まごころ出前 2015.12.18
アマノフーズの名物社員・島村雅人(通称:フリーズドライの伝道師)が全国の皆さんに“思い出の味”をお届けする「まごころ出前」。
これまで粕汁、おみそ汁、タコライス&アーサ汁と3人の依頼人へと思い出の味をお届けしてきましたが、今回はスピンオフ企画として島村さんが作った一風変わったフリーズドライコレクションをご紹介します。きっとフリーズドライ食品のイメージががらりと変わるはず!
今回訪れたのは、島村さんがフリーズドライ食品の開発に取り組む研究室。この研究室では、「常に驚きと美味しさの感動を伝える先駆者でありたい」という想いで、今までにないフリーズドライ商品の開発に向け日々さまざまなチャレンジをしているそうです。
話題の大ヒット商品、『フリーズドライ一人鍋』や『チキンカツの玉子とじ』もここから誕生したんですよ!
“安心してくださいポーズ”で温かく出迎えてくれたのは、島村雅人さん(写真左)と、チームメンバーであり島村さんの“敏腕すぎる助手”ともっぱら評判のミムラさん(写真右)。
島村さんの唐突なポージングに対して一切のためらいなくポーズをキメるミムラさん。さすが敏腕すぎる助手、息がぴったりです。
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まずはお2人が最近手掛けた商品を見せていただきました。ここ最近の話題といえば、先日TBSのテレビ番組「所さんのニッポンの出番」でも紹介されたこのお総菜シリーズではないでしょうか。
ミムラさん(以下、ミ):「これは現在発売中の『切り干し大根の煮物』と『卯の花』です(※現在は発売終了)。どちらも10年以上前に一度販売したことがあるんですけど、当時は正直反応がイマイチで。そこに改良を加えて最近リバイバルとして出したところ大ヒット。その頃はフリーズドライ食品のお惣菜というイメージがまだ世間になかった時代だったから、世に出すのが早過ぎたんですね、きっと…。でも今回のリニューアルにあたって当時のものからクオリティも一段と上がっていますよ!」
− 切り干し大根の煮物はどこをどんな風に改良したんですか?
ミ:「一番はやはり“ボリューム感”でしょうか。以前の切り干し大根はお湯を注ぐとちょっとペチャッとした感じだったんですけど、今回のものはふんわり感が増して食べ応えもアップしています。食事の副菜としてちょうどいいボリュームに仕上がりました」
ミ:「卯の花は、以前少し気になっていた豆腐の粉っぽさをなくして全体的になめらかな口当たりになるように改良を加えました。ひと言で言っても、なめらかにするというのが結構大変なんですよ」
【商品情報】
フリーズドライお惣菜2種(切干大根の煮物・卯の花)
※現在は発売終了
10年以上も前からお惣菜の構想があったなんて!今後もこのお惣菜シリーズには力を入れていく予定だそう。どんな商品ができるのか楽しみですね。
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さて、今回は世に出ていないフリーズドライ食品のサンプルを見せていただけるということで…。早速、島村さんが取り出してきたのは
ドーーーン!!!!!!!!
とうもろこし!見た目はまるで生のとうもろこし。でもこれ、フリーズドライしているんですよ?パッと見ではなかなか判別しにくいほどのクオリティです。
「どうも、フリーズドライの伝道師こと島村雅人です!なんつって」
島村さん(以下、島):「これ、北海道での講演用にわざわざ作ったのに誰もツッコんでくれなかったんだよなぁ。絶対にウケると思ったのにぃ〜」
ミ:「とうもろこしは今月できあがったばかりの新作サンプルなんですよ。これは島村がほんの遊び心で作ったんですが、とうもろこし自体は『たっぷりきのこのかぼちゃスープ』や『ブロッコリーのミネストローネ』など色んなアマノフーズ商品にも使用されています」
島村さんの隣でスマートに説明を入れてくれる相棒ミムラさん。それにしても、“ほんの遊び心”にも全力な島村さん。講演用の小物まで用意するとはさすがですね。
島:「あとね、これは最近ミムラくんがフリーズドライして作ったオレンジ」
ミムラさん作・フリーズドライしたオレンジ!生の状態のオレンジをきれいにくりぬいて形をきれいに残すのが大変だったとか。これもサンプル用に作ったものだそうです。スタッフが感心して見ていると、今までお2人が作ったというフリーズドライアイテムが次から次へと出てきました。
続いて出てきたのは…りんご!こちらもオレンジ同様、生のりんごをくりぬいてフリーズドライ加工したもの。中に入っているカットされたりんごは、「パリッパりんご」というフリーズドライフルーツとして商品化もされました。このりんごはそのまま食べてもおいしいけれど、紅茶などに浮かべてフレーバーティーにしてもおいしいのだとか。
まだまだあります!続いて登場したのは餃子。
アイスだってこの通り。カップに入っているものだからフリーズドライできるんじゃない?と思いきや…
スティック状のアイスクリームもフリーズドライ済みでした。
そして、取材スタッフが驚いたのがこちらのたい焼き。実はこの日できあがったばかりの最新作。パッと見るだけだとフリーズドライしているようには見えません…!もちろん冷凍&乾燥を経ているので触るとカッチカチなんですけどね。これはお湯で戻るんでしょうか?
