対談 2020.03.27
秋元里奈さん×左今克憲さん【第2回】おすすめ野菜も紹介!食農サービスのこだわりと努力
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- 秋元里奈
- 1991年、神奈川県生まれ。株式会社ビビットガーデン代表。2016年、こだわり農作物のオンライン直売所「食べチョク」を立ち上げる。人気番組「セブンルール」(カンテレ)の出演をはじめ、各種メディアでの活躍のほか、世界を変える30歳未満の30人を表彰する「30 UNDER 30 JAPAN2019フード部門」にも選出されている。
- 食べチョクHP
- 秋元里奈Twitter
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- 左今克憲
- 1982年、福岡県生まれ。株式会社アグリゲート代表取締役。全国の農家や市場から目利きのバイヤーが直接仕入れを行い、野菜や肉魚を販売している「旬八⻘果店」を運営。小売から飲食、生産、教育など様々な事業を展開している。様々なイベントや経済メディアで活動している。
- 株式会社アグリゲートHP
- 左今克憲Twitter
アマノ食堂に訪れる、お客さんの“おいしい話”をお届けする「今週のお客さん」。
ゲストは前編に続き、食材のオンライン直売所「食べチョク」を運営する秋元里奈さんと、全国の農家や市場から直接仕入れを行う青果店「旬八青果店」など9店舗を展開するアグリゲート代表の左今克憲さんです。
前編では「新しい食農サービス」をテーマに、20代で農業の新しいサービスを作り上げたお2人にビジネスとして成り立つまでのエピソードや苦労について語っていただきました。
続く後編では、実際にユーザーさんや生産者の方の意見を聞きながらビジネスを拡大しているお2人にサービスへのこだわりや目標をお聞きします。野菜を愛するお2人ならではの「おいしい野菜の食べ方」も必見です!
―消費者さんや農家さんともつながりが深いお2人。消費者や農家さんとのコミュニケーションから新しいビジネスやサービスにつながったことはありますか?
お客さんの好みに合わせて野菜を選ぶ「農家代行サービス」
(秋元里奈さん)
現在「食べチョク」には登録生産者さんが800軒以上いるので、お客さんからすると「たくさんいる農家さんのうち、どこの農家さんから買えばいいのかわからない」というご意見が多く寄せられました。
どうやって解決したんですか?
2年前に「食べチョクコンシェルジュ」という新しいサービスを始めました。お客さんに事前に食の好みやライフスタイルを登録してもらって、それを元に食べチョクがおすすめの農家さんを選定するという仕組みです。そこから届いた野菜の感想を記録していくことで、コンシェルジュが好みを学習し、次回の配送のタイミングで、さらに好みにあった野菜をお送りすることができます。
なるほど! 農家さん選びを代行してくれるんですね。これは便利!
自分の好みに合ったお野菜が届くので、無駄にすることもないですし、ユーザー満足度はかなり上がったと思います。左今さんも「旬八青果店」だけでなく、新しい業態も増やしてますよね?
時代のニーズに合わせて業態を増やしていく
(左今克憲さん)
そうですね。今までは野菜と果物を扱う「青果店」がメインだったのですが、最近では、家で料理をしない人たちのために惣菜や加工品にも力を入れるために『旬八キッチン&テーブル』もはじめました。
時代に合わせて広げているんですね。
例えば、青果店の売り上げや客数の変化を見ると、平日よりも土日が弱かったんですよ。逆に加工品のラインナップが充実しだすと、土日の売り上げが伸び始めました。料理をしない人でも、やはり土日は時間があるから野菜を買っていたけど、加工品があればそっちを買おうかなってなるんですよね。
なるほど!
あとは、農家さん視点で言うと、仕入れ方をちょっとずつ変えていきました。例えば、袋詰めをしないとか。そうやって農家さんの負荷を軽減することでお客さんが購入しやすい金額にしてもらったり。いい塩梅を探すようにしています。
なるほど。「食べチョク」の場合は、農家さん自身が販売主体になるので、農家さんにとってもメリットがあるサービスを考えてますね。
どんなサービスですか?
例えば、お客さんが少量で気軽に始められる「お試しセット」ですね。農家さんにとっては、少量で販売するとなると、その分袋詰めなどに手間がかかってしまいますので、お試しセットを作ってくれた農家さんはサイトのトップに掲載するという仕組みにして、双方にメリットがあるサービスにしました。
そうやって新しいことを取り入れてるんですね。
そうですね。あとは、ユーザーヒアリングをして、お客さんがこの商品を欲してるっていう意見をお伝えしたりしながら、新しい商品を考えてもらうこともあります。
僕たちも、おいしさの質を守るため、バイヤーが仕入れて食べて「おいしくない」と感じれば農家さんに原因をお聞きして改善してもらうようにしてますね。販売したときにお客さんからの意見を直接農家さんにフィードバックすることもあります。
それすごいですね! どんなふうに改善するんですか?
たとえば、「どうやって肥料を蒔いていますか?」とか、野菜の栽培方法にまで入り込んで聞いてます。
それで改善されている感じはありますか?
向上心のある農家さんは絶対に改善してくれます。
―ここからは「旬八青果店」の店内に並ぶ野菜を前に、お話しいただきます。気になる野菜やおすすめの野菜も教えてもらいました。
お野菜の種類豊富ですね! 市場で仕入れたものと、産地直送のものを交ぜて販売しているんですか?
そうですね。産地直送の場合は、「最もおいしい状態で、どうやって物流コストを下げて仕入れるか」ということを意識しています。この農家さんの野菜は夜の12時に収穫するのが一番甘くなるからその時間に合わせて仕入れようとか。
そんなに細かく調整されてるんですね!
―お2人が好きな野菜やおいしい野菜の食べ方を教えてください!
