まごころ出前 2016.07.27
これまで数々のヒット商品を生み出してきたアマノフーズの名物開発者・島村雅人。フリーズドライ食品の開発に人生をかけて30年以上、人はそんな彼を“フリーズドライの伝道師”と呼ぶとか呼ばないとか…。この『まごころ出前』は、そんな彼が全国の依頼主のもとへ「思い出の味」をフリーズドライしてお届けする企画です。
前回は人気グルメ漫画『花のズボラ飯』(秋田書店)の原作者・久住昌之さんとコラボし、作中に登場するズボラ飯の再現に挑戦!さらにその前には、宇宙空間にフリーズドライ商品を届ける「火星めし」開発をまっとうするなど、島村さんは超のつく忙しさ・・・。そんな多忙を極める島村さんになり代わり、今回は筆者がしっかり現地をレポートいたします!
今回の依頼主は、神奈川在住のむねさださん。インハウスデザイナーとして働く一方、2012年から毎日更新している「むねさだブログ」を運営している人気ブロガーさんです!取り扱うジャンルは、ガジェット・グルメ・写真・子育てなど幅広く、丁寧な内容とキレイな写真で定評があります。興味があるものはとにかくやってみるをモットーに、大人になっても子供の頃の気持ちを忘れない“わんぱくブロガー”として活躍中。そんなむねさださんが届けてほしい“思い出の味”とは…?
むねさださん:生まれは広島なんですけど、大学時代は愛媛県の松山市で4年間過ごしたんです。そんな第二の故郷ともいえる松山には甘~い「鍋焼きうどん」があるんです。だしに少し甘みがあって、とってもクセになる味なので…忘れられないんですよね。
ー甘い「鍋焼きうどん」!?すごく気になります。
むねさださん:お店はいくつかあるんですけど、なかでもよく通っていた『手打うどん 七里茶屋』の鍋焼きうどんが本当においしくて。今は移転したそうなのですが…当時、東温(とうおん)市の桜三里という所にあったので松山市から往復1時間以上かけて鍋焼きうどん目当てに何度も通っていました。実は、大学時代に出会った僕の奥さんともよく一緒に食べに行っていたんです。
ーなんと!奥様との思い出の味でもあるとは。とっても素敵なエピソードですね。
むねさださん:大学卒業後は、僕だけ上京したので、数年は松山と東京間の遠距離恋愛だったんです。僕ら夫婦の思い出の味でもあるので、結婚して関東で一緒に暮らすようになっても、やっぱり「七里茶屋」の鍋焼きうどんが恋しくなりますね。
奥様との素敵なエピソードが詰まった思い出の味。責任を持って、むねさださんの元へお届けします!
ちなみに、むねさださんは以前アマノフーズが主催するイベントでフリーズドライ商品全200種類をGETした経験がおありということで、(詳しくはこちら)相当舌も肥えているはず。いつも以上にハードルが高い挑戦…。がんばり甲斐がありますね!
東京から飛行機で片道2時間…愛媛県松山空港に到着!むねさださんにとって、「松山空港」は、大学卒業後に松山—東京間で奥様と遠距離恋愛をしていた頃に、よく見送りに来てもらった場所ということで、甘酸っぱい記憶が蘇る場所なんだとか。そして、愛媛県は柑橘類の収穫量が日本一の“柑橘大国”だけに…
松山空港では、立派なみかんジュースタワーと、愛媛県の2大人気キャラクター「まっくう」「みきゃん」が仲良くお出迎え♪
JR松山駅から車で約10分。松山市政100年を記念して建立された「松山総合公園」。45万2500平方メートルもの広大な面積を持つ自然豊かなスポットで、四国、九州、沖縄に分布する“カクレミノ(ウコギ科)”や斜面温暖帯“ヤマザクラ”など、季節や地方ならではの木々や植物もたくさん!
そしてこちらの駐車場ですが……
むねさださんが初めて奥様にプレゼントを渡した場所は、なんとこの公園の駐車場なのだそう。
ちなみに園内の山頂にある展望塔は、ヨーロッパの城をイメージして造られており何ともロマンティック!松山市内を一望でき、夜景100選にも選ばれているのこと。筆者も汗だくでのぼった甲斐がありました。むねさださんご夫婦も訪れたことでしょうね。
ここからが本題…
伊予鉄道横河原線・松山市駅から電車で30分。東温市にある「横河原駅」に到着!
