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「農業女子プロジェクト」田中なめこ・3代目田中さんが語る 、なめこ愛とこれからの農業

田中なめこ 田中まゆみさん
田中まゆみさん
長野県飯山市のなめこ専業農家「田中なめこ」の3代目。両親とともに日々なめこを栽培するかたわら、農林水産省の「農業女子プロジェクト」のメンバーとして、メディアやイベントに出演し、農業の大切さや楽しさを伝えている。

なめこはその多くが室内栽培のため、天候の影響を受けず安定した価格を保つことができる嬉しい食材。食卓では、おみそ汁の具材としても長年親しまれてきました。安定した生産力があり、世代を超えて愛されている“なめこ”ですが、どうやって生産されているかご存知の方は意外と少ないのではないでしょうか?

 

ということで、今回はなめこ栽培のプロに「なめこがどうやって作られているのか」を聞いてきました!

 

今回お話を伺ったのは、長野県でなめこ栽培をしている「田中なめこ」の3代目・田中まゆみさん。実はまゆみさん、農業で活躍する女性たちによる「農業女子プロジェクト」のメンバー! そんな彼女に、なめこ作りのあれこれとこれからの農業についてお話を伺いました。

 

 

長野でなめこ農家を営む若き3代目に聞く、なめこ作りのあれこれ

 

実は、長野県は全国で1位2位を争うなめこの名産地。「田中なめこ」がある飯山市は新潟県との県境にあり、山に囲まれ、水も空気もおいしい自然豊かな地域です。

 

しかし、冬は雪が多いため、屋外での農作物栽培にあまり向いていません。そこで注目されたのが、温度管理された室内でできるきのこ栽培でした。

 

「田中なめこ」は、30年以上前にまゆみさんの祖父が始めたなめこ専門農家。そこで現在3代目を務めているのがまゆみさんです。

 

取材当日、現場に現れたまゆみさんを見て“農業”のイメージを覆すような若くてイマドキなルックスに一同びっくり! 農業の分野にはいつから足を踏み入れたのでしょうか?

 

田中なめこ 田中まゆみさん

「就農して今年で3年目を迎えました。なめこって、すっごくかわいいんですよ! 立派ななめこができると毎回『このなめこはべっぴんだな〜』って嬉しくなっちゃうんですよね。菌の種類によって育ち具合が全然違うので、べっぴんななめこに仕上がると『ちょっと今回の種菌いいんじゃない!?』とか家族みんなで盛り上がったりしています(笑)」と、まゆみさん。

 

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確かに言われてみると…なめこってコロンとしていてかわいいかも。でも、愛おしそうな表情でなめこを熱く語るまゆみさんもなめこに負けず劣らずとってもかわいい女の子!

 

また、農家として一番やりがいを感じるのはお客さんたちからの声を直に聞いたときだそう。「近所の方やFacebookなどを通じて『田中さん家のなめこが一番だよー!』って言われるのが何よりも嬉しいんです」

 

 

OLから、なめこ農家へ転身した理由

 

溢れんばかりのなめこ愛が伝わってくる彼女ですが、実は幼い頃は実家がなめこ農家であることが嫌で、恥ずかしいとさえ思っていた時期があったとか。

 

そんなこともあり高校卒業後はすぐに上京。ビジネス専門学校に通い、そのまま就職して都内でOL生活を送っていました。そんなある日のこと、2代目であるお父さんが仕事中に大怪我をしてしまい、「ちょっと手伝ってまたすぐ東京に戻ってくる」つもりで実家の長野県飯山市へ戻ります。

 

父親が入院し、母親と2人きりで毎日なめこと向き合っていくなかで、子どもの頃には気付かなかった両親の苦労が身に染みてわかるようになったまゆみさん。同時に、農業に対して誇りを感じるようになっていたといいます。

 

「その時に『ちゃんと後を継いで両親を助けたい』と思い、3代目を継ぐことを決心したんです」

 

それから早3年。今はご両親と、親戚や地域の方など合わせて10人弱の「田中なめこ」で日々奮闘しているまゆみさん。1日のスケジュールがこれまたハード!

