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【第11回】春の訪れはMYみそと共に。サードウェーブ系手前みそレシピ

味噌汁飲んでますかー!?発酵デザイナーの小倉ヒラクです。

 

僕が「手前みそ講座」に関わりだしたのは今から約7年前のこと。最初は地域のおかあさんたちとやっていましたが、ここ1〜2年、若い人たちがお洒落に手前みそを楽しむようになってきました。

 

これってさ…

味噌界のサードウェーブなんじゃないの?

 

「またヒラク君が何か適当なこと言い出したぞ」

「何がファーストで、何がセカンドか説明したまえ!」

 

では説明いたしましょう。

ファーストウェーブは、平安時代。主に坊主や貴族の間でウェーブしました。西暦701年の「大宝律令」に記されている、大陸から伝わってきた「未醤(みしょう)」が日本の味噌のルーツと呼ばれています。この頃の味噌は一般的な調味料というよりは薬に近く、庶民には手の届かない貴重品でした。(ちなみに現在の八丁味噌に近いものだったよう)

 

セカンドウェーブは、戦国時代。主にウィキッドな武士の間でウェーブしました。天下統一を目指して遠征するときにマストなソウルフードとして味噌が重宝されました(腐らないし、持ち運びやすい)。この頃に伊達政宗は「仙台みそ」、徳川家康は「八丁味噌」というように、味噌の「ローカルブランド」が確立していきました。

 

そしてやってきた現代日本のサードウェーブ。アーバンでいなせなヤング達がクールカルチャーとして味噌をDIYするようになったんだZE!

 

…って、タイムスパン長すぎだろ!!

 

ということで、今回は当連載の仮想読者である妙齢のスサノコ(←仕事や人間関係が慌ただしすぎて若干生活が荒んでいる女子及び男子)でもなんとかイケる「ハードル低い&あんまり待たなくてもできる手前みそレシピ」をお届けします。

 

それではまずこのアニメからはじめましょう。

 

 
 

まずはアウトライン

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用意するもの:仕上がり約1kgぶん

 

乾燥大豆…120g(約4/5カップ)

麹(こうじ)…500g

塩…90g

 

大きめのボウル

ザル

計量カップ

大きめのタッパー/琺瑯(ほうろう)容器

マッシャー(なくても可)

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みそはどのようにして作るのか?一言でいえば、

 

煮大豆と塩と麹(こうじ)を混ぜてペーストにし、しばらく熟成させる

 

実はこれだけ。しかしなんとなくハードルが高そうに感じるのは以下の2つの理由。今回のレシピはそのハードルを低くするように工夫しました。

 

1.専用の調理器具がいりそう→少ない量でつくると特別なものはいらない

2.何ヶ月も待つのがイヤだ→分量を考えると2〜3ヶ月で完成する

 

週末寝て過ごしたぐらいじゃ抜けない「骨髄にへばりついた疲れ」を抱えるスサノコにとって大事なのは「低いハードルを越えるとサプライズなリターンが返ってくる」という「小学生の時に守ってあげた弱虫男子が今はイケメンモデル/売れっ子バンドマンになって自分の前に現れる(しかもなぜか自分にベタぼれ)」みたいな仕掛けが必要かなと思うわけです。

 

 

【STEP1】大豆を煮る

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まずは大豆を煮る準備。スーパーの乾豆コーナーに普通に売っているヤツで大丈夫です。

 

大豆をボウルに入れ、たっぷりの水につけて一晩(10〜12時間)浸水させます。すると…

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水を吸って約3倍量に膨れます。

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鍋にお湯をはってひたすら煮る。♪圧力鍋で20分、普通の鍋なら3〜4時間(←アニメの歌詞)煮ます。

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しばらく煮ると煮汁が飴色になって大豆の良い香りが漂ってきます。お湯がなくなってしまうので、適宜足してあげてください。

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煮上がりの基準としては、親指と小指で簡単に豆を潰せるかどうか。

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煮終わった大豆をザルに開ける前に…

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カップ半分弱(80ml)の煮汁を取っておきます。後で大豆とこうじを混ぜるときに使うので。

 

 

【STEP2】大豆と麹(こうじ)を混ぜる

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それでは次のステップ。麹(こうじ)と塩をボウルの中で混ぜます。大きめのスプーンでよーく混ぜて、麹と塩をなじませる。

 

ちなみに麹は、スーパーや自然食品店等で売っている「乾燥麹」を使います。お米に麹菌というカビの一種をくっつけて発酵させた和食調味料のスターター(パンにおけるイーストみたいな)です。詳しくはこちらのアニメをご覧ください。

 

 

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次にジップロックに先ほどザルにあげた大豆を入れ、手でよーくモミモミして豆をつぶしてハンバーグのようにしていきます。

 

〜ポイント!〜

ここでどれぐらい大豆を潰すかで「仕上がりのテクスチャー」が決まります。市販のお味噌は粒が残らないようにキレイにつぶしてあるのですが、ヒラクのオススメはあえて粒を残すざっくり仕上げです。