横河原駅は、伊予鉄道横河原線の最終駅ということもあり、電車の撮影目的で見学にくる方も多い駅なんです。早速「手打ちうどん 七里茶屋」に出発しましょう!むねさださんの思い出の味までもう少し。多忙を極める島村さんの代わりにしっかりとレポートしてきますよ!
ん…?ホームの奥から聞き覚えのある声。
ひときわ目をひく、この青いジャンパー!本当に島村さんでした。
冒頭でもご説明したとおり、「究極のスボラ飯」や「火星めし」開発で多忙を極めていた島村さん。2大プロジェクトが無事に終わったとはいえ、休む暇なんてないはずなのに…
「やっぱさ、むねさださんが絶賛する鍋焼きうどん食べてみたいじゃない…?」
横河原駅から歩いて12分。こちらが、むねさださんの思い出の味、甘い「鍋やきうどん」があるお店。
情緒ある暖簾をくぐると…
座敷とカウンター席のある広々とした店内。スタッフの皆さんも温かく出迎えてくださり、とってもアットホームな雰囲気です。
カウンター席にあるランプは、砥部焼(とべやき)という愛媛県指定無形文化財である陶磁器で作られているものだそう。主に、和食器としても使われることが多いのだとか。このような細やかなこだわりこそ、居心地の良い空間を作り出す秘訣なのかも。
厨房からは、笑顔が素敵なお店のご主人・近藤さんが出迎えてくれました。
満遍なく伸ばした生地に打ち粉をふって…
生地の厚みが3mm〜4mmになるように仕上げて…
ガラス越しで見ていたはずが、いつの間にか近藤さんの背後から見つめている島村さん。
折り目が重ならないように、慣れた手つきで屏風折りにします。40年近く、毎日手打ちうどんを作っている近藤さん曰く「生地を作る際に、中力粉に混ぜる水の量や塩の濃度、麺を茹でる時間が違うだけで味や麺の食感が変わる。どこまで手作業にこだわっていくか、長く愛される本物の味を作り出すことが大事!」とのこと。
「今までの出前は家庭料理が多かったからね。お店の味忠実に再現できるかな…。今回はかなりの難題だよ」と珍しく弱音をポツリ…。
周りが心配したのも束の間、よ~く見ると視線はメニューに釘付け…!
やっぱりいつもの島村さんでした。
見て下さい。さっきまで本当に落ち込んでいたのか疑いたくなる、この島村さんの生き生きとした表情を。
むねさださんの思い出の味「鍋焼きうどん」の他にも、天ぷらうどん、肉うどん、いなり寿司…。
※むねさだんの思い出の味は「鍋焼きうどん」ですよ
ねぎ・ごぼう・しいたけ・牛肉・卵・かまぼこ・油揚げ。上にはドーンっと大きなエビ天までのっていて、食べ応えたっぷり!
見ているだけでも食欲がそそられますね。
ズズズ…
「うっま〜い。なるほど…むねさださんの言う通り、鍋焼きうどんが甘い!単に、だしの甘みだけじゃなくて…牛肉も甘く煮てあって。具材の一つ一つの味もしっかりしている。丁度良くだしと絡まっていて、おいしい〜」
今回の開発では、このだしの甘みと麺のコシの再現、フリーズドライした具材が水分でちゃんと戻るのかという点が難題とのこと。なかでも“エビ天”は衣しか戻らない場合があるので、フリーズドライにする時には、「エビを平たく裂いてから調理するかなあ…」とのこと。思い出の味を忠実に再現するため五感を働かせて、出来がりのイメージを膨らませる。やはり、フリーズドライの伝道師の腕は侮れません。
熱々の鍋焼きうどんをもの凄い勢いで完食!
「今日みたいな暑い日は冷たい麺も食べたくなるよね」
ということで、もう一品…
※むねさださんの思い出の味は「鍋焼きうどん」ですよ!(2回目)
5月中旬〜9月限定の「大麦若葉冷やしそうめん」。なんと、大麦若葉粉末を練り込まれた“生そうめん”なんです。
いざ、実食してみましょう!
