読み物 2017.04.14
【第24回】乳酸菌は腸内の『怒りのデスロード』を疾駆するマックスだ!
乳酸菌は腸内の『怒りのデスロード』を疾駆するマックスだ!
味噌汁飲んでますか?
発酵デザイナーの小倉ヒラクです。
今回はアマノ食堂編集部からの「乳酸菌のことについて教えてプリーズ!」というリクエストにお応えして、乳酸菌と人間の健康について。
***
CMや雑誌の特集で「乳酸菌で腸をキレイに!」というワーディングをよく見るけど、その理屈って結構ムズカしいんですよ。
体系的な説明はとてもこのアマノ食堂のコラムではできないくらい複雑なんですけど、ざっくりイメージできるぐらいの軽めのお話をしようじゃないか。
ということで、今回は割とマジメな話をします。みんな忘れてるかもしれないけど、僕は少女マンガ評論家じゃなくて、発酵の専門家ですからー!
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アナタの健康は、腸でつくられている
それでは乳酸菌の話をする前に、人間の健康における腸の意味についてを説明しよう。
いきなり壮大な話になるが、人間の祖先をたどるとミミズのような生き物にたどり着く。口から摂取した食べ物を、消化管で吸収し、排泄物を肛門から出す。これが哺乳類および大半の高等動物の基本的な機能なんですね。
人間も基本は一緒で、
食べる→消化吸収→排泄
という一連のプロセスによって栄養をゲットし、身体の細胞を再生産して生きている。これが僕たちの「動物」としての基本機能。この基本機能の上に脳による各種神経機能が加わって人間というものが成り立っている。
ま、要は何が言いたいかというと…人間の本体は消化器官、さらにその中核を成す「腸」だってことなんだね。腸、大事なんですよー!
人間における腸の主たる役割はもちろん「食べ物を消化して、栄養をゲットする」ということ。胃酸で溶かした食べ物を腸の消化酵素で分解吸収する。そしていらないものを肛門へと送る。
ここまでは、学校で普通に習うことなのでOKなはず。
でね。実はここ20〜30年の科学の進化によって、この「消化吸収」の機能に、腸内に棲みつく各種微生物が大きく関与していることがわかってきた。体内に入ってきた食べ物の分解を、お腹のなかの微生物たちも行っているわけなんですね。つまり、アナタの栄養は、アナタとお腹の微生物が共同でつくりだしていると言えるわけだ。ビックリだよね。
***
腸内における世紀末的カタストロフィ
では次に進もう。
人間が正しく栄養をゲットして健康になるためには、腸内に棲む微生物たちの協力が欠かせない。
そしてだな。この微生物たちの生態系のスケールがスゴいんだよ。数千から数万種類もの様々な菌たちが、ひとりの人間の腸のなかで何百兆とひしめきあっている。つまりアナタのお腹のなかにはインドの人口の何十万倍もの数の壮絶な社会が営まれているんですね。
インドにたくさんの民族や言語や宗教があるように、腸内の微生物ソサエティにもたくさんの種族の菌たちと派閥がある。
このなかで、人間の健康に役立つ働きをする種族を善玉菌といい、健康を阻害する働きをする種族を悪玉菌といい、そのどっちでもない何しているのかよくわからない種族を「日和見菌(ひよりみきん)」と言う。善玉菌、悪玉菌、日和見菌。この3つの派閥のバランスによって、人間の腸の働きが変わってくる。善玉菌たちが主導権を握って日和見菌を手なづけ、悪玉菌がアウトサイダーである社会は「治安の良い腸内ソサエティ」と言える。
逆に悪玉菌が支配する映画『マッドマックス 怒りのデス・ロード』、あるいはアニメ『北斗の拳』のような世紀末的な世界は、「治安の激悪な腸内ソサエティ」と言える。
治安が良ければ、食べ物はいい感じで栄養に変わり、消化が終わったものは適切に排出され快便。体調もバッチリで肌ツヤも良くなる。
ところが治安が悪ければ、せっかく食べたものが危険な老廃物に変わり、体外に排出されずに留まることになる。体調も顔色もすぐれず、便秘や肌荒れに悩むのは、お腹のなかが怒りのデス・ロード状態になっているからかもしれない。ヒャッハー!
