読み物 2018.10.30
【第40回】朝ごはんで食の快楽を無限アップデートせよ!
味噌汁飲んでますか?
発酵デザイナーの小倉ヒラクです。
突然ですが、胃腸弱すぎ野郎である僕は1日2食の生活を送っています。朝ごはんをしっかり食べて、お昼はナシ(お茶かちょっと果物とか食べるくらい)、そして夜はたいがい膨大にたまったお酒のストックを利き酒しながら、酒の肴っぽいものを食べる。
「3食しっかり食べないと元気出ないんじゃない?」
と心配する人も多いんですが、僕、律儀に3食食べると胃が弱って寝込んだりしちゃうんです。
胃腸弱すぎ野郎にとって食べ物を消化するのは大仕事! 日々健やかに鼻歌歌いながら軽快に生きていくために、1日2食がベター!というのが自分の身体と相談した結果出たアンサーなわけです。
朝ご飯は至高の快楽タイムである
昼は食べず、夜はお酒も一緒に楽しむ。このようなルーティンでは、純粋に食の快楽を味わうのは必然的に朝食になる。
「ごはん美味い〜!」
「味噌汁沁みる〜!」
「今日も1日、がんばるぞ〜!!!」
と、日々の食事のありがたさを噛み締める至高の瞬間、それが朝食タイム。
おいしいパンと挽きたての豆で淹れたコーヒー…という洋食スタイルも心そそられるが、僕の朝食は基本和食だ。理由は主に2つある。
・胃腸&免疫弱すぎ野郎に和食の発酵食品が最強
・五臓六腑に染みわたる感は和食に軍配が上がる
20代半ば、駆け出しデザイナーだった時代。夜遅くまで働いて、そこからさらに夜遊びしまくり、しかも食生活に対する意識は適当!という生活を送っていたら、子供の頃に患っていた喘息やアトピーの症状が再発、リンパ周りはボロボロ、咳のしすぎで眠れない。結果、朝ベッドから起き上がれず、街を歩いているとめまいと貧血で倒れる…!というゾンビ状態に。
そんな危機に陥った時に始めた習慣が、毎朝の発酵和食モーニング。温かいお味噌汁と納豆ご飯と漬物(キムチとか)をとにかく毎朝食べる!ということを心がけたら、じわじわと体調が復活していったわけです。
発酵食品にはサプリメントや医薬品のように直接病に働きかける力はないけれど、元気な身体のベースをつくることに気づいたんですね。
体調が悪くなってからジタバタしても、時すでに遅し! そもそも体調が悪くならないようにするには、毎日の食習慣が大事〜!!
という、わりと当たり前なことに気づいた20代半ば。
それから10年くらい、僕にとって朝ごはんは身体を鍛えるトレーニングであり、五臓六腑に染み渡る癒やしタイムであり、そして
「うめぇ… ごはんうめぇよぉおお〜!!!」
とお天道様にシャウトする快楽タイムであり続けているんだよ。
フレームを固定して快楽をアップデート!
朝ごはんは食への美意識を鍛えるのに最適な場である。
と僕は強く強く確信している。
それはなぜか。
毎日同じようなものを食べるからだ。
考えてごらんよ。夜ごはんに3日連続同じメニューってあんまりやらないでしょ。3日連続カレーとかラーメンが好きな人だって「今日はタイカレーで、明日はインドカレー!」みたいにレシピ変えるよね。
ところが、朝ごはんは昨日も今日も明日も明後日も、なんなら10年後の今日だって同じメニュー上等! 当方、味噌汁と納豆ご飯と心中する覚悟あり!! となるじゃないですか。毎日食べられる定番メニューを分解してみると、
・納豆かけご飯…お米、納豆、醤油、僕の場合そこにノリも足す
・味噌汁…味噌、ダシ、季節の野菜や山菜
・漬物…キムチ、ぬか漬け、その他ローカル漬物
・おかず…焼き魚や塩辛、塩昆布など
・煎茶やほうじ茶など和食に合うお茶
という感じになる。これが基本のフレームだ。
このフレームを固定した上で、ちょっとずつ各要素をアップデートしていく。
「お米は土鍋で炊いて、醤油は小豆島の木桶で仕込んだ濃口醤油にしよう」
「味噌は去年仕込んだ手前味噌と九州の麦味噌をブレンドが最高!」
「お茶は京都の浅煎りの煎茶が優しく身体を温めまくる…!」
というように、試行錯誤しながら「自分らしいクオリティ」に近づいていく。フレームを固定するからこそ、細かいテストをすることができる。自分の好みの味、そして素材のクオリティへの解像度を上げていくことができるんだよ。
最初はレンジでチンするインスタントご飯と、テキトーに選んだ味噌でつくる味噌汁からのスタートでも全然OK。それを毎日続けていくうちに「もうちょっと食材選んでみよっかな」という気持ちになってくる。
そしたら、ちょっとだけこだわったヤツにしよう、あるいは友達にお土産でもらったあのお米や昆布を使ってみよう…というアップデートが起こる。当時は食に大して興味のなかった僕も「わりとテキトー」からのスタートだった(今でも忙しい時はテキトーにつくることもあるが)。
毎日同じものを食べていても、解像度によって感じる味覚、見える景色は違ってくる。つまり毎日の朝ごはんがもたらす快楽の度合いは、己の食への美意識を映す鏡だと言える。
30年とか50年とかひたすらアップデートし続けたら、僕でもとんでもない至高の朝ごはんにたどり着けるのかもしれない。
人生最後の日は、史上最高の朝食を笑顔で食して締めくくりたいと思う。
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