豆知識 2022.08.08
【半径5mから考えるフードロス】第2回 島本美由紀さん|今日からできる! フードロスを減らすための「買い物・収納・保存」術
「フードロス」とは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品や食材のこと。最近ではニュースなどでもよく聞くようになりましたが、普段の私たちの暮らしの中でどのようにフードロスを減らしていけばいいのか、実際にはわからないことも多いですよね。
アマノ食堂では『半径5mから考えるフードロス』として、“食卓”という身近な場所から無理なく取り組める方法をクリエイターと一緒に考える企画を3回にわたってお届けしています。
第2回となる今回は「実践編」! 食品ロス削減アドバイザーとしても活躍する料理研究家の島本美由紀さんに、「買い物」「収納」「保存」の3つの柱から、今日からできるフードロス削減のコツを伺いました。
第1回はこちら>>
https://www.amanofoods.jp/info/25477/
毎日使用する冷蔵庫から。フードロスを減らす3つの柱
農林水産省の調査によると、日本のフードロス量は522万トン(令和2年度の推計)。そのうち約半分は家庭からの量です。食べ切れなかった料理、使い切れず賞味期限が切れてしまった食材などなど……。忙しい毎日の中で、無理なくフードロスを減らしていくにはどうすればいいのでしょうか。
島本さん:「おうちでのフードロスを減らすには『ムダをなくし、使い切る』ことが大切。『買い物』『収納』『保存』の3つの柱を見直すといいですよ。身近な食材周りから取り組んでみるのがおすすめです」
忙しい暮らしの中でも簡単に取り入れられるものに絞って、3つの柱を軸にフードロス削減のテクニックを教えていただきました。
まずは「買い物」のポイントから見ていきましょう!
【フードロス削減の3つの柱】その1:「買い物」
【買い物テク1】冷蔵庫の中身をチェック&献立を考えてからスーパーへ
フードロスを減らす第一歩として、まず見直したいのは買い物前の準備。
島本さん: 「買い物の前に、今冷蔵庫に何が入っているのか、自宅にある“在庫”を把握しておくと、ムダな買い物をしないで済みます。3日に1回を目安に買い物に行くのがおすすめです」
無駄に何度も買い物に行かない、まとめ買いをやめることもフードロス削減につながります。
また、買い物に行く前はあらかじめ献立を決め、買うものをリストアップしておきましょう。紙でメモを取るのはもちろん、スマホのメモ機能を使ったり、カメラで冷蔵庫内を撮影してもいいですね。メモを習慣づけることで「うっかり同じ食材を買ってきてしまった!」なんて失敗も減らせそうです。
【買い物テク2】それ、本当に『お買い得』? ちょうどいい量を選ぼう
買い物に行くと、「お得用」「大容量」などの目立つポップが気になってしまい、つい手に取ってしまうことが多いのではないでしょうか? どんなにお買い得な商品でも、使い切れなければ本末転倒。
島本さん:「少人数の家庭の場合は“多少割高でも小さいサイズ”を選ぶ、“その食材で献立が思い浮かばなければ購入しない”など、それぞれのご家庭にあった量やサイズを選ぶこと、無駄な買い物をしないことがポイントです。」
「買い物」の次は、食材に応じた冷蔵・冷凍庫の適材適所な収納・保存方法を教えていただきます。
【フードロス削減の3つの柱】その2:「収納」
【収納テク1】冷蔵庫の中身は7割程度に抑える
島本さん:「毎日の食事づくりに欠かせない冷蔵庫。中身は詰め込み過ぎず7割程度に抑えましょう!」
詰め込み過ぎると冷気がまわりにくくなり、食材が傷む原因にも……。適度なスペースを意識することで、庫内がひと目で見渡せるようになり、在庫管理がラクになります。
【収納テク2】上段には長期保存できる食品を収納する
島本さん:「冷蔵庫の冷気は下に溜まりやすいので、上段は傷みにくい、日持ちをするものを置くのがおすすめです。私は真空パックの食材やお菓子、ビールなどの
・賞味期限が長いもの
・長期保存できるもの
・未開封の食品
を置く場所と決め、開封したら下段に移します」
【収納テク3】中身が見える透明容器を使う
上段・下段の配置に加えて、毎日使用する冷蔵庫は「見えやすさ」「取り出しやすさ」が大切。食材の保存容器や袋には中身の状態をしっかりチェックできるよう、透明なものを選びましょう。
<収納のワンポイントアドバイス>
缶ビールや真空パックの食材は、収納トレーやボックスなどにまとめておくと、取り出しやすさも楽チンに。
