読み物 2016.05.18
第8話「怒り爆発!お父さんと宅配便屋さん」
【登場人物】
おかっぱちゃん…28歳、イラストレーター。いつもふざけてばかりいる末っ子。趣味はひとり旅。
じょうや(父)…60歳、職人。力持ち、頼りになる人。明るいが短気な一面もあり。趣味は海遊び。
第8話「怒り爆発!お父さんと宅急便屋さん」
以前の記事で、わたしの父は「一度怒りのスイッチが入るととんでもない行動に走るタイプ」だということを紹介したのだけど、今回もそんな父の怒りのエピソードのひとつを紹介したいと思う。
わたしが20歳を過ぎた頃。
当時イラストレーターの卵だったわたしは、同じような境遇にある絵描きの友達が何人かいて、仲間内の展覧会を行き来することが多かった。
そんななか、専門学生時代から交流が続いていた先輩Mさんから展覧会のお知らせをもらった。「何か手伝えることがあったら言ってね〜」と話すと、早速Mさんからこんな相談があった。
「絵を描いた巨大なパネルがあるんだけど、一時的に預かってもらえないかな?」
よく聞けば、彼女は1人暮らしでアパートの部屋が狭く、新しい作品に取りかかりたくても今まで描いた絵が場所を取ってしまい困っているという。当時、実家暮らしだったわたしは両親に相談をしてそのパネルを一時的に預かることにした。
それからしばらく経ち、Mさんの展覧会まであと3日という時期になった。Mさんから連絡をもらい、巨大なパネルをギャラリーまで発送することに。そこで某配送会社に電話し、集荷をお願いすることにした。
「はい、こちら◯◯宅配です」
「あの〜すみません。集荷1点お願いします」
…電話を切ってから、4時間経過。
来ない。
午前中に電話を入れたはずの集荷サービス、もう時計は午後14時を回っている。
「来ないな〜。おかしいなぁ〜」と不安げな顔をしてぼやいていると、隣にいた父が「どうしたんだ?集荷が来ないのか」と声をかけてきた。「もう一度、電話してみるわ」と言い、再度電話をかけた。
プルルルルル!ガチャッ
「あの〜午前中に集荷をお願いしたものなんですけど、まだ来ないんです」
「あ!かしこまりました。ドライバーに確認をして折り返します」
それから1時間経過。電話はかかってこない。時間は15時を過ぎている。もう一度催促の電話を、今度は少し怒り気味でかけてみる。
「すみません〜まだですか?」
「あー!ごめんなさい。今ドライバーに確認しますね!」
「すぐにお願いしますよ〜?」
本当に集荷は来るのだろうか…。このままでは彼女の展覧会に間に合わないのでは…?さすがのわたしもこの状況に少しイライラし始めた。それからまた1時間待っても、依然電話はかかって来ない。
すると、いきなり父が大きな声で
「おい!まだ来ないのか!電話しろ!俺が話してやる!!!!」
これまでのやりとりを隣で静かに聞いていた父が突然怒りだしたのである。
あぁ…スイッチが入ってしまった。父の怒りメーターはMAX。鬼の形相で父は受話器を取ると、早速配送会社に電話をした。
「どうなっているんだ!こっちは午前中からずっと待ってるんだぞ!」
「あわあわ、申し訳ありません!すぐにドライバーを手配します!」
「すぐに来いよ!」
父の怒りは活火山のようにゴウゴウと音を立てている。
父が電話を切った5分後、ピンポーン!とインターホンが鳴り、超速でドライバーが集荷にやってきた。
「集荷に伺いました〜」
やってきたドライバーは何も知らされていない様子の爽やかなお兄さん。知らされていないのだから当然だが、悪びれた様子は特にない。これはまずそうだ…。
電話を切ってから興奮冷めやらぬ父は玄関に飛び出し、こう言った。
「帰れ!!バカヤロー!」
訳もわからないまま頭ごなしに怒鳴られ、びびりにびびった担当者は「かっ、帰ります…!」と走って逃げていってしまった。
「すぐに来い!」と言ったかと思えば、来たら「帰れ!」と追い返す父。配送会社にも事情があったのだろうが、父の怒りのパワー、恐ろしや。心の中で呟きながら、玄関に置き残された巨大パネルを前に呆然とするわたしだった。
次回は第9話「思春期到来!おかっぱちゃんの反抗期」をお送りします。
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