まごころ出前 2016.04.27
〜前回までのあらすじ〜
これまで全国の依頼主のもとへ「思い出の味」をフリーズドライしてお届けしてきましたが、次なるお届け先はまさかの火星…!?
さかのぼること数カ月前。島村さんのもとに、「アメリカ・ユタ州で行われる模擬火星訓練を想定したプログラムに参加するクルーのために、宇宙食をイメージしたフリーズドライ食品を届けてほしい!」という依頼が舞い込んできました。その後、当の依頼者である極地建築家・村上祐資さんとフードユニット「つむぎや」の金子健一さんと一緒に“火星めし”のメニューを考案。前回は、開発現場に戻って火星めしのフリーズドライに取り組む島村さんの様子をお届けしました。そして今回は、試行錯誤しながらもようやく完成した火星めしを届けるために、この3名が再集結!果たしてどんな仕上がりになっているのでしょうか!?
今回の目的は…アメリカ・ユタ州で行われる、有人火星探査を想定した2週間の実験生活に参加するクルーに、ついに火星めしをお届けすること!ようやく完成したということで、島村さん&村上さん&金子さんのお三方(名づけて“チーム火星めし”)が再集結したのです。
島村さん:前に3人で集まってから色んな試作品を作って、やっと完成しました!
さっそくだけど、見てくれる!?
形状や容量が決められた食器で出す“エコノミークラス”と、器や盛りつけにも可能な限りこだわった“ファーストクラス”の2種類のメニューをご用意。それぞれ朝・夜の各1食、合計4食分を並べてみると、こんなにたくさん。もちろん全部フリーズドライにしたもの!
村上さん:今回は、エコノミークラスとファーストクラスのメニューに違いを出すため、食器も別タイプのものを用意してきました!
エコノミークラス用の食器(写真・左)、ファーストクラス用の食器(写真・右)。特に、ファーストクラス用の器は、いずれ土に環るという環境に配慮して作られた「WASARA」の紙の器を使用することに。自然環境への負荷を最低限にする器とは…。これは、火星めしにもってこいですね!
前回、火星めしの開発の際に島村さんがこだわった“薬味”!長ネギ、大葉、三つ葉、菜の花など彩りのある食材が増えました。
島村さん:ファーストクラス用には、彩りある食材がもっとあって良いよね!器や盛りつけにもこだわるならさ。色々揃えておけば、素材として持っていって好きに使えると思うんだよね。
そうそう。今回の目的は、完成した火星めしをクルーにお届けすること。そこで今回の模擬火星訓練プログラムに参加するクルーを代表して、現地の食事担当を任された大学2年生の平木雅くんに来て頂きました!大学で園芸学を専攻し、「食と緑」に関わる学習に日々取り組んでいるという平木くん。これまでの村上さんの活動を知り、春休みを利用してプログラムへの参加を決めたんだそう。
——2週間のプログラムの中でどのようなことを行うんですか?
平木くん:アメリカ・ユタ州の砂漠にある基地を拠点に訓練を行います。6名で1チームになって、岩石や微生物のサンプリングを行ったり、それぞれの参加者が決めた研究テーマに沿った活動をしていきます。
——なるほど。今回“チーム火星めし”がエコノミークラスとファーストクラスのメニューを作ってくれましたが、火星に適した食事の提案や、チームの食にまつわる部分を担うにあたってどのような食事を想定していますか?
平木くん:まず、最初の5日間は現地で支給される食材や食器を使うんですが、6日目にエコノミークラスメニューを出します。その後の5日間は現地で支給されるものに戻して、最後にファーストクラスメニューを出す…というイメージです。ファーストクラスメニューを食べる日は、自分達でご飯を炊いたり、フライパンを使って食材を加熱したり、簡単な調理もできると聞いています。閉鎖環境の中で“食”の変化がどのような効果をもたらすのか、知りたいと思っています。
(頑張ってね!…え?平木くんってまだ20歳なの?いいなぁ…若いね〜)
●メインは白かゆ&帆立の卵とじ(写真手前・左から)
●シーチキンベースのポテトサラダ、しじみのおみそ汁、グリーンスムージー(写真奥・左から)
島村さん:やっぱり朝食に“お粥“って良いよね〜。平木くん!注ぐお湯の割合を変えて、五分粥とかにしても良いからね。
平木くん:確かに!わかりました!
