まごころ出前 2016.01.26
\TBS『あさチャン!』で紹介されました/
アマノフーズの名物社員、島村雅人。フリーズドライ食品の開発に人生をかけて30年、世に送り出したヒット商品は数知れず。人は彼を“フリーズドライの伝道師”と呼ぶとか呼ばないとか。この『まごころ出前』は、そんな彼が全国の依頼主のもとへ「思い出の味」をフリーズドライしてお届けするというコスト度外視な企画です。
なぜ思い出の味=フリーズドライかというと、それには理由があります。
まずフリーズドライ食品は消費期限が1年以上と「保存性」の高さが特長。手料理だと通常食べられる期間が短く、運ぶのも困難なので特に遠く離れている人へ届けるのは難しいですよね。でもフリーズドライすることで物理的な距離をも越えられる!そんなメリットがあるのです。加えて「お湯だけでいつでも手軽においしく食べられる」こともポイント。お湯を注いだ瞬間にまず香りで、そして一口食べれば思い出の味が一瞬にして蘇る。唯一無二の“思い出の味”、まごころ込めてお届けしますよ!
今回の依頼人は、東京で雑誌のお仕事をしている川村しよりさん。3年前に仙台から上京し、現在は東京で一人暮らし中。取材や撮影などで忙しい毎日を過ごしているそう。
そんな彼女の“思い出の味”は、仙台の実家でよく食べていた「おくずかけ」と「ポトフ」。
しよりさん:「おくずかけは宮城県の郷土料理で、お盆やお彼岸の時によく食べる料理なんです。名産の温麺(うーめん)や豆麩(まめふ)、野菜などがたっぷり入っている汁料理の一種ですね。その家ごとに味付けや具が違うので、お店や他の家庭で同じ味は食べられないんです」
−まさに「実家の味」なんですね。ちなみにポトフは洋食屋さんなど結構どこでも食べられると思うのですが、川村家のポトフはどんな特長があるんでしょうか?
しよりさん:「他と大きな違いはないんですが、とにかく今まで食べたどのポトフよりもおいしい。母親は昔から料理が好きで、食材や調味料にこだわったり栄養バランスを考慮したりと、家族の健康に気を遣って食事を考えてくれていて。なかでもポトフは具だくさんで野菜をたっぷり食べられるので頻繁に食卓に登場していました。だから家庭の味というと“ポトフ”がまず思い浮かぶんですよね。今でも実家に帰省する時はよくリクエストします」
− へぇ!料理上手なお母さんとは羨ましい…。しよりさんはお母さんのレシピを東京で再現したりするんですか?
しよりさん:「ポトフは何度か挑戦してみたんですが、なかなか母親の味と同じように作れなくて。おくずかけは作ったことないですね…手間が多いし、温麺も東京では手に入れにくいので」
− お母さんの手料理を食べたくなる瞬間はありますか?
しよりさん:「一人暮らしで仕事も夜遅い時が多いので、東京に来てからはどうしても食事を外食やコンビニで済ませることが多くて。『最近栄養が偏ってるな〜 』と感じる時に、ふと母親の手料理を食べたくなりますね。実家にいる時は母親が栄養バランスを考えた食事をいつも用意してくれていたので。今思い返してみると、ありがたい限りですね」
なるほど!最近は特に自炊する時間が作れないというしよりさんのために、お母さんの味をお届けしようじゃありませんか!そして体も心も元気になってもらいましょう。
仙台は東京から新幹線で約1時間半と決して遠くはないものの、しよりさんは多忙のため帰省するのは年に1〜2回程度なのだとか。早速、川村家へ向かいましょう。
「お邪魔しま〜す…って、ん?」
先客…と思いきや、視線の先には見覚えのある青いジャンパー。
AMANO FOODS…
島村さんでした。
改めてご紹介しましょう。こちらの方は「アマノ食堂」の出前を担当している天野実業ABC開発室 室長の島村雅人さん。またの名を“フリーズドライの伝道師”。卓越した開発スキルとフリーズドライにかける熱い情熱を持ち、今まで数々のヒット商品を生み出してきたスゴ腕開発者です。
昨年末に放映されたテレビ番組『所さんのニッポンの出番』(TBS系列)で紹介されて話題になった「一人鍋」「チキンカツの玉子とじ」も、島村さんが生んだ大ヒット商品なんですよ。
