白菜
季節の食材のHOWTO 2016.01.13
白菜が大人気!? LIP編集部に聞く、台湾の食文化&最新カルチャー
東京から飛行機で約4時間と近く、おいしいグルメが満載なことから海外旅行の定番スポットとして挙げられる台湾。その台湾で、どうやら観光客が行列を作るほど人気の「白菜」があるらしい。
そんなにスゴい白菜とは一体…。
極上においしいの?もしくは、ギネス級にビッグなサイズとか?
早速ネットで「台湾 白菜」と検索すると一発でヒット。
リサーチといっても10秒も経たないうちに答えが出てしまい正直戸惑いが隠せませんが続けます。さて観光客が殺到するほど人気の白菜が置いてあるのは、どうやら台北の「国立故宮博物院」だそう。
こちらが台北市内にある国立故宮博物院。696,000点以上の美術品を所蔵している博物館です。
台湾で一番有名な白菜は「食べられない白菜」だった!
察しがいい方は博物館にあるという時点でお気づきだったでしょう。そうなんです。
実は噂の白菜は、白菜の形をした「翠玉白菜」というアート作品だったのです。世界的にも有名かつ貴重な作品で、“神品”とも呼ばれているそう。
こちらが噂の「翠玉白菜(すいぎょくはくさい)」。中国4000年の歴史の中から生み出された数々の名宝を収蔵する国立故宮博物院の中でも、群を抜いた人気を誇ります。白混じりの珍しい翡翠(緑色の宝石)から白菜の形を精巧に掘り出した作品で高さはわずか19cm(意外と小さい!)。よーく見ると緑色の葉っぱ部分にキリギリスとイナゴがとまっており、ちょっとしたユーモアも感じられます。でも、なぜこの翡翠で作られた白菜がそんなに人気なんでしょうか?
この作品は清朝末期の皇妃の嫁入り道具だったと言われています。その昔、台湾で白菜は清廉潔白の象徴でした。そして2匹の昆虫にも、多産・子孫繁栄の意味があり、当時庶民の間で「白菜×昆虫」は吉祥(=幸福、めでたいこと)を表すモチーフとして流行っていたのだとか。ただのユーモアではなく、ちゃんと意味や願いが込められていたんですね。つまり、この白菜を見ることで「何だかいいことがありそうな気がする〜!」そんな気持ちになるのではないでしょうか。
この「翠玉白菜」は長らく門外不出とされてきましたが、実は2014年に初来日。2週間限定で東京国立博物館に展示され話題になりました。期間中はこの白菜をひと目見ようと、やはりたくさんの人が殺到して数時間待ちになったこともあったそう。白菜、侮れない!
白菜は台湾でも親しまれている野菜
日本同様、台湾でも白菜は手軽に手に入る食材として親しまれています。調理法も漬け物をはじめ煮たり炒めたりとさまざま。「白菜」は中国語と日本語で同じ表記ですが、中国語の白菜は「大白菜」と「小白菜」に分けられ、日本でいう白菜は「大白菜」の一部です。
中山國中駅から徒歩5分ほどの所にある、台北最大の青空市場「榮星攤販臨時集中市場」で販売されている大白菜。
左が台湾の白菜(台湾の白菜はレタス〜キャベツくらいの大きさ)、右が中国の白菜で、日本で見かけるのはこの品種です。
13cmほどの小さな高級白菜も!
白菜を使った代表的な台湾料理のひとつが「酸菜白肉鍋」。台湾でも冬は鍋を楽しむ文化があります。この「酸菜白肉鍋」は簡潔にいうと白菜が入った鍋なのですが、この鍋に使われるのは生の白菜ではなく“白菜漬け”。
台湾では“白菜漬け”のことを「酸菜(スヮンツァイ)」と呼びます。
「酸菜白肉鍋」は、食べやすいサイズに切った酸菜と豚肉(もしくは羊肉や牛肉)を一緒に鍋で煮込みます。酸菜の程よい酸味でヤミツキになる味!台湾に行った際はぜひ一度ご賞味あれ。また冬の時期、特に年越しや大晦日には「雞湯白菜」という白菜のチキンスープ煮込みのような料理も食べられるそう。
また、白菜の代表的な料理として挙げられるキムチは韓国のものが白菜を使うのに対して、台湾では白菜の代わりにキャベツを使ったキムチも多いのだとか。同じアジア圏内でも国や地域によって白菜の種類や食べられ方が少しずつ異なるようです。
台湾のことは達人に聞け!「LIP」編集部にお邪魔しました
台湾で大人気の白菜の正体、そして台湾の白菜料理についてご紹介してきましたが、「ぶっちゃけ酸菜白肉鍋って観光客向けなのかも?」「現地で注目されているグルメは?」と気になることがたくさん出てきたので、思い切ってこの方達にお話を伺ってきました。
お邪魔したのは、台湾&日本の文化や最新情報を毎回さまざまな切り口で紹介するカルチャーマガジン「LIP/離譜(リップ)」編集部。アートディレクターの西山美耶さん(写真左)、編集長の田中佑典さん(写真右)が出迎えてくれました。
月に1回ペースで台湾に足を運んでいるという台湾通のお2人に、今のトレンドや台湾の食事情について聞きました!