市販の味噌がジャニーズ系イケメンだとすると、手前みそはざっくりヒゲ&ざっくりファッションのサードウェーブ系イケメン。味があっていいのです。

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どうしてもキレイに潰したい人はマッシャーでワシワシと潰します。

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大豆を潰し終わったら、ボウルで先ほど塩と混ぜた麹と混ぜます。

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そんでカップにとっておいた煮汁を投入。

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素手でワシャワシャと混ぜていきます。たくさんの菌がいたほうが深い味わいになるので、手袋などしないでワイルドにいきましょう。

 

 

【STEP3】団子をつくって容器に詰める

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大豆と麹が混ざってきたら、丸めて団子をつくります。保育園や幼稚園で泥団子つくりませんでした?あの要領を思い出して…

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団子を作り終わったら…

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容器に団子をエイっと投げ入れます。

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ニガテな上司や取引先の担当者、オチも教訓もない恋バナを垂れ流す知り合いの顔を思い浮かべながら、ベシッ、ベシッと容器の底に投げつけていきます。

 

〜ポイント!〜

容器について。写真では木樽を使っていますが、スサノコの台所には無い可能性が大なので、大きめのタッパーや琺瑯(ほうろう)容器で大丈夫です(1kgだけだからなんとかなる)。

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気合を入れて専用容器を買うぞ!という人は、スーパーで売っている小さめの漬物容器などがリーズナブルでいいですぞ。

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それでは仕上げに入ります。団子の山をエイエイとこぶしで平らにならしていきます。団子を投げるのも平らにならすのも、容器のなかの空気を抜くため。味噌の発酵菌は空気がない状態を好むのです。

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だいたい平らになったら、スプーンの裏で表面をならしていきます。

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キレイになったところに塩を3〜5gくらいパラパラとふりかけ、表面に塩コーティングをしてばい菌の侵入を防ぎます。

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最後にラップをかぶせ…

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重しをします。好きな本などを入れるのがオススメ。ほぼ日の本などを入れれば優しい感じになり、ニーチェやハイデッガーなどを入れれば難解な感じの味噌になります。

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フタをしてできあがり。風通しの良いところで保存します。

 

〜ポイント!〜

カビないように、風通しの良い場所に置くのが基本。直射日光に当てないように。また、裏ワザで「発酵が高速になる保管場所」もあります(後述)。

 

 

それではレッツ発酵!

お疲れさまでした!大豆さえ煮てしまえば、後は30分〜1時間程度で最後まで仕込めたのではないでしょうか。量が少ないと、負担なく仕込めるんですね。

 

さてこれからこの「塩大豆ペースト」を発酵させていきます。お味噌が発酵する原理はバックナンバーからどうぞ。

 

【第7回】大豆が味噌に変わる瞬間(とき)。発酵の不思議を紐解く!

 

通常だと、冬に仕込んで夏を越すまで熟成させて完成となるのですが、夏を越すまでにいったい何人の運命の人と出会うことができると思ってんだよ、そんなに待てねえよ!という声が聞こえてきそうなので、レシピを工夫してみました(ちなみにそんなに手軽に出会ったら運命の人ではない)。

 

「……っ!?」

「麹の量が…、多いッ…!」

「そして…、塩もこころなしか、少ないッ…!!」

 

そうなんです。一般的な手前みそレシピは「東北仕様」でして、じっくり熟成させるのが前提になっているのですね。このレシピでは、大豆の1.4倍の麹を入れ、塩を2〜3%程度少なくすることで、発酵菌の酵素作用を高速化し、短時間で熟成させます。

 

「で、結局いつできるわけ?」

 

そうね。だいたい2ヶ月〜3ヶ月で立派なお味噌になっています。仕上がりイメージとしては、あっさりめの薄色テイスト。

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ざっくり作ったわりには旨味もほんのり甘味もあって、何より「つぶつぶ感」がいい感じ。米味噌と麦味噌の中間のような仕上がりになるはずです。

 

では最後に裏ワザをお教えしましょう。お家にもしコタツがあったらですね、コタツの布団の中に容器を置きっぱなしにします。すると、なんと1ヶ月ちょいで味噌になります(味はあっさりめですが)。

 

さらに高速コース。

ヨーグルトメーカーを持っている人は、30℃にセットして1週間〜10日間ほど保温してください。するとなんと!ちゃんと味噌になっておるではないか〜!

 

温度が高いとですね、発酵菌の働きが活発になるので酵素がどんどん出て味噌の熟成が速くなるんですね。じっくり冬を越す赤味噌のような味のコクは出ませんが、旨味と甘みの強い味噌になります。日々の味噌汁にもじゅうぶんイケます。

 

どうですか。気になるアイツに手前みそで味噌汁振る舞うとか、フットサルサークルで手前みそ鍋パーティやるとか、何周か回ってお洒落な感じしませんか?

 

しないですかそうですか(←やまもといちろうさん風に)。

 

それでは次回「実家のトラウマを払拭するナスの味噌汁」でお会いしましょう。発酵デザイナーの小倉ヒラクでした。

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