 

 

なめこの栽培方法と農家の1日

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「なめこ農家の1日は、まず早朝に起きてなめこを採取するところから始まります。いつも大体4時には起きていますね。そこから6時半に一度朝食をとって、7時半には仕事を再開」

 

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「それから直売所へなめこを持っていきます。日中はなめこの足切り・パック詰め・袋詰めなどを行い、空き時間に畑や田んぼの作業をして、大体夕方17時頃に仕事が終わります。夕食は19時頃、就寝は21時くらいかな」

 

ちなみに「田中なめこ」で育てたなめこは、スーパーなどでは『やまなめ』という商品名で売られているそう。傘が大きく、プリッとした食感を存分に楽しめるのが特長です。

 

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(こちらが「田中なめこ」ご自慢の『やまなめ』。大粒で表面がツヤツヤ!)

 

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それにしても、なめこ農家はとにかく朝が早い。そして、夕方までほぼノンストップで作業が続きます。

 

普段何気なく食べているなめこですが、私たちの食卓に届くまでの過程は想像以上にハードなよう。でも年頃の女性なら、仕事終わりに友達と遊びに行ったり、飲みに行ったりしたいと思うのですが……どうですか?

 

「そうですね。でも、なめこは平日も休日も関係なく生えてくるので(笑)、丸1日休みの日なんてほとんどないんですよ」と、まゆみさんは笑って話します。

 

そんな忙しい日々のなか、今の唯一の楽しみは「お母さんと一緒に甘いものを食べること」。基本的に移動はすべて車のため、お酒を飲むのは「家でお父さんの晩酌に付き合うくらい」なのだそう。

 

「でも今は一家団らんの時間が一番楽しいですね。まだ就農してそれほど年数が経っていないからというのもあると思いますが…。毎日、家族みんなで支え合っています」

 

仕事場でも家でも一緒の田中家。普段はとても仲良しな家族ですが、それでも時には喧嘩をしてしまい1人になりたい時もあるのだそう。そんな時のストレス解消法はなんと…草刈り!

 

「草をざざーって刈るのってすごく爽快で気持ちいいですよ。汗をかくから体も心もすっきりするし。ドライブや温泉に行ったりもしますね。近くに野沢温泉があるので、時間ができるとよく行きます」

なんとも健康的な解消法!

 

時間に余裕がある時は、同世代の農業仲間と近くのレストランやカフェでおしゃべりすることも。

 

「この前は農家をやっている高校の同級生と、カマキリがどこに卵を生んだかという話で盛り上がりました。カマキリが高い位置に卵を生んだ年は雪が多いって言われているんですよ。それで『今年は雪、やばそうだね〜』って(笑)」
トークの話題もさすが農業女子ならでは!?

 

 

愛情がたっぷり詰まった、なめこレシピ

 

なめこのとろけるような口当たりや食感は、きのこ好きに限らず好きな方は多いはず。もちろん、作り手であるまゆみさんも毎日なめこ料理を食べているそう。そのレシピはなめこ農家ならではの多彩ぶりです。

 

「大きくて新鮮なものは、素焼きしてバター醤油を少し垂らすだけでおいしいですよ。天ぷらも好きですね。先日は鯛となめこの炊き込みご飯を作ったのですが、それもすごくおいしかったです」

 

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こちらが、まゆみさんおすすめの「鯛となめこの炊き込みご飯」。旨みが染み込んでおいしそう!

