豆知識 2021.03.25
【やさしい発酵図鑑vol.10】スイーツやドリンクにも! 「みりん」の基本とおいしい活用法
こんにちは、発酵料理家の真野遥です。記念すべき10回目を迎えるやさしい発酵図鑑。今回のテーマは「みりん」です!
みりんは日本の代表的な調味料のひとつですが、味噌や醤油と比べて、原材料や製法があまり知られていないように思います。また、みりんの代わりに「砂糖+酒」で代用されている方も多いのでは??
そこで今回は、みりんは一体どんな調味料なのか? 料理に使うことでどんなメリットがあるのか? どう使えばいいのか? など、みりんの基本から驚きのアレンジ方法までたっぷりご紹介します!
そもそも「みりん」って一体なに? 知っておきたい原材料と製法と種類
みりんとは、「もち米」「米麹」「焼酎(または醸造アルコール)」を原料に「醪(もろみ)」(※)を仕込み、40〜60日間ほど糖化・熟成させ、できた醪を搾ったもの(その後さらにタンクで1年以上熟成させる場合があります。)。
※原料が発酵した状態の液体
もち米が米麹の酵素作用を受けて、糖類やペプチド、アミノ酸、有機酸、香気成分など様々な成分に分解されることで、料理に照りやツヤを与えたり、魚の臭みを消したり、煮崩れを防いだりなど、調理において優れた役割を発揮してくれます。
糖化中のみりんの醪
【「本みりん」と類似調味料の違い】
さて、ここで本題に入る前に、みりんには「本みりん」と「みりんに類似した調味料」があることを説明したいと思います。
本来、全てのみりんは先述の原料から造られる「本みりん」でしたが、現在は本みりんに類似した「みりん風調味料」と「発酵調味料」が存在します。
「本みりん」にはアルコール分が14%ほど含まれており酒税が発生します。一方、「みりん風調味料」はアルコール分が1%以下であり、「発酵調味料」は2%程度の塩分が含まれるため飲用に適さないことから、このふたつは酒税が発生しません。
そのため、安価で手に入りやすいというメリットがありますが、本みりんとは原料や製法が全く異なるため、調理に使ったときの完成に違いが出ることを知っておくと良いかと思います。
上記を踏まえた上で、今回は「本みりん」に限定して話を進めていきます。
元々はお酒として飲まれていた!?「みりん」の意外な歴史
今でこそ調味料として利用されているみりんですが、元々は飲用を目的としたお酒だったことをご存知でしょうか?
みりんの起源は諸説あり、室町時代に「練貫酒(ぬりぬきざけ)」という甘い酒が博多にあり、これが改良されてみりんになったという日本発生説と、戦国時代に中国の「密淋(みいりん)」と呼ばれる甘い酒が伝来したという中国発生説の2つの説が有力視されています。
みりんが初めて文献に登場したのは1593年の「駒井日記」で、当時のみりんは甘い珍酒として上層階級に嗜まれていたそう。料理に使用されるようになったのは江戸時代以降で、江戸でそばつゆや鰻の蒲焼のたれなどに使われ始め、ようやく調味料としての用途が定着したと考えられています。さらに、一般家庭に普及したのは昭和に入ってからだそうです。
豆知識 「みりん」の一大産地はどこ?
みりんの本場は愛知県の三河地方。醸造に適した水と温暖な気候に恵まれ、江戸との海運に優れていたことから、みりんの一大産地として発展しました。伝統製法で造られる三河みりんは、現在も良質なみりんとして広く親しまれています。
私も愛用している「三州三河みりん(角谷文治郎商店/愛知県)」は、長期熟成による濃厚な味わいが特徴。スーパーでも手に入りやすい、本格的な純米本みりんです。
「砂糖+酒」と何が違う? 料理をおいしくしてくれる「みりん」の特徴
みりんは甘味とアルコール分を含む調味料ですが、「砂糖+酒」を使うのと何が違うのでしょうか?
