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【第3回】「甘酒」がなぜ甘いかを科学してみた。

甘酒のしくみ

 

味噌汁飲んでますか?

発酵デザイナーの小倉ヒラクです。

 

アマノ食堂編集部から「甘酒って何ですか?」と質問があったので、今回は甘酒のおはなしを。

 

富山県の南砺(なんと)市という町に行った時のこと。「甘麹(あまこうじ)という発酵食品をよく見かけました。麹とお米と水を混ぜて保温し、甘ーいおかゆ状のペーストにしたものを冷蔵庫にしまっておくんですね。

 

で、これどうやって使うかというと、小分けにしたものをお湯で割って甘酒にして飲む。この土地の人はしょっちゅう甘酒を飲むので、毎回飲むたびにイチから作らなくてもいいような工夫なわけだ。

 

「えっ、甘酒って麹(こうじ)からつくるの?」

 

そうなんです。甘酒って、もともとは麹からつくるものなのさ。

 

 

麹からつくる甘酒と、酒粕からつくる甘酒

甘酒というと、お正月の初詣で振る舞われるものを想像する人が多いかもしれません。この甘酒はどのようにつくるかというと、酒粕(お酒を搾った時に出るペースト)を水に溶かし、砂糖を加えて煮込んでつくります。

 

対して冒頭にあげた甘酒は、麹とお米と水を混ぜ、55℃〜60℃くらいのぬるめの温度で6時間〜10時間くらい保温してつくる。

 

2つの甘酒の製法で何がいちばん違うかというと、砂糖が入っているかいないか。本来の甘酒(麹からつくる甘酒)は、砂糖が流通していない江戸時代以前からつくられていたもの。だから、「発酵で糖分をつくりだす魔法のドリンク」だったわけよ。

 
麹からつくる甘酒の、上品で爽やかな甘味。これはいったいどのようにつくられるのか。科学的に解説してみましょう。

 

まず麹(こうじ)。

 

麹にはお米のデンプン質をチョキチョキ切ってブドウ糖にしてくれる酵素(アミラーゼがあります。この酵素は、50℃〜60℃くらいの時に活発に働きます。

 

アミラーゼ酵素
↑アミラーゼ酵素はこんなヤツ

 

次に米。炊いたお米は、麹の酵素がチョキチョキするエサになる(お米にデンプン質がいっぱい入っているから)。50℃〜60℃くらいのお湯のなかで、酵素が元気になってチョキチョキチョキチョキチョキチョキ…とデンプン質を切り刻みまくると、あら不思議、ブドウ糖がいっぱいできているではないか!

 

麹のアミラーゼ酵素↑米のデンプン質をチョキチョキする麹のアミラーゼ酵素

 

さて、このように甘くないはずのお米から引き出されたブドウ糖。

 

ふだん使っている砂糖(=ショ糖)と違って、甘味が穏やかで余韻が残るのが特徴。麹でつくった甘酒の飲み口のさっぱり感と長く甘味が口に残る感じは、ブドウ糖の個性なのです(ちなみにこの甘酒の特性を活かした調味料がみりん)。

 

 

甘酒をおいしく飲む方法を伝授するぜ

「うーん、仕組みはわかったけど、でもやっぱり私、甘酒ニガテかも」

 

とお嘆きのそこのアナタのために、甘酒をおいしく飲む方法をお教えしましょう。

 

***

 

①ミキサーにかける

…お米の粒々感が気になる人は、できた甘酒をミキサーにかけるとまろやかなテクスチャーになって飲みやすくなります。

 

②お米の量をレシピより減らす

…甘すぎて喉を通らない!という人は、入れるお米の量を減らすと甘味が抑えめになります(酵素のエサが少なくなるから)。それでも甘いという人は、麹と水だけでつくります。こうすると、麹の甘味だけになるのでMAX上品になる(僕もふだんお米はいれないでつくる)。

 

③味噌屋の麹を使う

…上品な甘さを求める人にさらなる詳細情報。甘酒用に市販されている麹は、甘味を強く引き出しているものが多く、ともすれば甘味が強くなりすぎます。そこで、味噌屋の麹をチョイス。味噌屋の麹は甘味がほどほどなので、バランスの良い味になります。

 

④時間を置いたあと、冷やして飲む

…保温が終わった後にミキサーをかけ、さらに冷蔵庫で一晩寝かせて飲むと、飲むヨーグルトっぽくなって爽やかでおいしいです。子どもに飲ませるときにこの方法をとるのもアリ。

 

⑤向井理/綾野剛 似のイケメンと見つめ合って飲む

…だいたい何でもおいしくなります。

 

***

 

えー、余談ですが、甘酒には必須アミノ酸やビタミンB類、肌の新陳代謝を促す有機酸など、各種美容成分が大量に入っています。甘酒を飲む習慣をつけると、女子的にも「何かいいコト」があるかもしれません(←保証はしないけど)。

 

それではごきげんよう。

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