 

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他にも、炒めたり煮たりあえたり…とさまざまな調理方法が。まゆみさんが作ったオリジナル料理は「田中なめこ」のfacebookページに随時アップされているので是非覗いてみてくださいね。

 

「こんな食べ方があったんだ!」と目からウロコ確実ですよ。どれも普通のお店ではなかなか食べられない、なめこ農家ならではの知恵が詰まったレシピです。

 

 

小規模農家の厳しい現状を変えたい

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なめこ栽培のかたわら、農林水産省の「農業女子プロジェクト」メンバーとして、若い女性達に向けたさまざまな推進活動も行っているまゆみさん。彼女が見つめる“農業の今”について聞いてみました。

 

長野県はまゆみさんと同世代の若い農業従事者も比較的多い地域ですが、家族単位の小規模農家の現実は厳しいよう。

 

「今、小規模農家はかなりひどい状況です。資金繰りがうまくいかなくなったり跡継ぎがいなくて廃業したり…異物混入などで信頼を失いダメになってしまったケースなんかもありますね。私が暮らしている村も昔はいくつもきのこ農家があったのですが、今はうちだけになってしまいました。これからは、うちのようなに小規模でも農家としてで成り立って行ける方法を考えていきたいです」

 

「農業女子プロジェクト」の一環として、SNSでの情報発信やイベント出演などを通して農業の楽しさや大切さを伝えているとか。

 

先日は、東京の日本橋三越で開催された催事「ハーベスト フェス powered by 農業女子PJ」にも出店。まゆみさんを含めた15名の農業女子によるマルシェやワークショップ、トークショーなどが開かれ、食の未来を創る生産者の代表として“農業女子”の存在をPRしました。

 

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(「ハーベスト フェス powered by 農業女子PJ」の様子)

 

「田舎はまだまだ男性社会なので、女性が意見を言えないことも多いんです。でもこのプロジェクトで全国の農業女子たちと関わるようになってすごく楽しくなりました。本当に色んな活動をされている方々がいて、みんなの話を聞いているだけでも勉強になります」

 

まゆみさん自身も現在、生産だけでなく商品開発も行う「なめこの6次産業化」に力を入れている最中。最近では『乾燥なめこ』を発売し、それをオイル漬けにした新商品も現在開発中なのだとか!

 

 

農業ってクリエイティブ!

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天候不順、後継者問題、自給自足率の低下…「農家は大変」という声は色んなところで耳にします。それでもまゆみさんは「仕事がだんたん楽しくなっているし、これからも農業を続けていきたい」と思っているそう。

 

まゆみさん曰く、「農業はすごくクリエイティブな仕事」。それは会社員時代を経たからこそ気付けたことかもしれません。

 

「東京で会社員として働いていた時は、会社や上司から言われたことをその通りにやっていただけでした。でもそうじゃない“何か”をしたくなった時、農家にはできることがたくさんあります。農作物を作るだけでなく、新しい商品やシステムを生み出したり、それによって業界や社会全体を変えていけたり。生み出すことって、大変だけどすごく刺激的で楽しい。少しでも多くの人に農業に興味を持ってもらえたら嬉しいですね」

 

忙しい合間をぬってインタビューに応えてくれたまゆみさん。初めは、“THE・おしゃれな若い女性”といった見た目から「本当に農家の人!?」と少しだけ疑ってしまったのですが…(すみません!)。その穏やかながらもしっかりとした口調から、なめこへの溢れる愛と農家として生きていく覚悟がひしひしと伝わってきました。

 

最後に、農業女子としてこれからやりたいことを尋ねると……何と、なめこアイドルとしてデビュー!?

 

「と言っても、まだ何も決まっていませんけど(笑)。若い人や子どもたちに、農業っておもしろそう、かっこいいな、楽しいんだなって思ってもらいたいんです。きのこ仲間を集めて、女性向けのなめこフェイスパックとかも将来作りたいな」

 

歌って踊って栽培できる、新しいアイドルの誕生なるか…!?
女性ならではの視点で挑戦し続ける、若きなめこ農家3代目。今後の活動が楽しみです。

 

 

企画協力/田中なめこ

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