対談 2016.07.26
片桐仁さん×やついいちろうさん|今、大活躍中の2人が語る!ここぞという日の「勝負めし」
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- 片桐仁
- 1973年生まれ。埼玉県出身。多摩美術大学在学中に小林賢太郎と共にラーメンズを結成。以後舞台を中心にテレビ、ラジオ、粘土創作など、様々な分野で活動している。代表作は、舞台「ダブリンの鐘つきカビ人間」「BOB」、映画「UDON」など。現在、不条理アート粘土作品展「ギリ展」全国イオンモール 10会場にて開催。NHK Eテレ「シャキーン」、TBSラジオ「エレ片のコント太郎」にレギュラー出演中。
- 片桐仁 Twitter
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- やついいちろう
- 1974年11月15日生まれ。三重県出身。お笑い芸人「エレキコミック」のボケ担当。芸人としての活動の一方で、DJとしても活躍しており「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」「COUNTDOWN JAPAN」といったロックフェスに出演し、人気を博している。自身でもお笑いと音楽を融合させたフェス「YATSUI FESTIVAL!」を主催するほか、音楽好きで友人も多く、お笑い界一音楽業界に顔の広い(?)芸人とも言われている。エレキコミック第26回発表会「金星!!」が10月6日(木)より、本多劇場(東京)を皮切りに名古屋・大阪・福岡で開催。12月28日(水)、年忘れイベントとして「エレ片 IN 両国国技館」を東京・両国国技館で開催する。
- やついいちろう Twitter
アマノ食堂に訪れる、お客さんの“おいしいお話”をお届けします。今回の対談テーマは、仕事を楽しく乗り切るための「勝負めし」について。
ゲストは、粘度造形をはじめアーティストや俳優としての顔も持つラーメンズの片桐仁さんと、ロックフェス『YATSUI FESTIVAL!』を主催し、DJとしても活躍するエレキコミックのやついいちろうさん。芸人としてはもちろん多方面でも活躍するお2人の出会い、『エレ片』として共に活動を行う現在に至るまでの裏話、そして大事な仕事を乗り切る“勝負めし”を教えていただきました!
—学生時代から長年のお付き合いというお2人。出会った頃のお互いの印象は?
出会いは大学時代のお笑いライブ
その後、お互いプロの道に
(やついいちろうさん)
初めてやついと会ったのは1995年だから…20年以上前かな。その頃、僕と相方の小林賢太郎は多摩川美術大学に通っていました。
大学対抗のお笑いライブで知り合ったんです。その代表の選抜メンバーで集まって、みんなでライブをやろうってことになって。当時、2人とも八王子に住んでいて、その日は一緒に580円のソースカツ丼食べて帰ったよね。
え〜!値段まで覚えてるの…!?
覚えてるよ、八王子の『かつや』ね。片桐さんとはそこからの付き合いだよね。最初は、「変な人だな〜。よくそんな顔で生きていけるな〜」って印象だった(笑)。
それはお互い様だから!僕もやついに「顔…なんかすごいっすね〜」って言いましたから。
「わ〜こんな人間いるんだなぁ」って。その頃から、きっとこの人は一生このままなんだろうな〜って思ってた。
当時はお笑いライブで他の大学に行くのって、すごく珍しかったんだよね。そもそも多摩美がまったくそういうことをしてなかったし。あの頃はネットもなかったから、他校でこんなにたくさんの人がお笑いをやってるなんて知らなかった。だから、ライブをきっかけにお笑いをやっている奴と知り合えることが嬉しかったな。
当時はラーメンズの2人が絵を描いたり、個展をやっているのを見ていてすごく面白かったけどね。賢太郎が卒業制作のために部屋で一生懸命描いているのを見て「頑張れ〜」って応援したり。そういう経験ってなかったから新鮮だった。そこから学生時代のお笑いライブがきっかけで、今の事務所に入って…。エレキコミックとしては、大会で優勝したのが大きな転機だったかも。
その点、ラーメンズは何も賞が取れなかった。いつも予選で負けちゃうし…。
でも、その割に事務所からの評価は高くて、別格扱いされてたじゃん!年齢は1つ上だけど、事務所に入った時期は同じだったのに。
そうかな?で、他にはどんな印象?