お湯を注いでみました。中はあんこ入り。
「あんこバリバリ。これは食べられない」
まだまだ改良しがいがありそうです。でも、もし今後たい焼きがフリーズドライで再現できたとしたら…何だか夢が膨らみますね。
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生の果物におやつにと、さまざまな食品のフリーズドライに日々挑戦中の2人。
たい焼きなど、フリーズドライはできてもお湯で元のように戻せないというものもありますが、なかには「これ、商品化できるんじゃない!?」というものも。他にもまだまだある島村さん&ミムラさんが作ったサンプルにお湯を注いで実際に食べてみることにしました。
まずは茶碗蒸し!右はフリーズドライした状態の固形、左はそこにお湯を注いだもの。
お湯を注いだ状態のものを、ひと口食べてみると…ん?食感は確かになめらかとは言えないものの、味は完全に茶碗蒸しだし柔らかくて、おいしい!
「島村さん、これ普通においしいですよ?」と興奮気味の取材スタッフに反して「いや、茶碗蒸しはやっぱりあのなめらかさが重要だから。まだまだだよね。この状態だと全然売り物にならない」と一蹴。なるほど、“普通においしい”じゃダメなんですね。でも、そのおいしさへの強いこだわりこそが島村さんがフリーズドライの伝道師と呼ばれる所以でもあるんです。
島村さん曰く「これもまだまだ全然ダメ」という、おでん。特に玉子や糸こんにゃくは、フリーズドライはできてもお湯で戻してからおいしく食べられるようにするのが非常に困難。でもこの具材の中で島村さんがキラリと目をつけたのが…大根!
大根を使って、ふろふき大根のフリーズドライ化にチャレンジしたそう。お湯を注ぐとふわふわと柔らかくなりました。ちゃんと形を残していて、見た目はまさにふろふき大根そのもの。
箸を入れた感じも完全にふろふき大根。肝心の味も、だしが染みていておいしいぃ!でも島村さんに言わせると「歯ごたえがまだダメ!見た目はいいんだけど食感が柔らか過ぎる」とのこと。十分においしいと思うけどな…。島村さんの“おいしい”のハードルはエベレストよりも高く、こだわりはマリアナ海溝よりも深い。
開発室で今後の改善ポイントについて熱く語る島村さんとミムラさん。そんなフリーズドライに対して情熱を捧げるお2人に、知られざるフリーズドライの秘密や開発エピソードを伺いました。
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− 色んな食品サンプルを見せていただいたのですが、ここでフリーズドライとは何たるかを改めてお聞きしていいですか?
島:「そもそも一般的に皆さんがイメージされる“乾燥食品”は、原材料を熱風で乾燥させているから素材が持つ味や栄養が損なわれやすいんですよ」
「でもフリーズドライは、まず原料を冷凍させてから乾燥機に入れて真空状態にして水分を抜くの。野菜などは熱を加えると栄養素や色が損なわれやすいでしょ。でも熱をあまり加えず真空状態で乾燥させることで、素材自体が持つ風味・香り・色・栄養素が損なわれにくくなる。フリーズドライというのは、“食材そのもののおいしさ”を損なわないように開発された技術なんだよ」
− 先ほど食べたふろふき大根や茶碗蒸しには感動しました…!
