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ほうれん草 ほうれん草

山形県産「赤根ほうれん草」の栽培ポイント、おいしい食べ方

岩月成人さん
山形県天童市で、5年前から赤根ほうれん草を中心とした農作物を作る「岩月ファーム」を経営。赤根ほうれん草の栽培に取り組む「天童市野菜研究会」や天童市の若手新規就農グループ「アンツァダ」に所属し、赤根ほうれん草の普及に努めている。昭和40年生まれ。家族は、母、妻、子5人、孫1人。

ほうれん草は大きく分けて、東洋種、西洋種、一代雑種の3種類があります(詳しくはこちら!)。中でも日本古来の東洋種はえぐみが少なく甘いため、日本人好みの味として親しまれていました。しかし、病害虫に弱く栽培が難しいことから作る農家が減り、今や貴重な存在に。今回注目する山形県の伝統野菜「赤根ほうれん草」は、そんな東洋種のひとつです。「野菜ソムリエサミット2013(テーマ:ほうれん草)」で、香りや味、食感を競う食味評価の1位に輝いた、まさに日本一のほうれん草! 今回は「赤根ほうれん草」を栽培している岩月ファームさんにお邪魔してきました。

 

 

寒ければ寒いほどおいしくなる山形の伝統野菜「赤根ほうれん草」

 

伺ったのは、山形県天童市で「赤根ほうれん草」作りに取り組む岩月ファームの岩月成人さんです。12月上旬の某日、駅に降り立った瞬間、ひんやり冷たい空気に東北の寒さを実感。こんなに寒い中での農作業は大変そうだななんて思っていたところ、「今年は暖かいから作業がしやすいよ」と岩月さん。やっぱり東北の方は寒さに慣れているんですね。

岩月ファーム

畑にお邪魔してまず目に飛び込んできたのは、雪化粧をした美しい山々! 山形県の中央部にそびえる月山(がっさん)です。なんと12月上旬に、月山がこんなにきれいに見える日は月に1回あるかないか。岩月さんも「今日はほんとラッキーだよ。ウキウキしちゃうね」とご機嫌です。岩月さんは、この畑で露地栽培(屋外で栽培すること)の赤根ほうれん草を作っています。

赤根ほうれん草

赤根ほうれん草の特徴はなんといってもこの赤い根っこ。普通、ほうれん草の根っこは食べるとき捨ててしまうイメージがありますが、赤根ほうれん草の場合は、この立派な根っこも余すところなくおいしいのです。さらに、根の付け根近くの赤い茎の部分は、甘味が最も詰まっている場所。この甘味は寒ければ寒いほど強くなり、特に一年で最も寒い一月の雪の中で育ったものは、メロンと同じくらいの糖度になることも!厳しい環境の中で育つと強く立派になるのは、人間と同じなんですね。

岩月ファーム 岩月成人さん

採れたてをいただくと、その甘さにびっくり!!特に茎の赤い部分は本当に甘くて、まるでフルーツを食べているかのようでした。ギザギザした葉っぱもえぐみが少なく柔らかいので生でも食べられます。

赤根ほうれん草

(写真はどちらも岩月ファームの赤根ほうれん草)

 

赤根ほうれん草の中でも岩月ファームのこだわりは、やはり特徴的な「根っこ」。ほかのものに比べて太く、長いのがウリです。「一番のポイントである根っこを切ってしまうのはもったいない。うちではできるだけ残して出荷しています」

 

 

赤根ほうれん草の栽培のポイントは土作りと種蒔き

赤根ほうれん草の栽培は9月〜2月頃が勝負。まず、土に肥料や堆肥、石灰を混ぜる土づくりを行います。そして9月上旬に種蒔き。赤根ほうれん草は、発芽する際にたくさんの水が必要になるので、雨が降る日を予想してその数日前に種を蒔きます。

 

「ほうれん草作りの中で最も大切なのが、この土づくりと種蒔き。土の養分のバランスが合っているかどうかとか、ちゃんと雨は降るのかなど芽が出るまでは毎日ドキドキです。芽が出たら、半分は成功だね」

 

その後は、間引き(株が密集しないよう、少量を残して他は抜くこと)、水やり、雑草対策、消毒などを繰り返します。そして10月上旬から1月中旬頃まで収穫作業を行います。

岩月ファーム

「今年は暖冬だから12月上旬でも暖かいけど、例年の今頃はもう雪が積もっていて大変。多いときは70cmもの雪をかきわけて収穫することもある。そんなときはこの畑に1時間もいられないよ」

