対談 2020.01.21
松㟢翔平さん×田中佑典さん|【第1回】ガイドブックには載っていない!「台湾」のリアルな魅力
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- 松㟢翔平
- 1993年埼玉県生まれ。俳優・モデル。人気番組「TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020」初期メンバーとして出演したことで一躍人気者に。「魯肉飯」を始め、番組内で度々披露した台湾飯が話題になり、台湾イベントへのオファーも殺到。執筆活動も行なっており、現在『Ginza Magazine Web』や、映画レビューサイト『Banger』にて連載中。台湾名は「小黑」。
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アマノ食堂に訪れる、お客さんの“おいしい話”をお届けする「今週のお客さん」。
今回の対談テーマは『台湾の楽しみ方』です。タピオカやかき氷といったスイーツブームを始め、近年注目を集めている国「台湾」。この秋には台湾発の大型複合セレクトショップ「誠品生活」が日本発上陸するなど、その勢いは加速中です。
そんな台湾に魅せられ、日本での台湾ブームに一役買っているのが今回のゲスト、『テラスハウス』出演で一躍人気者となった松㟢翔平さんと、台湾カルチャーに詳しくアジアと日本の架け橋的存在として知られる田中佑典さんです。
食や文化を通して台湾の魅力を発信、楽しんでいるお2人に、台湾の魅力やガイドブックには載っていないディープな楽しみ方について伺いました。後編では「日本で楽しめる台湾グルメ」についてのトークも登場するので、どうぞお楽しみに!
今回の対談が行われたのは横浜にある元町中華街。前半は人気台湾料理店にてトークスタートです!
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—— 「台湾対談」ということで、台湾を代表する料理「魯肉飯(ルーローファン)」を食べながらお話いただければと思います! お味はいかがですか?
中華街の台湾料理店『秀味園』の人気メニュー 魯肉飯 (500円)
おいしいです! ちょっと珍しいタイブの魯肉飯ですね。台湾では、そぼろや角煮が入ってないものが多いので。
そうだね。一口に魯肉飯といっても、地域によって全然違うよね。
そうですね、日本でいうとカレーみたいなものですよね。家庭や地域で味が違いますね。
でも、台湾南部に行くと魯肉飯ってメニューはないんだよね。「魯肉飯」は北部の言い方で、南部では「肉を操る飯」と書いて「肉繰飯(ローツァオハン)」になる。
しかも、日本で食べる魯肉飯って、台湾よりも大きくないですか?
日本が「どんぶり文化」だからかもしれないね。台湾はお茶碗が基本なので、どんぶりで魯肉飯を食べるのは日本式かも。
量も台湾の2倍くらいありますよね。
あと、日本で食べる魯肉飯は、「八角」※の香りもあまりしないものが多いよね。
※八角…別名スターアニス。名前の通り、八角形の星のような形をもつスパイス。強くて甘い独特の香りが特徴。
たしかに、そうですね!
八角とかって独特の香りがするから、日本人は苦手な人が多くて、日本では食べやすいように作られてることが多い気がする。
僕も最近、魯肉飯を作ってるんですけど、八角を入れると日本の方には敬遠されがちだから一回抜いて作ったんです。でもそうするとただの角煮ごはんになるので…。それで最近見つけたのが、コーラを入れる裏技。コーラを入れると不思議とちょうどよくなるんですよ!
それ、めちゃくちゃいい豆知識!
—— 早速興味深いお話をありがとうございます! それではまずは、お2人が台湾と密接に関わるようになったきっかけから教えてください。
台湾人の温かさが居心地よかった
(松㟢翔平さん)
僕は、台湾の友達が住んでいるシェアハウスに1人分空きが出たと連絡をもらったのがきっかけです。台湾映画が好きだったので、「あの映画の街に住むのはいいかもな…」と思って。理由はそれだけですね。
すごいフットワークの軽さだね。どれくらい住んでたの?
8ヶ月です。
台湾での生活はすぐに馴染めた?