こちらが2015年発行の最新号。すべてのページにおいて日本語と台湾華語の2カ国語表記がされています。「台湾人と日本人って似ている部分もあり、全然違う部分もある。その幅がおもしろいんですよ」と話すのは、企画・編集・ライティングを担当する編集長の田中さん。
田中さんは2010年頃、ある映画を通して興味を持っていた「台湾」をテーマに雑誌を作ろうと思い立ったのだとか。実際に台湾へ行って現地の若いクリエイター達と話すと、彼ら自身も日本に興味を持ち、日本に自分達のことを発信したいと思っていることを知ります。そこで、「今までなかった“台日間をつなぐメディア”」のアイデアが生まれました。
そこから西山さんをアートディレクターとして迎え、2010年に台湾と日本の共通カルチャーを“台日系カルチャー”と名付け「LIP/離譜」を創刊。現在は雑誌の発行を中心に、日本と台湾をまたにかけたコンテンツのプロデュース業なども行っています。
台湾で白菜はどう食べられてる?
さて、そんなお2人にまず聞きたいのが台湾での白菜の食べられ方。例えば上で紹介した「酸菜白肉鍋」は日本の台湾料理屋さんで見かけたり、ガイドブックに「おすすめ台湾グルメ」として挙げられることもありますが、実際に現地の人も食べている料理なのでしょうか?
田中さん(以下、田中):そうですね。白菜はとても馴染みのある食材ですし、鍋は台湾でもポピュラーなので。僕らも現地で酸菜白肉鍋を食べたことがあります。台湾には酸菜白肉鍋の専門店なんかもありますよ。ただ、年末に台湾の人が「雞湯白菜」を食べている風景というのは見たことないですね。でも一部の地域でそういった風習があるのかも。例えば日本でいう勝つ=カツのように、台湾でも験を担いだ食事の風習があるので、その昔「翠玉白菜」=めでたさの象徴だったのであれば年越しに白菜を食べるのも納得できますしね。
西山さん(以下、西山):ちなみに酸菜白肉鍋のメイン食材である白菜漬けは、中国大陸で元々冬期に向けた保存食として作られていたと聞いたことがあります。昔の人達の知恵と工夫から生まれた料理といえますね。ただ、日本で“鍋”というとみんなで箸をつつき合うイメージがありますが、台湾でいう鍋は基本的に1人につき1つの鍋。だからみんなで食卓は囲むんですけど、鍋はそれぞれ別なんです。
田中:そうそう。だから、日本でいう“鍋奉行”というのがいないんです(笑)
穴場は台南?外食志向?気になる台湾グルメ事情
今までにさまざまな台湾現地の料理を食べてきたお2人曰く、「ごはんは断然、台北よりも台南がおいしい」のだとか。これは台湾通ならではのご意見!おすすめフードも教えてください♪
西山:私は『意麵』(いーめん)という台南名物の麺が好きです。ちぢれ麺に旨味のきいたタレを混ぜ、チャーシューや青菜をのせた汁なしの麺料理です。
(以前台湾を訪れた際のひとコマ。意麺を食べる西山さん)
田中:「台湾はパンがおいしい!パンといえばヨーロッパを連想する人が多いと思うのですが、実は台湾には世界一に選ばれたお店があるくらいパンのおいしさには定評があるんです。小龍包の皮を作る小麦粉と同じものを使っているのでグルテンが多く含まれていて、食感がすごくモチモチしています。味は少し甘めで、よくチーズやクランベリーが中に入っていますね。台湾に行ったらパンはぜひ食べていただきたい」
西山:「あと、フルーツもおすすめ。台湾ではフルーツを安く食べることができます。特にドラゴンフルーツは日本で食べるより台湾のもののほうが断然おいしい。台東の名物である釈迦頭(ばんれいし)という見た目が大仏の頭のようにデコボコしているフルーツも練乳の味がしておいしいんですよ」
(こちらが西山さんイチ押しの「釈迦頭」。その名の通り、まるでお釈迦様の頭部のよう!)
