読み物 2016.03.25
第5話「天然!母のガーデニング事件」
【登場人物】
おかっぱちゃん…28歳、イラストレーター。いつもふざけてばかりいる末っ子。趣味はひとり旅。
まちこ(母)…60歳、会社員。少女のようなかわいい人。家族のなかでは“天然ボケ”で有名。趣味はガーデニング。
第5話「天然!母のガーデニング事件」
わたしの実家は、横浜にある一軒家でわりと広めの庭がある。
両親はガーデニングが好きで、子育てがようやく落ちついた頃から家の庭を暇さえあればいじってきた。実家の庭にある植物、花の種類は30種以上、ハーブ類を合わせたら50種はありそうだ。
庭に隙間さえあれば花を植え始めるので、その結果、もう植える場所が無くなってしまっている。それでも両親の”花を植えたい”気持ちは収まらず、次から次へと苗を買ってくるので、実家の庭はちょっとした植物園状態に。
特に母・まちこは花が大好きで、毎年母の日が近づくと「ね~母の日は花の苗が欲しいな~」と、母は舌をペロリと出して、照れ笑いしながら、わたしにおねだりをしてくる。
わたしは大人になってから、母に贈り物で花以外のリクエストをもらったことがない。それくらい彼女の頭の中は花でいっぱい。このままいけば、母の頭にそのうち花でも咲きそうだ。
還暦を過ぎたというのに、母は未だに少女のようなあどけなさがある。
わたしの母はかわいらしい人。
おかっぱちゃんが目撃した母の天然エピソード
しかし、そんな母にも唯一欠点がある。
それは“天然”であること。
あれは数年前の夏、実家の庭でせっせと庭仕事をしている母が玄関から部屋に入ってきた。「かゆい~かゆいよ~蚊に刺された」ボリボリ腕をかきながら眉間に皺を寄せている。
庭のある家には必ずと言っていいほど夏は蚊が大量発生する。長袖、長ズボン、帽子に軍手を装着しても、結局からだの数カ所は蚊の餌食になってしまう。毎回その調子なので、わたしは読書をしながら「かゆいの大変だね~」と適当に聞き流していた。
母はかゆみ止めを探し始めた。
「かゆみ止めないかしら、キ◯カン、キ◯カン…」
「あ~あった、あった!」大きな声で喜ぶ母。
しばらくして
「出ないなぁ。出ないなぁ…。な〜んだ、もうないじゃない!」
かゆみを止めたい一心で、少しイライラしている様子。
ふと、母のほうへ目をやると…
母は、某栄養ドリンク”リポ●タンD”の空きビンの口をせっせと腕にこすりつけていた。間違いない、それは紛れもなくただの空きビン。
「お母さん?大丈夫!?…そ、それ、キンカンじゃないよ」
わたしの一言でようやく事実に気付いた母は
「やっだ~間違えちゃった!!!」と、恥ずかしそうに舌をペロリと出してみせた。
本物だ。正真正銘の“テヘペロ”だ。
まさか、母親でテヘペロを体験することになるとは…。
テヘペロを使いこなす母、現在60歳。
天然エピソードは数えあげたらキリがない。
そのうち天然ボケから、ただのボケにならないように願うばかりである。
あぁ、これからが心配になる娘であった。
次回は第6話「現役!おばあちゃんはスナックのママ」をお送りします。
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