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植木俊裕さん×井口タクトさん|【第1回】インスタで話題! 今どき男性料理家が語る、インスタと料理

植木俊裕さんと井口タクトさん
  • 植木俊裕
    長野県生まれ。フードスタイリスト・料理家。グラフィックデザイナー時代からInstagramで料理写真を投稿。食欲をそそる盛り付けやハッシュタグ「#とりあえず野菜食」が話題となり、フォロワー11万人超え(※2019年10月現在)を誇る人気フードインスタグラマー。自身の器ブランド「SOROI」のデザイン、プロデュースも手がけている。著書に『とりあえず野菜食BOOK(学研プラス)』『盛りつけエブリデイ(KADOKAWA)』がある。
  • 井口タクト
    1990年、京都府出まれ。化粧品メーカーに勤務しながらフードスタイリスト・料理家として活動中。趣味で投稿していたInstagramの料理写真が評判を呼び、レシピ執筆や料理イベント講師、ケータリングなどを手掛けるように。主催のフードコミュニティ「Foodies Labo」は開催の度に即満席になるほどファン増加中。

アマノ食堂に訪れる、お客さんの“おいしい話”をお届けする「今週のお客さん」。

今回の対談テーマは『インスタ発! 男の料理のこだわり』です。平日はお弁当を持参、休日はお家で手料理を振る舞うなど、今や男子も日常的に料理をする時代。SNSでも「#料理男子」「#弁当男子」といったハッシュタグで連日盛り上がっています。

そんな料理男子界のなかでも、一際目立っているのが今回のゲスト、料理研究家の植木俊裕さんと、料理家の井口タクトさん。Instagramで発信するオリジナリティ溢れる料理投稿が人気のお2人に、男子料理の魅力やSNSで料理について発信することへの思いなど、たっぷりお伺いしました。

お2人の熱いトークをお楽しみください! 前後編の2回に渡ってお届けします。

***

—— お2人はInstagram(以下、インスタ)をきっかけに知り合って、普段から仲が良いそうですね!

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僕が3年半前にインスタを始めた頃、植木さんはすでにズバ抜けて有名人で、一方的にインスタを見ていました。

知り合ったのはイベントだよね。インスタの人たちが集まる料理イベントがあって、そこにタクトくんも居た。

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植木俊裕(@utosh)さん Instagram
シンプルで洗練されたスタイリングと季節の野菜や果物をたくさん使った色鮮やかな料理写真が人気。自身で発案した「#とりあえず野菜食」のハッシュタグをつけた投稿は15万ほどに広がっている。

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井口タクト(@ouchigohan_ojisan)さん Instagram
パスタや丼などがっつりメニューから、おしゃれなおつまみメニューまで食欲そそる料理写真が人気。料理教室などイベントだけでなく、普段の晩酌の様子などプライベートな一面も発信している。

イベントでは男性の料理家さんが少なかったので、植木さんがいてくれて心強かったです。今でもお兄ちゃんって感じで、面白いし憧れです。

男性で日々料理をしている人って、女性に比べるとまだまだ少ないよね。女性の料理家が10人増えたとしたら男性は1人増えるか増えないかくらいの感覚だなぁ。

たしかに、まだ少ない感じがします。だから逆に僕らが注目してもらえるのかなって。

でも料理繋がりでインスタを通して知り合った人たちって、男女関係なく仲が良いよね。

たしかに。「フード系」のインスタグラマーさんはみんなすごく温かいです。

—— インスタを通して料理のお仕事が広がっているお2人ですが、「料理インスタ」を始めたきっかけは何だったのでしょうか?

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自由に料理を表現できる場として

(植木俊裕さん)

僕は、5年前くらいにインスタを始める前まではブログを書いていて、その中に「料理」のカテゴリがあるって感じだった。雑誌に載せていただいたりと、料理のお仕事が増えてきたのでインスタグラムで料理アカウントを作ったのが最初かな。

SNSは色々ありますけど、Twitterとかはされなかったんですか?

Twitterはアカウントを作って持ってはいたんだけど、自分に合わなかった。元々ブログをやっていたから、どうしても140文字では伝えたいことを書ききれなくて…。自分が表現したいことを発信するには、写真や文字が自由に表現できるインスタが合ってた。

そうなんですね。僕は初めからインスタ1本でした。たくさんのフォロワーさんが見てくれるようになる中で、「もっと投稿を工夫してフォロワーを増やしたいぜ!」みたいな思いも全然なくて、「ありのままの井口」を発信しているという感じですね(笑)。

なるほどね。たしかにタクトくんのインスタはバイタリティを感じる。パワーがすごいよね。

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プライベートの延長で好きな「料理」を投稿し続けた

(井口タクトさん)

ありがとうございます!(笑)元々プライベートアカウントなんですけど、料理が好きだったので料理写真を頻繁に上げていました。それからちょっとずつフォロワーさんも増えていったという感じです。

タクトくんはとくに「料理インスタ」って感じで縛っているわけではないよね。

全然ないです。料理アカウントですけど、プライベートな投稿もたくさんあります。自分ではプライベートアカウントだと思っています。

—— おいしそうな料理写真とおしゃれなスタイリングでフォロワーが増え続けていますが、投稿する料理のコンセプトはありますか?