このように、腸内環境には治安の良し悪しがある。
そして。乳酸菌はこの腸内環境に平和をもたらす“世紀末救世主”マックスあるいはケンシロウのような存在なのだ!
***
腸の怒りのデスロードを疾駆するマックス
「乳酸菌が生きたまま腸に届く!」というこの言葉は、つまり何が言いたいのであろうか。
ヨーグルトや乳酸菌飲料に含まれる乳酸菌たちは、凶悪な胃酸に溶かされず、人間の免疫システムによる攻撃も免れ、こじらせ女子の世紀末的に荒廃した砂漠の腸内にたどり着く。つまり「マックスがウォー・ボーイズに殺されることなくイモータン・ジョーの砦にたどり着く」ということなんですね。
そこで乳酸菌マックスは、かろうじて生き延びているフュリオサこと善玉菌に力を貸し、悪玉菌(イモータン・ジョーの一味)の勢力を押し返す。
つまり、乳酸菌は腸における『最強の助っ人』なのですね。ポイントは、乳酸菌が主役として腸内で何か良いことをするのでなく、腸内の善玉菌のサポートをするということ。ほとんどの菌が胃酸や免疫システムによって腸に辿りつく前に死んでしまうのに対し、タフな乳酸菌は幾多のトラップを乗り越えることができ、さらに腸の善玉菌たちに良い働きかけをする。
「なんで乳酸菌はそんなにスーパータフで有能なんですか?」
いや、それが最先端の生物学をもってしてもその理由がよくわかっていないのだよ。何をやっているのかは少しづつ解明されてきているのだが、どうしてそんなことをするのかは謎に包まれまくっている。
おさらいするとね。
1:人間の健康維持の基本は「腸」
↓
2:腸内には微生物による複雑な生態系がある(これを「腸内フローラ」と言う)
↓
3:善玉菌・悪玉菌・日和見菌の「3派閥」のバランスで腸内環境の良し悪しが決まる
↓
4:生活習慣が荒んでいる“こじらせ女子”の腸内環境はまるで「怒りのデス・ロード」
↓
5:乳酸菌は腸内の善玉菌の最強の助っ人になる
↓
6:善玉菌が悪玉菌を抑え込むと、腸内環境が改善される
↓
7:おなかも快調、むくみもスッキリ、肌もピカピカになったなら結果として…モテる!
↓
8:モテた結果“こじらせ”が治る(あるいはより悪化する)
ということになるんですね。つまり超要約すれば…
乳酸菌摂取=モテる
という方程式ができあがることになります(←ホントかよ)。
***
菌は生きていなくても役に立つことがある
こんな感じでなかなかに複雑な腸と菌の関係。実は、生きて菌が届かなくても役に立つことも結構あります。例えば、エビオス錠のような「酵母のサプリメント」的なものを見かけます。
これは何かというと「酵母の酵素や栄養物がカラダにいいよ」ということなんですね。例えば市販のビールって、酵母の澱(おり)を濾過して上澄みをボトルに詰めるわけですが、実は酵母の澱に含まれる栄養物が腸内の善玉菌の栄養になったり、酵母の出す酵素が腸内環境に良い働きかけをしたりするわけです。
乳酸菌と違って酵母は腸内まで生きてたどり着くことはムズカしいんですけど、働きを終えた酵母(菌体と言います)や酵素が残っていれば健康機能に良いフィードバックをもたらしてくれることがあります。
必ずしも「絶対生きた菌を腸に届けなきゃダメ!」と躍起になる必要もなくて。腸内の善玉菌の栄養となり、腸内環境に良い影響を与える「発酵菌がつくった栄養素と酵素がたっぷりの発酵食品」を食べるのが基本。
そのなかで、ある種の乳酸菌は「菌自体が腸内で良い働きをする珍しい発酵菌」という風に認識してもらえればいいかなと。
ちなみに乳酸菌のように、腸内環境に良い働きかけをしてくれる微生物あるいは微生物の働きを使った食品・サプリメントをプロバイオティクスと言います。最近よく聞く単語だけど、これでバッチリ理解できたはず。
…えっ、よくわかんないって?
じゃあ『マッドマックス 怒りのデスロード』をNetflixで見てくださいね。
それでは、ごきげんよう。
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