WEAR_ロゴ tiktok_ロゴ

【やさしい発酵図鑑vol.11】うま味の秘密はカビにあり? 洋風料理にも使える「鰹節」の製法と活用法

こんにちは、発酵料理家の真野遥です。今回のやさしい発酵図鑑のテーマは「鰹節」です!

 

和食に欠かせない食材「鰹節」は発酵食品の1つですが、どのように発酵させているかご存知でしょうか? 鰹節は、実は「発酵」という点にフォーカスしてみると、実に興味深い食品なのです。

 

今回は、鰹節がどのようにつくられていて、料理にどのように活用できるのかをご紹介いたします!

 

製法によって変わる「鰹節」の種類

 

鰹節の種類は大きく2つに分けられます。

 

・荒節(あらぶし)

鰹を三枚におろして煮た後に骨抜きし、それをさらに燻して干したもの

 

・枯節(かれぶし)

荒節にカビ付けをして発酵・熟成させたもの。

 

つまり、発酵食品と言えるのは「枯節」のみ。市販されている鰹節の約8割は「荒節」で、燻煙(くんえん)香が強くコクのある味わいが特徴です。一方の枯節は、香りも味もまろやかで上品なのが特徴で、繊細な素材の味を活かしたい料理に適しています。

 

枯節のカビ付けは複数回行われ、最高級の「本枯節(ほんかれぶし)」に至っては、4回以上もカビ付けが行われ、完成に半年以上かかるものもあるそうです。

 

本枯節

本枯節

 

実はメリットがたくさん! カビ付けの役割とは?

 

そもそも鰹節は、平安時代に存在した「煮堅魚(にかたうお)」という、鰹を煮てから干したものが原型であると考えられています。

 

その後、室町時代には煮た鰹を煙で燻す「焙乾(ばいかん)」という技術が生まれ、現在の荒節に近いものに変化していきました。

 

そして、カビ付けが行われるようになったのは江戸時代に入ってから。きっかけは、輸送中の鰹節にカビが生えてしまったことからと考えられています。そこから、悪カビを退治するために優良カビを付けることが有用であることがわかり、日本人ならではの知恵を積み重ねて、現在のようなカビ付け技術が確立されていきました。

 

さらに、鰹節のカビ付け技術は、まだ微生物の存在が発見される前に生まれたにもかかわらず、科学的に見ても非常に理にかなっていたのです。わざわざ手間と時間をかけて鰹節にカビを生やすことには、他にも様々なメリットがあります。

 

1.鰹節の乾燥度を高める

カビは生育中に多くの水分を必要とするため、荒節に残った水分を吸い上げてくれます。これにより保存性が高まる上に、うま味も凝縮します。

 

2.脂肪を分解する

カビの持つ酵素が、鰹に含まれる脂質を「脂肪酸」と「グリセリン」に分解してくれます。成分を分解して油脂分が無くなることで、酸化による劣化を防ぐことができ、さらには濁りの無い澄んだ出汁を作ることができます。

 

3.うま味成分を増やす

カビの持つ酵素がタンパク質をアミノ酸に分解し、うま味成分を蓄積してくれます。その他にも、燻煙香や魚臭さを抑えたり、甘い芳香成分を生み出したりなど、カビ付けには様々な役割があります。

 

料理によって使い分けたい削り節の種類

削り節の種類

カビ付けの有無に加えて、削り方の違いによって適した用途が異なります。「荒節」と「枯節」共に、様々な削り方があるんです。代表的な鰹節の種類と特徴をご紹介します。

 

1.厚削り

長時間煮出して濃い出汁を取るために厚く削られた、出汁専用の鰹節。

風味が強いため、鍋物や煮物など、醤油やみりんを使った濃い味付けの料理に適しています。
厚削りの出汁で自家製のめんつゆを作ると、本格的な味に仕上がりますよ!

