まごころ出前 2016.02.23
これまで数々のヒット商品を生み出してきたアマノフーズの名物開発者・島村雅人。
フリーズドライ食品の開発に人生をかけて30年以上、人はそんな彼を“フリーズドライの伝道師”と呼ぶとか呼ばないとか…。この『まごころ出前』は、そんな彼が全国の依頼主のもとへ「思い出の味」をフリーズドライしてお届けする企画です。
フリーズドライ食品の保存性の高さ、アマノフーズのフリーズドライ技術をもって誰かの“思い出の味”をお届けするまごころ出前は早くも第5弾! さて今回の依頼は?
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【出前してほしい料理、大募集!】
アマノ食堂では、島村さんにまごころ出前してほしい方を募集中!必要事項(記事末を参照)と理由を添えてcontact@amanoshokudo.jpまでメールでご連絡ください。
※「思い出の味のフリーズドライを作ってほしい」「遠く離れたあの人へ手料理を届けてほしい」「何だかよくわからないけど、おもしろそう」など、どんな理由でもOK。海外以外はできるだけがんばって行きます!
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今回の依頼人は山形県にお住まいの熊澤舞子さん。なんと昨年社会人になったばかり! 大学卒業後に同県の酒田市内にあるコワーキングスペース「UNDERBAR」(東北公益文科大学・酒田市公益研修センター内)で働いています。そんな舞子さんの思い出の味とは?
舞子さん:そうですね〜思い浮かぶのは『納豆汁』でしょうか。納豆汁は東北地方でよく食べられるおみそ汁で、納豆をすりつぶして野菜や油揚げと一緒に煮込むんです。今の時期だと旬の根菜とか。納豆のタンパク質は体にもいいし、食べると体がすごく温まるんですよ。冬になると食べたくなる料理の一つですね。
− なるほど。郷土料理なんですね。ちなみに、ご依頼のもう一品は…?
舞子さん:『ひょうの煮物』です。
− ひょう?
舞子さん:“草”ですね。
− えっ!く、草!?
※こちらがひょう(=スベリヒユ)
舞子さん:はい、夏場に畑や道端など生える草です。以前テレビで「山形県民は雑草を食べるらしい!」と紹介されて結構話題になったんですけど、その通りで本当に雑草なんですよね(笑)。独特の香りと渋みがあって、それをにんじんや油揚げなどと煮付けるんです。うちでは煮物でよく食卓に登場します。ひょうは乾燥させてお正月に食べることが多いですね。“ひょっとしていいことがあるように”という験をかつぐ意味もあるので、
− へぇ!どちらも地方に根付いている料理なんですね。この2品にはどういった思い出が?
舞子さん:どちらも冬によく実家で食べていた料理です。特に納豆汁は寒い季節になると食卓に出てきたので、食べると「冬だな〜」と季節を感じることも。私は今親元を離れて暮らしているのですが、最近は仕事が忙しく実家に帰れないこともあってきちんとした食事ができていなくて…。実家は同じ山形県内にはあるんですけど、車で2時間以上かかるのであまり気軽には帰れないんです。外食が多くなると、ふと母親が作る手料理を食べたくなります。
社会人1年目で最近は仕事が忙しく食生活が乱れがちという舞子さん。そんな彼女にお母さんの手料理の味、お届けしようじゃありませんか!ね、島村さん!
と、いうわけで…
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ひと際寒い冬の某日、山形県天童市にやってまいりました。
毎回思うんですけど、すごいよね。島村さん毎回岡山から来てますから。1日がかりですよ。ミムラさん(島村さんの助手)きっと怒ってるだろうなぁ…。
早速、舞子さんのご実家へ。
目を惹く青いジャンパーを着ているのが
“フリーズドライの伝道師”ことアマノフーズの名物開発者、島村雅人さん。ご覧ください。この、家に遊びにきた親戚のような馴染みっぷりを。さすが島村さんやで!
