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【やさしい発酵図鑑vol.8】料理がもっとおいしくなる! 調味料として活用したい「日本酒」の魅力

こんにちは、発酵料理家の真野遥です。前回の「やさしい発酵図鑑」では、日本酒の基本や個性的な日本酒など、「飲む」日本酒としての魅力についてお話させていただきました。後編では、調味料としての日本酒の活用法をご紹介させていただきます!

 

いいことづくし! 調味料として使いたい「日本酒」

 

あさりの酒蒸しや魚の煮付け、豚肉の生姜焼きなど、日本酒は家庭料理に欠かせない存在です。

日本酒を調理に使うと、いつもの料理のおいしさが格段にアップします! なぜ日本酒を使うのか? どんな日本酒を使うと良いのか? 今回は、そんな意外と知られていない調味料としての日本酒の魅力を紹介します。

 

・食材を柔らかくしてくれる

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肉や魚に日本酒を加えて煮たり蒸したり、日本酒で漬け込んでから焼いたりすると、ふっくら柔らかく仕上がります。これは、アルコールの作用で肉の筋繊維がゆるみ、保水性が高まるためです。

 

・コクや旨みが増す

日本酒にはアミノ酸が豊富に含まれており、料理にコクと旨みを与えてくれます。

特に、日本酒には旨みを呈するグルタミン酸が多いため、肉や魚の旨み成分イノシン酸と合わさると、相乗効果で格段に旨みが増します。

 

・臭みを消して、食材のおいしさを活かしてくれる

日本酒にはアミノ酸や有機酸が豊富に含まれ、食材の臭みを消す効果があります。

特に魚介類の臭みの原因の1つ「揮発性トリメチルアミン」は、日本酒の「揮発性カルボニル化合物」と反応することで臭みが消えます。

 

また、アルコール自体にも臭み消しの効果があり、アルコールが揮発する際に食材の臭み成分も一緒に飛ぶため、臭みを和らげてくれるんです。

 

他の酒類と異なり、食材の風味に勝る味や香りが少ないため、食材のおいしさを生かしつつ余分な臭みだけ飛ばしてくれるのです。

 

・煮崩れを防止しておいしさを閉じ込める

日本酒に含まれるアルコールには、穀類や芋類などに含まれるペクチンを強化する働きがあり、煮崩れを防止してくれます。ひいては、食材の旨みを閉じ込める効果があるのです。

 

・焼き色と香りが良くなる

肉や魚に日本酒をかけてから焼くと、日本酒の糖やアミノ酸とタンパク質が反応し、綺麗な焼き色と香ばしい風味がつきます。

その他にも、塩の浸透を早めたり、味をまろやかにするなど、日本酒の調味料としての役割はたくさん。ご飯を炊くときにも、日本酒を少量加えるとふっくら炊き上がりますよ。物は試しに、様々なお料理に日本酒をちょい足ししてみてくださいね!

 

調味料としての日本酒の選び方

煮物を日本酒で調味

それでは、料理にはどんな日本酒を使うと良いのでしょうか? 選択肢としては、調味料として販売されている「料理酒」を使うか、「飲める日本酒」を料理に使うかの、大きく2通りに分けられます。

 

・料理酒を使う場合

調味料として販売されている一般的な料理酒には、酒税を免れるために塩が添加されているものが多く、また甘味料や酸味料などで味が整えられているものが多いです。海水程度の塩分が含まれているため、しょっぱくならないよう使う量に気をつけましょう。

 

個人的には「料理用の純米酒」がおすすめ。米と米麹のみで醸された純米酒は、料理をおいしくするために造られる日本酒で、素材の持ち味を活かして料理に良い風味を付与してくれます。最近はどこのスーパーでも販売されていることが多く、手軽に入手できますよ!  原料がシンプルで、飲んでもおいしい日本酒は、料理をおいしくしてくれます。例えば、大木代吉本店の「こんにちは料理酒」などがあります。

 

・飲める日本酒を使う場合

もちろん、料理酒として販売されている日本酒でなくても、料理に使うことができます。かく言う私も、飲み残しの日本酒を料理に使うことが多いです。

ただし、日本酒には様々な味わいのものがあります。どんな日本酒が料理に向いているのでしょうか?

