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【半径5mから考えるフードロス】第1回 島本美由紀さん×浅野美奈弥さん|フードロスを減らすために、私たちの食卓でできること。

【半径5mから考えるフードロス】第1回

最近、私たちの日常でもよく耳にするようになった「フードロス」という言葉。ニュースでもよく取り上げられていることから、気になっている人も多いのではないでしょうか。とはいえ、フードロスを減らしましょう、と言われても実際に何から始めれば良いか、わからないことも多いですよね。

 

そこで、アマノ食堂では『半径5mから考えるフードロス』ということで、日頃からフードロス削減に取り組むフードクリエイターをゲストに迎え、“食卓”という身近な場所から無理なく取り組める方法を一緒に考えます。「フードロスとは?」「収納・保存テク」「調理テク」の3本立てでお届けするのでチェックしてくださいね。

 

第1回目は「フードロスとは?」がテーマ。食品ロス削減アドバイザーとしても活躍する料理研究家の島本美由紀さんと、料理家・モデルとして活躍をする傍ら、フードロスに関する発信も行なう浅野美奈弥さんの対談形式のトークをお届けします。フードロス問題の現状や、明日から取り入れられるコツについて、わかりやすく教えてもらいました。

 

島本美由紀さん、浅野美奈弥さん

1人あたりの廃棄は毎日お茶碗1杯分!? 日本のフードロス事情って?

 

――島本さん、まずは今の日本のフードロス事情について教えていただけますか?

 

島本さん:「フードロス」とは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品や食材のことです。ここで含まれるのはバナナの皮や魚の骨といった最初から食べられないものではなく、主に食べ残しや売れ残り、賞味期限切れ、過剰な皮むきなどです。(※1)

 

日本のフードロス量は522万トン(令和2年度推計)。そのうち約半分は家庭から出ています。数字だけ見ても大きすぎて実感がわかないかと思いますが、一人当たりに換算すると、毎日だいたいお茶碗1杯分くらいの量。(※2)

それだけの量を捨てているとなると、「少しでも安いものを」と買い物しても意味がないように思えてしまいますよね。

 

※1. 政府広報オンライン「もったいない!食べられるのに捨てられる「食品ロス」を減らそう」

https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201303/4.html

※2. 農林水産省「食品ロス量が推計開始以来、最少になりました」 https://www.maff.go.jp/j/press/shokuhin/recycle/220609.html

 

浅野さん:私も「美菜屋」というケータリング事業を手掛けていますが、やっぱり生ごみの割合が多くて…。地域によって家庭ごみ・事業ごみの処理の方法や価格は違うと思いますが、調理の過程で出た生ごみを有料で捨てるとなった時に、フードロスについて考えるきっかけになりました。できるだけ食材を活用する、水をしっかり切る、カサを減らすといったことを意識するだけでも変わりますよね。

 

島本さん:そうですね。私はもともと旅が好きで、これまで世界50カ国ほど訪れているのですが、ある国では食べ物が満足に食べられない子供もいる一方で、私たちの暮らしの中では気軽に買って、食べきれずに捨ててしまうことが多いのでは…と違和感を覚えていたんです。10年ほど前にワンガリ・マータイさんとの対談(※「MOTTAINAI」という言葉を世界中に広め、ノーベル平和賞を受賞したケニア出身の女性環境保護活動家)をきっかけに、「もったいない」の意識を広める活動を始めました。以前に比べ、今は「フードロス」という言葉が認知されていると感じています。

 

浅野美奈弥さん

浅野さん:私はコロナ禍を機に、フードロスについて今まで以上に考えるようになりました。ある時、いつもは捨てていた野菜の皮や種だけでお弁当を作ってみたら、予想以上においしくできたんです。

 

島本さん:「アース弁」ですよね。浅野さんのInstagramで見ました! 華やかで彩りがよくて、すごくおいしそうだと思いました。反響も大きかったそうですね。

 

美菜屋のアース弁

浅野さんが運営する美菜屋で作っている「アース弁」。食材の本来捨ててしまう部分だけで作られている。

 

浅野さん:10~20代の友人やInstagramのフォロワーさんから「食べてみたい」「食べられるって初めて知った」「私も野菜の皮を捨てるのをやめました」という声がたくさん届きました。それをきっかけに、SNSでもフードロスの話をするようになって。もともと私は「自分ひとりがエコなアクションしても…」と思っていたのですが、自分で発信をするようになってから意識が変わった気がします。

