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【第7回】島全体が発酵室!沖縄が発酵天国すぎた

味噌汁飲んでますか?

発酵デザイナーの小倉ヒラクです。

こないだ沖縄へ行ってきました。目的はもちろん琉球の発酵文化を見ること。

 

しかしすごかったね、沖縄は。
菌の視点に立ってみるとこれはもはや「発酵天国」と言ってもいいんじゃないかと思ってしまったよ。

 

東西南北あちこちの地域を見て回りましたが、やはり沖縄は独自のカテゴリー。今回はそんな独特すぎる発酵文化をご紹介するぜ。

 

 

これぞ沖縄!な発酵食品

 

沖縄といえば!という発酵食品とは何ぞ。

まず思い浮かべるのは、泡盛ですね。これは米でつくる焼酎の一種ですが、かつて琉球王国時代、お米が取れなかったのでタイ米を輸入して醸しておりました。九州の焼酎と比べると蒸留温度が若干低く、オリエンタルな味わいが楽しめます(飲み方は水割りでちびちび飲むのが地元っぽい)。

 

次に、“豆腐よう”なんていう変わり種があります。これは、いうなれば「島豆腐の塩麹漬け」。豆腐を塩麹の発酵液のなかにつけてチーズのように溶かしたもの。実は今回の旅の目玉は、この豆腐ようのルーツを探しに行くことだったんだけどさ。

 

珍味好きを魅了するこの豆腐よう。県外で出回っているものは鮮やかなピンク色をしています。これは台湾伝来の『ベニコウジカビ』という特殊な麹菌を使っているからなのですが、実は琉球の宮廷料理として代々伝えられてきたのは、僕たちが普段使っている麹菌(ニホンコウジカビ)でつくるレシピだったのでした(豆腐ようの驚くべき歴史の詳細はまた別の回に)。

 

 

実は大事だった味噌の文化

 

そして今回、色んなとこを回って実感したのが、沖縄料理には味噌が欠かせないってことでした。
沖縄の郷土料理は、ほとんど醤油を使わないんですね。まず海塩、油(豚の油を壺に取っておく)、そして味噌。で、この味噌の味がまた大らかな味なんだ。

 

味の分類的には九州っぽいんだけど、九州の味噌が「あえて甘くした味」ならば、沖縄のは「なんか甘くなっちゃった味」。

 

同じ着地のように見えて「あえて可愛くした」と「なんか可愛くなっちゃった」ぐらいの違いがあります。漫画『ちはやふる』における花野さんとめぐむたんの違いをイメージしてください。

 

 

「…って、もっと主要人物を例に出せよ!」

 

ちなみに僕は若宮クイーンが好きです。

(※イメージできない!という方は、ぜひ読んでみてください)

 

さて。
なんでこんな味の味噌ができるのか、実際にお味噌屋さんを訪ねてみたんだ。そしたら、麹の作り方が全然違った。

 

ここから少しテクニカルな話になるよ。

麹をつくるとき、一般的には「麹室(こうじむろ)」という部屋で作業します。なぜ特別な部屋を設けるかというと、雑菌の侵入を防ぐためと、麹が育ちやすい温度・湿度管理をするため。

 

ところが沖縄の味噌蔵では麹室が限りなくオープンで、そして温度管理もめちゃユルい。他に見学した醸造メーカーに至っては、麹室自体が無く、事務所の一角にプラスチックケースを積んで麹をつくっていたという衝撃!

 

こここ、こんな放任主義で発酵させるなんて、あり得ない!

 

なんでそんなことが可能なのだろうかと考えていたら、実は沖縄全体が発酵室であるということに気づいたのさ。

 

麹菌や酵母といった主要な発酵菌は、30℃ぐらいの温度帯と比較的高めの湿度でよく働くのだが、これって沖縄のデフォルトじゃんよ。

 

夜でも気温が下がらないし、冬もそんなに寒くならない。これは発酵菌にとっては天国以外の何者でもない。365日24時間発酵し放題、夏休み合宿で朝から晩までバスケの練習に明け暮れる桜木花道くんのごとき発酵天国であるよ。

 

「えっ、でもそれってばい菌にとっても天国ってことじゃないの?」

 

ご明察。ばい菌や雑菌にとっても沖縄の気候風土は生きやすい環境なんですね。そういう時は、なんと泡盛を消毒液として使うのさ。

 

日本酒やビールと違って、高いアルコール度数と雑味のない泡盛は、ちょうど手を洗ったあとにアルコールを吹きかけるように雑菌をブロックしてくれる。

 

料理上手のおばあから聞いた話では、味噌を仕込む前にタルを泡盛で拭き、仕込み終わった大豆の上に泡盛をふりかけて腐敗を防ぐそうな。

 

発酵のメガネを通して見ると、沖縄はまた違った意味のパラダイスに見えてくる。大らかで、味わい深くて、無限リピートしたくなる。

(微生物に気を取られすぎて、ビーチ遊びができなかったのが残念すぎるぜ…)

 

 

それではごきげんよう。

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