まごころ出前 2016.03.21
アマノフーズの名物社員、島村雅人。フリーズドライ食品の開発に人生をかけて30年、世に送り出したヒット商品は数知れず。人は彼を“フリーズドライの伝道師”と呼ぶとか呼ばないとか。これまで全国の依頼主のもとへ「思い出の味」をフリーズドライしてお届けしてきましたが、今回のお届け先はまさかの火星…!?
村上さん：あ、訓練の参加クルーは全員で6名なんですが、日本人4名と外国人 2名なんです。そこをふまえて朝食を考えると、日本の定番メニューとして、焼き鮭や納豆があったら、どちらにも喜んでもらえるんじゃないかと思うんですが・・・。
やっぱり和食に欠かせない「焼き鮭」&「納豆」。島村さん、ちゃんと用意してきました。「焼き鮭」にお湯を注いで、いざ試食です！
金子さん：おっ！鮭の皮がパリパリとしていますね。
村上さん：本当だ！焼いた食感がしっかり出ていて、これは火星では ぜったい 嬉しい！
金子さん：お湯でもどしているから、皮もやわらかくなっているかと思ったのですが、この食感は不思議ですね〜。
（でしょ？よかった…よかった…）
食感も味も大好評！島村さんはご満悦です。
島村さん：鮭の皮に脂が多いからパリパリした食感になるんですよ。
金子さん：そうなんですね。あ、例えば塩麹に漬けた鮭もフリーズドライできるんですか？
島村さん：可能なんですけど・・・。皮の部分だけ戻らない可能性もあるんですよ。その場合は、漬ける時間とか蒸す時間を上手く調整しながら作っていくかたちですね。
村上さん：味噌漬けとか、アルコールが入っているものはどうなるんですか？今回のプログラム 、アルコールの持ち込み は禁止なもので…。
島村さん：アルコールは、水分が昇華した時に一緒にとぶから大丈夫ですよ。
続いては「納豆」を試食！島村さん曰く“ひきわり納豆“の方が元の状態に戻りやすいそう。タレの味付けや粒の種類にもこだわりが。さすが美味しさを追求する気持ちは誰にも負けません。
金子さん：普通の納豆とは違って、ねばりがさらっとした感じがしますね！
村上さん：外国 のクルー もこれのほうが食べやすいかもしれないですね。
日本人には欠かせない「焼き鮭」&「納豆」もフリーズドライならではの味わいを楽しむことができるんですね。フリーズドライ、改めてすごいです！
村上さん：焼き鮭&納豆があったら、白米も欲しくなりますね？
島村さん：白米も用意できますよ。フリーズドライにして持って行きましょう！あとね、商品として出しているしじみとあさりのみそ汁も。
村上さん：うわ〜！しじみもあさりも殻付きでしたよね〜。僕、 南極で越冬中に初めてこのしじみのお味噌汁飲んだんですよ！一見すると無駄に思う殻みたいなものが、南極では最高の心の贅沢でした。
島村さん：火星人もびっくりしちゃうかもな〜。
火星での和食トークで盛り上がる中、村上さんは何か気になるものを発見した様子…。
村上さん：これは一体…？
島村さん：それは、もずく酢（左）とめかぶ（右）だよ〜！磯くさいから、マスキング（他のよい香りや別の強いにおいで包み隠すこと） が大変だったんですよ。
村上さん ：このめかぶのとろみがフリーズドライでも楽しめるなんて、嬉しいですね。健康にも良さそうです。
火星めしの具体的なメニューについて、3人の意見も少しずつ固まってきましたが、皆さんお箸が止まりません。
…と、一息ついていた島村さんも何かを思い出した様子。（なぜかカメラ目線…）
島村さん：もう少しタンパク質を取れたらと思って、野菜とたまごをたっぷり使ったお好みやきもあるんだよ！
村上さん：見た目がいいですね。たまごのふわっとした感じが生きていて、ヘルシーなお好み焼きですね。
金子さん：やっぱり、野菜はいろんな種類があると栄養バランスがとれて良さそうですよね。
島村さん：そうだよね〜。野菜は素材そのものを活かして食べることができるし、自分でアレンジできるから良いよね。そういう調理も現地でも出来るように…。やっぱりさ、食材は本当に大事だよね？ってことで…。
こんなにたーくさん！しめじ、えのき、もやし、キャベツ、チンゲン菜。特別な処理をしてフリーズドライにしたのだそう。たくさんの時間をかけ、こだわり抜いて開発された島村さんの力作です。
島村さん：野菜炒めのイメージは、フライパンに入れた野菜に水かお湯をかけてもらって、それを炒め る感じ。1分くらいで調理できるよ。