それが初めての台湾だったんですけど、すぐに馴染めました。友達が助けてくれたというか、ルームメイトもいい人ばっかりだったので。
台湾の人は友達や家族にアツイよね。シャイで最初は距離感があるけど、仲良くなると一気に友達を飛び越えて親友になっちゃう。
本当にそう思います(笑)。わざわざ友達が家までバイクで来て、「飯食いに行くぞ」みたいなことも多かったです。
ときには「今日はそっとしておいて…」と思うくらい距離感が近いよね。日本人の友達と台湾に行って、現地の友達にその友達を紹介してもらって1日遊ぶと、次の日もついてきたりする(笑)。
わかります。昼から遊んでいた別グループの友人同士が合流して、夜には大人数になってるみたいな。
もはや宴会(笑)。
田中さんは初めて台湾に行ったのはいつですか?
2009年くらいかな。実は最初は仕事で行ったんだけどね。
10年前! 結構前ですね。
台湾独特の「アジア感」に惹かれた
(田中佑典さん)
台湾の「コミケ」※の取材にライターとして行ってほしいと言われて。それまでは特に台湾が好きなわけではなく、アジアがなんとなく好きだったんですよ。
※コミケ…コミックマーケット。世界最大の同人誌即売会。
そうなんですね。
僕は、小さい頃からずっと中国人のマネとかをやっていて、なんとなく「中華的なもの」に憧れがあったんだろうね。大学生になって中国、タイ、香港とアジアに色々行ったけど、台湾は他の国と違って「ザ・アジア感!」というのがある意味薄かったというか。むしろ日本にいるような感覚だったんだよね。
日本と似ている雰囲気ありますよね。日本人が台湾を「レトロ」って言う感覚がよく分かります。
カフェとかにいると日本の音楽が流れてきたりするのに、外に出るとあの圧倒的なバイクの量とか夜市とか。いわゆる日本にはないアジア感もあって。その絶妙な“緩急”にやられた感じですかね。
—— 現在、松㟢さんは俳優やモデルとして、田中さんは台日系カルチャーマガジン『LIP 離譜』の制作や台湾語学講座「カルチャーゴガク」など、台湾と関わりの深いお仕事や活動をされていますよね。こういった台湾関係のお仕事はどのような形で繋がっていったのでしょうか?
台湾人の情の厚さに助けられた
(松㟢翔平さん)
日本でやっていたモデルや俳優業を台湾にも広げた感じですね。ファッション系の仕事をしている友達が多かったこともあって、生活で困っていた時期も、友達たちが世話を焼いてくれて、仕事くれたりして。
台湾人は情に厚い人が多いよね。
そうですね。それに台湾の人や環境が自分に合ってたんだなと思います。
僕も最初は台湾の人たちにすごく助けられたな。
田中さんは台湾にまつわる雑誌を作ったり、台湾の文化を日本に紹介しようと思ったのはどうしてですか?
台湾人と一緒にカルチャーを作っていきたかった
(田中佑典さん)
台湾のものを日本に紹介したいというよりも、気が合う台湾人と日本人で「一緒にカルチャーを作っていきたい」という感覚かな。
めちゃくちゃ素敵ですね!
当時、僕の台湾に対するイメージって「小籠包」とか「マッサージ」くらいしかなくて。日本のメディアではそういうことしか取り上げられてなかったんだよね。
たしかにそうですね。
でも、やっぱり実際に台湾に住んでいるクリエイターとかカルチャー的な人たちと話しているとすごく気が合うし、「この人たちとしっかりと繋がるようなメディアを作りたい、台湾との橋渡し的な存在になれたらな」と思った。
台湾って、デザインとか文化とか、日本より進んでいる部分も多いですよね。
そうそう。よくびっくりされるのは「リノベーション文化」。日本ではここ数年で言われるようになったけど、台湾では昔から当たり前にあったからね。普通に古民家を改装したカフェとかもバンバンあるので、むしろ日本が台湾に倣っているくらい。
日本のメディアでも、「懐かしい街」として古民家を取り上げてますよね。でも、台湾は日本よりも進んでいる所が多いので、初めて行く人が見たらびっくりすると思います。
—— 日本人のイメージと、実際の台湾は少しギャップがあるのですね。他にも、文化的な面や性格的な面でなど、日本と台湾で違うなと感じる点はありますか?
お酒より「ごはん」!食べ物へのこだわりが強い
(田中佑典さん)
台湾人って食べ物へのこだわりが強いかな。台湾では野菜の「菜」と書いて「食べ物」を表すんだけど、「我的菜」と書いて「=あなたは私の菜です」つまり「あなたは私のタイプです」って意味で使うんだよ。「俺のメシ」みたいな。
へぇ〜!そうなんですね、おもしろい!