 

2.削り粉

鰹節を削るときに出る粉の部分。ご飯に混ぜたりお浸しに振りかけたりなど、そのまま食べるのもおすすめですが、薄削りと同じように出汁を取ることもできます。形状を活かして、お味噌汁に入れても◎

 

3.糸削り

糸状に削った、柔らかな食感と美しい見た目が特徴の鰹節。

お浸しに乗せたりサラダに散らしたりなど、そのまま食べる料理に適しています。

 

4.薄削り(花かつお)

花びらのように薄く削った鰹節。

トッピングにも使えますが、出汁を取るのに最適。

 

なお、1と4のように茶色く色づいた部分があるものは、血合いが入ったもの。血合いがある方がうま味とコクが強く、血合い抜きの方がクセがなく上品な風味であるのが特徴です。

 

料理をぐんとおいしくする! 鰹節と出汁の関係

 

出汁とは、「食材からうま味を引き出した液体」のこと。この「うま味」こそが出汁の最大の特徴です。代表的な出汁材料の昆布や干し椎茸、煮干し、そして鰹節には、多くのうま味成分が含まれています。

 

かつての日本は、人間が本能的に欲する油脂や砂糖などの食材に恵まれず、肉食も限定的であったため、うま味によって食の満足感を得てきた歴史があります。そのため、他国には無いような特有の出汁文化が発達してきたと考えられています。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

精進料理とともに発展してきた昆布の主要なうま味成分は、アミノ酸の一種である「グルタミン酸」。グルタミン酸は野菜などの植物性食材に含まれるうま味成分ですが、昆布は他の食材と比較してグルタミン酸の含有量がダントツに多いのが特徴です。

 

一方、鰹節の主要なうま味成分は「イノシン酸」で、肉や魚などの動物性食材に多く含まれています。

 

■うま味の相乗効果でおいしさアップ!

 

そんな「うま味」には、異なるうま味成分が組み合わさると飛躍的においしさが増す、“うま味の相乗効果”という特性があります。

 

鰹節の動物性のうま味と昆布の植物性のうま味を組み合わせた「合わせ出汁」のように、組み合わせを意識すると、うま味の相乗効果を上手に料理に取り入れることができますよ!

 

基本の出汁の取り方

 

基本の出汁の取り方は覚えておくと、いつもの料理がワンランクアップ!
今回は、昆布と鰹節の合わせ出汁の取り方をご紹介いたします。

 

基本の合わせ出汁

材料

(出来上がり量約800ml分)

・鰹節…20g

・昆布…10g

・水…1リットル

作り方

1

昆布は固くしぼった濡れ布巾で軽く汚れを拭く。鍋に水と昆布を入れて1時間ほどおく。

2

1時間ほどおいたら、鍋を火にかけ、沸騰直前に昆布を取り出す。

3

沸騰したら火を止め、鰹節をふり入れて2〜3分おく。

4

ザルに布巾か厚手のペーパータオルを敷いてボウルで受け、3を濾す。

POINT

・鰹節を濾した後は、力をかけ過ぎずに優しくしぼってください。

・しぼった後の出汁がらは栄養満点。フライパンで乾煎りして醤油やみりんで味付けし、ふりかけにするのがおすすめです。

 

■手軽にできる水出しもおすすめ!

水出し出汁

水につけて出汁が取れる「水出し」もおすすめです。「基本の合わせ出汁」と同じ分量の水と昆布と鰹節を容器に入れ、冷蔵庫で半日ほど置けば完成します。

1〜2回であれば、水を足しながら使えますが、だんだん味が薄まってくるため、後半は肉や魚などのうま味の強い食材を煮るなどの用途に使いましょう。また、最後は鍋で煮立ててうま味を出し切ると良いでしょう。

 

家にある食材で簡単! うま味たっぷり春野菜のポテトサラダ

 

