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伊藤まさこさん×冷水希三子さん|心地いい暮らしのスタイリング術。頑張りすぎず、楽しむことから始めよう

伊藤まさこと冷水希三子
  • 伊藤まさこ
    伊藤まさこ
    1970年横浜生まれ。料理や雑貨など暮らしまわりのスタイリストとして雑誌や書籍で活躍。自他ともに認める食いしん坊。おいしいものを探して日本の各地、海外へと飛び回っている。著書に『ザ・まさこスタイル』『白いもの』(マガジンハウス)、『あした、金沢へ行く』(宝島社)など多数。お弁当を作る楽しさ、食べる嬉しさを1冊にまとめた『おべんと帖 百』(マガジンハウス)も発売。ほぼ日刊イトイ新聞にて「伊藤まさこのおべんと帖 ニ〇一六」を連載中。
  • 冷水希三子
    冷水希三子
    料理家/フードコーディネーター。季節の素材を活かした料理を心がけ、雑誌や広告で活躍。『ONE PLATE OF SEASONS 四季の皿』『ハーブのサラダ』(ともにアノニマ・スタジオ)、『ちょっと贅沢なおもてなしレシピ(家の光協会)』、『おいしい七変化 小麦粉』『WECK COOKING』(ともに京阪神エルマガジン社)などがある。
伊藤まさこ冷水希三子

 

アマノ食堂に訪れる、お客さんの“おいしいお話”をお届けします。今回の対談テーマは、日常に寄り添う「くらしの友」について。

ゲストは、料理や雑貨など暮らしまわりのスタイリストとして雑誌や書籍で活躍中の伊藤まさこさんと、季節の素材を活かした料理を心がけ、フードコーディネーターとして雑誌、広告を中心に活動している冷水希三子さん。お2人が「食」の仕事に携わるようになったきっかけや、日々の暮らしをより楽しむための秘訣を教えていただきました。

 

—料理や暮らしにまつわるお仕事をされているお2人。ちょうど1年前に初めて一緒にお仕事をされたのだとか。

伊藤まさこと冷水希三子

一緒にお仕事をしたのは、ちょうど去年の夏ですね。

スイーツをテーマに、中川たまさん、青山有紀さん、久保田由希さんの3名の料理家の方と一緒に共著『WECK COOKING Sweets(京阪神エルマガジン社)』の撮影をしていて。その本のスタイリングをまさこさんに担当して頂いたんです。私は、「果物を使った簡単スイーツ」をテーマに作りました。夏の暑い撮影現場にまさこさんを閉じ込めて…あの撮影は大変でしたね(笑)。

そうそう。あれからもう1年が経ったなんて、本当にあっという間。キンコちゃん(冷水さんの愛称)が撮影の合間にまかないを作ってくれたりしたじゃない、それがすごくおいしかった。そこから、共通の友人も多くてプライベートでも会うようになったんです。

大勢で集まることはあったけど、まさこさんと1対1でこういう風にお話するのって初めてだから、すごく新鮮!まさこさんに最初にお会いした時のイメージって、何となく想像と違っていて、すごくギャップがあったんですよね。

うそ〜!そんなにギャップある?

思っていた以上に、すごくざっくばらんな性格だなって。あと、食べることがすごく好きですよね。そんなまさこさんを見ているのも、すごく気持ちがよくて。

そう。「本当によく食べるね」って言われる(笑)。

わかります!私も作るだけじゃなく食べることも大好きなので。料理の仕事は意外と体力を使うので、食べることを楽しむことも大切なんです。

 

—料理を作るだけでなく、誰かとおいしいものを食べることも日常生活の楽しみだと語るお2人。それぞれ現在の活動に至るまでの経緯を教えてください。

伊藤まさこ

服作りを学んだあと、

スタイリストの道へ

(伊藤まさこさん)

元々は、文化服装学院でファッションを学んでいて。でも在学中から「このままアパレル会社に就職するのは何か違うな」と思っていました。卒業後は、雑貨店で働いていたんですけど、3ヶ月くらい経ってから「この仕事をずっとやっていくのもなぁ…」って。そんな時に、たまたま友達に勧められて、スタイリストの仕事に興味を持つようになって。その流れでインテリアスタイリストのアシスタントとして働くようになったんです。その当時、料理家さんの単行本のお仕事に関わる機会があったんですけど、料理の現場を見て「料理の仕事って良いな…」って。その時から食いしん坊だったから(笑)。それで、私は料理のスタイリストになるんだ!と宣言をして、そのまま独立しました。

料理のスタイリストって、職業として確立されていたんですね。東京ならではでしょうか。

それでもまだ当時は少なかったかも。キンコちゃんは、大阪出身でしたっけ?