すごく格好つけてる印象(笑)。
そんなことないでしょ。
いや、あるよ。めちゃくちゃ格好つけてた(笑)!まぁでも振り返ってみると、付き合いは本当長いよね。事務所も同じでコンビ同士も仲良かったから、片桐さんとエレキコミックで『JUNKサタデー エレ片のコント太郎(TBSラジオ)』で一緒に番組を持つようになったり。
—出会ってから約20年、『エレ片』としての活動も今年でちょうど10年という節目の年。お2人がお互いに尊敬している所はありますか?
片桐さんの
「純粋な子供のような強さと素直さ」
(やついいちろうさん)
そりゃあもう…いっぱい尊敬してる所はありますよ!
片桐さんは、本当に運がいいんですよね。こんなに順調にいく人って他にいるのかなぁって思うくらい。あとは、自分の機嫌とか、全てに対して素直なところも(笑)。機嫌が悪い時はすごくわかりやすい。自分で自分を律せないんですよ。普通の大人は「そんな風に振る舞いたくない…」って律せるのに、良い意味でそのまま。
それ、尊敬してないだろ!
いや、そんな人なかなかいないじゃん?本当に珍しいなって。だからみんなから面白がられたり、いじられたりする。人への腹の見せ方がある意味、純粋な子供の強さっていうか。周りからも攻撃されないし、もし攻撃されても攻撃した側が損をする(笑)。そこは本当に羨ましい。
やついの「自分で仕事を切り開いていく行動力」はスゴい
(片桐仁さん)
うちの相方もそうなんだけど、やついは“自分で仕事を切り開いていく人”だなって。本当にそれに尽きると思うなぁ。例えば、メルマガで毎週記事を書いて、ラジオでコンテンツを出して、DJとしても活躍してて…それ全部自分でやってるじゃない。もう事務所いらないんじゃない?って思うくらい。
元々音楽が好きだったというのもあるけど、曽我部恵一さん(シンガーソングライター)と出会ったのがすごく大きい。
だって、曽我部さんとの出会いだって、学生時代にいきなり駅で「連絡先を交換してください」って自分から話をかけて、連絡先を交換したんでしょ?普通だったらできないわ〜。
そうそう。でも、自分からそういう行動をしたことって後にも先にも2人だけだよ。もう1人は、演出家の宮沢章夫さん。本当に好きな人にしか話かけられないんだよね。基本的に、他の人には心を閉ざしてる(笑)。
自分で行動して好きな人と一緒に仕事をしてるって、すごいことだよ。
そうだね。DJを始めたのは曽我部さんに勧められたのがきっかけだし。6月に開催したロックフェス「YATSUI FESTIVAL!」も今年で5回目だったんだけど、これも「そろそろやってみたらいいんじゃない?」って曽我部さんに言われて始めたんだよね。今思えば、冗談だったのかもしれないけど、そういう人との出会いが今につながっていると思う。
やついがイベントをやると、後輩芸人やミュージシャンの友達が出てくれたりするよね。自分で作ったつながりから全てが始まっているので、面白いなって思います。僕自身は、演劇や芝居の仕事をするなかで「これからはこういう芝居の仕事もやっていくんだなぁ…」って、ふと思うこともあるんですけど、やっぱり現場で才能がある方をたくさん見ていると、あそこまでは出来ないなって思う。アートやお笑いに関してもそう。他にもスゴい人や面白い人がたくさんいることはよく知っていますからね。自分は何をやっているんだろう?と思うこともありますけど、今はどの仕事も全般的に楽しくやらせてもらっています。
—アーティスト・俳優としての顔を持つ片桐さん、エンターテイメントフェス「YATSUI FESTIVAL!」の主催やDJとして活動も行うやついさん。多方面で活躍されるお2人がこれまでに一番緊張したお仕事と、自分の気持ちを高めるための“勝負めし”を教えてください。
一番緊張したのは、2010年の「キングオブコント」の決勝かな。やっぱりお笑いの仕事が一番緊張しますね。ネタをやる時は、絶対にミスしたらいけない部分が必ずあるので、常に緊張する。他の活動は趣味から始まっていて、好きなことだから仕事っていう感覚ではないんですよ。だから緊張はしない。さすがに初めて行く現場は気を使いますけど。
僕は、初めての現場はだいたい緊張していますね。台本なしの即興ドラマに挑む『スジナシ(CBC・TBS系)』に出演した時は、打ち合わせなしで、ぶっつけ本番で演じるっていう内容で。何も準備できなくて、終わってからも緊張が解けなかった。あと、2008年にTVアニメ『TIGER&BUNNY』で声優をやらせてもらった時も。プロの声優のそうそうたる方々と共演して…。でも、ラーメンズの舞台よりも緊張することってないかもしれないですね。先月、『小林賢太郎テレビ8』で7年ぶりに共演して。
みんなで「小林賢太郎テレビ8」の放送も見たんでしょ?