例えば…
1.缶飲料はコンビニ陳列のようにトレーに入れておくと◎
島本さん:「100円均一で購入したトレーの裏面にクリップを貼り付けるだけ。傾斜が前に来るように冷蔵庫におけば、角度がついて取り出しやすくなりますよ」
2.真空パックの食材(漬物・水煮)はまとめて収納
島本さん:「個別に包装されている食材は冷蔵庫の中で散乱しがち。トレーやボックスにまとめておけば、食材も把握しやすく、上段や奥に配置をしても取り出しやすくなります」
手軽に購入できるトレーやボックスを上手に使用して、食材を常に把握しやすいように収納しましょう。
【フードロス削減の3つの柱】その3:「保存」
通常、野菜は野菜室へ、それ以外の食材のほとんどが冷蔵・冷蔵室で保存をしますが、実はチルド室の方が鮮度をキープしてくれる野菜も。特に野菜は好む温度が異なるので、適切な保存を知ることが大切です。
【保存テク その1】適切な保存で鮮度をキープ
<チルド室での保存もOKな食材>
・もやし:水分が多く傷みやすいため、温度の高い野菜室はNG。袋に何か所か穴をあけて通気性が良い状態で保存がおすすめ。
・ブロッコリー:ポリ袋に入れて保存すると、つぼみの部分の変色を防ぐことができます。
・にんにく:常温保存すると芽が出てしまい、風味が落ちてしまいます。キッチンペーパーに包んでからポリ袋に入れ、チルド室に収納すると、3か月ほど日持ちするそうです。
一方で、傷みやすそうなカット野菜や卵は冷えすぎが禁物。チルド室ではなく、野菜室に収納しましょう。
【保存テク その2】野菜室も上手に活用しよう
冷蔵庫同様、野菜室も収納は7割以下を目指しましょう。
野菜室が上下に分かれている場合は、下記のように収納するのがおすすめです。
上段:潰したくない食材や果物、使いかけの野菜など
下段:大きめの野菜や根菜、立てて収納できる野菜・調味料、お米など
トマトやなすなどの使いかけになりがちな野菜は、可視化できるようにカゴやトレイに入れて保存が◎。野菜室を開けたときに「使い切ろう」という意識が生まれるきっかけになります。
<下段のスペースが余る場合>
背の高い調味料やペットボトルを保存するのも◎。奥行き・深さを活用して、冷気が効率よく回るように、上段・下段と上手に収納しましょう。
【保存テク その3】調味料も適材適所に。「冷凍保存」がOKなものも!
調味料は開封したら冷蔵保存が基本ですが、中には冷凍保存OKなものもあります。
普段の食事で登場頻度が少ない「ゆず胡椒」や「甜麺醤」、「コチュジャン」などは、パックや瓶ごと冷凍庫で保存が可能。塩分濃度が高いので、固まらずやわらかなまま保存可能です。そのまま取り出してフタを開けるだけですぐに使えますよ。
一方で、醤油は基本的には開封後冷蔵保存ですが、二重構造の生醤油タイプは常温保存が推奨されています。調味料ごとの適材適所を知り、上手に使い切れるようになれるといいですね。
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今回の『半径5mから考えるフードロス』第2回は、料理研究家の島本美由紀さんに、今日から取り組める「買い物」「収納」「保存」の3つの柱を軸にさまざまなテクニックを伺いました。10月の「食品ロス削減月間」を前に、いつものやり方を少しだけ見直して、ムダなくスッキリ使い切れるコツを取り入れていきましょう!
次回はモデルであり、ケータリング会社を運営する浅野美奈弥さんに、「使い切れる調理術」についてお聞きします。次回もぜひお楽しみに!
島本美由紀さん
料理研究家。実用的なレシピ提案からさらに一歩踏み込み、エコの観点から食品保存や冷蔵庫収納を提案する「食品ロス削減アドバイザー」や「冷蔵庫収納&食品保存アドバイザー」、「ラク家事アドバイザー」など幅広く活動。テレビや雑誌、講演会など活躍の場を広げている。令和3年消費者庁主催の食品ロス削減推進大賞審査において、審査委員長賞を受賞。絵本「食品ロス『もったいない』をみんなで考える」の監修ほか「いつでもおいしい 冷蔵・冷凍保存術」(コスミック出版)など著書は70冊を超える。
・公式サイト
https://www.shimamotomiyuki.com/
・公式YouTube:島本美由紀のラク家事CH
https://www.youtube.com/channel/UCbIPZfpFO5ccvs8MtelVobg
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撮影/大童鉄平、文/田窪綾