仙台名物のずんだスイーツをいただきつつ、しばしの談笑タイム。この日は休日だったため、お母さんとお父さんが出迎えてくれました。早速「東京で頑張っている娘さんにお母さんの味を届けたい!」という想いを伝えると、快く作り方を教えてくれました。
キッチンでおくずかけ&ポトフの具材をチェックする島村さん。
ただレシピを教えてもらうだけでなく、実際の調理工程も拝見。なぜそこまでやるかって?それは、調理方法によっても全然仕上がりの味が違ってくるから。具材の大きさやカットの仕方など、忠実に味を再現するためには一つ一つ細かくチェックするのが大事なんです。
お母さんに「じゃがいもの皮を剥いてもらっていいですか?」と頼まれ、待ってましたといわんばかりの島村さん。調理はさすがお手のもの!テキパキと手際良く皮を剥いていきます。
※5分後
ちょっと面倒になったのか、お母さんに見つからないようにこっそり包丁からピーラーにシフトしていました。
一方ポトフの調理をガンガン進めるお母さん。
カットした他の具材(にんじん・玉ねぎ・セロリ)を鍋に入れしばし煮込みます。
その間におくずかけに取りかかります。川村家のおくずかけは、にんじん・ごぼう・大根・里芋などの根菜をはじめ、なす・油揚げ・こんにゃく・いんげん・豆腐…と具だくさん!季節によっても具材が変わるそう。今は冬なので根菜が多めです。
豆麩も欠かせません。
干ししいたけでとっただしを沸騰させ、具材を煮込みます。
おくずかけには、温麺と呼ばれる素麺の一種を入れます。具材と一緒の鍋に入れるご家庭もあるそうですが、川村家では具材と麺は別々に用意します。
「おくずかけって、もとは精進料理なんだよね。それが今だとポピュラーな料理になっていて、温麺の代わりに白滝を入れたりする家庭もあったり…」
島村さんがうんちくを披露する一方で、お母さんとお父さんは調理に夢中。
(じーーーーー……)
いよいよラストスパート!というところで、味見をさせていただきました。
こちらが完成間近のポトフ。おいしそう!隠し味に白ワインを入れているそうで、いい香りがキッチン中に漂います。
おくずがけは、茹で上がった温麺をお椀によそい…
上から、片栗粉でとろみをつけた具をかけてできあがり!こちらもだしのいい香り〜♪
…が、その時。
島村さんは悩んでいた。
「具が多いから難しそうだな…。あと、フリーズドライでの再現が難しい芋やこんにゃくもあるし…麺もどうしよう。別々にする?それとも一緒に入れて…う〜ん」
おくずかけはそもそも野菜がたくさん入っている料理なのですが、川村さん宅のおくずかけは特に具材多め。そしてフリーズドライ技術&お湯での再現が難しい具材(芋やこんにゃくなど)が入っており、極めつけは温麺の存在。島村さん、早速頭を抱えてしまいました。
悩んでいても始まらない!ということで、早速実食。
「うん!だしが効いていてウマい!とろみがあるから食べ応えもあるね」
人一倍味にうるさい島村さんもベタ褒め!「お母さんは料理上手」という事前情報はあったのですが、味付けの絶妙さに一同感動。毎日でも食べたいおいしさです。具材たっぷり&とろみもあって、栄養満点。干ししいたけでとっただしもしっかり効いています。
続いてはポトフ。川村家のポトフは「具材の大きさ」が特長。スープというよりは煮込んだ野菜が主役です。鶏ベースのスープにワインの風味&ローリエの香りがしっかり効いていて本格的!
「うん、ポトフも絶品!ローリエだけじゃなくて、セロリの味が出ていて洋食屋で食べるポトフのような感じだね。ブラックペッパーもちょうどいい。ただ、ただね…」
「こっちは具が大きいんだよ…困ったな…」
またまた悩んでしまう島村さん。
アイスでもりんごでも何でもフリーズドライ自体はできるものの、それをお湯で戻しておいしく食べられるようにするのが何よりも難しい。立ちはだかるさまざまな難題、果たしてクリアできるのでしょうか?
ちょっぴり落ち込み気味の島村さんのために、お母さん&お父さんが仙台名物の笹かまを出してくれました。
「ちょっ、ちょっ!お父さん!これすっごいおいしいんだけど!わ〜帰りに駅で買っていこうかなぁ〜♪」
よかった、元気が出たみたいです。
お母さん、お父さん、ご馳走様でした!