そう。メンバーやスタッフが全員集まって、打ち上げも兼ねてオンエアを生で観たんだよね。
エレ片の決起集会は
赤坂の『トンちゃん』が恒例
(片桐仁さん)
緊張をほぐすというか…勝負めしと言えば「エレ片」でコントライブをする時に、よく行くのは『トンちゃん』ですね。日本初のサムギョプサル専門店なんですよ。
そうそう!TBSの近くにある赤坂の『トンちゃん』ね。
本番に差し掛かるちょっと前に、必ずスタッフを含めてみんなで行く。
時間を見て「ちょっとまだトンちゃん行くのは早いか〜」って言いながらね。ちゃんとタイミングもあって。
毎年稽古が終わって、そろそろ本番だ〜って時に「始まるぞ!」って気を引き締める意味を込めて、決起集会みたいな感覚だよね。稽古の合間でも、おいしいものを食べることは気合いを入れるためにもやっぱり大切。
“食”は仕事への
モチベーションに直結する
(やついいちろうさん)
食事って喜びにものすごく直結してると思うんですよ。ずっとネタを考えて稽古をしていたら本当に面白いのかわからなくなるし、モチベーションも下がってきますからね。おいしいものを食べるとテンションが上がって、これはいけるんじゃないかって空気が漂ってくることもあるから。
特に、やついはグルメだからね。おいしい店たくさん知ってるでしょ?
正直…めちゃくちゃ知ってる(笑)。最近、おいしい店はとにかく全部予約しておくんだよね。誰か必ず行きたい人がいるから、自分が行けない時は「予約取れたけど行く?」って周りに聞いて譲ることもある。そうすると、食に詳しい仲間が増えてきて誘われるようになったり、おすすめの店を教えてもらって、またそこからつながりができることもある。
なるほど。
ただね、中途半端なものは食べたくない。とことんリーズナブルでおいしいものか、ドーンと高級でおいしいものか、その2択のみ。ちょっとおいしくてほどほどに高級っていう中途半端なのが一番嫌い(笑)!
いいじゃん、ちょっと高級なものを食べたってさ。
イチ押しは
『ゆきだるま中野部屋』のジンギスカン
(やついいちろうさん)
中野に元力士がやっている『ゆきだるま中野部屋』っていうジンギスカンの店があるんですよ。4500円でジンギスカン食べ放題&ドリンク飲み放題で。食べ放題なんだけど、味もめちゃくちゃおいしい。
それ、みんなすごい量食べちゃうでしょ!現役の力士も来ちゃうんじゃない?
力士だけじゃなくて、プロレスラーも来てるよ。ちなみにその店の向かいに、元力士がやっている「ごっつハンド○中野部屋」っていう整体の店もある(笑)。
うわぁ〜、中野ってすごく力士づいてるなぁ。
ジンギスカンがとにかく大好きで、週1ペースで食べてる。あと、中野つながりでいうとその「ゆきだるま中野部屋」の近くにあるお店『丈ちゃん』の焼き鳥もおすすめ。口コミサイトでもすごく人気みたいで、いつもお店はお客さんでいっぱい!
おいしいって噂を聞いたら行きたくなるよね。あと、地方もおいしい食べ物いっぱいあるしね〜。東北はどこに行ってもおいしかったなぁ。特に青森のホヤ、マグロ。あと馬刺し!
北海道でもジンギスカン食べたなぁ。
またジンギスカンかよ!
中野で食べれるからいいや…って思ってたら、また違うおいしさで。北海道にある『のざわ』は、ジンギスカンはもちろん他の肉もすごくおいしかった。
さすがグルメだねぇ。海外は?
印象に残ってるのは、香港で食べた「米線(マイシン)」っていう激辛麺かな。今まであらゆる辛い料理を食べてきたけど、その中でも断トツで辛かった。自分は激辛料理に結構強いって思ってたけど、中辛にしたのに全然食べられなくてさ…!
家族で育てているじゃがいもで
“ポテトチップス”を作ることも
(片桐仁さん)
お店にいる他の人はどうなってるの?