珍しいので知らない方も多いと思いますが、「菊芋」が好きなんです。
どうやって使いますか?
生でスライスしてサラダすると、シャキシャキとした食感が楽しめますし、加熱すると甘くなるので、炒め物やシチュー、味噌汁などの具材にも使える万能食材です。
このトマトとか知っていますか? これはフルーツトマトなんです。市場で色んなトマトを食べる機会がありますが、個人的にはこれが一番おいしいんです。
フルーツトマトですか? 気になります!
皮が少し固めでフルーティなんですよ。あとは、うちのマッシュルームはおいしいですよ。結構人気です。僕はそれをアヒージョにするのが好きで…。
左今さんおしゃれですね…!
―農家さんとのやりとりで心がけていることとかありますか?
スター農家さんを育てたい
(秋元里奈さん)
「食べチョク」が特殊なのは農家さんが前面に出ていることです。ユーザーの評価が上がって露出が増えることで頑張れるし、頑張らなければ露出がどんどん下がっていきます。そういう意味だと農家さんもプレッシャーを抱えながら参加してくださっているんです。その自然な良い流れを「食べチョク」で作っていけたらいいなと思っています。
なるほど。それはオンライン直売所ならではですよね。
そうです。前面に出ていることで、農家さんそれぞれの人柄が出てきます。味はおいしいのはもちろんのこと、ちょっと変わったおもてなし精神があると人気につながることも多いんですよ。おまけや秘伝のレシピが入ってることもあるんです。そこは結構それぞれ個性出しやすいところでもあるので、そこを活用していっていただきたいです。
そうやってスター農家さんを増やしているんですか?
そうなんです。約800以上いる農家さんの中では目立たない小さな農家でも、それぞれ個性が光っている”スター農家さん”を育てたいんです。
なるほど。そうやって農家さんに貢献しているんですね。単純に味だけじゃなくて、その人のパーソナリティみたいな部分ですよね。そこは「旬八青果店」と違う部分です。
農家さんと対等であり続ける
(左今克憲さん)
左今さんは農家さんの栽培方法にまで入っていくのはすごいと思います。やはりそれは「おいしさ」にこだわっているからですか?
そうですね。味と価格を実現するために介入している感じです。それが「SPF(※)」というシステムです。ただ、それでも農家さんと対等でいることはずっと大切にしています。やりたいこと、やりたくないことはお互いにはっきりと伝えるようにしています。
※SPF…食農業界で生産、流通、製造、販売を川上から川下を一気通貫するビジネスモデル
対等であり続けるってすごく大切ですよね。こちらが偉くなってもいけないですし、農家さんが強くなってもいけない。そこのバランスを私も大切にしたいです。
―農家さんと消費者をつなげる取り組みとして、今後お2人が目標としていることはありますか?
農家さんのこだわりが正当に評価してもらえるサービスに
(秋元里奈さん)
「食べチョク」が大きくなれば貢献できる生産者さんが増えると思うので、まずは事業を大きくするということが目標ですね。でも、私たちがキーポイントにしているのは「生産者さんのこだわりが正当に評価される」ということです。
生産者の方に寄り添う感じですか?
味にこだわっている方や、サービスクオリティの高い生産者が正当に評価されて、そういう人にファンがついて、より儲かっていく仕組みにしたいと思っています。
旬八青果店を強い状態で拡大していく
(左今克憲さん)
僕も根本は同じです。「旬八青果店」をしっかりと強い状態で増やすことが、農家さんにとってプラスになると信じているので、そこは意識しています。
いろんな業態を増やしていく感じですか?
そうですね。今「旬八キッチン」と「旬八青果店」を展開していて、青果だけでなく惣菜と加工品もあります。でも結局のところ、「旬八青果店」を増やして肉付けしているイメージです。
なるほど。
青果店にキッチン設備があるところを“キッチン”と呼んでいるだけなので、お客さんに提供しているサービスは同じなんですよね。
業態を展開して良かったことは何ですか?
やっぱりお客さんとの接点は広がります。青果店には来ていないお客さんが、「旬八キッチン」の方に飲みに来てくれて、青果店を知って野菜を買ってくれたり。そういう意味で、業態を増やすメリットがあったかなと思います。
―秋元さん、左今さん、素敵なお話をありがとうございました! 対談後は、アマノフーズのスープでほっと一息。本日はアマノフーズの定番商品「まごころ一杯 おみそ汁」シリーズ。気になる商品を選んでもらいました!
私は「長ねぎ」が好きなのでこれにします!
僕はせっかくなので「五種の野菜」を。
おいしい!温まる〜!
おいしいですね! 五種の野菜、ほうれん草が特にリアルです。フリーズドライの技術はすごいですね。
「長ねぎ」も長ねぎ感があります! 自宅では冷凍保存しておいたねぎをおみそ汁に入れて食べたりもしますが、それと同じくらいしっかりとした食感です。
うちで販売しているお弁当やお惣菜とも相性良さそうです。
お弁当と一緒に食べるのいいですね! オフィスのみんなにも食べてもらいたいです。
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消費者と農家の意見を取り入れながら拡大を続けていくお2人。これからの新サービスも楽しみですね! ご来店ありがとうございました!
【本日の一品】
「まごころ一杯 定番長ねぎ」
とろりと柔らかく甘い長ネギと色あざやかなわかめが入ったおみそ汁。カツオの出汁がきいた風味豊かなおみそ汁です。
「まごころ一杯 定番五種の野菜」
キャベツ、ほうれん草、たまねぎ、ねぎ、にんじんの色鮮やかな五種の具材が入った満足度たっぷりのおみそ汁。野菜の旨味と甘味が溶け込んだ一杯です。
写真/パタヤナン・ワラット(vvpfoto)
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