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【やさしい発酵図鑑vol.7】日本を代表する米のお酒! 味の違いや温度で楽しむ「日本酒」の魅力

こんにちは、発酵料理家の真野遥です。今回のやさしい発酵図鑑のテーマは、私の専門分野でもある「日本酒」です! 今回は、前編・後編の2本立てでたっぷりお届けします。

 

日本酒は、「米」と「水」というシンプルな材料から造られるお酒ですが、驚くほど様々な味わいのものが存在します。

 

前編では、日本酒の基本を交えて、個性豊かな日本酒の奥深い世界をご紹介します。コロナ禍の今こそ、ご自宅で日本酒を楽しむヒントになりましたら嬉しいです。

 

お米の国日本が生んだ宝物! 日本酒ってどんなお酒?

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(出典:SAKETIMES)

 

芳しい香りの日本酒を飲みながら、「これがお米からできているとは…!」と驚いたことがある方も多いのでは? それもそのはず、日本酒はお米が原料であるがゆえ、ちょっぴり複雑な製法で醸されており、多種多様な風味の成分が生み出されるのです。

 

世界でも珍しい発酵方法で造られる日本酒

 

日本酒の原料であるお米には、アルコール発酵に必要なブドウ糖が(そのままの形では)含まれていません。そこで、蒸したお米の一部を麹(こうじ)にすることで、お米のデンプンをブドウ糖に分解し、酵母がそれを栄養源にしてアルコール発酵できる状態にします。

 

その後、麹による糖化と酵母によるアルコール発酵が同時に進む並行複発酵(へいこうふくはっこう)により、日本酒が醸されていくのです。

 

この2つの発酵のバランスをコントロールするには高い技術が必要で、並行複発酵で醸されているお酒は世界的にも珍しい存在です。

 

発酵の仕方によって変わる味の違い

(発酵中の酒母の様子)

 

発酵中の液体のことを「醪(もろみ)」と言うのですが、その前段階に仕込む「酒母」は、酵母を育てるためのもので、発酵のスターターのような存在。酵母を大量に増殖させるために、他の雑菌を排除する酸性環境を作る必要があります。

 

その「酒母」の造り方は大きく2種類があり、現在は、醸造用の乳酸を添加してすぐに酸性環境を作る速醸(そくじょう)系酒母」が主流です。一方、自然の乳酸菌を利用して酸性環境を作る、昔ながらの「生酛(きもと)系酒母」で醸している蔵も残っています。

 

ラベルに「生酛」や「山廃」と書かれた日本酒は、生酛系酒母で醸された日本酒。速醸系と比較して、生酛系の方がキリッと辛口で旨味の強い酒に仕上がりやすいのが特徴です。

 

日本酒造りに使われるお米の品種

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日本酒の主原料であるお米は、私たちが普段食べているお米ではなく、酒造りに適した「酒造好適米(酒米)」を使うのが一般的です。

 

代表的な品種としては、“酒米の王様”と称され、優れた酒造適性を持つ「山田錦」や、スッキリとした酒質に仕上がりやすい「五百万石」、濃醇な米の旨味が楽しめる「雄町」など、それぞれの酒米に特徴があります。

 

ちなみに、「食べておいしいお米は、お酒にしてもおいしい」という考えのもと、コシヒカリなどの食用米のみでお酒を醸している蔵もあります。

 

日本酒の味を変える「精米歩合」

 

実は、品種以上に味に分かりやすく影響を与えるのが、「精米歩合」です。精米歩合とは、玄米を精米し、残った白米の割合を%で表したものです。

 

お米の外側部分には、たんぱく質や脂質などの栄養素が多く含まれており、これらが多いと雑味の原因になると考えられています。

 

精米歩合が低ければ低いほど(米を磨けば磨くほど)、雑味の少ないスッキリとした味になり、かつ華やかな香り高い日本酒になる傾向があります。

 

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(出典:SAKETIMES)

 

日本酒のラベルに書いてある「吟醸」や「大吟醸」は、主に精米歩合によって決まってくる名称です。また、原料に醸造用アルコールが添加されていないものは、語頭に「純米」という名称が付きます。

 

なお、精米歩合が低ければ低いほど良いというわけではなく、造り手が目指す酒質によって、適切な精米歩合は異なります。

 

おいしく長持ち!『生酒』の保管方法

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(出典:SAKETIMES)

 

日本酒の多くは、殺菌と品質安定のために火入れ処理されていますが、火入れ処理されていないものを「生酒」と呼びます。火入れ処理されていない「生酒」は、みずみずしいフレッシュ感のある味わいが魅力です。

 

ただし、「生酒」の取扱には注意が必要。通常は火入れによって失活するはずの酵素が生きているため、風味が変化しやすく、基本的に冷蔵保存が必須です。開栓後は特に風味が変わりやすいため、なるべく早めに飲み切りましょう。

 

また、「生酒」の中には発泡感が少し残っているものがありますが、中には強い発泡感のある「活性にごり酒」というタイプの日本酒もあります。

 

【日本酒をもっと楽しもう】味の違いを楽しむ

 

基礎を押さえたところで、さらに奥深い日本酒の世界をご紹介します。「米」「水」「麹」から造られている日本酒ですが、精米歩合や酵母のタイプによって味わいは様々。今回は、ちょっぴり珍しい個性的な日本酒を3つ紹介します。

 

「五人娘 むすひ」(寺田本家/千葉県)

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驚きの精米歩合100%の日本酒です。発芽玄米で醸されたこの日本酒は、強烈な酸味とぬか漬けのような香りが特徴で、一度飲んだら忘れられない味。

 

玄米由来の栄養素がたっぷり含まれ、酵母や乳酸菌などの微生物が生きたまま瓶詰めされているため、健康のために飲んでいる方も多いそうですよ!