大阪なんですよ。私も最初はアパレル会社に就職して。学生時代も将来何になりたいとかあまり考えていなかったんです。大学を卒業した時に、インテリアにも興味があったんですけど、たまたま受かったのがアパレル業界だったのでその流れで就職したものの、半年ほど経ってから、「あれ、何か違うな」って気付いて。

わかる!お互い割と早く「違う、ここじゃない」って気付いたのが何だか似てるかも。

ただ「違う」と気付いてはいたんですけど、その会社の新入社員が私1人だったから、1年は我慢して働きました。何となく漠然とフードコーディネーターになりたいなぁ…って思ったのもそのタイミングで。当時は、大阪にはあまりそういう知識を学べる学校がなかったので、東京で学校を探して祐成陽子さん(フードコーディネーター)がされている教室に通って。その後も、すぐに仕事があるわけじゃないから、バイトをしながら手探り状態でしたね。

そこからはずっと東京?

いえ、実はその頃に大阪の友達から「お店を借りたんだけど、一緒にやらない?」という誘いがあって…「じゃあ、大阪に戻ります!」って。

一回大阪に戻ったんだ。

冷水希三子

地元・大阪を離れて

鎌倉に移住を決意

この7年で仕事の幅が広がった

(冷水希三子さん)

大阪に戻って、お店を2年くらい任されたんですけど。やっぱりフードコーディネーターになりたいという気持ちが残っていて。お店のお客さんでもデザイナーやカメラマンの方がよく来るお店だったので、その流れでこういう仕事をやりたいって話をしているうちに、「じゃあ、やってみる?」ってお話を頂いたんです。結局お店は辞めて、師匠もいなかったので大阪で6年くらい料理の仕事をしましたね。

すごいなぁ。料理って誰かから学ぶとか教わるものじゃなくて、運動神経と同じでセンスも必要。何をどれだけ勉強したから上手くなるものじゃないと思う。自分の持っている感覚を大切にした方が上手くいくというか…。大阪時代を経て、拠点を東京に戻したのはいつ頃ですか?

ちょうど7年前ですね。もうちょっと仕事の幅を広げたいなって思っていた時に、鎌倉に住んでいた友人が「一軒家を借りたから一緒にシェアハウスしない?」って誘ってくれて。そこからはずっと鎌倉ですね。

伊藤まさこ
写真右:手前から、伊藤まさこさんの著書『おべんと帖 百(マガジンハウス)』、冷水希三子さんの著書『ハーブのサラダ(アノニマ・スタジオ)』『スープとパン(グラフィック社)』

これまでのお話って初めて聞く部分が多いから、面白いですね。自分の著書の仕事と普段のフードコーディネーターとしての仕事ってやっぱり違いますか?

著書の仕事は、自分の作りたいものを自由に表現できますね。でも、最近は何でも楽しみながらやっています。著書を見て頂いて、また新しい仕事や声を掛けてもらえることもあったり…。

素敵。キンコちゃんの本の「パプリカマリネパン」もおいしそう!

 

ー誰かのために作る楽しさ、喜んでもらえる嬉しさが料理をするうえでの大きなモチベーションになりますよね。日頃、お2人が料理を作る時に工夫していることはありますか?

冷水希三子

「旬の食材」を使って料理すること

(冷水希三子さん)

やっぱり一番大切にしているのは“旬の食材を使うこと”ですね。仕事だと、だいぶ先の季節に合った食材を準備して、レシピを考えて作ることが多いんです。なるべく友達や周りの人のために作る時は、その時期に食べて一番おいしい食材を使った料理を作るようにしていますね。

いいねぇ〜。鎌倉だと、レンバイ(鎌倉市農協連即売所)が駅のすぐ近くにあるからうらやましい!

