まごころ出前 2016.05.20
アマノフーズの名物社員、島村雅人。“フリーズドライの伝道師”としてこれまで全国の依頼主のもとへ「思い出の味」をフリーズドライしてお届けしてきました。そして、前回はついに宇宙食を作る(!?)というビッグプロジェクトを成し遂げた島村さん。
次にどんなフリーズドライを作り届けるのか全世界が注目するなか、島村さんが手にしたのは1冊の本でした…。
〜ある日のABC開発室〜
島村さん:火星めしが終わって、やっと一息つけたよ…。大きなプロジェクトが終わったあとの達成感といったらないよね〜。次はどんなフリーズドライに挑戦しようかな!なにかおもしろいメニューないかな?
三村さん:本当に大変でしたね〜。おもしろいメニューですか?なんでしょうねえ。
『花のズボラ飯』(原作・久住昌之/漫画・水沢悦子)
島村さん:ん?三村さんこれなに?なんでマンガがここにあるの?
三村さん:あ、このマンガ、前にアマノ食堂のnarumiさんのコラムに載っていたので気になって読んでみたんですよ。そしたらおもしろくって。主人公の花ちゃんが冷蔵庫にあるものでパパっと作っちゃう料理が、ズボラなんですけどすごくおいしそうなんですよ〜。
島村さん:へ〜ズボラ飯ねぇ…。ん?この久住昌之さんって僕聞いたことあるよ!「孤独のグルメ」大好きなんだよ!え、うちの商品載ってるの?えぇぇ!なすのお味噌汁じゃん!「アヌノフーズ」って書いてあるけど、これ絶対アマノフーズじゃん!
あ…!? 僕、いいこと思いついちゃったかも。
(あーもしもし?ごにょごにょ…そう、その久住さん。ドラマ「孤独のグルメ」の最後に出てくるあの方!久住さん原作の「花のズボラ飯」っていうマンガに、アマノフーズのフリーズドライ食品が出ているんだよ。だからさ…うん、うん。そこをうまいことやってさ…そう?なんとかなりそう?お!よろしく頼むよー!)
三村さん:島村さん…?どなたに電話しているんですか?
島村さん:ふふふ。今回の「まごころ出前」は「花のズボラ飯」に出てくるメニューにしようかなと思いついちゃってね!で、せっかくだから久住さんに会えないかなーと思って、交渉担当にお願いしてみたんだよ。
三村さん:さ、さすが島村さん…!で、本当に会えるんですか?
島村さん:ふっふっふ(不敵な笑み)。
ちなみに…
久住昌之(くすみ まさゆき)さん
マンガ原作者、マンガ家、エッセイストとして活動しながら、デザイン・音楽など幅広い活動を行っています。「孤独のグルメ」、「花のズボラ飯」など話題のマンガの原作多数。テレビドラマ「孤独のグルメ」ではドラマの最後に原作者として出演。
数日後…
なんと本当に久住昌之さんがいらっしゃってくれました!
「孤独のグルメ」の大ファンだという島村さん。どんなルートを使ったのかは不明ですが、憧れの人に会えて笑顔炸裂!テンションMAXです。
島村さん:僕ね、本当にずっと大ファンだったんですよ!だから、すごくうれしくって!
久住さん:いやいや〜私も前からアマノフーズさんのフリーズドライ商品は食べていたので、うれしいです。
島村さん:本当ですか!今回はね、「花のズボラ飯」3巻になすの味噌汁が登場しているのを見つけて、何か一緒にできないかなと思いまして!ちなみにアヌノフーズってアマノフーズですよね!?
久住さん:そんなに喜んでいただけるならそのままアマノフーズと書けばよかったですね(笑)。以前知人に教えてもらってから、よく食べていたんですよ。なので、今回書かせてもらいました。
島村さん:いや〜光栄です!フリーズドライ食品も言ってしまえば、ズボラ飯なんですよ。お湯を注ぐだけですぐできちゃいますからね!
久住さん:そうですよね。僕も普段フリーズドライ商品を食べていますけど、いろいろありますよね。なんでもできるんですか?
島村さん:もちろん!僕の手にかかれば大体のものはできますよ!
と、おもむろにフリーズドライした焼きなすを差し出す島村さん。
久住さん:焼きなすもできちゃうんですか!? 焼きなすって作るの面倒なんですよね…。フリーズドライできちゃうなら、まさにズボラ飯じゃないですか!
もし「花のズボラ飯」に出てくるメニューをフリーズドライすることができたら、花ちゃんもびっくりの「究極のズボラ飯」になりますね〜。
島村さん:むむむ!それですよ!それやりましょうよ!「究極のズボラ飯」!一緒に作りましょう!