 

<一緒に合わせたい料理>

個性が強く、なかなか料理に合わせるのが難しい日本酒ですが、エスニック料理と相性が良く、パクチーをたっぷり使ったヤムウンセン(タイ風の春雨サラダ)と合わせると、お互いの個性と個性がぶつかり合い、逆にクセが和らぐという不思議なマリアージュが楽しめます。

 

「亀泉 純米吟醸 CEL-24」(亀泉酒造/高知県)

お米が原料の日本酒ですが、中には果物のような香りを持つものがあります。「亀泉 純米吟醸 CEL-24」は、「カプロン酸エチル」という、りんごのようなフルーティーな香り成分を大量に生成する「高知酵母 CEL-24」という酵母で醸された、香り高い日本酒です。この酵母はりんご酸も多く生成するため、軽やかな味わいも特徴です。

 

<一緒に合わせたい料理>

フルーティーな日本酒には、フルーツを使ったサラダを合わせて調和させるのがおすすめです。ルッコラなどの苦味のある野菜で日本酒の甘みを引き締めると、飽きずに楽しめますよ。

 

■【豆知識】お米なのにフルーティな香りがするのはなぜ?

日本酒のフルーティーな香りは、酵母が発酵中に生成する「エステル」に由来します。
日本酒の中には、りんごやバナナなどと同じ香り成分を含むものがあります。これは、使用する酵母の種類によって生成される香りが異なるという点に加えて、精米歩合の低い日本酒ほど香りが高くなるという要因があります。

また、酵母は香りだけではなく、酸味の成分にも影響を与えます。特徴的なものでは、りんご酸を大量に生成するタイプの酵母があり、りんごやぶどうなどに含まれる酸味成分と同じりんご酸を多く生成し、白ワインのような軽快な酸味のある日本酒にしてくれます。

 

「三千盛 アクティブスパークリング」(三千盛/岐阜県)

強い発泡感を持つ、トロッと濃厚な「活性にごり酒」。火入れされていない「生酒」の中には発泡感が少し残っているものがありますが、「活性にごり酒」は、瓶の中で二次発酵が進んでいるため、より強い発泡感があります。

 

<一緒に合わせたい料理>

発泡感は油分をさっぱりとさせてくれるウォッシュ効果があるため、ステーキやスパイスカレーなどと相性抜群です。また、旬の果物やハーブを加えて日本酒フルーツポンチにするのもおすすめですよ。

 

【日本酒をもっと楽しもう】温度にこだわる

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日本酒は、温めて飲むことでさらにおいしく楽しむことができます。

 

「燗酒は悪酔いする」「良い日本酒にお燗をしたらもったいない」というイメージが払拭できず、まだまだ市民権を得られていないのですが、実はお燗をすると悪酔いしにくく、さらにはお燗をしないともったいない日本酒もあるのです!

 

ただし、どんな日本酒もお燗をするのに向いているというわけではなく、大吟醸酒のような繊細で香り高い日本酒を温めると、繊細な味が失われ、かつ嫌な香りが立ってしまう場合があるため、基本的にはお燗をするのには向きません。

 

一方、お米らしい味わいを感じる純米酒は、温めることで膨らみのある味わいになり、風味が引き立ちます。言うなれば、お米を炊き上げるイメージです。

 

お家でできる!お燗のつけ方 

 

お燗のつけ方はとっても簡単! 「とっくり」や「ちろり」に日本酒を入れて、お鍋で湯煎すればOKです。私は電気ケトルでお湯を沸かし、そのままドボンとお燗をしてしまうこともあります。カップ酒や1合瓶の場合は瓶ごと温められるので便利ですよ! ケトルを使う際は、必ずスイッチをオフにした状態で湯煎してくださいね。

 

また、「とっくり」や「ちろり」が無い方は、使い終わったワンカップや、空瓶などでOK!

※瓶を使う場合、材質によっては割れてしまう可能性があるため、グラグラと沸騰させずに火を止めた状態で湯煎しましょう。

 

<温度の目安>
70℃〜80℃程度のお湯でじっくりと湯煎するのがポイントです。

鍋の7〜8分目程度まで水を入れて火にかけ、沸騰直前に火を止めてから湯煎するとよいです。

適切な燗酒の温度は日本酒によって異なります。一概には言えないのですが、目安としては、繊細な味わいの日本酒は低めの温度、ボディのしっかりとした日本酒は高めの温度にするイメージです。

 

そして、だいたい50℃〜60℃前後に温めると失敗しにくいというのが私の持論です。是非、色々お試しいただき、ご自分の好みの温度帯を見つけて見てくださいね!

 

<一緒に合わせたい料理>

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お燗をした日本酒には、豚の角煮のような脂の乗った料理が相性抜群! 燗酒と合わせると口の中で豚の脂が溶け、じんわり旨味が広がるのを楽しむことができます。

また、牡蠣やあさりなどの旨味の強い魚介類は、燗酒を合わせることで旨味をより強く感じることができます。

 

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同じ材料で造られているにもかかわらず、製法や発酵の仕方、さらには飲み方によって味わいや風味が変わる日本酒。

 

パーティ用に、スタイリッシュなラベルデザインのものやスパークリング酒を選ぶもよし、飲みやすそうな低アルコール酒を選ぶもよし。気になる種類や飲み方で、ぜひの日本酒ライフを楽しんでみてはいかがでしょうか?

 

後編では、飲むだけじゃない、料理としての楽しみ方をご紹介します。後編もお楽しみに!

 

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