ポイントは、砂糖には無い様々な成分が含まれていることです。
砂糖の甘み成分は主に「ショ糖」ですが、みりんには「ブドウ糖」「イソマルトース」「オリゴ糖」など多くの種類の糖類で構成されており、他にもアミノ酸や有機酸など様々な成分が含まれています。これらが優れた調理効果を発揮してくれるのです。
みりんには、主に7つの調理効果があります。
1 上品な甘みの付与
…複数の甘味成分が組み合わさることで、砂糖とは異なる上品な甘みを与えてくれる
2 照りやツヤの付与
…光沢度の高いブドウ糖やオリゴ糖が照りを出してくれる
3 煮崩れ防止効果
…糖類とアルコールの作用により、野菜類のデンプンの溶出や、肉や魚の筋繊維の崩壊を抑制する
4 コクやうま味の付与
…先述のような様々な成分が含まれていることで、深いコクとうま味が生まれる
5 味なじみが良くなる
…アルコールが食材に速やかに浸透すると同時に、味も浸透しやすくなる
6 消臭効果
…アルコール分が肉や魚の臭み消しにも作用する
7 脂質の酸化防止
…みりんの抗酸化性により、脂質の過酸化を抑制する。
※例えば、みりん干しにすることでその役割を発揮してくれます。
5や6は「砂糖+酒」でも期待できる効果ですが、それ以外はみりんを使うことで得られる調理効果です。みりんは、ただ甘みとアルコール分があるだけの調味料ではないことがよくわかりますね。
ただし、煮崩れ防止効果がある反面、みりんには肉を固くする作用があるため、肉を柔らかく煮たい場合は仕上げに使うのがオススメです。
ドリンクやスイーツに!みりんの意外な楽しみ方
【そのまま使える! ドリンクやスイーツ】
元々は飲用として親しまれていた本みりんは、まさに「もち米のリキュール」。そのまま飲むのはもちろん、アレンジも無限大です。
●みりんドリンク
・みりんレモンサワー:ソーダ+レモン汁+みりん
・カルーアミルク風:牛乳or豆乳+みりん
・ホットレモネード:お湯+レモンスライス+みりん
・みりんジンジャーサワー:ソーダ+おろし生姜+みりん
●みりんスイーツ
・コンポート:りんごや桃などの果物を、みりんとレモン汁で煮る
・スイーツのシロップ:パンケーキや杏仁豆腐やバニラアイスにかける
【まるでメープルシロップ! 煮切りみりん】
みりんはアルコールを含むことによる調理効果がありますが、アルコールを飛ばしてシロップのように使う「煮切りみりん」もオススメです。作り方は簡単!みりんを小鍋に入れて、半量程度になるまで煮詰めるだけです。
ツンとしたアルコール臭が無くなり、はちみつやメープルシロップのような濃厚な甘さになります。たっぷり作って、保存容器やボトルに入れて保管(常温でOK)すれば、いつでも使えて便利。
パンケーキにかけたり、カラメルの代わりにプリンにかけても◎。また、ドレッシングやマリネ、砂糖代わりに和え物に使ったりと、甘味調味料として様々な料理に使えますよ!
※甘味が強いため基本的に腐ったりはしませんが、糖分が結晶化して固まる場合があります。その場合は、電子レンジにかけるなど加熱すれば溶けますのでご安心ください。
【搾り粕まで使える! みりん粕】
みりんを搾る際に出る「みりん粕」。白くてホロホロとした見た目が満開の梅の花に似ていることから「こぼれ梅」と呼ばれており、そのまま食べても甘くておいしく、スイーツ作りにも最適。焼き菓子やトリュフにするのが定番です。
ほとんど市販されていないため、蔵元のオンラインショップか専門店で手に入れる必要がありますが、運良く手に入ったら是非色々なスイーツにお試しください!
やみつきのおいしさ!「みりんで作るカリッと香ばしいキャラメリゼ」
このように、スイーツやドリンクなどにも色々使えるみりんですが、今回はその中でも私が特におすすめしたいレシピをご紹介させていただきます!
「ナッツの塩みりんキャラメリゼ」
のレシピ
ナッツのキャラメリゼにみりんを使うと、カリッと香ばしく、ツヤよく仕上がり、砂糖とは違った上品な甘さが楽しめます。塩を少量加えることで甘みが引き締まり、甘じょっぱさがたまらない。ついつい手が伸びてしまうやみつきなおいしさなので、くれぐれも食べ過ぎにはご注意を!
(料理監修 / 真野 遥)
- 材料
-
(作りやすい分量)
・ミックスナッツ…70g
・本みりん…大さじ3(約50g)
・塩…2つまみ
10分
作り方
バットか皿にクッキングシートを敷いておく。
小さめのフライパンか鍋にみりんを入れて中火にかける。沸騰したら、焦げないようにゴムベラなどで混ぜながら、水分が少なくなるまで煮詰める。
POINT
「ちょっと煮詰め過ぎかな」と思うくらいしっかり煮詰めるのがポイントです。
ミックスナッツを加え、みりんがまんべんなく絡むよう手早く混ぜる。塩を加え、水分がほとんど無くなるまで煮絡める。
POINT
塩は最後に入れて、まばらな塩味にするのがポイントです! 写真のようになるまで煮詰めましょう。
1のバットに広げる。冷めてしっかり乾いたら完成。
POINT
乾くとナッツ同士がくっついてしまうため、なるべく重ならないように広げます。
しっかり乾かした後は、瓶などに入れて涼しいところで保管しましょう。湿気を含むとカリカリ感が無くなってしまうため、早めに食べきるのがおすすめです。
\きょうの日本酒/
塩でアクセントを効かせたキャラメリゼは、おやつはもちろん、おつまみにもぴったり! 片手で簡単に食べられて、赤ワインやウイスキーのお供にもいいですね。日本酒なら、ビターな味わいの長期熟成酒か、甘味のある貴醸酒(※)がおすすめです。
※水の代わりにお酒で仕込んだ日本酒
可愛らしいラベルが印象的な「出羽桜SWeeeeeT(出羽桜酒造/山形県)」は、仕込み水の一部を日本酒に代えて造られた貴醸酒。はちみつを思わせるような甘美な味わいが特徴です。
カリッと香ばしく、甘じょっぱいキャラメリゼに、とろりと甘い貴醸酒のハーモニーは、甘党にもたまらない組み合わせ。
✻✻✻
和食の調味料としてだけでなく、ドリンクやスイーツに使えて可能性無限大! みりんを日々の食卓に取り入れて、新たな魅力を発見してみてはいかがでしょうか?
<参考文献>
「発酵食品学」(小泉武夫編著/講談社)
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※ランキングは2022年12月~2023年11月の弊社流通出荷実績です。