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【第8回】シンプルさが深みになる。ミニマリスト味噌汁

味噌汁、飲んでますか?
発酵デザイナーの小倉ヒラクです。

最初に皆様に言っておきたいことがあります。

 

僕、ミニマリストなんです。

 

インテリアもファッションも、本棚もCD棚も「良い物だけを、最小限。」という、無印良品のキャッチコピーみたいな感じでコーディネートしているお洒落野郎なんです。

※ミニマル=最小限

 

お気に入りのジョン・スメドレーのタートルネックを着て、ヨーゼフ・ホフマンのソファに座り、ビル・エヴァンス・トリオのリバーサイド版のLPを聴きながら、リチャード・ブローティガンの『西瓜糖の日々』を読む。

 

そんな僕のライフスタイルを定義付けるならば、そうだな… ミニマルかつ上質、無造作にしてシャレオツ、支払いは分割。と言ったところでしょうか(←韻を踏んでみた)。

 

そんな僕ですから、味噌汁も当然ミニマリスト的なわけで、特別に皆様に「ミニマリスト味噌汁」のレシピをお教えいたします。

 

 

文豪、池波正太郎が愛した味噌汁

それでは今月の味噌汁レシピ、いってみよう!

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レシピ名:定番をミニマルに組み合わせた根深汁

 

レシピ(2〜3杯ぶん)

味噌:赤味噌(熟成の深い米味噌)大さじ2

ダシ:ダシ用乾燥昆布 水0.4Lに対して5g(中ぐらいの板2枚程度)

具材:長ネギ

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パチパチパチ……!(←スタンディングオベーション)

「そうか、ヒラクくん。ついに定番を披露する気になったようだな…」

「レシピを読み上げるだけでその美しさ、簡潔さに失神しそうになります」

 

と、味噌汁業界はもちろん、かの文豪・池波正太郎も愛した「根深(ねぶか)(じる)」という超ド級のクラシック!第8回目にしてようやく登場…!(もっとはやく出せよ)

 

さてそれでは、レシピの解説。

 

◆王道の昆布ダシをたっぷりと

かつおぶしと並んで味噌汁の王道である昆布ダシをチョイス。たっぷりの量でしっかり旨味を出す「一番ダシ」スタイルです。ちなみにこのダシの取り方はどんな味噌や具材にも合うので、ぜひ覚えてくださいね。

 

◆熟成赤味噌で味を引き締める

味噌はこれまた王道の赤(米)味噌。以前解説したように、1kg/1,000円を目安に丁寧につくられた味噌を選びましょう。深いコクと塩味が昆布の旨みとマッチします。

 

◆薬味ではなく、主役としてのネギ

具材は長ネギオンリー。長ネギといえば細かく刻んだ薬味のイメージがありますが、このレシピでは大きく切ったものを主役として使います。ちなみに他の具材は一切無し。限られた要素だからこそ、ダシ・味噌・具材のハーモニーに耳を傾けることができるのです。

 

それでは、実際につくってみましょう。

 

作り方はとってもシンプルかつ簡単。

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まずはダシ取り。水に昆布を入れ、弱火〜中火で10分程度コトコト煮込んでいきます。

(時間に余裕がある時は、30分程度昆布を水に戻してから煮込み始めると、さらに上質なダシが出てドヤ顔ができます)

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長ネギの白い部分を4〜5cm程度の長さにザクザク切っていきます。

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ネギを鍋に投入。さらに弱火〜中火で10〜15分程度煮込んでいきます。

 

【ポイント】
絶対に沸騰させないこと!焦げた味と臭いが出てきてしまいます。

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トータル20〜25分経過したところで昆布を引き上げ…

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お味噌を溶き入れていきます。

 

【ポイント】
風味を損ねないよう、いったん火を止めて味噌を溶き入れると「わかっている人」っぽくて、サードウェーブ的にカッコいい(←ホントかよ)

 

味噌が溶けたら、器に盛り付けて完成!

 

 

その味噌汁の調べ JAZZトリオの如し

 

それでは早速一口すすってみてください。

 

(ズズッ…)

 

「なんだ…、この味噌汁は…? 赤味噌の重厚な塩味と、抑えのきいた昆布の旨み、そしてトロトロに甘いネギのコンビネーション…ふ…深ェ…!

 

ご明察。これは冒頭に紹介した「ビル・エヴァンス・トリオのリバーサイド版LP」のごとき比類なき深みなのです。

 

繊細かつパッションに満ちたビル・エヴァンスのピアノ=赤味噌であり、即興的に見えて確実にリズムを下支えするポール・モチアンのドラム=昆布ダシであり、叙情性に満ちた甘い旋律を奏でるスコット・ラファロのベース=長ネギ…

 

往年のJAZZファンの多くが指摘するように、なぜ「リバーサイド・レコード版のライブLP」が特別なのかというと、ライブ後、事故で不慮の死を遂げるスコット・ラファロの「饒舌に歌うベース」の存在なのですよ。

 

同様に、なぜこんなにもシンプルな根深汁が至高のグルメとして成立するかというと、普段は脇役を演じているお椀のなかに主役として鎮座する長ネギのパフォーマンスにその秘密があるのです。

 

「…なんかコイツ、めんどくせぇ!!」

という突っ込みは、味噌汁とともにそっと飲み込んでくださいませ。

 

それでは次回「ウチの数だけ味噌の味。変わり種味噌の秘密に迫る!」でお会いしましょう。発酵デザイナーの小倉ヒラクでした。

(ちなみにアイキャッチの写真ですが、ミニマリストを目指したつもりが“渋谷系をこじらせた人”みたいになっちまったぜ)

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