対談 2019.05.30
藤村忠寿さん×嬉野雅道さん|【第2回】自分の気持ちが沸き立つほうへ!『水曜どうでしょう』名物ディレクターの仕事論
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- 藤村忠寿
- 1965年、愛知県生まれ。北海道テレビ放送の番組ディレクター。
1990年に入社し、95年に本社の制作部に異動。『水曜どうでしょう』(HTB)の前身となる番組『モザイクな夜 V3』の制作チームに加わり、翌年チーフディレクターとして『水曜どうでしょう』を立ち上げる。番組にはナレーターとしても登場しているほか、ファンの間では“出演者よりもしゃべる!?名物ディレクター”とも囁かれるほど、番組内でもたびたび大笑いをするなど存在感を現す。著作に『けもの道』(KADOKAWA)など。愛称は「藤やん」。 - 藤村忠寿 公式Twitter
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- 嬉野雅道
- 1959年、佐賀県生まれ。北海道テレビ放送の番組ディレクター。
『水曜どうでしょう』(HTB)ではディレクター兼任カメラ担当。出演者をあまり映さない定点的なカメラワークが面白いと好評に。また、同局の大泉洋主演ドラマ『歓喜の歌』ではプロデューサーを務め、安田顕主演ドラマ『ミエルヒ』では企画プロデュースを担当。著作に『ひらあやまり』『ぬかよろこび』(ともにKADOKAWA)、藤村さんとの共著に『腹を割って話した』(イースト・プレス)など。愛称は「うれしー」。 - 嬉野雅道 公式Twitter
- 藤やんとうれしー Twitter
アマノ食堂に訪れる、お客さんの“おいしい話”をお届けする「今週のお客さん」。ゲストは前回に引き続き、藤村忠寿さんと嬉野雅道さんです。
対談のテーマは『仕事を楽しむ』。伝説のローカル番組『水曜どうでしょう』を生んだディレクターのお2人。
前編では、レギュラー放送時の制作裏話や、自分ごとにして楽しむ番組作りの秘訣をお聞きしました。
続く後半では、お2人の著書『仕事論』(総合法令出版)でも語られた、セオリーにとらわれない働き方や、新たにスタートしたYouTubeの活動についてもお話いただきました!
※この対談はYouTubeチャンネル「藤やんうれしーの水曜どうでそうTV」とのコラボレーションで行いました。動画と一緒にお楽しみください!
お2人の出会いについて
―今でこそ名コンビのお2人ですが、一緒に番組を作ることになったきっかけはありましたか?
たまたまなんです。
こればっかりは人事ですから。
藤村さん、僕とやるの最初は不安だったんでしょ?
本当の最初は……ね。そもそも僕は人に頼らないタイプだったので、この方とどう組もうかな?とは思いました。そしたら嬉野さんが「僕、カメラやれるよ」って言うもんだから「じゃあお願いします!」って。でも頼んだはいいけど、いきなり説明書読んでるしさ……。
こいつ、本当に大丈夫か?って(笑)。
うん(笑)。でもそれは1回目のロケのこと。1回目の嬉野さんは撮っては止めて、また別アングルから撮ってみたりと色々やっていたけど、2回目以降の映像を見ると「いいじゃないですか!」という仕上がりだった。それからは信頼してお任せしていましたね。
僕は藤村さんに出会ったとき、「良い人が現れてくれた」と思いました。彼みたいな人が近くにいると良いんですよね。
自分の役割を引き出してくれた人
(嬉野雅道さん)
僕は切迫して「こういうことをやりたい!」とはならないタイプなんだけど、彼みたいな人がアイデアを目の前にポンと置いてくれると動けるんです。「これ楽しそうじゃない?」と言われると、「たしかに面白いかも。あと、こうしたらもっと楽しいかもね」って。1つの状況があって初めてアイデアが浮かぶ。
嬉野さんはいろんな企画でかなり深く考えてくれました。最初はそこまで意味合いがなかった企画も、撮り終わって編集する頃には「この企画は何のためにやっているのか?」を付け加えてくれます。
もともと何に対しても「なぜやるのか?」ということは当然考えますよね。自分ごとにするには整理していかないと。「何のためにやっていたんだっけ?」と思った瞬間に気持ちが離れると思うんです。
楽しいことでも仕事になった途端にその意味が変わって「仕事だからやっている」と言う人が多いですよね。俺たちは「仕事だから」で決めたことは一度もないよね。
ないですね。それが「正直にやる」ということですね。
―著書『仕事論』の中で「やりたいことをやるには会社員であれ」とありますが、これだけ活躍されているお2人に「フリーランス」という選択はなかったのですか?