毎日採れたての旬の野菜が売っているので、すごく良いですよ。今の時期だと、なすやズッキーニ、オクラなんかの夏野菜がおすすめですね。最近は白なすにハマっていて。焼くだけでトロトロになっておいしいんですよ。

食べたい!キンコちゃんは、いつもみんなのお腹のすき具合を気にしてくれている気がする。

あぁ〜確かに気になります。まさこさんもたくさん食べてくれるから、嬉しくなっちゃうんです。

前に作ってくれた「とうもろこしのココナッツサラダ」がすごくおいしかった!

そうそう。コリアンダーを細かく切って入れると、ほど良い苦みがあっておいしいんです。でも、まさこさんも料理を作ってくれますよね。友達を呼んでみんなで持ち寄りごはんにしよう!ってなった時、まさこさんは出張帰りで時間がないなかオイルサーディンとキャベツのマリネ、きのこのサラダとか何品も作ってきてくれて、すごいなぁって。

全然!前もってその日は約束をしていたから、実はきのこのサラダはもう作ってあって。混ぜるだけみたいな状態だったからね。

ちゃんと作って準備してるのがすごいんですよ。まさこさんのそういう部分もすごく尊敬しています。料理って段取りが命ですから。

伊藤まさこと冷水希三子

頑張りすぎず、食べたいものを作る。

相手に気を使わせないことも大事

(伊藤まさこさん)

でも、料理に限らず仕事でも「今これをやっている間にあれを済ませちゃおう」って感覚はあります。だから、朝は4時とか早い時間帯に起きて作っておいたり。あとよく家に人を招待するんだけど、4人しか呼んでいないはずが10人くらい来たっていう時もあって(笑)。だから、大体いつも多めに作るようにもしていて。でも、結局は自分も食べたいものを作ってるから苦には感じないんです。

いいなぁ。私もまさこさんの家に行こう…。

基本的に適当だから、誰でもおいで!って感じなんです。みんな各々で友達を誘ってきたりもするし。

まさこさんが適当でいさせてくれる空間を作ってくれますよね。

ほら、あんまり“おもてなし”って感覚だと、みんなもソワソワしちゃし何だか緊張するでしょう。ある程度ワインボックスにもたくさん種類を入れておいて、もう勝手に好きなものを自由に飲んでねって感じで。

おもてなしって、相手に気を使わせてしまったらダメですもんね。

楽しむために来てもらっているからね。あと、自分もあまり頑張りすぎないようにすることも必要かな。

それを何気なくできているから、すごいんですよ。娘さんのお弁当を10年間作り続けることもそうだし。こんなお弁当が売っていたらみんな買うのにな〜って思います。

冷水希三子
伊藤まさこさんの著書『おべんと帖 百(マガジンハウス)』を読む冷水さん(写真・左)、伊藤さんが作ったお弁当(写真・右)

毎日の習慣なんです。今、ちょうどほぼ日(ほぼ日刊イトイ新聞)で、伊藤まさこのおべんと帖ニ〇一六っていう連載をしているのね。娘が今年高校3年生で、お弁当づくりのラストイヤーということで。娘は派手な見栄えの良いものよりも、しみじみ味わえる素朴な料理が好きで。だからお弁当箱に詰めるおかずは、自分もおいしいって思うものだけ。

お弁当って作ってもらったら、すごく嬉しくなりますよね。

何が入っているんだろう…って、お弁当箱の蓋を開ける楽しみもあるよね。同じおかずをお皿に盛りつけて食べるのも良いけど、お弁当として食べるのはまたちょっと違う感動があるみたい。最近は、連載をしているほぼ日チームのみなさんにもお弁当を作って持っていくことがあるんだけど、すごく喜んでくれるから私も嬉しくなる。意外とお弁当箱っておかずがたくさん入るから6品…もっと食べるかなって詰める配分を考えたりしながら。その考える時間も楽しい。

お弁当って食べてもらう相手のことを考えて作りますもんね。以前、知り合いが体調を崩してしまった時に早く回復するように体にいい料理を作りたくて、使う食材はオーガニックにしようかとか、油は極力使わないほうがいいかなとか…色々考えながら作ったことがありました。作りながら、やっぱりお弁当って大変だなって思いましたね。だって毎日ですもんね。

そうだよね。娘に作る時は、お昼のお弁当と朝夜のごはん、3食作るから、一日のバランスを考えてる。例えば、ヒレカツとかお肉しか入っていないお弁当の日もあって。その分、夜は野菜を多めにして、栄養バランスを調整しています。

 

—オンオフ問わず食を楽しむことを大切にしているお2人。料理を作ったり、もてなすうえで、それを彩る食器や道具は欠かせません。そんな食卓の相棒である“モノ”選びのこだわりは?