 

ポイントは、旨みの強い日本酒を選ぶこと

 

前編では、米の外側に多く含まれるタンパク質や脂質は雑味の原因になるとお話ししましたが、実はこの「雑味」と呼ばれる成分こそが、料理をおいしくしてくれるのです。

 

<旨みの強い日本酒を選ぶ基準>

1.精米歩合の高さ

米をあまり磨いていない、精米歩合の高い日本酒の方が、旨み成分であるアミノ酸を多く含んでいます。

 

2.純米酒であること

醸造用のアルコールが添加されていない純米酒の方がエキス分が多く、コクと旨みの付与や、料理への作用が期待できます。

 

3.無濾過であること

日本酒は、雑味を取り除くために濾過されている場合が多いですが、料理に使うのであれば、旨み成分が残存している無濾過の日本酒のほうがおすすめです。

 

4.色が濃いもの

旨み成分などのエキス分の多い日本酒は、ほんのり山吹色をしているため、無色透明な日本酒よりも、少し色のついた日本酒の方が料理に向いていると言えます。

 

これくらいの色の日本酒がおすすめです。

 

ただし、色の濃い日本酒の中でも、熟成酒は独特な風味が料理の味を邪魔してしまうことがあるため、注意しましょう。

 

総じて、イメージとしては「どっしりした味」の日本酒の方が、料理に旨みとコクを与えてくれます。「味が重たくてちょっと飲みにくいなあ…」と持て余している日本酒があったら、どんどん料理に活用しましょう!

 

日本酒をたっぷり使う!「びしょ鍋」のレシピ

 

「びしょ鍋」は、広島のとある酒蔵さんで生まれた料理。終戦直後の貧しい時代に、それでも蔵人さんたちにおいしいものを食べさせたいと、蔵元さんが苦肉の策で考えた、手近な食材で工夫して作った料理だそう。

 

びしょ鍋の「びしょ」とは、洗い物をしていつもびしょ濡れの若い蔵人さんのことを表しているそうですが、最近は「びしょ」を「美酒」にかけた「美酒鍋」として広く知られています。

 

びしょ鍋は、肉や野菜をたっぷりの酒で炒り煮にし、塩と胡椒のみで味つけるという、とてもシンプルなものなのですが、驚くほど旨みたっぷり!

 

いわゆる「鍋物」とは少しイメージが異なりますが、余り物の食材でも手軽に作れる上、飲みきれない日本酒の消費にもぴったりですので、是非レパートリーに追加してみてください!

 

「びしょ鍋」のレシピ

材料(2人分)

 

・鶏もも肉…100g

・豚バラ肉…100g

・にんにく…1かけ

・米油…大さじ1/2

・にんじん…1/2

・厚揚げ…100g

・こんにゃく…100g

・しめじ…100g

・ピーマン…2個

・キャベツ…1/6個

・もやし…1/2

・塩…小さじ1/2

・胡椒…適量

・日本酒…200ml

作り方

1

にんにくは薄切りに、にんじんはいちょう切りにする。厚揚げは食べやすい大きさに、ピーマンは1cm幅に、キャベツはざく切りにする。こんにゃくは下ゆでして短冊切りにする。鶏もも肉はひと口大に切り、豚バラ肉は食べやすい大きさに切る。

 

2

鍋に米油とにんにくを入れて熱し、鶏肉と豚肉を炒める。肉の色が変わったら、しっかりめに塩胡椒をふる(分量外)。

3

にんじん、厚揚げ、こんにゃく、しめじ、ピーマン、キャベツ、もやしの順で鍋に入れ、日本酒を注ぎ入れる。塩胡椒をふりかけ、全体が温まるまで弱めの中火でじっくり加熱する。

4

全体を混ぜ合わせたら完成。味をみて、必要であれば塩胡椒を追加して調節する。

 

ちなみに、本場では鉄板や鉄鍋で作るそう。炒める工程があるため、焦げやすい土鍋よりも、中華鍋や深めのフライパン、ホーロー鍋などで作るのがおすすめですよ。

おいしい日本酒を飲んだ後に、びしょ鍋で〆る!! そんな日本酒三昧な夜も、たまにはいいかもしれないですね。

 

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