まごころ出前 2016.07.01
アマノフーズの名物社員、島村雅人。“フリーズドライの伝道師”としてこれまで全国の依頼主のもとへ「思い出の味」をフリーズドライしてお届けしてきましたが、今回は特別編!島村さんが憧れる人気グルメ漫画家・久住昌之さんと共にマンガ「花のズボラ飯」(原作・久住昌之/漫画・水沢悦子)のメニューをフリーズドライし、「究極のズボラ飯」を作ることに!
前回、久住さんに試食&感想をいただいて、さらなる高みを目指し島村さんは改良に励みました。
真剣な顔で試作をしている島村さん。これは期待できそうですね!
…からの、キメ顔!表情に自信が現れていますね。これはこれは間違いなく期待できるやつですね。
そんなこんなでできあがったのが、こちら!
じゃーん!パッケージも「花のズボラ飯」特別バージョンです。
さっそく、久住さんの元にお届けしてきました!
久住さん:わー本当に完成したんですね!パッケージまで花ちゃん仕様になっている!うれしいな〜。さっそく食べてみてもいいですか?
島村さん:もちろんもちろん。では、まず「シャケトー」(1巻:1皿目)から行ってみましょうか。
久住さん:そうそう。これはラスク風にしてもいいねっていう話をしていたんですよね。いただきます!…おお、口の中の水分が吸われていくんですけど、これはきっと今、口の中でフリーズドライが復元している状態ってことですね。おお〜!あとから味がくる。おいしい!
島村さん:前回はレシピ通りやったんですけど、ペーストの伸びがあまりよくなかったので、今回は上に塗る具材に水を足しました。そのおかげで、伸びが良くなりましたし、塩分もちょうどよくなったかと思います。ペースト部分だけでも作ってみたんですが、やっぱりパンにのせることでパンが油分を吸着するので、この状態の方がおいしくできましたね。
あと、裏面を見てみてください。
久住さん:わー焼き目がついている!これは間違いなくトーストですね(笑)。
島村さん:原作通り、ちゃんとトースターで焼いて作っていますからね!食パンを焼くことで、よりロースト感を出すことができました。
久住さん:なるほど!確かに前回よりしょっぱさが軽減しておいしい。あとから味がじわじわきますね。ペーストをフリーズドライにしてパンに塗るのもいいけど、完成形でフリーズドライしたこれはおつまみみたいでいいですよ。ビールに合いそう!
島村さん:前回より油っぽくない分、若干乾燥しているのが気になっていたんですが、おいしいとの言葉で安心しました!
久住さん:これはクセになりますね。塩味があとからふわっときて。コンビニに売っていたらビールと一緒に買っちゃうよ!
今後どうですか?パンのフリーズドライ商品の発売なんて。
島村さん:パンはラスクやクルトンなど、すでに乾燥したものがあるのでわざわざフリーズドライする必要はないかなと思ってるんですよね(笑)。でも、今回のように具材をトッピングして焼き目を入れてフリーズドライするというのは、ありかもしれないですね!今後、ラスクの進化系になりそうな感じかな〜。水、またはお湯で湿らしてもおもしろいかも…!?これは引き続き課題として検証しますね!
久住さん:ぜひ、お願いします!実は、シャケトーはきっと無理だろうなってことで、最初は候補にも入れないでおこうと思っていたんですけど、ダメ元でお願いして良かった!できるとおっしゃったときは驚きましたね。
トーストなのにパンを焼かないし、シャケとマヨネーズを混ぜることもしない。なんにも作ってないズボラ飯!いいんじゃないですか?お酒ならワインにもビールにも合いそうだし!