 

島本美由紀さん

島本さん:“意識を変える”ってとても大事なことですよね。私は日頃、家庭向けに冷蔵庫の収納術や食品保存の方法をTVや雑誌、書籍などで発信していますが「買ったもの、作ったものを無駄なく最後まで使い切る」ことが当たり前になっていくといいなと思っています。

 

 

 

野菜の皮や種も! “おいしく食べられる”を知ることで「捨てる」をやめる

 

――浅野さんのつくる「アース弁」には小松菜の芯や大根の皮などが使われていますが、いつもどんな風に料理をしようと考えていますか?

浅野美奈弥さん

浅野さん:「煮る・焼く・揚げる」と何でも試してみることから始めています。大根は捨てるところがないし、ピーマンは丸ごとししとう感覚で食べられますし。ゴーヤのふかふかした白いわたは天ぷらにするとおいしいんですよ。

 

島本さん:そうそう! 野菜は皮や種の部分もおいしかったり、栄養価が高いものもあるため、捨てるのはもったいないんです。料理教室を開いていた頃、生徒さんに長ねぎを渡したら、上の青い部分は食べられないと思ったらしく、すべて捨ててしまったことがあって。今は「どこまで食べられるか」を知る機会が減っている気がしますね。

 

島本美由紀さん、浅野美奈弥さん

浅野さん:そうですね。今では皮や種を取り除くのが当たり前になっているように思います。なので一度試してみて、自分自身で「おいしい」と実感をすることが大事かなと。皮をむく、種を取ることをやめてみると、ごみが減るだけでなく時短にもなりますから。

 

島本さん:残留農薬が心配な方も多いと思うんですが、基本的には水でしっかり洗ってから調理をすれば概ねはOKだそうです。

 

浅野さん:今は野菜や果物専用の洗剤もあるので、気になる人は「野菜専用 洗剤」で一度調べてみるといいかも。

 

 

 

私たちにもできる! 家庭で始められるフードロス削減

 

――島本さん、家庭でのフードロスは具体的にどんなものが多いのでしょうか。

島本美由紀さん

島本さん:家庭での捨ててしまいがちな食材で多いのは「野菜」ですね。5個入りの方が安いからと選んだ結果、気づいたら傷んでいたり。また、牛乳や豆腐、納豆などの身近な食材も多いですね。3パック入りを買っても食べ切れないまま賞味期限が過ぎてしまう、お腹が痛くなったら嫌だから、と捨ててしまうなどです。

 

作り置きも途中で飽きてしまったり、味が濃くなってしまって食べきれないこともありますよね。無理なく使い切れる、食べ切れる量を意識するとフードロス削減につながると思います。浅野さんはプライベートではどんなことに気を付けていますか?

 

浅野さん:私は一般的なラップではなく、『みつろうラップ』や『みつろうバッグ』で食品を保存しています。野菜は比較的長持ちしますし、乾燥しにくいのでパンなどの保存にも適しています。

※みつろうの作用については『ME LIKE』のHPをご覧ください。

保存容器は中身が見える『stasher(スタッシャー)』(プラスチックフリーの保存容器)にしたり、かわいいもので揃えたり。冷蔵庫を開けるたびにテンションが上がります。

 

浅野美奈弥さん

――フードロスに貢献したいけれど、何から始めれば良いかわからない。そのような方でも今日からできる、具体的なアイデアはありますか?

 

島本さん:そんな方はまず冷蔵庫内をちょっと見直してみることから始めるのがおすすめですそうすると、嬉しいことに家事もすごくラクになると思いますよ。冷蔵庫は1日に何度も開け閉めをするからわかりやすさが大切。例えば、食材が把握できるように7割収納を目安にしたり、「今日はドアポケットだけ」など少しずつ整理に取り組んでいくのがストレスも少なくおすすめです。

 

浅野さん:私は冷凍保存の仕方を正しく知ることから始めるのがいいかなと思っていて、私自身も勉強中です。島本さんはYouTubeでも冷凍術を紹介されていますよね。それぞれの食材をどんなふうに冷凍できるのかを学ぶと毎日の料理がラクになりそうだし、食べ切れずに困ることもなくなりそうだなと思っています。

 

島本美由紀さん、浅野美奈弥さん

島本さん:そうなんですよ! 冷凍=味が落ちると思われる方も多いんですが、キノコ類は冷凍することで旨味がアップしますし、お肉は下味を付けて冷凍することで組織が壊れてやわらかく、味もしみこみやすくなりますよ。

 

 

賞味期限の長いフリーズドライ食品を上手に活用しよう

アマノフーズのフリーズドライ

――フードロスの観点から、フリーズドライ食品についてどう思いますか?