金子さん:まず、最初にお粥を純粋に味わってから、“帆立の卵とじ“を上に乗せれば親子丼のように食べられますよね。
村上さん:そうですね!お粥と卵とじは分けておいて、自分の好みの割合で混ぜれば2種類の味を楽しめるからね。
金子さん:そうそう。いきなりドバッと卵とじをかけずに、好みの量だけ混ぜるとか。お粥の甘みと卵とじの旨味を味わうという感覚かな〜。
平木くん:なるほど〜!現地で試してみます。
村上さん:平木君の感覚で、使う水分の量を調節すると良いよ。宇宙空間で水はとっても貴重なものだから用途は慎重に考えてね。あくまで僕の経験上での話だけど、閉鎖空間にいると濃い味つけや香りが強いものを求めてしまうことがあるんだよね。塩分をとりすぎちゃうと喉が渇いてしまったり…。そのあたりは食事担当として調整しつつ、水分とのバランスを考えてね!
(村上さん&金子さんからの貴重なアドバイス。忘れないようにしっかりとメモ…メモ…。)
●メインは桜エビと筍の炊き込みご飯、とうふのおみそ汁、焼き鮭、玉子焼き、野沢菜漬け(写真手前・左から)
●切り干し大根、焼きなすとめかぶ、納豆、カルピス(写真奥・左から)
金子さん:この“焼き鮭“は、案出しの時に僕と村上さんも試食をしたんですけど、もう本当に絶品でした…!
村上さん:平木くんも向こうで食べたら感動するよ〜!
平木くん:何だか豪華ですね!食べるのが楽しみです。盛りつけのコツってあるんですか?
金子さんに火星めしをさらに美味しく味わうコツ&盛りつけのポイントを教えてもらいました!平木くん、真剣です。
金子さん:焼き鮭は水で戻すと皮の食感がパリっとしてちょうど良いんだけど、身の部分はキッチンペーパーで少し水分を取ってから食べると良いよ。
島村さん:そうだね。あと、やっぱり和食と言えば、“納豆”!30秒以内に戻るかな〜?僕の中では30秒以内に戻すのがポリシーなんだよね!納豆にはお湯を60mlくらい入れてね。タレを入れた状態でフリーズドライしているからそのままでもいい味だけど、もしちょっと物足りないなっていう時はこれを使ってみて!
ここで登場したのが、前回、島村さんがイチオシと言っていた『薬味』。おろし金でフリーズドライにした大根を擦りおろして水を注げば…なんと!“大根おろし”に。そのままお湯で戻せば“ふろふき大根”にもなるんです!
平木くん:すごい!これは、擦りやすいです。料理の味付けに使ってみます!
島村さん:うんうん(なんて素直な若者…感動)。あと“焼きなす”を戻す時は、お湯より水のほうがやけどしなくて良いかもな〜。“めかぶ”は水で湿らす程度でオッケー。味が薄かったら生姜を擦りおろしてスパイスにするのもおすすめですよ。(キリッ!)
金子さん:“切り干し大根”(写真・左)は、こんもりとに皿に盛りつけることを意識すると、さらに美味しそうにみえるよ。あと、“焼きなす&めかぶ”(写真・右)は、焼きなすを半分にカットして水分を絞っておくと、塩気が少しひいてちょうど良いと思う。先に焼きなすをお皿にのせて、周りにめかぶを少しずつかけていくイメージ。一気にかけちゃうと、焼きなすが見えなくなっちゃうから試してみてね〜。
平木くん:はい!覚えておきます。
村上さん:“玉子焼き“も白いお皿に映えて、彩りになりますね!
島村さん:うんうん(わかってくれてますねえ…感動)。玉子焼きはデンプンが多いから、食感が結構カリッとするんだよね。
平木くん:なるほど!ちなみに玉子焼きはお湯で戻すんですか?
島村さん:水を注いで、電子レンジで温めると芯が残らないよ。これポイント。
村上さん:朝食でこんなに栄養バランスがとれるのは良いですね。僕が以前プログラムに参加した時は、訓練や自分のミッションで忙しくて朝の時間も研究にあてていたんです。だから朝食の時間もあまりゆとりがなくて。食事に関しては夜のほうが時間をとれると思います。
——訓練中はそれぞれのミッションや研究を優先することもあり、食事にたくさんの時間を費やせないそう。でも、ほっと一息できる食事の時間こそ『火星めし』を食べて頑張ってほしい…そんな想いが込められた夜メニューの気になる仕上がりは!?
●メインは海鮮鍋、〆の雑炊としても使えるたまごスープ(写真手前・左から)
●揚げなすと青じそのにゅうめん、小松菜のゴマ和え、米麹と桜の甘酒(写真奥・右から)
島村さん:この“海鮮鍋“には帆立とカニも入っているんだよ。あと、“たまごスープ“を用意したからフリーズドライしたお米と合わせて〆の雑炊にどうかな?
