注目ニュース 2024.07.02
渋谷「æ(アッシュ)」ゼロ・ウェイストに取り組むカフェ&バー【都内のエシカルショップ特集 vol.2】
最近よく見聞きする「サステナブル」という言葉。簡単に言うと「持続可能な社会」とされ、資源を無駄にすることなく環境を守り、住み心地の良い地球を持続可能な形で未来につなげることを意味しています。
とはいえ、「サステナブル」と聞くと堅苦しく感じて、ちょっと身構えてしまう人も多いのではないでしょうか。
私たちの身近な「食」を通して、サステナブルで地球や社会に配慮した取り組みを行う飲食店や小売店を紹介する連載企画がスタートしました。
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今回は、ゼロ・ウェイスト(廃棄物ゼロ)に取り組む渋谷のカフェ&バー「æ(アッシュ)」をご紹介。
コーヒーかすや食品の端材を有効活用したり、カップやユニフォームも環境に配慮したりと、さまざまな角度から考え工夫しているそう。
コーヒーやカクテルへのこだわりと、ゼロ・ウェイストへの想いを伺いました。
店名には「灰まで使い切る」という意味を込めて
渋谷駅から徒歩約8分、神南エリアにある「æ [zero-waste cafe & bar](ash)」(以下、アッシュ)。
渋谷「The SG Club」を始め、国内外でカクテルバーを運営するSG Groupが2022年の5月30日「ゴミゼロの日」にオープンしたカフェ&バーです。
ファウンダーの後閑信吾さんは、世界で数々の受賞歴を持つバーテンダー。日頃から海外での活動が多く、各国ではサステナブルに着目した飲食店が増えてきていることから、自身も取り組みたいと以前から考えていたそう。
特に身近な環境問題として、ごみを出さない「ゼロ・ウェイスト」を目指そうと新店のコンセプトが決まりました。
パートナーとして後閑さんとお店づくりに取り組むのは、「ジャパン バリスタ チャンピオンシップ」で3度のチャンピオンに輝くバリスタの石谷貴之さん。
オリジナルブレンドのコーヒー監修やメニューのディレクションなどを担当しており、本格的なコーヒーやカクテルが楽しめます。
バーとカフェの融合で生まれた、「æ(アッシュ)」。店名は、その文字の形から「コーヒー豆」や「無限の可能性」などを意味するほか、「灰まで使い切る」というゼロ・ウェイストへの想いも含まれています。
実際にどのような取り組みをしているのか、バリスタの滑川裕大さんに詳しく教えていただきました。
カップもメニューもペーパーレス、コーヒーかすは肥料にリサイクル
「お店には紙カップやストローなどの消耗品は置いていないんです」と話す滑川さん。
マドラーやミルクピッチャーなど、洗って繰り返し使えるものを揃えています。ガムシロップなど甘みを希望されるお客さんには、浅煎り・深煎りそれぞれのブレンドに合わせて鹿児島県喜界島の砂糖や沖縄の黒糖を用意しているそう。さらにメニューやショップカードは二次元バーコードを読み込む形にしており、ペーパーレス化を実現しています。
イートイン用のコーヒーカップやお皿は、牛の骨灰を用いた「ボーンチャイナ」を採用。
割れてしまったものはひとまとめにし、「BONEARTH(ボナース)」という肥料に生まれ変わっています。
テイクアウト用のカップは、原料にコーヒーハスク(コーヒーの実から豆を取り出すときに出る外皮や殻)を使っており、アッシュオリジナルのもの。持ちやすいデザインで、洗って繰り返し使えます。購入せずとも、タンブラーやマイボトルの持ち込みもOKです。
また、カフェで毎日出てしまうコーヒーかすも有効活用。カクテル材料に利用するほか、農園に送り肥料にしているそう。栽培・収穫した野菜は、SG Groupのさまざまなメニューに取り入れています。
こうした循環型の取り組みを実現させるため、環境に配慮した企業や農園をオープン前から探し、提携を結んだといいます。
ゼロ・ウェイストを実現しつつ、本格的なコーヒーやカクテルが味わえるのが「アッシュ」の魅力。
サステナブルなスイーツも楽しめます。今回は3種類のおすすめメニューを教えていただきました!