 

浅野さん:おみそ汁を買ったことがあるのですが、すごくおいしいですよね。つくりたてのお料理をそのままフリーズドライしているからこそのおいしさなのかなと思いました。おみそ汁が飲みたくなった時やひとりでの食事の時、温かいものが手軽に食べられるのはホッとできますね。

 

島本さん:フリーズドライは私も常備用として購入しています。災害時用の非常食としてもすごく良いですよね。ただ賞味期限が長いからこそ、「気づいたら切れていた」っていうことも多いんです。なので備蓄専用にせず、普段の食事にも取り入れて、消費をしていくというサイクルができるといいんじゃないかなと思います。お湯だけであっという間においしいスープができるので、忙しい朝にもぴったりですから。上手に活用して、無駄なく食べきれるようにできるといいですね!

 

島本美由紀さん、浅野美奈弥さん

 

――ありがとうございます。最後に、『半径5mから考えるフードロス削減』について、それぞれ一言いただけますか?

 

浅野さん:食材を無理なく食べ切れるととても気持ちがいいですよね。「頑張って食材廃棄を減らさなきゃ!」と肩に力を入れるのではなく、フードロスについてまわりの人たちと少し話をしてみるだけでも意識が変わると思うんです。少しずつみんなができることに取り組んだ結果、フードロス削減につながっていくといいですよね。

 

島本さん:本当にそう思います。何でも自分で背負いこむのではなく、「使い切れる量を買おう」「作ったものは食べきるようにしよう」など、みんながそれぞれできることに取り組むことだけでも積み重ねになりますから。海外はひとりひとりが環境問題に熱心な国も増え、世界規模で毎日の生活に馴染みつつあります。日本でも、フードロスの取り組みが今以上に自然になっていくといいなと思います。

 

今回は『半径5mから考えるフードロス』として、フードロス問題の現状や島本さん、浅野さんの取り組み、フードロスに身近なところから取り組むアドバイスを伺いました。次回は島本さんの「冷蔵庫収納」や「食材の保存テク」についてお話を伺います。ぜひ第二弾もお楽しみに。

 

島本美由紀

島本美由紀さん

料理研究家。実用的なレシピ提案からさらに一歩踏み込み、エコの観点から食品保存や冷蔵庫収納を提案する「食品ロス削減アドバイザー」や「冷蔵庫収納&食品保存アドバイザー」、「ラク家事アドバイザー」など幅広く活動。テレビや雑誌、講演会など活躍の場を広げている。令和3年消費者庁主催の食品ロス削減推進大賞審査において、審査委員長賞を受賞。絵本「食品ロス『もったいない』をみんなで考える」の監修ほか「いつでもおいしい 冷蔵・冷凍保存術」(コスミック出版)など著書は70冊を超える。

・公式サイト

https://www.shimamotomiyuki.com/

・公式YouTube:島本美由紀のラク家事CH

https://www.youtube.com/channel/UCbIPZfpFO5ccvs8MtelVobg

 

浅野美奈弥

浅野美奈弥さん

モデル・料理家。大学時代からモデル活動を始め、雑誌や広告など幅広く出演。26歳の時、過度な食事制限やストレスから体調を崩したことをきっかけに、ケータリングやロケ弁、レシピ提供などを行なう「株式会社美菜屋」を開業。見た目や味、栄養バランスを考えた料理を提案する。いつもは捨ててしまう野菜の皮や種を活用した「アース弁」を発表するとSNSで話題に。これまでにフルマラソンを8回完走した経験を持ち、女性限定のランニングコミュニティ「GO GIRL」の主宰も務めている。

・浅野さんInstagram

https://www.instagram.com/minami_asano/

・美菜屋

https://www.minayainc.com/

 

***

 

撮影/大童鉄平、文/田窪綾

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