島:「冷凍して乾燥させるだけならどんな食品もフリーズドライできるけど、お湯で戻した時に見た目や味がきちんと再現できるかどうかというのはまったくの別問題なんだよね。フリーズドライ加工しておいしく食べられるようにするためには、そのための特別なレシピや処方がある。色んな工夫や技術、開発者の知恵だって必要。さっきの茶碗蒸しや大根だって、商品にするはまだまだ到底至らないレベルだから」
− なるほど。その工夫って例えばおみそ汁とリゾットなど商品によっても違うんですか?
島:「そうだね。フリーズドライ技術は非常にデリケートなんだよ。具材をカットする大きさや冷凍の仕方、乾燥する温度が少し違うだけで仕上がりも違う。例えばチューブの入れ方ひとつとってもすごく大事。それぞれの商品にそれぞれの工夫が必要になってくる」
島:「少し環境が変わるだけで味が違ってきたりするから苦労も多いよ。試作段階ではおいしく作れたのに、いざ製造ラインで製造してみると味がガラリと変わったということだって……」
島:「ミムラくん。今一瞬寝てなかった?」
ミ:「何言ってるんですか。そんなわけないじゃないですか」
島:「え?だって今」
ミ:「そういえば島村さん、あの時も大変でしたもんね…。“ふぐのみそ汁”事件!」
島:「ふぐね!そうそう!あれは大変だった。昔、その地方ごとに食べられている食材を使った商品を作ろうとしてね。そのひとつとして下関のふぐをみそ汁の具材にしようってことになったのよ。開発段階でできた試作品はなかなかのクオリティで満足のいく仕上がりになったから、当時これは商品化したら絶対売れるぞ!って、思っていたんだよね」
− “思っていた”というと、商品化されなかったんですか?
ミ:「実はそうなんです。試作品段階ではうまく仕上がったのに、工場で製造してみたら思うように仕上がらなくて…。完成したものを食べてみてびっくり!それで、これじゃお客様に出せないということで急遽販売を見送ることに。いくら私達で完璧なレシピを作っても細かな部分はやはり伝えきれない部分もあるので。そこが食品製造の難しいところでもありますね」
ミ:「ふぐのみそ汁は、気付いた時にはすでに販売に向けての準備が進んでいて、製造ラインで販売商品用にたくさん作り終えていたからもうみんなで大慌て!あの時は島村さん、本当に大変でしたよね…(遠い目)」
島:「今思い出してゾッとした〜」
島:「でもね、僕らはプロだから世に出す商品に失敗は許されない。成功して当たり前。一度でも満足できないものを提供するのはプロじゃない。それでたとえ大損失が発生するとしても中途半端なことはしちゃいけないし、できない。それは開発者としてのプライドだよね」
ミ:「島村さんって人一倍プライドがあるから『できない』とは絶対言わないんです。よく社内外から『これはさすがに無理だよね?』『これフリーズドライしたいんだけどできる?』とか色んな無理難題がくるんですけど、びっくりするくらい全部引き受けちゃう。それで私も食材調達や試作で毎回振り回されるんですけどね…」
島:「だって『できない』なんて言いたくないじゃない。それがプロでしょう。『できないでしょ?』と言われると悔しいし、できてその人に喜んでもらえたら僕も嬉しいし。たとえ最終的にできなかったとしても、“本気でやる”ことが大事だと思うんだよね。丸ごとのとうもろこしとか販売しないサンプルを作る時だっていつも本気だし、まごころ出前の注文も毎回全力でやってるもの」
「ふぐのみそ汁も、その後に何がダメだったのかを調べてようやく解決方法がわかったから、いつか再チャレンジして商品化したいね!」と話す島村さん。
数々のアマノフーズ商品が生まれた裏側には、たくさんの苦労と島村さんをはじめとする開発者達のプライドが隠されていたんですね。
締めは一緒にGoodポーズ!最後まで息ぴったりのお2人でした。
フリーズドライ食品は“手軽”に買えて“手軽”に食べられるけれど、作られる過程は決して簡単ではないということが伝わってきますね。本当にいいものを本気で作る、その姿はまさに“職人”そのもの。
一人鍋やお惣菜シリーズをはじめ、これからもあっと驚くフリーズドライ商品が誕生するはず!もしかしたら、まごころ出前の注文メニューが商品化される日だって来るかも…!? アマノフーズのフリーズドライ技術を活かして、これからもまごころ込めて皆さんに思い出とおいしさを出前していきます!