平木くん:先に鍋を食べて、その後に雑炊って!本当に家庭のごはんみたいですね。
金子さん:海鮮鍋を食べた後、汁を少し残した状態でフリーズドライの米を入れて、たまごスープをかければ完璧ですね!
島村さん:あと、この“小松菜のゴマ和え“はおすすめなの!
平木くん:わぁ~。ゴマの良い香り…食欲をそそりますね。
島村さん:デザートの“甘酒”には桜のつぼみが入っているんだよ!アルコールは持っていけないから酒粕は使わずに米麹で作りましたよ〜。粒感があるけど甘みが効いていて、身体にもすごく良いと思うよ。ほんのり桜の香りもするからね!
——さりげなく日本の春を感じられる要素として『桜』をプラス。これを食後に飲んでひと息つけば、翌日の訓練も頑張れそうですね!
●メインは海鮮皿うどん(写真奥・左)、たこ飯、桜えびときざみ菜の茶漬け、あさりのおみそ汁(写真手前・左から)
●塩辛、帆立の巾着&ふろふき大根(写真中央)、ごぼうともやし、溶き卵、海鮮皿うどんのあん(写真奥・右から)
●デザートにシュークリーム&フルーツ添え
島村さん:たこ飯は現地で炊いたご飯と混ぜてもらって。
村上さん:火星人って元々はたこ型宇宙人なんです。だから、“たこ飯“は欠かせませんね(笑)。
金子さん:たこ飯良いですね。あと、茶漬けの上にフリーズドライ米を入れて、一見真っ白で何の具が入っているのかわからないサプライズメニューにしておきましょう!お湯を注いだら、桜えびときざみ菜が出てきて…「おっ!」と驚きを体験できるように。好みで溶き卵をかけても良いですね。
平木くん:なるほど!これは楽しい仕掛けですね。この巾着の中はお餅ですか?
島村さん:巾着の中は帆立。お湯をかけておでんのようにして、“ふろふき大根“と一緒に食べてね。イチ押しメニューですよ。
平木くん:お餅の代わりに帆立ってびっくりしますね。
島村さん:あと、これも見て!“ノンアルコールビール”もフリーズドライにしちゃった!雰囲気だけでも味わえたら楽しいでしょ?
平木くん:うわ〜。ありがとうございます。
金子さん:ふろふき大根と帆立の巾着の上に菜の花を添えれば彩りになりますね!この菜の花の味付けは塩ですか?
島村さん:うん!ほんのりと塩漬けにして。基本、野菜を戻す時はお湯の方が香りが残って良いですよ。
村上さん:こうやってみると、彩りがすごくありますね。僕が参加してきた訓練の、どの食事メニューとも比べものにならないかも。調理するにもピザやドリアとかで…。平木くん、羨ましいよ〜!こんなに栄養バランスのある食事が宇宙空間の食卓に並ぶって、本当にすごいことなんだよ。
ど〜ん!段ボール丸々3箱分というボリュームになりました!
平木くん:こんなにたくさん!ありがとうございます!
村上さん:宇宙空間では安全を確保することはもちろん大事だけど、単に“生き延びる”ためのごはんでなく、“生きている歓びを実感する”、食を楽しむためのごはんをこの火星めしを通して味わってほしいですね。
金子さん:みんなで火星めしを囲んで、食材の彩りや器の盛りつけとかも楽しみつつ…食事を通してほっと一息できる時間を過ごしてほしいです。
(ほっ…喜んでくれた。よかった!)
(平木くん、2週間火星めしを食べて頑張ってね!気をつけていってらっしゃ〜い!)
さすがフリーズドライの伝道師。平木くんにもとても喜んで頂けたようでホッと一安心。というわけで、無事に“火星めし“のお届けが完了しました。さて、次回はついに完結編。アメリカ・ユタ州で行われる2週間の模擬火星訓練から帰ってきた平木くんと再会します。果たして、現地で火星めしは美味しく食べてもらえたのでしょうか…!?
それでは、また次回お会いしましょう!
※本件の食材(フリーズドライ加工品)の海外への搬出については、日本火星協会の企画の枠組みにおける「個人による持込み」の形式をとっております。また、フルーツや野菜については、熱処理を施してあります。
\どんな注文もおまかせ!/
アマノ食堂では、島村さんにまごころ出前してほしいという方を随時募集中!必要事項と理由を添えて contact@amanoshokudo.jpまでメールでご連絡ください。
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【必要事項】
・お名前
・年齢
・職業
・電話番号
・お届けしたいor届けてもらいたい人との関係性(母親、息子、娘、恋人…etc.)
・お届け先(例)岡山県→東京都
・依頼したい料理
(例)岡山県に住む母親がつくる豚汁、遠恋中の彼女がつくる肉じゃがなど
・その料理にまつわるエピソード
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