久住さん:えー!そんなこと本当にできるんですか?できるなら、ぜひ食べてみたいですけど…本当にできるんですか??
島村さん:僕にフリーズドライできないものなんて、ありませんよ!(キリリッ)
少し半信半疑な久住さんに、テンション高め(高すぎ)な島村さんがいつも以上にグイグイ行きます。
これまで3巻発売されている「花のズボラ飯」。その中で紹介されているレシピは49皿。その中で、どの料理をフリーズドライにするかを決めることに。
島村さん:この中で特にお気に入りのレシピってあるんですか?
久住さん:うーん。1巻は割と思い入れのあるものが多いかな。「シャケトー」(1巻:1皿目)、「ポトケチャミルクミソ鍋」(1巻:8皿目)、「3日目のカレー」(1巻:4皿目)とかね。あと、「ユーズリ・バージル・ペペロンチーノ」(3巻:35皿目)・なんかも個人的に気に入っているかな。「豆腐めんたいこ丼」(2巻:18皿目)のフリーズドライは個人的にちょっと見てみたいかな(笑)。でも、こんなのさすがに無理でしょう?
(3日目のカレー)
島村さん:基本的には何でもできますよ〜。ただ「3日目のカレー」がなあ…。いや、カレーはできるんですよ!ただ、この鍋にこびりついたというのが…。
久住さん:そうですよね(笑)。それ以外はできるんですか?
島村さん:できますね〜。でも、どのレシピも本当におもしろいですよね。よく思いつくな〜って。どうやって考えているんですか?
久住さん:だいたいが締め切りが来て「やらなきゃ、やらなきゃ」と考える感じです(笑)。本当に冷蔵庫にあったもので作っていることも多いですね。花ちゃんの家にときどきもらいものの明太子があったり、いいバジルソースがあったりしますけど、それも実際に僕の家にもらいものであったやつ(笑)。
だから、フィクションだけど、半分ドキュメンタリーのような感じですね。家ではほとんど料理しないので(笑)。
島村さん:そうなんですね!久住さんが花ちゃん自身というか!
久住さん:そうですね。料理もできないし、面倒くさいしどうしよう…と思ってレシピを作る感じ。以前、女の人が主人公のマンガ原作を担当したことがあるんですけど、それがなかなか難しかったんですよ。主人公の女性像が自分とあまり重ならなくて。だから、今回は中身が男のような女の子にしたんです。花は僕自身と遠くない人物像なのでやりやすいですね。ペペロンチーノ作ってみたけど、これも入れちゃう?柚足しちゃう?みたいな適当な感じ、僕もやっちゃいますからね。
(ポトケチャミルクミソ鍋)
島村さん:その際たるものがポトケチャミルクミソ鍋なんですね。
久住さん:そうそう!勢いでどんどん入れちゃってね。
豆腐めんたいこ丼については、豆腐と明太子って合うんじゃないかな、ってくらいの軽いノリ(笑)。ねぎも合うんじゃないかな〜と足していった感じですかね。
島村さん:ご自身で実際に作っているんですか?
久住さん:もちろんもちろん。自分で作りますし、作画の水沢さんにも実際に作ってもらうようにしていますよ。
島村さん:なるほど〜。
グルメマンガの原作を多く手がけ、ドラマ「孤独のグルメ」では自らもお店でいろいろなお料理を楽しむ久住さん。グルメな久住さんはどのようにおいしいお店を見つけているのか気になるところ。
島村さん:僕は「孤独のグルメ」が本当に大好きで、実際に行ってみたりもしているんですよ!僕も食のお仕事をしているので、おいしいものを食べたいんですけど、いいお店を見つけるのって結構大変ですよね〜。口コミサイトなどを見て、高評価のお店でも「なんだかな〜」ということもあるし…。
久住さん:僕は口コミサイトを使わないんですよね。口コミを見てから行くと、どうしても食べる前に味を想像しちゃうから。そういう頭で行くと、素直においしく感じられなくなっちゃうんだよ。ストーリーを知ってから映画を観るようなものじゃないですか。
前情報や先入観なしで行くと「このお店はどれがおいしんだろう。どれ食べたらいいだろう?」というメニューのチョイスから始まるじゃないですか。すべてのメニューを食べられるわけじゃないから真剣に選ばざるをえないけど、それが大事だと思うんだよね。頭がフラットな状態でメニューを選んで料理を味わいたいから、口コミサイトは見ないです。
島村さん:そうそう。あ〜わかる気がします。
久住さん:口コミを見てからお店に行くと、この店がいいかどうかを自分の頭で考えなくなっちゃうんですよね。お店の前で「この店サイトで☆いくつだろう」って見て確認することもできるけど、その時点でお店の良し悪しが決まっちゃうようなものじゃない。そうなっちゃうと、いいお店を見つける感覚も鍛えられないし、“店との出会い”みたいなドラマも見つけられないと思うんだよね。
