まごころ出前 2015.10.23
アマノフーズの名物社員、島村雅人。フリーズドライ商品の開発に人生をかけて30年、世に送り出したヒット商品は数知れず。人はそんな彼を“フリーズドライの伝道師”と呼ぶとか呼ばないとか…。この企画は、そんな彼が全国の依頼主のもとへ「思い出の味」をフリーズドライしてお届けするというコスト度外視の企画です。
〜ある日のABC開発室〜
島村さん(以下、島):「もしもし?島村です。あの〜次の出前なんだけど…」
取材スタッフ(以下、取):「ちょうどよかった!今まさにご連絡しようと思っていたんですよ。あのですね…」
島:「あ、ちょっと待って。その前に僕からひとつだけいい?まず…この“まごころ出前”企画で一番初めに訪れたのは岡山だったよね?」
取:「はい」
島:「で、その次が広島じゃない?」
取:「ですね」
島:「まぁ、僕は別にどこでもいいんだけどね。何というか…」
取:「それただ行きたいだけじゃ…。まぁ、ハワイではないんですけど今回の訪問予定先も南国ですよ!何と……」
取:「そうなんです。でも遠いし、島村さん忙しいので行くの無理じゃないですか。だから今回は取材スタッフが代わりにレシピを聞いてくるのでご安心ください!それで注文が入ったメニューなんですがタコライスと……って島村さん聞こえてます?(ガチャッ ツーツー…)あれ?島村さーん?」
(うんうん…タコライスね。なるほど…)
今回の依頼人は沖縄出身で現在は東京でIT関連のお仕事をしている岸本祥也さんです。高校卒業と同時に上京して10年以上、今も変わらぬ沖縄愛で故郷を大切にしているナイスガイ。今回注文したいメニューは地元に住むお母さんが作るアーサ汁とタコライス。言わずと知れた沖縄の郷土料理です!
「アーサ汁もタコライスも、実家にいた頃は家庭料理として当たり前のように食卓に出てきていました。高校卒業後に一人で東京に出てきて、当たり前だった家庭の味が当たり前ではなくなった毎日の中、ふと母親の作ってくれた料理が無性に食べたくなると時があるんですよね。ホームシックになることはもうないですけど、ホームフードシックには未だになります」と語る岸本さん。
確かに沖縄は遠いので、なかなか気軽には帰省できないですもんね。
「タコライスは、都内でも普通に食べられるメニューですけど、うちの母親が作るタコライスはとにかく美味い!オリジナルのタコミートの味付けが絶妙なんですよ。母親がよく作り置きしてくれていたのを思い出すなぁ。東京の沖縄居酒屋もよく行くんですけど、未だに我が家のタコライスより美味いタコライスに出会ったことはないですね。アーサ汁も、沖縄では当たり前に飲まれているんですけど、東京ではほとんど飲む機会がない。個人的に汁物が好きというのもありますが、僕にとっては沖縄と母親を感じることのできる大好きなメニューです」
…なんていいお話!そして話を聞いただけでも美味しそう。これはもう、沖縄に行って実際にお母さんの作ったアーサ汁&タコライスを食べさせてもらうしかありませんよね。あいにく島村さんは多忙なので厳しそうですが、その代わりに取材スタッフがしっかりと岸本さんの思い出の味をリサーチしてきます!島村さん、楽しみにしていてくださいね!
東京から飛行機で約3時間半、依頼人のお母さんが住む沖縄県宜野湾市へ。
空港の入り口ではシーサーや
キレイな熱帯魚が出迎えてくれました。ものすごい南国感。沖縄サイコー!
到着ロビーのほうから何だか聞き慣れた声がした、気がする…
島村さんでした。
初めての方がいるかもしれないので、改めてご紹介しましょう。この方は「アマノ食堂」を出前を担当している天野実業ABC開発室 室長の島村雅人さん。またの名を“フリーズドライの伝道師”。卓越した開発スキルとフリーズドライにかける熱い情熱を持ち、今までさまざまなヒット商品を生み出してきた業界の有名人なのです。
フリーズドライの開発に命をかける島村さん曰く「大切な“思い出の味”をベストな形で届けるためには、やっぱり自分の目で味を確かめないといけないよね。いや、確かめないとダメさ〜」。ちょっとだけ「さ〜」の使い方が間違っているような気もしますが、さすがフリーズドライの伝道師。美味しさの追求に対する情熱がスゴいです。
その日はひとまず準備を整え、翌日に依頼人のお母さん宅へ伺うことに。
沖縄料理を堪能し、泡盛を飲み、沖縄の夜は更けていく…。
(※なぜアロハシャツなんだろう?いつ買ったんだろう?隣のキャラクターは何?など気になる箇所が多いですが割愛)
さて、なぜ市場に集合したかというと…沖縄の食文化をリサーチするため! 沖縄には珍しい料理はもちろん、珍しい食材もたくさんあるので見るだけでも新鮮です。
早速、今回のお題のひとつでもあるアーサ汁の具材(=アオサ)を発見!
