読み物 2018.05.15
【第3回】酔っ払いに絡まれながら作った、ヘルシーレシピの記憶。
アマノ食堂をご覧の皆さま、こんにちは。
劔樹人と申します。
日頃はバンドとマンガの執筆をしながら、主夫活動に勤しんでいます。
家事では最近、洗濯物の生乾き臭に悩まされています。
わが家の洗濯機も稼働5年目を迎え、何かテコ入れが必要なのかもしれません。
さて今回は、妻であるイラストエッセイストの犬山紙子と結婚した当時よく作っていた思い出の料理を久々に作ってみました。
えのきとトマトのごまだれうどん。
元々はドラマにもなったグルメマンガの中で紹介されていたレシピで、仕事で深夜に帰ってきた妻の、
「何か食べたいけど夜中だからカロリーは抑えてほしい」
という要望に応えらえるメニューをネットで探したものです。
詳しくは各自検索して頂くのがよいかと思いますが、簡単に説明すると、うどんとえのきを茹で、トマトとめんつゆとすりごまで作ったつけ汁に付けて食べる、というとても手軽なお料理です。
2人分でもうどんは1玉にして、同量くらいのえのきでかさましすることで、カロリーを控えつつボリュームがあるというのがポイント。
はじめてこれを作った時、犬山は喜んで食べてくれたのですが、あろうことかうどんばっかりを選んで食べて、私にはえのきしか残してくれないという嘘みたいな事態になりまして。
あまりのことにわが目を疑った私は、「それじゃカロリー控えめにならないじゃない!」と指摘したんですが、
「炭水化物はうまいんだから仕方ないだろ!」と、身も蓋もない反論に論破されてしまったのでした。
とても懐かしい思い出なのですが、改めて今あの時の状況を思い出してみると、もしかしてあの時犬山は仕事で遅かったんじゃなくて、酒を飲んで酔っ払って帰ってきた時だったのかもしれない。
この話は過去に自分のマンガエッセイのネタにもしたことがあるのですが、無意識のうちに妻の名誉を守るため、仕事で遅かったということに記憶が改ざんされたのか。いや、酔ってもいないのにそうなってしまうほうがどうかしているような気もしますが。
とにかく、妊娠・出産で大好きな酒をひとたび断ち、今はもう夜中まで飲み歩いたり泥酔したりということがほとんどなくなった犬山ですが、娘が生まれる前は、まあ酷かったんですよ。
泥酔して帰っては私にろくでもないあだ名を付けたり(「屁ンデルスゾーン」「屁イコフスキー」「屁パン」「屁ひげ」など)、脇毛に因縁をつけてきたり、「屁をこいてくれ、ブルージーな音で」と無理な要求をされたり、私の屁の音を録音して暗い寝室でひとり爆笑しながら聴き続けたり…
そんな想像力とユーモアに溢れた酔い方をする妻に対して、もはや私は何をしてくれるか楽しみなくらいだったので、うどんだけ全部食べられるくらいのことはなんてことない日常だったと思います。
あれから3、4年が経って。
授乳の期間が終わったことでしっかりダイエットをしたいという犬山は、今度はちゃんとうどんとえのきを半分ずつ食べてくれました。
どんどん新しい食材を食べられるようになる娘には、初めてのエビグラタンを。
感想は、「ティッティッティー」とのことです。
(まだエビはちゃんと食べられず、固いところを出してしまいました)
劔樹人(漫画家・ミュージシャン)
[PROFILE]
男の墓場プロ所属。「あらかじめ決められた恋人たちへ」のベーシスト。著書に「あの頃。〜男子かしまし物語〜」(イースト・プレス)、「高校生のブルース」(太田出版)、「今日も妻のくつ下は、片方ない。 妻の方が稼ぐので僕が主夫になりました」(双葉社)。「小説推理」、「みんなのごはん」、「MEETIA」などで連載中。
***
最近、つるちゃんと共にダイエットを始めまして(私は妊娠前の服が入らないので家計的に問題が生じたため。つるちゃんはお腹出てきた)、久々にこのメニューを作ってもらいました。
食べる時のポイントは「えのきを炭水化物だといかに騙すか」であり、えのきを口に入れた時に「あ〜炭水化物うまい〜」と心で唱えるのであります。ダイエット関係なしにさっぱりとうまいので、これからの季節に出番が増えそうな予感です。
しかし、あの頃はよく酔ってつるちゃんに絡んでいました。
つるちゃんと一緒になる以前は、酔ってひとりで眠るのが猛烈にさみしかったのもあり、つるちゃんが「ひどいひどい」と言いながらもニコニコ絡ませてくれる時間が私の中でお酒を飲んでいる間よりも楽しかったりしたものです。絡まれた方は大変だったろうけど。ごめん。
屁にまつわる絡みが多いのはつるちゃんがかなり屁をこくからで、別に私が屁好きとかそういうのではありません。音楽界の偉人の名前をやたらもじっているのは、つるちゃんがいい音を鳴らすからです。
今、お酒は解禁しましたが、次の日の朝 娘にたたきおこされることを考えると泥酔できなくなりました。娘が大きくなったらまた泥酔できるのが、結構な夢なのであります。
そして「じいさん、ブルージーな屁を1つお願いするよ」とか言いながらポックリ逝きたい。
犬山紙子(イラストエッセイスト)
[PROFILE]
大阪府生まれ。ニート時代に書いたブログを書籍化した『負け美女』(マガジンハウス)でデビュー。現在はイラスト・エッセイストとして多くの雑誌で執筆。テレビ、ラジオにも出演している。2017年1月に女児を出産。近著にさまざまな生き方の女性たちにインタビューし、自らの妊娠、出産も描いた新刊『私、子ども欲しいかもしれない。』(平凡社)
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