こちらは、お母さんが出してくれたりんご。行きがてらタクシーの運転手さんが「りんご=青森って思ってるでしょ?俄然、山形のほうがおいしいからね!これ絶対!」と熱弁していたのですが、食べてみて納得。すごくおいしい。これには島村さんも…
この表情。すんごくおいしいぃぃ!
さて、早速今回の本題へ。舞子さんの思い出の味、納豆汁とひょうの煮物の作り方をお母さんに教わりました。
納豆汁は野菜をたっぷり使います。芋にねぎ、そして写真左の茶色い食材はなめこ(大きい!)
こちらが噂のひょう。山形県をはじめ東北地方では保存食としても親しまれており、この時季は乾燥した状態で売られていることが多いそう。
そしてもう一つ、この地方ならではの食材が「芋がら」。里芋の茎を干した伝統保存食です。こちらもひょう同様このあたりでは乾燥したものがよく売られており、納豆汁の具材には欠かせないのだとか。水で戻すとかんぴょうみたいですね!
まずはひょうの煮物から作っていきます。ひょうは元々独特の苦みがあるのですが、お酢を入れて水で戻すとえぐみを抑えることができるそう。戻した後は鍋で煮ます。
その頃、島村さんはというと…
作り方を記録するために写真撮影をしていました。さすがに取材も5回目になると手慣れたもの。撮った後の写真チェックも抜かりなし(キリッ!)
続いて納豆汁。大根やにんじんなど、野菜をひと口大にカットして
味噌や調味料を加えて鍋でしばらく煮込みます。そして、お父さんが何やら隣でゴリゴリ…
納豆汁の納豆が登場。ひきわりを使う場合も多いそうですが、今回は小粒の納豆をこうしてすりつぶして使用します。お父さんが手に持っているのはすりこぎ棒ではなく…なんと大根(!?)
ゴリゴリ…ゴリゴリ…
お母さん:大根を使ってすりつぶすと納豆がなめらかになるんですよ。
島村さん:本当だ!納豆がなめらかになってる。大根に含まれるジアスターゼ(消化酵素)によって納豆のねばねばがちょっと薄まってなめらかになるのかな。これはおもしろいね〜。
大根と納豆に興味津々の島村さん、実際に触って確認します。地元に伝わるお母さんの調理の裏技には、ちゃんとした根拠が隠されているんですね。
すりつぶした納豆を鍋に投入。
お母さん:お父さん。長ねぎをもう1本畑から持ってきてもらえない?
動き出したお父さんについていくと…なんと家の隣に畑が!
熊澤さんのご実家では、家で食べる分の野菜は自分たちで作っているのだとか。大根、長ねぎ、キャベツをはじめ柿やりんごまで作っているそう。さきほど出していただいた絶品りんごも、実はこちらの畑で採れたりんごでした!
「いいなぁ。畑のある生活っていいよなぁ…」
自身も自宅で野菜を栽培している島村さん、広い畑を見てすごく羨ましそう。
お父さん、長ねぎGET! ありがとうございます!
そうこうしているうちに…
こちらが完成した納豆汁。具だくさんでおいしそう! なめこも大きいですね。
お父さんが採ってきてくれた長ねぎは、細かく輪切りにして納豆汁にお好みで加えていただきます。さすが採れたてだけあって、歯ごたえシャキシャキ!
そしてひょうの煮物。油揚げとにんじん、さつま揚げを加えてこちらも食べごたえ満点です。
島村さん:うん!納豆汁もひょうの煮物もどちらもおいしい。納豆汁は味噌と納豆のバランスがちょうどいい。野菜がたくさん入ってるから体にも優しいよね。ひょうの煮物は苦いかなと思いきや、食べてみると全然! 下ごしらえと味付けのおかげでえぐみが少なくて食べやすいね。これはご飯が進むな……(もぐもぐ)
島村さん:いや〜おいしかった!ごちそうさまでした!