これが広東語、香港だと「お茶」になるんだよ。「俺の茶だ」みたいな。あと、台湾には「締めの文化」がないから、それこそ居酒屋に行っても一気にご飯ものとかも頼んじゃうよね。
日本みたいにお酒に合うつまみを頼んで……ということはしないですよね。
普通に最初からうどんや炒飯を頼んじゃうから、「ちょ、ちょっと待って……」みたいな(笑)。
それくらいお酒よりごはんを大事にする国ですね。
台湾人は周りを気にせず大らかな性格
(松㟢翔平さん)
性格的なところで言うと、良くも悪くも台湾人は他人を気にしないですよね。何を着ていようが、何が好きだろうが、理不尽なことがあまりないような気がします。無駄がないというか。
さっぱりしてるよね! 無駄に相手に合わせるみたいな感覚がない。例えば「お金がない」って言葉は日本だと言いづらいし、言われた側も変に助けると気を遣うかな? とか思ってお互い気を遣い過ぎちゃう
でも、台湾人は変な詮索とかないですよね。お互い助け合うのが普通だし、「そうなんだ」って受け入れてくれますね。
台湾の人がよく使う言葉に「差不多(チャブドォー)」って言葉があって、みんな口癖のように使うよね。時間も「差不多」だし、なんでも「差不多、差不多」。
あぁ〜!めちゃくちゃ言いますよね!たしか 「別に、大体でいいんだよ」みたいな意味ですよね。
そうそう。その感じが僕はすごく心地いいなーって。
わかります。
デザインの面でも、日本のデザインが「1ミリもずれを許さない。シンプルで格好いい」という風潮だったときもあるけど、いまは台湾とかアジアの「差不多」をすごく求めている感じがするんだよね。
逆に台湾人は日本のデザインをかっこいいって言ってくれません? 台湾もすごくカッコいいのに……。
それで僕、台湾の友達とよく喧嘩になったりするよ(笑)。昔、台湾カルチャーのお店をプロデュースした時に、僕は「台湾の箸やプラスチックのお茶碗で提供したい」と言ったんだけど、台湾の人からすると「それは恥ずかしいからやめて! 日本の格好いいデザインのお茶碗とかで出した方がいいよ」って言うの。
台湾にいる彼らから見えている台湾って全く違うんですよね。だから日本のデザインやたら褒めてくれる。その流れでいうと、台湾の人たちって「ドン・キホーテ」がすごく好きじゃないですか?
あーわかる! 好きだよね(笑)!
俺たちは逆に、台湾の「小北百貨(シャオベイバイフォア)」が面白いですよね!
24時間やっている“台湾版ドン・キホーテ”みたいなアレね。
花柄の炊飯器とかありますね。
カラフルなお箸とかね。台湾の人たちには「なんでそんなに?」「別にそんなの普通じゃん」って言うけどかわいいよね。
お互いの価値観の違いがカルチャーにも出てますね。住んでみてわかったのは、台湾って街がコンパクトですよね。台北も台南もギュッとなっているんです。
だから、台湾の人に「東京って本当に不思議な街」って言われる。例えば吉祥寺と高円寺とか、地域によって住んでいる人が全然違うみたいな。駅ごとにカルチャーが全然違うという感覚は台湾ではないもんね。
だからヒップホップが好きなやつとか、スケーターのグループとか、バンドマンとか。みんな遊ぶ場所がほとんど一緒ですね。カルチャーが違ってもみんな仲良くやっています。
「差不多(チャブドォー)」の文化だね。
(後編へ続く)
* * *
シャイだけど情に厚くて距離感が近い一方で、他人を気にしない一面あり。日本のデザインが大好きで、お酒よりもごはんを大事にする国で色々なカルチャーが交差する国、台湾。
ガイドブックやネットで調べるだけでは分からない台湾の魅力が次々と出てきましたね。後編もお楽しみに!
撮影/山田 健司
取材・執筆/大西マリコ
・撮影協力
秀味園(シュウミエン)
神奈川県横浜市中区山下町134
045-681-8017
営業時間: 平日10:30~22:00
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