街中の至るところに乾燥アオサやアーサ汁が売られていましたよ。
次に向かった先は商店街の中にあるスーパー。実は島村さん、地方や海外に行った時は地元のスーパーへ足を運び、どんな調味料や食品が売られているかを必ずチェックしているのだそう!商品開発の裏側にはこういった努力の積み重ねが隠されているんですね。(残念ながら写真がないので、ご想像でお楽しみください)
その後は、沖縄で大人気のアイスクリーム店「BLUE SEAL」のタピオカ入りシェイクを飲んだり
沖縄の名物料理であるラフテーを食べ比べてみたり
広場で歌を口ずさんだり
海を眺めながら物思いにふけったり
ビーチをお散歩したりしました。
沖縄を思う存分堪能した様子の島村さん。よかった!後半ちょっと主旨変わってたけど。
というわけで、ドキドキしながらお宅に訪問させていただきました。
こちらが依頼人のお母さん・静子さん。気さくで笑顔がとってもチャーミングです♪
半ば強引に押し掛けたにも関わらず、とても温かく迎え入れてくれたお母さん。そして何と、今回のために依頼人のお父さんと弟さんご家族も駆けつけてくれました!
小魚の骨をカリッと揚げたお父さんお手製のおつまみ。クセになる味と食感に、一同今すぐビールを飲みたくて仕方ない。でも我慢、お仕事だから…。
まず圧倒的なコミュ力でお父さんの心をがっちり掴みつつ
キッチンでは、タコライスを作ってくれているお母さんを背後から見つめる島村さん。ひき肉や玉ねぎを炒めて、塩こしょうで味付け。食材の分量やサイズ感はじめ、使用している調味料や具材の色合いなど細かな部分までチェックしていきます。
(なるほど、ひき肉は豚っと…うんうん)
火が通ったら、塩こしょうやチリペッパーで少しずつ味見をしながら調整していきます。岸本家のタコミートはお母さん曰く「すごくシンプルな味付けだしあまり辛くないから、子どもでも安心して食べられるのよ」とのこと!
島村さんも味見させてもらいつつ、ここからは器に盛りつけます!
味付けしたひき肉、チーズ、レタス、トマトをご飯のうえに順番にのせていきます。
できあがり!こちらが依頼人の大好物、タコライス。彩りも華やかでとっても美味しそう!
「では、いただきます!」
(モグ…モグモグ…)
「うん、美味い!チーズが溶けてひき肉と絡まることでグッとマイルドさが増すね。レタスのシャキシャキ感もいいアクセントだな〜」
調理や味付けのコツを聞くと同時に、開発のヒントを探るのに欠かせないのが“味覚”。コクや旨味、具材の食感など実際にこうして食べることで五感をフル稼働させ、頭にインプットしていきます。
続いてアーサ汁。岸本家では生のアオサを使用します。実はこのアオサ、弟さんの奥さんのお母さんが海で採ったものだそう!さすが沖縄…海人…!
アーサ汁も先ほどのタコライス同様、薄い塩味でシンプルな味付け。アオサの他に小さくカットした豆腐も具材として入れます。
あっという間に完成!上から見るとわかりにくいですが…
すくってみると、こんな感じで具だくさん!新鮮だからアオサの色もキレイですね。
「美味しかった!実は、タコライスとアーサ汁はこういうイメージかなってすでに構想はあったんだけど、実際にお母さんの作り方を見て自分が思っていたのと違う部分は結構あったね。例えば、タコミートは岸本家では牛じゃなくて豚なんだとか、アーサ汁はそもそも味噌使わないとか…帰ってからもう少し研究しなくちゃ!」
ごちそうさまでしたと思ったら、食後のデザートとしてパイナップルやグァバなど、沖縄名産の新鮮なフルーツを出してくれました。そして帰り際には何と、パイナップルのお土産まで…!何から何まですみません…岸本家の皆さま、本当にありがとうございました!
さて次回は、島村さんが実際にアーサ汁&タコライスのフリーズドライに挑戦する様子をお届けします!無事、お母さんのタコライスとアーサ汁を再現することができるのか!? それではまた、アマノ食堂でお会いしましょう。
※仕上がりはいかに?後編はコチラ!
\どんな注文もおまかせ!/
アマノ食堂では、島村さんにまごころ出前してほしいという方を随時募集中!必要事項と理由を添えてcontact@amanoshokudo.jpまでメールでご連絡ください。「思い出の味をフリーズドライしてほしい」「遠く離れたあの人へ手料理を届けてほしい」「何かおもしろそう」など、どんな理由でもOK。海外以外はできるだけがんばって行きます!
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【必要事項】
・お名前
・年齢
・職業
・電話番号
・お届けしたいor届けてもらいたい人との関係性(母親、息子、娘、恋人…etc.)
・お届け先(例)岡山県→東京都
・依頼したい料理
(例)岡山県に住む母親がつくる豚汁、遠恋中の彼女がつくる肉じゃがなど
・その料理にまつわるエピソード
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