みんなは普通に食べてる。
その店に来る人は、きっと辛さに強いんだな。中毒性があるのかも。
あと、台湾で食べたB級グルメの「麺線(メンセン)」は本当においしかった。 こっちは辛くなくて、鰹節のだしと細麺で、ホルモンが少し入っていてパクチーが上にドーン乗ってる。日本でも御成門に麺線の専門店『台湾麺線』ができたみたい。で、片桐はどうなの?
俺は外食より家庭菜園にハマってて。自宅の庭で野菜を育ててるんだけど、採れた玉ねぎ・なす・にんじんでおみそ汁を作って食べたり。去年は“大凶作”だったから今年は色々準備してる。収穫したじゃがいもを使ってポテトチップス作ると、子供がすごい喜ぶのよ。基本、奥さんが作っているのを横から見ているだけなんだけど。
片桐さんってそういうところもちょっと変わってるよね。『シャキーン(NHK Eテレ)』(※お2人がキャラクターの声優として出演中)の楽屋でさ、いつもお弁当を一口だけ食べて、そのまま残して…2〜3時間ボーっとしたら、またその残りを食べ始めるでしょ。あれ何なの(笑)。
それに関して言わせてもらうと、僕はいつも朝ごはんを食べてから現場に行くんですよ。だから昼の12時くらいだとまだあんまりお腹が空いてないの。でも、温かいのを一口だけ食べたいし、20時くらいまでごはんがない。途中でおやつタイムもあったりするんだけど、「何かしょっぱいものが欲しいな〜」って時に食べかけの弁当が意味をなしてくるわけ。これが僕のルーティン。10年も一緒にやってるんだから、わかるでしょ?
それ、一番お母さんに怒られちゃうやつだね。
—お互いを知り尽くしているだけに終始息がぴったりのお2人。最後に、今後の「エレ片」としての活動と個人でのお仕事に対する想いをお聞きしました。
子供も楽しめる粘度作品展
「ギリ展」をさらに大きく
(片桐仁さん)
エレ片としては、今年の12月28日(水)に年忘れイベントとして『エレ片 IN 両国国技館』を東京・両国国技館で開催するんです。
今年でちょうど10周年を迎えますね。
集大成でもありますから、何とか成功させたいなって思っています。
個人の活動としては、全国のイオンモール10会場で開催予定の不条理アート粘土作品展『ギリ展』を行っています。5月からスタートして、埼玉と名古屋が終わったところなんですけど、8月は京都、秋からは広島、高知で開催します。会場内では子供や親子で楽しめる「親子でねんど道」というワークショップも行っているので、今後も続けていきたいですね。今年や来年にかけて、さらに大きくやっていけたらなぁって思っています。
仕事も趣味も
とにかく楽しく続けていくことが大切
(やついいちろうさん)
個人的にはDJとして夏フェスで全国各地にも行きますし、エレキコミックのコントライブもあります。年末のエレ片のイベントも、両方しっかり固めていきたいって考えていますね。あとは、時間を見つけて海外を旅行するとか、とにかく生活…いや、人生を充実させたい!富士山にも、麓から6合目まで登ったことがあるんですけど、今度は頂上まで登りたいなぁっていうのも目標の一つ。何事もとにかく楽しく続けていくことが大切ですね。
—さて、お話は尽きませんが、そろそろ〆のお時間!本日の〆の一品は、野菜スムージーで煮込んだ「畑のカレー 野菜と鶏肉のカレー」です。
カレーがフリーズドライになってるんだ!すごいねぇ。
うお!お湯で戻ってカレーになるなんてお洒落だな〜。こういうの大好き。ブロッコリーもヤングコーンもシャキシャキでおいしい。
名前が畑のカレーだからね。野菜たっぷりだな~!
(カレーが大好きというやついさん。取材当日に着ていたTシャツにも「YES CURRY RICE」の文字が !)
(片桐さんは、ご自身も出演する映画『TOO YOUNG TO DIE!若くして死ぬ』のTシャツ。作中に登場する”鬼Phone”と”鬼Pad”も実は片桐さん作!)
ちゃっかり映画の告知してるじゃん(笑)!それにしてもこのカレー、本当に味が濃厚ですね。この容器も一緒に付いてるのもすごくいい!
うん!パンともすごく合う。ごちそうさまでした!
—楽しいトークをありがとうございました。またのご来店をお待ちしています。
撮影協力/G-style 渋谷南口店
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