「生そうめん、食感がモチっとしていておいしい!すっとお腹に入るから、箸が止まらない…」と、どんどん食べ進める島村さん。店主の近藤さんによると、実はこちらのメニューを開発する前は、コーヒーやみかん、いちご、よもぎなど様々な食材で試行錯誤したのだそう。
「よもぎは繊維が強すぎて練り込んでも麺が切れなかったので、大麦若葉にして商標登録した結果…ここでしか食べられない味ということでリピーターのお客さんが増え、人気メニューになりました」とのこと。
「いや〜、本当においしかった…」
気付けばすっかり仲良しに…。至れり尽くせりのおもてなしをして頂き、感動の一同。島村さんの胃袋のように懐の大きな近藤さんご夫婦、本当にごちそうさまでした!
「手打ちうどん 七里茶屋」がオープンしたのは、昭和53年の7月。元々、松山市中心街から車で30分ほど国道11号線の桜の名所として知られる“桜三里”の緑豊かな名所にあったそう。
店主・近藤さんの義理のお父様がオープンしたカレー専門店「ブルドッグ11(写真・左)」の横に、「手打ちうどん 七里茶屋(写真・右)」があった桜三里時代の写真。
「七里茶屋」という店名の由来は、松山から諸地方への里程が札之辻を起点にして数えられており、桜三里にあったお店までちょうど“七里”だったことからお店の名前に入れたという素敵なお話を教えて頂きました。
お店の前には石碑もあり(写真・下)、一緒に写っているのは近藤さんご夫婦の娘さん。桜三里から現在の場所・横河原に移転したのが7年前(平成21年の7月23日)。むねさださんが通っていた桜三里時代から数えると、38年になる歴史のあるお店なんです。
島村さん:正直、お店の秘伝のだしやコシのある麺の食感を忠実に再現するのって今までにないくらい難題だなぁって思っているんですよ。長く愛された味をどう作ろうかなって。お店の秘伝の味やその地域の嗜好や調味料とかもあるので…。
近藤さん:うちの味をフリーズドライにして届けるってすごく面白くって、すごいなぁ…って思ったんです。知人とも、最近の冷凍食品やフリーズドライ商品はおいしくて、侮れない技術だなって話題にしていたんですよ。
近藤さん:これまで、うちの店も色んなことを試行錯誤してやってきましたけど、どこも真似できない“本物の味”を作ったら、きっと息が長いんです。移転しても、周りに新しい店が出来ても、20年…30年通ってくれるお客さんがたくさんがいて。
島村さん:本物の味…そうなんですよね!ご主人と話をしたら、何だかやってみようってやる気がさらに湧いてきましたよ。ご主人の味を再現するためには、油揚げは色づけに黒糖を使って甘さを出したり、卵はかき玉をブロック状にしたり、色々試してみようかと。さっき、食べながら考えていました。無理難題って思われているものを、フリーズドライにしてお届けするのが僕の仕事なのでね(キリッ☆)
島村さん:あと、これは僕が30年前に開発した「しじみのみそ汁」なんですけど…。ぜひ食べて頂きたくって。
近藤さん:お〜、しじみの殻も入っているんですね。これはすごいなぁ〜。
島村さん:あ〜、よかった。本物の味を作るために仕事をしているので、僕も近藤さんに負けられません(笑)。お店のこだわりの味を忠実に再現して、むねさださんにお届けできるように頑張ります!
今回、撮影にご協力頂いた「手打ちうどん 七里茶屋」の近藤さんご夫婦、スタッフの皆さん、本当にありがとうございました!
さて、次回は島村さんによる「鍋焼きうどん」のフリーズドライ開発現場をじっくりとご紹介します。無事に依頼主のむねさださんにお届けできるのでしょうか… !? それではまた、アマノ食堂でお会いしましょう。
撮影協力/手打ちうどん七里茶屋
\どんな注文もおまかせ!/
アマノ食堂では、島村さんにまごころ出前してほしいという方を随時募集中!必要事項と理由を添えて contact@amanoshokudo.jpまでメールでご連絡ください。
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【必要事項】
・お名前
・年齢
・職業
・電話番号
・お届けしたいor届けてもらいたい人との関係性(母親、息子、娘、恋人…etc.)
・お届け先(例)岡山県→東京都
・依頼したい料理
(例)岡山県に住む母親がつくる豚汁、遠恋中の彼女がつくる肉じゃがなど
・その料理にまつわるエピソード
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