伊藤まさこ

お箸を買い足す時に必ず行く

京都・「市原平兵衞商店」

(伊藤まさこさん)

雑貨や器を選ぶ時、オンオフの境界線ってあまりないんですよね。いいと思ったものはオンオフ問わずにやっぱりいい。「仕事で使うから」「こっちはプライベートで」という理由で選ぶことはないですね。だから、自宅やアトリエにあるものは、どこを見ても全てお気に入りのものばかり。自分で嫌だなって思ったものは使いたくないんです。

“まさこさんらしいモノ”というか、全体的にそういう世界観がちゃんとありますよね。

前は、自分で選んで買って、家で使ってみると全然合わなかったっていう失敗もたくさんあったけど、そういう経験があったからこそ学べた気がする。なかでもよく集めちゃうのが鍋やスプーン。あと、お箸にはちょっとこだわりがあって、京都にある『市原平兵衞商店』で買い足すことにしています。娘がお箸を持ち始めた時からこのお店のお箸をずっと使ってるから、もう長い間ずっと愛用しています。

冷水希三子

モノを選ぶポイントは

みんなで食卓を囲んで食べることを想像すること

(冷水希三子さん)

素敵ですね。私は、土鍋とせいろはいろんな種類やサイズのものを揃えていますね。

全体的に大きいサイズの方が好きでしょう?前に見せてもらった時に、ボウルやザルも大きいサイズがたくさんあって。

言われてみればそうかも!日用品を選ぶ時って、自分一人で使うっていう感覚では考えていないですね。みんなで食べる料理を作る時に使うとか、大人数で食卓を囲むことを想像して選んでいます。

 

ー毎日の食事を楽しむことが「くらし」をより充実させるヒントになるのかもしれませんね。最後に、お2人が日頃から大切にしている想いについて伺いました。

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伊藤まさこ

自分らしくいることが一番!毎日を気分よく過ごすこと

(伊藤まさこさん)

やっぱり自分が気分よく楽しく過ごすことが一番!以前、漢方に詳しい方に「まさこさんの生活そのものが中医学に基づいているね」って言われたことがあるんです。日暮れとともに休む態勢に入るし、眠る前とかは一切携帯も見ない。しっかり休んで、日が昇る時間には起きる。内側からもたらす「気」が体を整えてくれて、元気にしてくれると思う。

そういう生活そのものが、まさこさんのスタイルや仕事になっていますもんね。

絶対にこうしないといけないって基本的にはないんですよ。無理に気を張らずに自分らしくいることかな。日常でも好きなものを選ぶとか、おいしいものを食べる。そういう感覚を持つことが食に限らず、暮らしを楽しむことになるんじゃないかな。

冷水希三子

いろんなアプローチで自分自身も「食」を楽しむ

(冷水希三子さん)

料理をする時に使う器で私自身、気持ちも大きく変わりますね。野菜を使った料理を作ることが多いので、素材そのものの良さを壊さないことは一番大切。見た目で味も変わってくるんです。視覚でも楽しめる料理やいろんなアプローチで自分自身も「食」を楽しんでいきたいですね。

 

—さて、お話は尽きませんが、そろそろ〆のお時間!本日の〆の一品は、殻付きあさりの旨みにコチジャンのコクのある辛さを効かせた具だくさん汁 殻つきあさりのスンドゥブチゲ風(販売終了)です。

伊藤まさこと冷水希三子

あさりや豆腐もフリーズドライになってる!面白いですね。

わっ、殻ごと入ってるんだ。旅行とかに持って行くのも良さそうですね。

伊藤まさこと冷水希三子

便利そう。軽量だから持ち運びもしやすいし。

たしかに。とてもおいしかったです。ごちそうさまでした!

 

ー素敵なトークをありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。

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