島村さん:いや〜よかった!よかった!続いては「ポトケチャミルクミソ鍋」(1巻:8皿目)に行ってみますか。今回は少し人参を多めにして彩りを良くしています。あと、これはね…本当にゴールがないから悩ましいんですけどね(笑)。
久住さん:答えのない味に挑戦してくださるなんて、うれしい限りです(笑)。
島村さん:とりあえず、なんでもフリーズドライすることはできるので!さっそくお湯を入れてみますね。
久住さん:お湯を入れて一瞬でできるのは何度見てもおもしろいんだよな〜。本当に早い!ちゃんとローレルが入っているのもリアルでおもしろいですよね。花ちゃんも入れていたもんね(笑)。
いただきます!うわ。鶏肉大きいですね〜。…すごい!食感も味も鶏肉そのものです!前回お肉のフリーズドライを食べさせていただいたけど、肉がこんなに美味しくフリーズドライできることを未だに理解できていないです(笑)。鶏肉がとにかく大きくて食べごたえがあるし、僕の好きなキャベツもたっぷりでうれしいですね。
島村さん:前回はカブを入れたんですが、今回はキャベツにしてみたんです。キャベツお好きということでよかった〜!
お肉は赤身や鶏ささみはフリーズドライできるんですけど、あまり大きいと復元しないものがありますので、具材のフリーズドライ適正と食べやすさを考えながら、大きさを決めました。これくらいの大きさならできますよ!
味はどうですか?マンガにあったようにコンソメを使わず、野菜と鶏肉ベースのスープに、ケチャップと味噌で味をととのえてみたんですけど。ゴールがないから味の加減が難しくてね!コンソメ入れちゃいたい!という衝動と常に戦いながら味付けしましたよ〜。
久住さん:味、いいですよ!花ちゃんも「もう二度と作れない」って言っているので、そういう加減でいいんですよ、この料理はね(笑)。
島村さん:ちょうど、まごころ出前の企画でポトフを作る企画があったんですよ。そのおかげでポトフ自体は作ることができるとわかっていたので、野菜の大きさについては目処がついていたんです。「これはできるぞ!」と思っていざマンガをよ~く読んだら「え!?コンソメ使わないの!?味噌!?ケ、ケチャップ!?」って焦りましたよ(笑)。味噌って何味噌よ!?量は!?と、いろいろ悩みながら作りましたよ〜
久住さん:これ、お湯を入れて時間が経つにつれて徐々に味が変わってきますね?野菜の味があとから出てきてるのかな?
島村さん:野菜に味が浸み込んで、濃くなったように感じるのかもしれないですね!
久住さん:具だくさんの食べるスープというか。女性は好きでしょうね。固形の状態だと何が入っているのかわからないけど、お湯を注ぐとこんなに具材入ってたの!?って驚くよね。もう、意味がわからないもん(笑)。
島村さん:ゴールのない味だったんですけど、喜んでいただけてよかった〜。では、じゃんじゃん行きましょう!続いてはパスタ!
「ユーズリ・バージル・ペペロンチーノ」(3巻:35皿目)
久住さん:前回もすでにパスタおいしかったんだよな〜。お、やっぱりおいしいですね。
島村さん:ちょっと塩味が強くないですか?
久住さん:そうですか?すごくおいしいですよ。これ、ペロッと食べられちゃいますね。香りもいいです!
島村さん:前回は柚の皮が大きかったので、少し細かくしました。あと、油の量を少し減らしています。でも、もう少し香りが強くてもいいかな?
久住さん:でも、食べるとふわっといい香りがするのでこれくらいでもいいと思いますよ。しかし何度見ても、この一瞬で形がなくなって「料理」になるのは驚きだよね。この固形物の中に柚や唐辛子がすでに入っているんだもんね。で、味も変わらないんだもんね。
島村さん:唐辛子を使用しているスープは他にもあって、唐辛子はあまり辛味が落ちることはないんです。辛味成分も原料の種類によって向き不向きの適性があるんですよ。
久住さん:そうなんですね。ピリッと唐辛子が効いていておいしいな。そういえば、油分のフリーズドライは難しいと伺ったんですけど、これって油ですよね?できるんですか?
島村さん:油単体でのフリーズドライが難しいんですね。なので、食材の組み合わせ等、いろいろと工夫をしています。久住さんもだいぶフリーズドライに詳しくなってきましたね!