すっかりお父さん&お母さんと仲良くなった島村さん。帰りにりんごのお土産をたくさんいただいて熊澤家をあとにしました。山形は水も食べ物もおいしくて自然溢れるとっても素敵な土地でした。お母さん、お父さん、本当にありがとうございました!
帰りに直売店で乾燥ひょうと芋がらをGETした島村さんは、開発室のある岡山へ。食材調達も抜かりなし(キリッ!)
※この日の戦利品がこちら
ある日のABC開発室。島村さんは納豆汁とひょうの煮物のフリーズドライ化に挑戦中。
フリーズドライ食品は、まず原料を調理して、約-30度で冷凍したのち専用の機械で真空乾燥させます。カラカラに乾燥して水分がなくなった状態のものに、お湯を注いで食べるわけですから「お湯を注いだ状態でおいしく食べられるかどうか」が肝心なんです。つまり逆算して開発していく必要があるんですね。フリーズドライ食品の開発は何よりそれが難しい。
納豆汁の具材であるにんじんをカットする島村さん。もちろんカメラ目線。
具材の一つ一つをそれぞれちょうどいい食感で味わってもらえるように、何パターンも調理してみてベストな茹で時間&切り分ける大きさを検証していきます。
すごく時間がかかりますが、実はとっても大事な作業。芋がらは柔かく仕上がるように、逆ににんじんやねぎは少し歯ごたえが残るように…と、真剣な表情でじっくり調理を進める島村さん。
そしてもちろん、カメラ目線。
調理し終えた後はじっくり冷凍。その後は秘密の専用マシン「島村号」で数時間かけて真空状態で乾燥させます。
できあがった試作品を試食して改良、試食して改良、試食して改良…この一連の流れを何度も繰り返すんです。今回は前回同様、汁物の具材のボリュームと食感がポイント。加えて納豆そのもののフリーズドライ加工、ひょうの苦みをとるのにも苦戦したそう。果たしてどんな仕上がりになるのでしょうか!?
こちらがフリーズドライした納豆汁(写真奥)とひょうの煮物(写真手前)。この状態でもわかるくらいひょうたっぷり!それではどんな仕上がりになったのかご覧ください。
まずは、ひょうの煮物から。
器に入れて、お湯を50ml注ぎ
かき混ぜること約10秒。
ひょうの煮物のできあがり!フリーズドライされカサカサだったひょうが水分を吸って、みずみずしく仕上がりました。
※お母さんが作ってくれたひょうの煮物。見た目も似てる!
続いて納豆汁のほうはどうでしょう?
お椀に入れてスタンバイOK! こちらは150mlのお湯を注ぎます。
トポトポトポ…
水分を吸った具材が、どんどん膨らんでいき…
あっという間に納豆汁のできあがり!お湯を注いだ瞬間に納豆の香りが立ちます。
里芋、なめこもこの通り! つるんとしたなめこの質感はまるで生のなめこそのものです。
※写真は熊澤家の納豆汁。こちらも高いクオリティに仕上がっています。
完成したこの2品、早速依頼人の舞子さんへお届けに行ってきました。
前回登場した“ちっちゃい島村さん”が再び登場。開発室のある岡山から8時間以上かけて電車に揺られ…
タクシーを乗り継いで…
ようやくお届け先に到着! 遠かった…。
お邪魔したのは依頼人・熊澤舞子さんの職場、東北公益文科大学(山形県)の敷地内にあるコワーキングスペース「UNDERBAR」。ここ数年ますますニーズが高まっているコワーキングスペースですが、庄内地方ではここが初なのだとか。舞子さんは大学職員として「UNDERBAR」の運営に携わっています。
室内には参考資料やプリンター、wifiや電源など設備も整っていてとにかくキレイ。学生さんだけでなく社会人やフリーランスの方の利用も多いそう。大学内にこんな場所があるなんて羨ましい…!訪れたこの日も、ここでお仕事している方がいらっしゃいました。そこに
鎮座する、ちっちゃな島村さん。
依頼人の到着を今か今かと待ちかまえます。まだかな〜。
再登場! 改めまして今回の依頼人、舞子さん。まずは笑顔でツーショット。
ちっちゃい島村さんを開けると
中にはフリーズドライしたひょうの煮物と納豆汁が2食ずつ。
今回もパッケージは島村さんオリジナル。じっと見つめる舞子さんが「実家のお皿だ!」とひと言。そうなんです!島村さんが写真を撮影していたのは、パッケージのためでもあったんです。細かいところまで手が込んでいますね。
まずはひょうの煮物を実食。恐る恐る口に運ぶ舞子さん。果たしてその反応は…?