僕は北海道テレビに入る前、フリーランスでしたが、会社員からまたフリーになろうと思ったことは一切ないです。大変だと思いますよ。『仕事論』にも書きましたが、フリーランスになることがどういうことなのか。もしも、あとに道がないと思う人なら、その選択は得ではないよね。会社にいたほうが絶対いい。
僕は会社に入る以外の選択肢がなかっただけの話です。入るなら大きな企業がいいな、だったらテレビ局かなということだけを考えました。結局は会社を集団として利用しているだけなんです。その集団にいれば、いろいろと仕事がやりやすいでしょ?
それで今では会社にあまり行かなくなっちゃったから、会社員だけどフリーランスよりもフリーよ♪
ほんとですよね(笑)。
そこを目指したわけではないんだけど、前からそんな働き方をしたいと思っていたんだろうね。それが我々には一番合っているなぁと。
―その領域へ行くにはどうすれば良いのでしょう…?
セオリーに縛られないで自分で考えてやることだよね。組織がどこにあろうが結局は自分。社内だけで完結する仕事ってないから。
会社の外に出れば、働き方は広がる
(藤村忠寿さん)
会社員でも一緒に仕事をするのは外にいる得意先や業者さんがほとんどでしょ?結局、自分は会社を代表して会いに行っている個人なわけだから自分で考えて動くよね。しかも、外の人たちは社内と違って選び放題。自分で新規開拓して、気の合う人を見つけて仕事をすれば「それ面白いね」「こういうやり方もあるよね」って話もすぐに進むし、そうすると会社にずっといる必要はなくなってくる。
そうですよね。我々は昔からそんな風にやっていたと思いますよ。
昔に比べれば会社のあり方も変わってきていますよね。だから、今はあえてフリーランスなのか、会社員なのかというのはあんまり考えなくてもいい気がする。社内でどれだけフリーランスのように仕事をするかが逆に求められているから。
―著書の中で“自分にとっての温泉を掘る”(=自分の好きなことだけを仕事にすること)という表現がありますよね。フリーランスのように働くにはこの“温泉”が重要だと思います。どういう時に“温泉が掘れた”と実感できるのでしょうか?
自分に何ができるかを見つけられた時じゃないですか? 最初はわからないと思うから、まずは何でもやってみる。そして、色々やった中で「これならできそう」が見つかれば、それを深めていけばいいだけの話。それが“温泉”ですよ。
自分の考えに対して、正直に判断していいんじゃないですか。
自分の気持ちが沸き立つほうへ
(嬉野雅道さん)
そうすると、おそらく失敗もあるでしょう。その失敗を気にしてやらないと判断した時、あなたは何を見ているのか考えてみて。「会社の人の顔色」を見ているのか、「自分だったらこうしたい」という方向を見ているのか。ここが分かれ道じゃないでしょうか。自分の気持ちが沸き立つほうに行くこと。そこで足踏みしていたら温泉には一生行けないだろうね。
例えば、自分の仕事とは関係なくても面白いものがあれば行動する。隣の部署がドラマを作っていて、面白そうだなと思えば手伝いに行けばいい。そういう人は熱量があるほうに向いて行けるよね。
―2019年に入ってユーチューバー(※)として活躍されていたり、「note」でのコンテンツ配信がスタートしたりと新しいメディアにどんどん参入されていますね。
※【YouTubeチャンネル「藤やんうれしーの水曜どうでそうTV」】
…2019年3月に開設したYouTubeチャンネル。チャンネル開設から1日で登録者数10万人を突破し、現在は登録数20万人超えの人気チャンネルに。
▲【試食のプロ】味噌汁が〇〇円!?高級フリーズドライを藤やんうれしー食べてみた
YouTubeは僕らの周りの人が「やれるんじゃないですか?」って言ったのがきっかけでした。我々に今の時代の先進的なアンテナはないですから。「やれますかねぇ?」「やりますか!」ってすぐ決まったよね。
そんな始まり方でしたよね。そこにリスクは考えない。
考えないね〜。現場で対応するから。
失敗を恐れるとかじゃなくて失敗したほうがいいなと思うんだよ。失敗したらウケるんじゃないかって。
「ものすごい失敗をして最悪裁判で訴えられてもいいや」って言ってましたよね。どこまでもコンテンツになる。
ユーチューバーになるなんて、社内だけで仕事をしていたらそんな選択肢はなかったです。社外の人と仕事をすることで、彼らが違う世界を見せてくれた。
藤村さんが「裁判で訴えられてもいい!」と言ったら、「いいですね!」と返してくる仲間ばかりだからね。
一同:(笑)
そうそう(笑)。
ここにリスクを口にする人はあまりいない。「裁判? 見たいなー!」とか言ってね(笑)。
「傍聴席は我々のほうで取っておきますよ〜」つって(笑)。
そうなると同じ状況でも全然不安じゃなくて、朗らかな雰囲気になるじゃないですか。大事なのはやはりそこですよ。そんな仲間と楽しく仕事をする。
あと、僕の感覚で言うと自分自身がYouTubeやインターネットを見ることが増えたというのも理由の一つです。
新しいことも、自分の感覚を信じてやるのみ
(藤村忠寿さん)
世間で流行っているからではなく、自分自身もそうなっているから。「ユーチューバーやりませんか?」と言われてもすんなり受け入れられたね。テレビを盛り上げるためには、テレビ番組を作ること以外のことがこれからは必要なのかなって。みんなもそれを求めているし、自分自身が実感しているから。それをただやっているだけ。
―新しいメディアを始めて、周りの反響に変化はありますか?
