読み物 2016.03.11
第4話「おじいちゃんの家は…ゴミ屋敷(!?)」
【登場人物】
おかっぱちゃん…28歳、イラストレーター。いつもふざけてばかりいる末っ子。趣味はひとり旅。
まちこ(母)…60歳、会社員。少女のようなかわいい人。家族のなかでは“天然ボケ”で有名。趣味はガーデニング。
菜村(父方の祖父)よしこ(父方の祖母)…東京で俳句の講師をしている祖父と、それを支える祖母。
第4話「おじいちゃんの家は…ゴミ屋敷(!?)」
今日はわたしの父方の祖父母の話をしたい。
わたしの家系はご長寿ばかりで、ありがたいことに両家とも祖父母は健在。
祖父母は結婚してから東京に家をかまえ、病気もせず、夫婦で元気に暮らしている。
祖父は大正生まれ。
戦時中、出兵したにもかかわらず、現代まで生き抜いたとても運の良い人で貧しかった頃の経験もあってか、わたしが幼い頃から祖父は「食べ物を粗末にするな」「捨てるなんて、もったいない」と、物をとても大切にすることの重要性を家族に伝えていた。
「昔は米すら食えなかったんだ」と祖父は言う。
戦時中の体験を聞いて、自分に置き換えてみると、現代人はなんて恵まれているのだろうと思う。
そんな祖父母の家は、とにかく「物」で溢れている。
古本、着古した服、食器類、新聞、どこかで買って来たお土産の数々…。そのほとんどが使われず、仕舞われたまま、箪笥の肥やしと化している。それだけで収まれば良いが、なかなかそうもいかない。
祖父母は友人が多く、広く交流しているのでもらうものの数も人並みではなく、家は倉庫と貸していた。年を取るにつれ、片付けるのも更におっくうになり、親戚が集まろうものなら足の踏み場が無くなってしまうほど。
とにかく「もったいない」をキーワードに物を貯め続けてしまうので、食品のストックもすごい。そのため、賞味期限切れの食品があらゆる場所から出てくる。
”祖父母の家で何か口にする時は慎重にならなくてはいけない”
家族の間では、それが密かなルールになっていた。
ある昼食時のこと。祖母が焼きそばを炒めて上からウスターソースをかけると、どろっとしているはずのソースが、まるで醤油のように液体になってシャーッと流れ出た。
…ん?おかしいな?
賞味期限をよーく見ると…なんと11年前のウスターソース!
そんな話はまだまだある。
お年寄りは冷えに弱い。年がら年中ストーブを出している祖父母の家で、湿気の多い6月、出しっぱなしにしていた、これまた賞味期限切れの牛乳がストーブの熱で発酵して突然爆発!部屋中に牛乳が飛び散り、家族全員牛乳まみれになったなんてこともあった。
そして、先日祖父母の家に母と2人で遊びにいったときのこと。
お茶を飲みながらみんなでテレビを見ていると、祖父が「お菓子でも食べたら」と年季の入った木製の小箱からチョコレートを出してくれた。
「あら、おいしそう!」無類の甘い物好きの母は喜んでいる。
わたしも小腹が空いたので、食べようと袋をむく。
すると、何かがおかしい。
チョコレートが……動いている!?
よく見れば、チョコレートの中から小さな茶色い虫が!!!!!
「ぎゃっっ!」
わたしはあまりのショックに思わず、飛び退いた。
わたし:「お、、おかあさん?チョコレート食べた?」
母:「うん。なんで?」
わたし:「虫、虫がいる。チョコレートに…虫がいたよ…」
母:「え!? 嘘でしょ?いやだ~よく見えないわよぉ~!」
気の毒なことに母は老眼だった。
こんな珍事件がいくつも起こるくらい、祖父母の家には戸棚の奥底に古い食材がまだまだ眠っているに違いない。未だ祖父母の家にいくと、ついつい食材の賞味期限を気にしてしまう自分がいる。
次回は「天然!母のガーデニング事件」をお送りします。
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