舞子さん:(もぐもぐ)わっ!おいしい…!すごい、ちゃんと食感が“ひょう”ですね。見た目もまさに実家でよく食べていたひょうの煮物そのもの。にんじんや油揚げが入っていて彩りがキレイなのも嬉しいです!実家のひょうの煮物と比べると甘辛で少し味が濃いめですけど、私こっちのほうが好きかも(笑)。これは白いご飯と一緒に食べたいな。
よかった! すごく喜んでもらえたみたい!さて納豆汁はいかがでしょうか!?
…すみません。ちょうどいい器がなかったためこんなサイズ不釣り合いなカップで…。一同心配そうな面持ちで見守る中、いざお湯を注いでみます。
お湯を入れた瞬間にふわっと広がる納豆の香り。「すごい!納豆の香りがする!」と舞子さんも思わずびっくり。そして、気になるひと口目を食べて召し上がっていただいたところ…
舞子さん:懐かしい味!これです、これ。納豆汁、久々に食べるんですよ。実家でよく食べていた時のことを思い出すなぁ…。あと具材の食感がすごいですね。特に芋がらと豆腐はフリーズドライだって言われなかったら絶対にわからないと思う。個人的に納豆汁に入っている納豆は“香りを楽しむもの”と思っているんですが、これは香りがちゃんとしているし、味にもコクがあってとてもおいしいです。
よかった〜納豆汁も大・好・評!!!!
実はこの後、取材スタッフもひと口いただきまして。「納豆をフリーズドライするってどうよ…(汗)」と実は内心不安だったのですが、口に入れた瞬間そんな不安は何処へやら。何これ激ウマじゃないですか。すごいおいしい。さすがフリーズドライの伝道師、感動するおいしさです…!
舞子さん:ごちそうさまでした♪納豆汁を食べたからか体がすごくぽかぽかします。職場のみんなにも食べてもらいますね!それにしてもフリーズドライってここまでできちゃうんですね〜。今まであまり食べたことがなかったので、このおいしさは驚きでした!
納豆汁とひょうの煮物に満足いただけただけでなく、フリーズドライ食品の魅力もしっかり伝わったようでほっとひと安心。舞子さんからは「100点満点です!」という嬉しい言葉もいただきました。これからもフリーズドライの魅力をいろんな人に伝えていきます!
というわけで、今回も依頼人の“思い出の味”を無事お届け完了。次なるお題は果たして…。皆さんからのオーダーをお待ちしています! あなたの忘れられない思い出の味は、何ですか?それではまたアマノ食堂でお会いしましょう。
\どんな注文もおまかせ!/
アマノ食堂では、島村さんにまごころ出前してほしいという方を随時募集中!必要事項と理由を添えて contact@amanoshokudo.jpまでメールでご連絡ください。
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【必要事項】
・お名前
・年齢
・職業
・電話番号
・お届けしたいor届けてもらいたい人との関係性(母親、息子、娘、恋人…etc.)
・お届け先(例)岡山県→東京都
・依頼したい料理
(例)岡山県に住む母親がつくる豚汁、遠恋中の彼女がつくる肉じゃがなど
・その料理にまつわるエピソード
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