久住さん:確かにそうですね(笑)。お、最後は「豆腐めんたいこ丼」(2巻:18皿目)ですね。これ前回は、見た目の忠実さにかなり驚いたんだよな〜。明太子の粒が現れる感じがすごいんですよね。お湯を入れると手品みたいに現れるんだよ〜。
お湯を注ぐと…
明太子のつぶつぶとふわふわの豆腐がね!出てきた出てきた!
島村さん:こんなに喜んでもらえるなんて、作った甲斐があります!今回は前回の試作にネギを加えて、彩りをよくしてみました。あと、前回は味が濃すぎたので、少し薄くしています。
久住さん:うわ、これおいしい!このメニューが1番びっくりですね。見た目も味も驚かされます!
島村さん:明太子はフリーズドライしても戻りやすいんですよ。一般的な明太子製品だと割と粒がバラバラになってしまうものが多いんだけど、うちではある程度かたまりで戻るような技法があるので、バラバラにならないようにして形や食感を残すこともできるんですよ。今回はぐちゃぐちゃにしてしまうので、その技術を見せられなかったのが残念です(笑)。
久住さん:本当にいろんな工夫があるんだな〜。新しい商品ができる度に新しい技術も生まれるんですか?
島村さん:そうですね。新しい技術を検証して、それを組み込んで開発することもあります。そうなると検証で時間がかかるので半年くらいはかかっちゃうかな〜。味や食感はもちろん、瞬時に戻る方法などを検証しなくてはいけないのでね。今回は過去にやったことのある技術で作ることができたのですぐできましたが、ゼロからだったら最低3ヶ月はかかっていましたね。
久住さん:なるほど〜!どうしよう、豆腐めんたいこ丼おいしくて止まらないな。豆腐のぐちゃぐちゃ感、明太子のつぶつぶ感がちゃんと出ているんですよね〜。おいしいし、それぞれ食感や味がちゃんと残るというのが僕としては不思議でなりません(笑)。
バターやかつお、明太子の香りもちゃんと残っていてね。すばらしい!そっくりっていうか、もうそのものだよ!ごはんにかかった感じも完璧ですよね。
島村さん:バターやかつおの風味はすぐには落ちません。味噌汁も”だし”が命ですからね!そこはフリーズドライの得意分野のひとつです。ですが、賞味期限をすぎるとやはり風味が劣化するので、期限内においしく食べてもらいたいですね。
久住さん:確かにフリーズドライ食品って風味がちゃんとあるんだよね。これは結構意外なことだったんですけど、それがおいしさでもありますよね。
うん、これコンビニで売っていたら仕事帰りに買って食べちゃうよ!帰ってごはんがあれば、お湯沸かすだけでこんなにおいしいものを食べられちゃうなんて、完璧なズボラ飯ですね。
前回も相当おいしかったので、ここからどう改良するんだろうと思っていたんです。でも、確実に進化していますよね。どれもそれぞれ違う方向で驚きがあって、フリーズドライって楽しいですね。
島村さん:驚いてもらうのが僕の仕事ですから!
久住さん:本当になんでもできちゃうんだもんね〜フリーズドライってすごいよね。おいしいし、すぐできるし。フリーズドライはまさに究極のズボラ飯ですね。その裏には大変な苦労もあるようですが!今日は、とってもおいしく楽しいものを食べさせていただき、ありがとうございました!
島村さん:こちらこそありがとうございます!なにかフリーズドライして欲しいものがあれば、いつでも言って下さいね!
本当はパスタやごはんもフリーズドライで作って完璧なズボラ飯を作りたかったんですけどね。お米もパスタもなかなか難しいんですよね…って、難しいなんて言っちゃいけないんですけど(笑)。できないことをするから驚いてもらえるんだもんな。これからも驚いてもらえるようなおいしいフリーズドライを作っていきますね!
久住さんに「うまい!」と言わせる「ズボラ飯」のフリーズドライを作ることが目標だった島村さん。島村さんのそんなまごころに加えて、フリーズドライの魅力も久住さんにお届けすることができ、ますますフリーズドライ商品の開発にスイッチが入ったみたいです!次回は何をお届けするのでしょうか?それではまた、アマノ食堂でお会いしましょう。