読み物 2018.02.16
【第32回】ハーブとスパイスとほんのりダシ味。ベトナム料理は鼻で食べる!
味噌汁飲んでますか?
発酵デザイナーの小倉ヒラクです。
山梨の山中の我が家は例年にない激寒で、-15℃を超えて生命の危険を感じたタイミングで家族の所用でベトナムに行くことができました。ラッキー!
ということでちょっと季節外れな感じになってしまうのですが、今回はベトナムのローカル料理&発酵調味料について書いてみたいと思います。
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ヌックマム(魚醤)の工場を訪ねてきました
今回メインで滞在したのは、細長いベトナムの真ん中にある古都フエとその郊外。
のんびり散策も兼ねて海沿いの小さな村にあるヌックマム(魚醤)工場を訪ねてきました。
ヌックマムはそれ単体では商品にならない小エビや小魚を塩漬けにし、発酵してドロドロになったもろみを濾した醤油状の調味料のこと。
日本でいうところのいしるやしょっつると同じようなカテゴリーの調味料だと思ってください。
【関連記事】
▶【第30回】セクシーな旨みにハマる!魚醤のルーツを紐解いてみた
現場を訪ねてみてわかったのですが、魚醤を濾したあとの搾りかすもペースト状にして発酵させ、お味噌のような調味料にして炒め物や炊き込み料理に使うそう。
魚醤もこの調味料も香りはかなり強烈で、長く熟成させた八丁味噌をさらにストロングにした感じなのですが、味はほのかに潮っぽさを感じさせるほっこり系。
こういう調味料がベトナム料理の旨味を演出しているわけなのですね。
見学した工場の家族。この村には家族経営の小さなメーカーがいくつも集まっていました。なんか僕が仲良くしている日本の醸造メーカーと同じ雰囲気…!
ベトナム料理のキモはハーブ&スパイス!
前述したように、ベトナムの旨味調味料の香りって単体では結構強烈なんですけど、料理全体でみると全然目立たない。それはなぜかというと、大量に投下される香草類(ハーブ)とスパイスのせいなんですね。
こんな感じで「もはやハーブを食べているのでは?」と思ってしまうほどの香草類オリエンテッドなローカルレシピがベトナム中部にはいっぱいありました。
たとえば。
いちおう川魚の炒め物と書かれたメニューを頼んでみたら、実際出てきたのは魚にエビと大量のナッツと刻んだ生姜とホールスパイス類を混ぜて炒め、そのうえにさらにパクチーをはじめとする香草類を、これでもか!とふりかけてとどめにライムをギュッと搾るという異次元すぎる料理が出てきたりします。
こういうの食べていると問答無用で「ベトナム料理の本質は”香り”なのではないか?」と思ってしまうわけです。
これは口で食べる料理ではなく、鼻で食べる料理なのだ!と。
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淡い旨味と複雑な香りのハーモニー
こないだ、カレーのエキスパート集団『東京カリ〜番長』と山梨でイベントをご一緒した時に「カレーの本質とは味ではなく香りなのだ」という金言を聞きました。
インド的には「カレー味」というものはなく、「カレー香」というものがあるだけだと。たしかに本場100%テイストのカレーを食べると、ふだん日本人が料理に求める旨味や甘味はそこまでなく、スパイスの刺激と香りを味わう食体験が強調されます。
翻って、僕が今回食べまくったローカルベトナム料理はどうなのか。
インド料理(カレー)と比べると、香草類>スパイスであり、旨味>刺激なんですね。
つまり「淡い旨味&ダシ味とフレッシュな香草類のハーモニーにスパイスや柑橘の刺激がほんのり加わる」というバランスになります。
インド料理もベトナム料理も同じく「食の香道」なわけですが、日本人が親近感を覚えやすいという点においてはベトナム料理に軍配が上がりそうです。発酵調味料の旨味があり、かつ日本人が苦手な辛味や刺激が少ないからね。
しかも、インド料理や洋食よりも圧倒的に油分が少ない。和食と同じく水を食べているかのようなテクスチャーなわけです。(朝早くから屋台で山盛りのフォーとか食べてるんだけど、太ってる人少ない!)
ベトナム料理は、アジアのなかでも最高峰の「香道」がインストールされた、感性刺激しまくりのパラダイスな食文化。
食べれば食べるほどお腹が空いて、でもへルシー。
天国…ここは天国なのか〜!?
と調子乗って食べ歩きしてたら最終日にお腹が痛くなりました。
何にせよ食べ過ぎはよくないぜ!
それではごきげんよう。
【追記1】
ちなみに植物性のお味噌もあります。麹を使った日本式の味噌ではなく、豆を直接発酵させる豆味噌のようなものが一般的な模様(詳しい人いたら情報プリーズ!)。
【追記2】
ベトナムではチェコやアメリカから本格的なビール醸造が持ち込まれ、ローカルビールや小規模のマイクロブルワリーのレベルも高かった。お酒好きな人は要チェック!
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