川村家をあとにし、その足で島村さんが向かったのは仙台市内の「杜の市場」。
(ウロウロ…)
(ウロウロ…)
どうやら、何かを探している様子。
ここ「杜の市場」は、東北地方で採れた野菜をはじめ、鮮魚・水産加工品から物産品までが揃う場外市場。31店舗ものさまざまなテナントが入っており、お買い物だけでなくイートインのお店もあるのでお食事に来る方も多いのだとか。新鮮でおいしい食材が手に入るということで、この日も大勢の人で賑わっていました。
とにかくお値段がお手頃!地元の人に愛されているというのもうなずけます。
その頃、肝心の島村さんは…
お店のスタッフの方と話し込んでいました。ひと際目を惹く、青と赤のジャンパー。「なんでだろう〜なんでだろ〜」のあのフレーズが脳内再生された瞬間です。
実は島村さんが探していたのは、川村家のおくずかけに使用していた温麺!なるほど、このためにここに来たのですね。お母さんの味を忠実に再現するためならどんな労力もいとわない。
他の食材も次々にGET!島村さんは全国各地に足を運んだ際、必ず地元のスーパーを訪れてその土地の食材をチェックするのだそう。そこで得たヒントを商品開発に活かしているんです。
帰りにこっそりハムカツを買い食いしていたのは、ここだけの話。
ある日のABC開発室。島村さんがおくずかけとポトフの調理を進めていました。
アマノフーズのフリーズドライ食品は、まず原料を調理してから凍らせ、真空状態で乾燥させて水分を抜くというプロセスを経て作られます。あまり知られていませんが、フリーズドライ食品は“調理”した原料を味や色合いを損なうことなく冷凍&乾燥させるので「作りたての手料理の味」を再現することができるんです。(詳しくはコチラ)
おくずかけ用の温麺。
その上に、調理した具材入りの汁をかけていきます。麺の茹で時間、具材の大きさ、味付けなど、少しでも間違えると想い通りに仕上がらないのでとても繊細なんです。
具材一つ一つの茹で時間も細かく計測。
じゃがいもひとつとっても、ベストな大きさや茹で時間を探るために細かく検証。
実はじゃがいもは最初に大きめにカットしてフリーズドライしたところ、うまく戻らず失敗。じゃがいものホクホク感を出すために少し小さくカットしてやり直しました。
調理した後は、容器ごと約−30度で冷凍。そして、凍ったおくずかけとポトフは「島村号」で何時間もかけて乾燥させます。
(島村号は、社内で唯一島村さんのみ使用が許されている専用の乾燥マシンです。キリッ☆)
この乾燥時間、ものによって半日〜数日かかるものまで実にさまざま。できあがってみないとわからないので、何度も改良を重ねながらベストな冷凍温度&乾燥時間を探っていきます。気が遠くなるほど長い道のりですね。
…そして、試作を開始してから数週間経ったある日。
ついに島村さんから「完成した!」という一報が。果たして、どんな仕上がりになったのでしょうか!?期待と不安を胸に、今回の依頼人であるしよりさんへお届けにいきました!
今回の依頼人、しよりさんへ「思い出の味」をお届け!出来映えが気になるところですが…
島村さんの表情からは相当な自信が伺えます。これは期待できそう!
ただ、密かに取材スタッフが気になったのは島村さんが持っているこのBOX。
ちっちゃい島村さんだ…
島村さんBOXを開けると…
中にはフリーズドライされたおくずかけ&ポトフが!
パッケージデザイン by 島村さんの敏腕すぎる助手・ミムラさん
しよりさん:「わ〜どんな仕上がりになっているのか楽しみです!」
じゃーん!こちらがフリーズドライ加工をしたポトフ(左)とおくずかけ(右)!
おくずかけで重要な温麺はどうなっているかというと…
下のほうに入っていました!それにしても、通常販売されているアマノフーズのおみそ汁と比べるとサイズがひと周り以上も大きい。今回のポイントでもあった具材のボリューム感、きちんと反映されていますね。早速お湯を注いでみましょう。
まずはポトフ。
これは、すごい…!!!