村上さん：野菜の彩りが見た目にも良いし、しゃきしゃき感が残っていて美味しいですね！
島村さん：特別な加工をしたこのキャベツは、収縮されてコンパクトなサイズになるんだけど、お湯で戻すとワンブロックでもこんなにボリュームが出るんですよ。これは、名付けて“具が増えるキャベツ“。見た目はこんだけなのに、お湯をかけると量が増える！っていうね。
金子さん：味は変わったりするんですか？
島村さん：濃くなるんだよ。味も濃縮されますからね。前に生の玉ねぎをフリーズドライにしたら、細胞内の糖分が出てきちゃって大変だったんだよ～！甘味は増すけど糖でべちゃべちゃになっちゃって。あの時は本当にびっくりしちゃった！
島村さん：あとは、薬味だね。日常生活で冷蔵庫の中に大根・山芋・生姜とかを入れておいても、結局全部食べ切れなくてさ、捨てちゃうのもったいないな…って思うことあるでしょ？特に、宇宙空間では持ち込める食材に限りがあるわけだから、食材を最大限活かして料理のスパイスとして使えれば良いなって。どうかな？
村上さん：なるほど〜！それ、すごく良い考えですね。宇宙ミッションでは重量はもちろんですが、基地のスペースにも限りがありますからね。
村上さん：これは・・・大根ですか？お〜！これはすり下ろしやすいですね。
島村さん：パウダー状になるけど、水で戻せば大根おろしになるし。風味が出るから、おすすめですよ。
村上さん：うわ〜。これは喜ばれますね。
金子さん：これって、戻してからすり下ろすことはできないですよね？
島村さん：そうだね〜。大根がぶよぶよになってしまうから、戻した後のほうが良いね。
村上さん：自分で生の大根をおろして、何かにのせて食べると食器に汁が残ってもったいないな〜って思っていたんですよ。この方法なら、使った大根をまるごと食べて栄養もしっかり体に吸収できるような気がします。
金子さん：水で戻したほうが味の辛みが強いかもしれませんね。
島村さん：そうでしょ？大根も、種類とか使う部分によって味わいが変化するので、大根はね、奥が深いんですよ〜。
金子さん：うわ〜良いですね！生姜もやってみましょう！
島村さん：そうやってすり下ろして、パウダー状にすると生姜の香りが出てくる。しかも、生の生姜は酸化しやすいのに フリーズドライにすれば、日持ちするから良いんだよね〜。僕の中でもこれは特にイチオシですよ！香りづけにもどうかな？
村上さん：食材にまぶしたりもできるので、使い勝手が良いですね。閉鎖環境に長くいると、ついつい自分で何か味を足したくなるんですよ。 これは絶対ほしい！
金子さん：おもしろいですね〜！
島村さん：お湯で戻すと、風味がパッと広がるんですけど、水の場合は、じわっと香る感じ ですね。あとは、生姜焼きとかにも刻んだりできるし。
島村さん：あとね、塩辛もあるよ〜！これは、お湯で戻してみた。
村上さん：うん、まさに 塩辛ですね・・・美味しい。
島村さん：はぁ〜。お腹いっぱいになったな。塩辛食べたら、なんだか喉かわいちゃった。
島村さんが用意してくれたたくさんの試作品を食べて、お腹だけじゃなく期待感も満たされた一同。予想はしていたものの、塩辛はちょっと喉が渇きますね…。
島村さん：あのね、最後に実は…甘酒も持ってきたの（小声）
島村さん：この甘酒は、炭酸水で割っていただいて。カクテルみたいなイメージですね。今回 の模擬火星プログラム にはアルコールを持って行けないからね。フリーズドライにする時も3％以上アルコールが入っていると、膨張率が激しくなって真空状態にならないんですよ。なので、実際に持っていくのはノンアルコールの甘酒とかビールになるけど、このシュワシュワ感やほんのりとした香り、味わいを楽しんでもらえたら良いかな！
村上さん：確かにそうですね〜。火星でもぜったい仲間たちと 「乾杯！」したいですもん 。アルコールは禁止でも、せめて雰囲気だけでも味わいたいですよね 。
村上さん&金子さん：島村さん、今日はたくさんの試作品をありがとうございました！
さて次回は、3人で話し合った意見をもとに、島村さんが本格的に火星めしの開発に取り組む様子をお届けします。果たして火星めしは順調に出来上がるのでしょうか…？でも見てください！自信満々のこの笑顔！これはとっても期待できそうですね。それでは、また次回 をお楽しみに！
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