮らせるならいいやと思っていました。

ライターにはどうやって?

バイトをしていた雑貨屋に取材に来られたライターさんに、「ライターになるにはどうしたら良いですか?」って相談したら、編プロを紹介してくださったんです。そこから、少しずつライターの仕事をもらって。

でも、ライターの仕事は甲斐さんも経験したように、自分の色を出しすぎてはいけないから。文章で自己表現したい気持ちがある人には、実は向いていない。だったら小説家を目指したほうがいいのかもしれないと思って、上京することにしました。そこから大変な目に遭いながらも、なんとかやってこれた感じです(笑)。

大変な目!?

山内マリコ

ライター業を経験をして、上京を決意!

小説家の道を目指す

(山内マリコさん)

小説家ってまず新人賞を取らないとなれないじゃないですか。賞を取るのに2年くらい、その後、デビューするまでも4年かかったんです。編集者との相性も大事だし、気付くと25歳で東京に来てから7年経っていて。20代の女性にとって大切な時期を棒に振ってしまいました…(汗)。

その期間は、どんなことをしていたんですか?

映画を観に行ったり、意外と東京ライフを満喫していたんですけどね(笑)。でも心の片隅では「これからどうしよう…」って悶々としていましたね。

富山に帰ろうかなって思ったことは?

ありました。震災のときも、東京で一人暮らしするのも限界かなって思ったり。けど、本気で帰りたいって思ったことはないかもしれない。東京が合ってたんですね。

 

—最後に、お2人がこれから続けていきたいことを教えてもらいました。
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甲斐みのり

埋もれてしまいがちな

「地方の魅力」を発掘したい

(甲斐みのりさん)

今は田辺市の方と一緒にガイドブックを作ったように、日本各地の、土地土地の良さを発掘するのが楽しいんです。そうすることで、その土地に住んでいる人が喜んでくれたり、自信につながったら、本望です。もちろん、これまで作ってきた地元パンや大型観光ホテルのように、自分が本当に好きなことも突き詰めていけたらいいなと思っています。

甲斐さんが『観光ホテル旅案内』(京阪神エルマガジン社)を出されて。柚木麻子さんや吉川トリコさんや女性作家が大人数集まって、みんなで1泊しましたよね。あれは本当に楽しかったです。

静岡の「ハトヤホテル」に行きましたよね。

女性演歌歌手のディナーショーを観たりして、最高でした!

フィナーレでは、ホテルで飼育されている鳩が舞台から客席に飛び立つのが名物。カラオケコーナーも大盛りあがりでした。

そうそう。私がドラゴンアッシュを熱唱して…(笑)

(笑)。旅は気心の知れた仲間と行くのが一番ですね。

山内マリコ

男性目線の「短編集」に挑戦中です

(山内マリコさん)

ずっと、女同士のつながりを小説に描いてきました。デビュー前の出版界が、「女性作家なんだから恋愛小説を書くべき」と言われるような状況だったことを考えると、女同士っていうジャンルが定着したのを感じます。となると、今度はそこを突破したくなって、今年の春には男性目線で、男性が主人公の短編集を出す予定。新しいチャレンジになると思うので楽しみです

 

—対談の〆にアマノフフーズの「なすのおみそ汁」と食べて、ほっと一息してもらいました。

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「お湯を入れてすぐに戻るなんて、フリーズドライは忙しいときの味方ですね」(by甲斐みのりさん)
「具材の食感もしっかりしていて、料理して作ったおみそ汁みたい!」(by山内マリコさん)
と、驚きのご様子!たくさんの共通点があり、息もぴったりなお2人。以前、名古屋で一緒にトークイベントを行った際には、印象深いお店に出会ったのだとか。

吉川トリコさんも一緒に名古屋でトークショーをした後、打ち上げで『グリル プランセス』というお店に行きましたよね。

ハンバーグやステーキがおいしいお店でしたよね。

オーナーの80歳くらいのおじいちゃんが自慢の筋肉を見せてくれるのが名物なんですよね。

そうそう!「ハイスピード腕立て伏せ」を披露してくれたり、最高でしたね。

あ〜また行きたいな〜!

—本日は楽しいトークをありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。

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撮影協力/6次元

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