お湯を注がれた具材が一瞬にして戻っていきます。しよりさんも取材スタッフも一同「おぉ〜!」と思わず声が漏れてしまうほど。
続いておくずかけ。こちらもお湯を注いだ瞬間にほろほろと具材がほぐれ、だしのいい香りがふわっと漂います。本当にあっという間に具材が戻っていきます。
わずか10秒足らずで、どこからどう見ても「おくずかけ」になりました!具材は彩りなどを考えて少しアレンジを加えつつも、ごぼうやにんじんをはじめとする根菜類や、豆麩、油揚げなど見た目はまさに“川村家のおくずかけ”に近いものに仕上がっていますね。
しよりさん:「手品みたい…!あの固形がまさかお湯だけでこんな風になるなんて信じられません。いや、何かもう、びっくりし過ぎて…すごいです」
島村さん:「そうでしょ、そうでしょ!」
驚く表情を見て、島村さんも嬉しそう。
ポトフは、とにかく規格外の具の大きさ!従来のフリーズドライ食品の概念がひっくり返るほどに大きく、食材そのものの色もキレイに再現されています。
野菜も鶏肉も、これまで見たことがないほどデカい。ローリエもお母さんのポトフに忠実に丸ごとの葉入り。
ただ、具材が大きいとその分食材の食感が戻りにくいのも事実。それゆえ、フリーズドライする具材の大きさには限界があると思っていましたが、これはどうなのか?明らかに 親子丼に入っている鶏肉の数倍はあるけれど…
島村さん:「まぁ、とにかく食べてみてください。もっと驚きますから」
この表情。見た目だけではなく味にも相当自信がありそうです。
では、いざ実食!
しよりさん:「…うわぁ!おいしい!これ、実家のポトフの味だ。ブラックペッパーの効き具合もちょうどいいです。フリーズドライしてもこんなに具材の食感や香りが残るものなんですね。キャベツのシャキシャキ感とか、ローリエの香りとかすごい」
島村さん:「ローリエは丸ごと入れることで香り方が全然違うんですよ。お母さんのポトフにはウインナーが入っていたけど、ウインナー以外でもいろいろと使っているということなので、今回は鶏肉にアレンジさせてもらいました。こんなに大きな鶏肉をフリーズドライしたことはなかったからチャレンジだったけどね」
しよりさん:「あと、おくずかけはもっとすごいですね。このとろみと味付け!まさにうちの味です。とろみがあるからこれ1杯で十分な満足感があります。実は年末年始に実家でおくずかけを食べたんですけど、味がすごく近いんですよ。毎日でも食べれちゃいそう」
島村さん:「“とろみ”を出すのが難しくてね。今回は馬鈴薯を使ってとろみをつけたんですよ。あと豆麩も食感がお湯でなかなか戻らなかったから大変だったけど、ちゃんとクリアできたみたいでよかった」
しよりさん:「どちらも本当においしくて!お湯を注いだ時もびっくりしたけど、食べてもっとびっくり。味だけじゃなく目でも香りでも楽しめるのがいいですね。もう、大満足です!実家の味をいつでもこうしてお湯だけで味わえるっていうのは本当に嬉しいです」
想像以上に喜んでもらえて島村さんもホッとひと安心。
完成に至るまでにはたくさんの難題がありましたが、決して妥協しなかったのは「食べた瞬間に思い出が蘇るような“本物の味”を届けたい」という想いがあったからこそ。さすがフリーズドライの伝道師!これからもついていきます!
「島村さん、これ本当にすごいです!感動しました…!」
と、取材スタッフ一同が感動している隣で
ちょっぴり、心中穏やかではない島村さん。
(※注:ブラックペッパーを“つぶして”入れるのを忘れていた模様。ブラックペッパー自体はちゃんとポトフに入っていたのでご心配なく)
というわけで、今回も依頼人の“思い出の味”を無事お届け完了!次なるお題は果たして…。皆さんからのオーダーをお待ちしています!それでは、またアマノ食堂でお会いしましょう。
\どんな注文もおまかせ!/
アマノ食堂では、島村さんにまごころ出前してほしいという方を随時募集中!必要事項と理由を添えて contact@amanoshokudo.jpまでメールでご連絡ください。「思い出の味のフリーズドライを作ってほしい」「遠く離れたあの人へ手料理を届けてほしい」「何だかよくわからないけど、おもしろそう」など、どんな理由でもOK。海外以外はできるだけがんばって行きます!
——————–
【必要事項】
・お名前
・年齢
・職業
・電話番号
・お届けしたいor届けてもらいたい人との関係性(母親、息子、娘、恋人…etc.)
・お届け先(例)岡山県→東京都
・依頼したい料理
(例)岡山県に住む母親がつくる豚汁、遠恋中の彼女がつくる肉じゃがなど
・その料理にまつわるエピソード
——————–