今回は、家庭料理の定番であるポテトサラダを、たっぷりの鰹節でアレンジ!  鰹節さえあれば、ハムやベーコンが無くても満足感のあるポテトサラダに! 5〜6月頃まで楽しめる新じゃがいもと新玉ねぎを使って、みずみずしく仕上げます。

新じゃがいもと新玉ねぎの鰹節ポテトサラダ

15分

材料(2人分)

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

 

・新じゃがいも…2個

・新玉ねぎ…1/3個

・鰹節(薄削りor糸削り)…5g

・パセリ…適量

・オリーブオイル…大さじ2

 

<調味料A>

・豆乳(無調整)…大さじ2と1/2  *牛乳でもOK

・米酢…小さじ2

・塩…小さじ1/3

 

作り方

1

玉ねぎは繊維に沿って薄切りにし、さっと水にさらしておく。パセリはみじん切りにする。

2

じゃがいもは皮をよく洗い、皮ごと一口大に切る。鍋にじゃがいもを入れ、1リットルの水と小さじ1の塩(分量外)を加えて火にかける。沸騰したら弱火で7分ほど、竹串がすーっと刺さるようになるまで茹でる。

3

ボウルに<調味料A>を入れて泡立て器で混ぜる。オリーブオイルを少しずつ加え、もったりするまで混ぜる。

4

茹で上がったじゃがいもをザルに上げ、粗熱が取れたら3のボウルに入れる。水気をよく切った新玉ねぎと鰹節を加え、よく混ぜる。

5

器に盛り、パセリを散らし、お好みで鰹節(分量外)を散らす。

 

■豆知識 洋風料理にも! 鰹節の活用アイデア

 

日本食とともに発展してきた鰹節ですが、今回ご紹介したポテトサラダのように、洋風の料理にも活用できます。

 

・ピクルス…ピクルス液で使う水の代わりに合わせ出汁を使うと、食材に鰹節のうま味が染み込んでワンランク上のおいしさに。

 

・オイルベースのパスタ(ペペロンチーノなど)…仕上げに鰹節を加えてみると、うま味がアップして絶品!

 

・ポトフ…コンソメの代わりに合わせ出汁で作ると和風テイストに。

 

他にも、鰹節は油脂分とも相性が良いため、オリーブオイルベースのドレッシングに削り粉を加えるのもおすすめ。マヨネーズを使う料理に削り節を加えたり、クリームチーズに鰹節を混ぜてディップソースにしてもおいしいですよ!

ぜひ、いつものお料理に鰹節をちょい足ししてみてください♪

 

\きょうの日本酒/

日本酒のペアリング

鰹節のうま味がたっぷり詰まったポテトサラダには、穏やかな吟醸香とやさしい甘味のある「いずみ橋 愛山 桜うすにごり(泉橋酒造/神奈川県)」がおすすめ。鰹節の風味を邪魔せず、うま味を引き立ててくれます。

 

うすにごりのまろやかな味わいは、豆乳マヨネーズのコクにぴったりと調和します。ポテトサラダは冷蔵庫で5日間ほど保存できるので、たっぷり作って常備菜にするのもおすすめですよ。残り少ない春を、食卓から満喫しましょう!

 

***

 

出汁としてだけではなく、具材としても使える鰹節。日本古来の天然のうま味調味料として、和食にも洋食にも活用してみてくださいね!

 

<参考文献>

だしの神秘(伏木亨/朝日新書)

 

\アマノ食堂おすすめ/

shun_2004_02_08

「金のだし おみそ汁」シリーズ 

アマノフーズでは、鰹節の出汁が効いたおみそ汁のラインアップが充実しています! 鰹節と昆布の合わせ出汁にさらに鰹節を重ねた「重ねだし製法」によりうまれたこだわりのおみそ汁。金色に輝く出汁の香りを堪能できますよ。

 

 

この記事をシェアする

関連記事

RELATED ARTICLES

公式オンラインショップ
TOP
お箸
波背景波背景