 

収穫が終わったら今度は出荷の準備。まず根っこについた泥をカマで払い落とします。これは根っこが重要な赤根ほうれん草ならではの作業。その後、傷んだ葉を取り除いて、近くの井戸でほうれん草をジャブジャブ洗います。

岩月ファーム 岩月成人さん

栽培にはこの井戸が必須。もしこの水源がなければ、赤根ほうれん草は作っていなかったというほど重要な存在です。「水代がばかにならないからね。それに井戸水は水道水に比べて、夏は冷たくて冬は温かいんだよ」

 

洗った後は干して袋詰めして、やっと完成!収穫してから出荷まで丸2日かかるそうです。農家はこれら一連の作業を雨の日も吹雪の日も、天候に関係なくやらなければなりません。こうした大変な農家の方々の作業を経て、私たちの食卓に、おいしい赤根ほうれん草が届けられるのです。

 

 

昔は体育教師!? 赤根ほうれん草農家への道のり

岩月ファーム 岩月成人さん

岩月さんは就農して今年で5年目。今は赤根ほうれん草以外に、お米、トマト、ネギなどを作っています。畑は全部で10数箇所。そのうち赤根ほうれん草は露地栽培が1カ所、ハウス栽培が4カ所です。「露地栽培の方がおいしいけど、生活の支えは安定して作れるハウス栽培ですね」

岩月ファーム

畑の管理は全て岩月さん一人で行い、お母さんやパートさんに手伝ってもらいながら作業を進めています。

 

「まだまだチャレンジと失敗の繰り返し。でも知り合いの農家さんからいろいろ教えてもらえるので本当にありがたいですね。農業を始めて5年目になってやっと、年間を通して何かしらの作物が収穫できるようになりました」

 

もともと岩月さんは、体育教師として東京近郊の高校に13年間勤務していました。約15年前に家業の製造業を継ぐため、家族と共に山形に帰郷。

 

以来、約10年間はお父さん、お兄さんと受け継がれた製造業を経営していました。しかしリーマンショックの影響で工場は縮小せざるを得ない状況に。そのとき、会社は奥さんに任せて岩月さんは高齢化と後継者不足に悩む農業の道へ進むことを決意します。県内の農業大学校の研修制度を利用して、ベテラン農家のもと1年間、農業を学びました。赤根ほうれん草との出会いも、この頃だったそう。

赤根ほうれん草

「研修先の農家さんが、赤根ほうれん草を作っていたんです。栽培は大変だったけど、作っている人も少ないし、なによりすごくおいしいから、みんなが注目してくれて、。赤根ほうれん草ひとつで、自分の周りの世界が広がったのが、すごく楽しかったんです」

 

「赤根ほうれん草を丸ごとフリーズドライするのもおもしろそう」

赤根ほうれん草のおかげでテレビや雑誌の取材を受けるようになり「就農してからの4年間、ちっとも退屈していない」という岩月さんに、今後の目標をお聞きしてみました。

「今の目標は、赤根ほうれん草を一人でも多くの人に届けること。それには加工品として販売することだと思っています。その方法のひとつとして、実はフリーズドライってすごくいいんじゃないかな思っていて…赤根ほうれん草入りのみそ汁も良いし、一株まるまるフリーズドライにしてみるのも斬新でいいと思う」

 

教師や会社経営など、豊富な人生経験を積んできた岩月さんならではのアイデアですね! 今後、岩月さんの赤根ほうれん草とどんな形で出会えるのか楽しみです。

 

【農家のまかないレシピ】

とっても甘い!「赤根ほうれん草のおひたし」

最後に岩月さんイチオシの赤根ほうれん草の食べ方をお聞きしました。「とにかくシンプルにおひたしで! ほうれん草の甘味をたっぷり感じてもらいたいですね」

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ポイントは、根っこもスライスして添えること。葉っぱの柔らかさと根っこの甘味の両方が楽しめます。

 

岩月ファームの赤根ほうれん草は、2月頃まで天童市内のスーパーマーケットなどで販売中です。そのほか、山形県内にチェーン展開するいくつかの飲食店にも卸しているそう。関東近郊では、1月から東京都内の山形県アンテナショップにも不定期で出品予定とのこと。

 

これからますます寒くなりますが、ほうれん草のおいしさは増す一方。山形の厳しい寒さの中で一生懸命育った甘味たっぷりの「赤根ほうれん草」を、ぜひご賞味あれ!

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