(台湾の人はフルーツが大好き。食後もデザートとしてフルーツを食べることがほとんどだそう)
さらに、台湾に行ったら必ず訪れたいのが夜市(夜に開かれる露天商)やマーケット。台湾は外食文化が発達していて、現地の人達はあまり家で食事をしないと聞いたことがあるのですが…。
田中:「日本に比べるとやっぱり台湾は外食志向が強い。若い人達は基本的に食事は外食だし、特に朝は外食で済ませる人が多いですね。薄い卵焼きをクレープの皮で巻いた“蛋餅(だんぴん)”という台湾版クレープや大根餅を外で食べたり、買ってきて家で食べたりしています」
日本で昨年ブームになったあの台湾式かき氷も、現地の女子高生達に人気なのだそう。少しだけ違うのは、1人1皿ではなく1つを2〜3人でシェアして食べるという点。鍋とは逆なんですね!
田中:台湾の食文化でもっとも特徴的なのが、あまり食事の場ではお酒を飲まないこと。僕ら日本人は夜みんなで集まる=お酒を飲むイメージですが、台湾の若者達は友達同士で集まったらまず食事を済ませ、お腹がいっぱいになったらその後カフェへ行くんです。で、夜中までしゃべり続ける。おしゃべり好きな人が多いからかな(笑)?
ローカルブームの波が到来。最新の台湾︎カルチャー
東京を拠点にしながら、仲間達と連絡を取り合いこまめに台湾へ足を運ぶ田中さんと西山さん。そんなお2人に台湾の若者達のカルチャー事情についてお話を伺いました。
田中:今日本はローカルブームですが、台湾も同じです。“食”だけじゃなくて“職”に関してもそう。卒業後に台北の都心で一度就職したものの、辞めて地方に戻りカフェを開いたりお店を始めたりする人が増えている。年々地方への注目が高まっていますね。それぞれの地域を紹介するリトルプレスも色々出ています。
台湾各地で発行されているリトルプレスや小冊子はどれもおしゃれなデザイン。言葉がわからなくても写真がきれいなため、パラパラとページをめくるだけでもワクワクします。
西山:“このビジュアル素敵だな”と思う感覚は、日本の若い人達とかなり似ています。日本のアーティストやドラマも向こうの人達はよく知っていますしね。なかでも、マガジンハウスが出版しているファッション誌『POPYE』は、台湾では“神雑誌”と言われていて今大人気なんです。日本のライフスタイル系の雑誌は非常に人気で、日本人における”洋書”のような感覚。デザインの流行も『POPYE』の影響を受けている気がします。
西山:とはいえ、台湾の人達ってあまり流行を気にしない。食やデザイン、ライフスタイルそれぞれブームはあるけど振り回されすぎないというか…軸がしっかりしてる。みんな自分が好きなものを着たり食べたり飲んだりしていて、すべてにおいてフラット。そのフラットさが、私が感じている台湾の魅力のひとつでもありますね。
同じアジアの中でも、トレンドや食文化など共通点が多い日本と台湾。知れば知るほど台湾に行きたくなりますね。これから台湾へ旅行する予定の方は、まず台北エリアで「翠玉白菜」を鑑賞し、その後は台南エリアでグルメを堪能。そんな縦断プランをおすすめします♪
\お話を聞いたのはこの人!/
(右)田中佑典さん/編集者
【PROFILE】
1986年生まれ、福井県福井市出身。大学卒業後、クリエイティブエイジェンシー「Yes, I am.」 にてアシスタントプランナーを経て、フリーランスへ。大学時代から自身で立ち上げたカルチャーマガジン「LIP」を現在は日台をつなぐカルチャーマガジンとして刊行。アジアにおける今後の台湾の重要性に着目し、現在は日本と台湾を行き来しながら、日台間での企画やプロデュース、クリエイティブサポートを行う。
(左)西山美耶さん/アートディレクター
【PROFILE】
福岡県福岡市出身。株式会社「マッシュスタイルラボ」にてブランド「gelato pique」の管理職を勤める。その後、フリーのアートディレクターとして衣装デザイン、雑誌のエディトリアルデザイン、空間デザインまで幅広く手がける。また自身のアパレルブランド「MIYA NISHIYAMA」も日本と台湾で展開。新介護メディア「Tell mee times」編集長。
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