見てくれる人が変わるというのは、あるんじゃないですかね。
そうですね。YouTube配信をやってると『水曜どうでしょう』を観たことのない世代の子たちも観てくれて、「なにこれ? おじさん達、面白いじゃん」って言ってくれる。僕らの世界も広がるけど、観る側も世界も広がっているのかなって。メディアが変わるとそういう変化もあるよね。
環境も良いですよね。ここ(動画撮影スタジオ)はテレビ局と違って人も少ないし、機材も小さいからリラックスできます。“人間”でいられる感じ。こういうことって大事なんじゃないですかね。
―これから新しくやってみたいことはありますか?
何かあったら言ってください。何でもやりますよ。
質問されて「何かあったら言ってください」って返す人、初めて見ました(笑)。
自分の中にはないんですよね〜。でも、お声があればなんでも。こんな簡単なことはないじゃないですか。提案してもらって「いいじゃん」って思えば、物事が進んでいく。YouTubeだって会社に許可取ってないしね。「やっちゃえ!」って(笑)。
―じゃあ、私たちも面白い企画が思いついたらご提案しても良いですか…?
いいじゃないですか!
僕らの横に座ってもらって、一緒に動画撮りましょう。
で、それは儲かるのか?って話から始めますからね(笑)。
一同:(笑)
―「楽しいと思えることは何か」を考えながら、お2人のようにワクワクしながら仕事に取り組みたいですね。対談後はアマノフーズ の商品でほっとひと息♪
北海道にゆかりのある商品ということで、アンテナショップの限定商品の「蟹のみそ汁」をご用意いたしました。北海道といえば3月1日、札幌駅にアンテナショップがオープンしたばかりです。
「蟹のみそ汁」ときたか! これはいくらなの?
1つ540円ですって。思い切ったね〜。楽しみ。
「あ〜、カニの甘いところもしっかり感じるね」(by嬉野さん)
「すごくでかい蟹が出てきた。魔法じゃん、魔法だよこれ」(by藤村さん)
―ご試食中、スタッフさんがおみそ汁に合うお酒を出してくれることに。
おみそ汁はフリーズドライがおいしいよね。
『水曜どうでしょう』でロケをしてたとき、これがあったら食料のことであんな喧嘩にもならなかっただろうね。
ほんとだね(笑)。ところで、蟹のみそ汁に合うワインとかないの?
スタッフさん:今日は新潟県の日本酒がありますよ。おみそ汁と同じ温度帯で飲めるよう熱燗にしてみました。
さすが! いいわぁ〜、熱燗、合うね〜。
僕たち、昼間っから何してるんでしょうね(笑)。
***
YouTubeの動画撮影時にはいつもお酒を飲むというお2人。今回はおみそ汁と一緒にスタッフさんセレクトの熱燗を楽しんだあと、さらにもう1本の動画を収録されていました! 昼間から仕事でお酒が飲めるのもお2人のスタイルならではです。
本日は楽しい対談をありがとうございました。またのご来店をお待ちしています。
【Information】
『仕事論』(藤村忠寿/嬉野雅道 著)
『水曜どうでしょう』、2人の名物ディレクターが働き方を語る。やりたいことで結果を出すための「自分勝手」な思考法。
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撮影/佐々木謙一
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