「おいしい」と「環境に良い」を両立させたメニュー
ふわふわフォームの「アイスカプチーノ」
濃厚なエスプレッソとふわふわのフォームミルクで癒される「アイスカプチーノ」。お店でも売れ筋の一杯ですが、こちらもゼロ・ウェイストのアイデアが詰まっていました。
「このフォームミルク、実はエスプレッソを抽出した際の片割れと、カフェラテを作る際に使用しきれなかったミルクを活用しているんです」と滑川さん。
マシンでエスプレッソを抽出する際、デミタスカップ2杯分が一度にできますが、ラテなどで使うのは1杯分のシングルショットのみ。毎回片割れが余ってしまうため、無駄なく貯めて活用しています。
また、ラテアートはミルクの量に余裕を持たせないとうまく描けず、仕上げた後にいつも少しだけ余ってしまうそう。そのミルクを型に入れて凍らせたものを使用することで、冷たいのにふわふわのアイスカプチーノが完成します。
苦味と甘みの絶妙なハーモニー「エスプレッソマティーニ」
カクテルは5種類のカテゴリーに分かれています。ひとつは、カフェのコーヒーメニューをカクテルにアレンジした「Coffee Classics」。
中でも人気が高いのは、自社開発の黒糖リキュールと「アッシュ」の深煎りブレンドを使用した「エスプレッソマティーニ」です。
ほんのり香るコーヒーの苦味と、黒糖リキュールの濃厚な甘みがマッチ。デザートのようにも楽しめるカクテルです。
SG Groupが沖縄県の泡盛酒造と共同開発した世界初の黒糖リキュール「KOKUTO DE LEQUIO」。
黒糖は沖縄を代表する食材ですが、実は年間2000トンもの在庫を抱えているそう。その問題を知った後閑さんが、泡盛と黒糖を掛け合わせたリキュールの開発に取り組み、誕生したものなんです。「アッシュ」では「KOKUTO DE LEQUIO」を使ったカクテルを全部で2種類提供しています。
バーでは使用しきれなかったスパークリングワインをカクテルの素材にしたり、玉露の2煎目を「ベルモット」にして「マティーニ」というカクテルに使用するなどと工夫を重ねているそう。
また、こちらのキューブは「マティーニ」と共に提供しています。一般的なバーでは、ジンに香りをつけるために一緒に漬け込んでいたオリーブは廃棄してしまいますが、「アッシュ」では、このオリーブも無駄なく活用。レモンピールを合わせてペーストにし、キューブ状にしています。
滑川さんは「いつも『これは何かに使えるだろうか』とスタッフと頭をひねりながら、試行錯誤でチャレンジしています」と話します。
コーヒーチェリーの甘酸っぱさがアクセント「カヌレ」
SG Groupのラボで焼き上げるカヌレもお店の人気メニューです。トップのくぼみには、コーヒーの実の部分「コーヒーチェリー」のソースがたっぷり。
「本来コーヒーチェリーはコーヒー豆を収穫した後には廃棄されてしまいますが、大量に出るのでぜひ活用しようと、コスタリカの農家さんから送っていただいています。甘酸っぱいシロップに仕立てていて、香ばしいカヌレとよく合います」と滑川さん。
さらに「アッシュ」では片割れのエスプレッソを生地に練り込んだ食パンと特製エッグサラダを合わせた「ASHの玉子トースト」などもあり、柔軟な発想が随所に見られます。
サステナブルは「不自由さ」をあえて楽しむ
オープンして2年目の「アッシュ」。お客さんは20~30代が中心で、来店して初めてゼロ・ウェイストの取り組みに気づく方も多いそう。最後に、「身近でできるサステナブルとは何か」を滑川さんに聞いてみました。
「普段の仕込みでも、洗って繰り返し使える保存容器や蜜蝋ラップを使うようにしています。使い捨てできない不自由さはありますが、それをあえて楽しむ気持ちがあるとサステナブルにつながるのではないでしょうか」
便利さに慣れてしまった今、あえて不便さ・不自由さを楽しむことで、サステナブルな取り組みが日常になるかもしれません。
「アッシュ」のおいしいコーヒーを堪能しつつ、まずは身近なところでできることを探してみてはいかがでしょうか。
身近なことからサステナブルを。長期保存可能なフリーズドライ食品
アマノフーズのフリーズドライ食品は、常温で食材の傷みを気にせず長期保存可能。
また、食べたいときに食べたい分だけ、お湯を注ぐだけでつくりたての美味しさを味わえる商品で、フードロス削減への貢献にもつながります。
おみそ汁だけでなく、スープや雑炊、丼の具にもなるお惣菜シリーズなど、さまざまなラインアップで今日はどれにしようかな?という選ぶ楽しみも。
スーパーやコンビニなど身近に買えるフリーズドライ食品を活用して、普段の生活から地球や社会のことを考えてみてはいかがでしょうか。
【店舗情報】
æ [zero-waste cafe & bar] (アッシュ)
東京都渋谷区神南1-5-2 川村ビル1F
営業時間:12:00 〜 00:00
定休日:なし
文:田窪 綾
写真:秋山枝穂