植木さんのインスタはシンプルだけどどこかおしゃれな感じが素敵ですよね!

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料理で自分のアイデンティティを表現したい

(植木俊裕さん)

昔はセオリーというか、「カッコいい写真のほうが良い」という気持ちがあって、スタイリングや盛り付けを統一するようにしていたんだけど、もうインスタもそういう時代ではない気がして。今はそこにこだわりすぎず、「料理で自分を表現する」ことを一番意識しているかな。

その感じ分かります。単調ではなくその人の個性を感じるとフォローしたくなりますね。

「統一感があったほうが良い」というのはインスタグラムで昔から言われていることだけど、その統一感というのが昔は「ビジュアル」だったのが、今は「アイデンティティ」というか、「内容」になってきているのかなという感じがするよね。タクトくんはこだわりとかある?

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料理を通して「幸せ」を感じてもらいたい

(井口タクト)

僕は、見る人が飽きないようにすることを意識しています。僕のアイデンティティは「料理を通して見ている人と近い位置で対話すること」ですね。投稿の中で日常をどんどん出していくとか。

フィードを見ればその人がどんなことを伝えたいのかは分かるよね。

ちなみに、僕の考えていることも伝わっていますか…?

タクトくんが考えていることなんて、インスタを見れば一目瞭然(笑)。

バレバレですか?

バレバレというか、思いっきり(笑)。「楽しく自炊しよう」みたいな感じだよね?

おっしゃる通りです。「楽しくおいしく食べよう!」です。

しかもタクトくんは、難しい料理ではなくて3アイテムくらいの食材や調味料で料理できるようなものを提案してくれるから、それもまたいいね。

やっぱり「食で幸せを作りたい」というのがテーマなので。食材の持つ栄養素とかももちろん大事ですが、僕の場合はもっと前段の部分を大切にしています。まずは自分がシンプルに楽しまないと伝わらないので、「楽しく料理する」ことをコンセプトにしていますね。

——個性的なタグやおいしそうな料理写真が目を引くお2人の投稿ですが、投稿する際のこだわりはありますか?

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自分ならではのハッシュタグをつける

(植木俊裕さん)

いつも投稿につけている「#ややはつレシピ」というハッシュタグがあるのだけど、あれは僕独自のタグです。自分しか投稿しないタグがあっても面白いかなって。

なるほど!これは「広める」方向ではないんですね!

そうだね。自分だけのタグにしたいくらい(笑)。

そんなふうに思っていたなんて知らなかったです!

タグって使い分けがあって、「みんなでこのタグを使って投稿して盛り上げていこう」というタグもあるし、自分だけがパーソナルに使うタグもあるじゃない?

そうですね! 僕が投稿につけている「#Good morning Good breakfast」や「#おうちごはんおじさん」はパーソナルなタグの意味合いが強いです。ちなみに植木さんの「#ややはつレシピ」はどういう意味ですか?

「ややはつ」は野菜・薬味・発酵の頭文字で、それらを使った料理のことなんだ。僕は、長野県出身で料理を通して地方創生を図りたいと思っていて。

たしかに、長野の信州みそや信州ワインは有名ですよね!

「#ややはつレシピ」っていうハッシュタグをつけて、料理から少しでも地域のことを知るきっかけになったらいいなって。

ひらがなで字ズラも可愛いし、何よりも体に良さそうですよね。

田舎を食べる、「イートローカル」というキーワードがあるんだけど、ずっとそれに変わるものを考えていて。でも、「ややはつレシピとはこういうもの!」というのもまだないし、とにかく悩んでいるというのが正直なところ。

ハッシュタグで地元との繋がりができるのはなんだか素敵ですね! それから、植木さんは野菜を使った料理が得意ですよね「#とりあえず野菜食」の投稿数も15万くらいありますよね?

そうそう! 最初に僕が「タグで何かできないか?」「シーンを作れないか?」と思ってトライしたタグだね。拡散されすぎて逆に自分のものじゃないような感覚になってしまったね(笑)。タクトくんは投稿するときにこだわりってある?

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とにかくおいしいごはんを投稿する

(井口タクトさん)

僕はおいしいごはんをただただ、かなりの頻度で投稿しただけですね(笑)。

ごはんをあげていただけでフォロワーが増えていったというのは、言ってみればタクトくんの一番すごい部分だよ! 転がり出したら転がるのよ。転がり出さないときに、転がり出させる「何か」みたいなものをタクトくんは持ってるよね。

「こうしたら絶対にフォロワーが増える」みたいな方法はないですもんね。よく言われるテクニックとかもあると思うんですけど、そういうのもある程度フォロワーがいる段階でやるから響くセオリーであって、実際には難しいし。

フォロワーの桁が変わるってすごくハードルが高くて、僕もタクトくんもそのハードルを越える力があったのかな…。でも桁が変わるというのは、なんとなく投稿しててもできないと思うんだよね。

自分の信念や個性を大事に発信し続けることが大事ですかね。理屈では語れないですね!

(後編へ続く)

* * *

「特別なことはしていない」と言いながらも、時代を冷静に読み取りながら、料理に対する自身の思いをブレずに伝え続けるお2人は、やはり人気インスタグラマーになるべくしてなられていますよね。後編もお楽しみに!

 

撮影/佐々木謙一

取材・執筆/大西マリコ

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