島村さん:僕も「なんとなくここ気になる」で入ったお店がすごくよかったっていう経験ありますね。
久住さん:そうなんですよね。「あ、ここ何だかよくわからないけど気になる」で入ったお店って、そんなにおいしくなくても“おいしいだけじゃないドラマ”が見つかったりするんだよ。
僕はおいしいマンガを書いているんじゃなくて、おもしろいマンガを書いているんです。僕がやりたいのはドラマを作ることだから。すごく迷ってお店を選んで、メニュー選びでさらに迷って、それを食べて…ということを何度も繰り返して何がわかるかっていうと、おいしい店がわかるようになるんじゃなくて、自分が何を好きなのかがわかってくるの!そうなると誰かの評価や口コミはどうでもよくなってくる。大多数が「おいしい」と言っても自分の好みではないなとか、流行っていないお店でも自分は好きだ!とかね。
島村さん:そうですね。ただ、僕の場合すごく迷ったらチェーン店の安定した味に決めちゃったりしますけどね。
久住さん:それもありますよ~。
島村さん:新しくトライして失敗することもあるけど、それも楽しいですしね。
久住さん:地方の古いお店だと、長く続いているならおいしいんだろうなって察しがつくけど、やたら綺麗で大丈夫かな?と思ったところが古くからあるお店で、二代目が改装して綺麗になったばかりだったということもあったりしてね。迷ったり失敗を繰り返していくと、そういうのもだんだんわかってくるんですよね。
島村さん:僕もいろいろなお店での失敗と成功を繰り返して、店名に「キッチン●●」とか「グリル●●」って入っているとおいしいお店の確率が高いということが最近わかってきましたね(笑)。
久住さん:ありますね。店名はやっぱりヒントとしては重要ですよね。この間、地方に行ったとき「萬来軒」というお店があったけど、ここ数年でできたお店に「萬来軒」ってつけないでしょう(笑)。で、入ってみたらやっぱり60年くらいやっている老舗の店でおいしいわけですよ。店先には「ラーメン」しか書いてないけど、お店の中に入るとメニューが60種類くらいあって、ひっきりなしに地元の人が訪れるお店んですよね。どのメニューもおいしいことをみんな知っているから、わざわざ店先にメニューを掲げる必要がないってことで。
でも、そこを試しに口コミサイトで見てみると「ここのラーメンは◯◯系の◯◯」みたいにラーメンだけの口コミしか書いてないわけ(笑)。それを見てお店に来たら、そもそもラーメンが目的になっているだろうし、そのラーメンが食べたくて来るから他のメニューを見ないわけよ。その周りにおもしろいメニューがあるのに。
島村さん:岡山に唐揚げ定食がおいしいラーメン屋があるんですけど、確かに口コミサイトで見たラーメンを求めて来たら、唐揚げ定食に目はいかないかもしれないね。藤沢にある、塩焼きそばがやたらおいしい喫茶店とかもそうだな~。
久住さん:群馬にもソース焼きそばがおいしい定食屋がありますよ!そういう、メインじゃないメニューのおいしさは口コミサイトからじゃわからないことが多いですよね。
それにしてもお互い食べること好きですね〜(笑)。まあ、食べること好きじゃないとできない仕事ですもんね〜。
島村さん:それはそうですよね!
…と、お二人の食談義は止まりません。
(ちなみにこの日は島村さんのおすすめのお店でランチをいただきました!)
お話を戻しまして…今回のプロジェクトで作るズボラ飯のメニューをどれにするのかどうかを決めちゃいましょう!
島村さん:もうね、久住さんとこうやっておいしいお店の話ができるなんて、うれしすぎて!つい盛り上がっちゃった。え〜と、そしたら今日のお話に出たズボラ飯を実際にいくつかフリーズドライしてみて食べてもらおうかな。
作るメニューはこの4品でいいですか?「これ本当にできるの?」みたいなちょっと挑戦的なものでも僕は燃えるんですけどね!
久住さん:いやいや、すでに「本当にできるの?」という感じですよ!全然想像できてないですから(笑)。
ここからがフリーズドライの伝道師・島村さんの腕の見せどころ!次回は、久住さんと共にフリーズドライの工場を見学!普段見ることのできないフリーズドライ製造の工程をお見せします! それではまた、アマノ食堂でお会いしましょう。
■参考書籍
花のズボラ飯(1〜3巻)
著者: 久住昌之 (原作)/水沢悦子(漫画)
出版社:秋田書店