読み物 2018.12.14
【第10回】娘とオタクと鍋料理。
アマノ食堂をご覧の皆さま、こんにちは。
劔樹人と申します。
日頃はバンド活動とマンガの執筆をしながら、主夫活動に勤しんでいます。
ここ最近、犬山がとても忙しいのです。
仕事もさることながら、いま彼女はその合間の時間を使って児童虐待を減らすための社会活動に取り組んでいまして、まさについ先日、自らが中心になって立ち上げた「こどもギフト」という、子どもを支援する団体や施設へのクラウドファンディング型の寄付プロジェクトが動き出したところなのです。
それに合わせて、私の家事育児も忙しくなっています。なんせ娘は2歳目前。戦慄のイヤイヤ期にさしかかっているので、オムツを替えるにも、着替えるにも、出かけるにも、風呂に入るにも、何をするのにもとにかく時間がかかるんですよ。
一筋縄では言うことを聞いてくれないので、あれこれと説得材料だったり気を逸らす方法だったりを考えてなんとか乗り切っています。私にしてみたら、人生でこんなに創意工夫をしたことがあるのだろうかというくらい。
めんどくさいことがあったら思考を停止して全て忘れるのが私の生きる術だったのに。今は思考を停止しても、ウンチまみれになった娘が、ただそこにいるだけ。
結果、お料理はより手を抜く方向に向かっています。
ただ季節は冬になってきたので、手を抜いた食卓の救世主・鍋料理に頼ることができます。2歳になると子どももかなり親と同じものを食べられるようになってきて、そういう意味でも野菜も肉・魚もたっぷり摂れる鍋が本当に楽です。
今夜は犬山が夜の生放送の前に家で夕食。そしてうちには、ハロー!プロジェクトのオタクたちが集まるので、たっぷり鍋の材料を用意します。
子どもが生まれてから、以前のように頻繁には現場に行けなくなりましたが、こうして仲間たちがうちに集まってくれるので、情報に乗り遅れることもなく楽しくハロヲタ活動ができるのです。
白味噌をベースに、酒やみりんでまろやかに仕上げたスープに、人参、キャベツ、えのき、玉ねぎ、長ねぎ、もやしをたっぷり入れて、野菜の上に薄切りの豚バラ肉を敷き詰めます。
野菜は子どもも食べやすいように細かめに切ってあります。あとはコンロで煮るだけ。
火が通ったら、最後にいろどりになる水菜を乗せてもうひと煮炊き。これだけで完成です。
うちにはいわゆる土鍋がなくて、結婚祝いに友人に頂いたル・クルーゼのホーロー鍋を使っています。みんなで鍋を囲んでつつく日本の冬的な雰囲気にはなりませんが、野菜が柔らかくなるし旨味がしっかり出るので申し分ありません。
キャベツや玉ねぎが甘くなって、白味噌と相性はバッチリ。生で使う事の多い長ねぎも、普段は子どもに食べさせることはないのですが、こうやって煮ることで辛味がなくなり、とても柔らかくなるので問題はありません。
まずは友人たちが来る前に、この後仕事に行かなければいけない犬山に食べてもらいました。
「野菜がいっぱい食べられておいしい!これなら毎日でもいいよ!」
よかった!夜遅い仕事に向けての元気になってくれたでしょうか。
しかし「これなら毎日でもいい」っていう、この手の言葉に今までどれだけ騙されてきたか。誰より飽きっぽいことにいい加減気がついて欲しい。
娘にも取り分けてあげたら、野菜も肉もスープも、喜んで完食しました。
感想は、「パパー!まちゃててんのなね、ねー」とのことです。
まだいまいちよくわかりませんが、何か明確に言いたいことがあるのはわかりました。だいぶ人間の言葉に近づいてきています!
***
まー、つるちゃんは優しい。この原稿もさりげにこどもギフトについて触れてくれている。
そうなのです、私は今ものすごく忙しいです。これまでは育児、仕事、プライベートと結構いい感じにやれていて、お互いそこまでストレスが溜まることもそこまでなかったのですが、そこに私が虐待防止へのアプローチというもう一つ大切な軸を増やしたせいで、プライベートの時間が死んで育児の時間もかなり減ってしまった。
私が忙しくなるという事は、つるちゃんに育児の負担が増えるという事。私もつるちゃんも最近そこそこ参っていたのでした。てな訳で保育園だけでなくシッターさんにもお願いしようかなと考えてます。このさい赤字覚悟。まーでもいいんです、お互い児童虐待防止に対して何かやりたいと話していたし、お金と時間はなくなりますが、やっと自分のこと好きになれた気がします。それってなにより大切。こうやっておいしいお鍋を作って支えてくれているつるちゃんなしではできないですから。
少しでもできることをやって行こうと思ってます。チャゲがこうやって暖かいお鍋を食べられること、笑顔で親に甘えられる事、そういったことがすべてのこどもにとって当たり前になりますよう。
*チャゲ…お子さんの愛称
劔樹人(漫画家・ミュージシャン)
[PROFILE]
男の墓場プロ所属。「あらかじめ決められた恋人たちへ」のベーシスト。著書に「あの頃。〜男子かしまし物語〜」(イースト・プレス)、「高校生のブルース」(太田出版)、「今日も妻のくつ下は、片方ない。 妻の方が稼ぐので僕が主夫になりました」(双葉社)。「小説推理」、「みんなのごはん」、「MEETIA」などで連載中。
犬山紙子(イラストエッセイスト)
[PROFILE]
大阪府生まれ。ニート時代に書いたブログを書籍化した『負け美女』(マガジンハウス)でデビュー。現在はイラスト・エッセイストとして多くの雑誌で執筆。テレビ、ラジオにも出演している。2017年1月に女児を出産。近著にさまざまな生き方の女性たちにインタビューし、自らの妊娠、出産も描いた新刊『私、子ども欲しいかもしれない。』(平凡社)
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