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加藤一二三さん×香川愛生さん|【第1回】 年の差53歳のプロ棋士対談!「将棋めし」の奥深すぎる世界

  • 加藤一二三九段
    1940年福岡生まれ。株式会社ワタナベエンターテインメント所属。仙台白百合女子大学客員教授。第40期名人。福岡県嘉麻市名誉市民。2000年紫綬褒賞、2018年旭日小綬章受章。公式戦対局数歴代1位。勝利数歴代3位1324勝。引退後、TVでも活躍し一躍お茶の間の人気者に。『鬼才伝説』(中央公論新社)絶賛発売中。
  • 香川愛生女流三段
    1993年東京生まれ。幼少期から将棋の才能を開花させ、2005年(小6)と2006年(中1)の女流アマ名人戦で2連覇を達成。 2008年に弱冠15歳で女流棋士としてプロデビュー。 2012年から立命館大学へ進学、2013年に初めてのタイトル挑戦で初戴冠。将棋以外にゲームへの情熱も高い。 愛称は「番長」。

アマノ食堂に訪れる、お客さんの“おいしいお話”をお届けする「お客さん対談」。今回の対談テーマは、「将棋の魅力」について。

ゲストは、今やお茶の間で大人気の人気棋士・加藤一二三 九段(通称:ひふみん)と、実力と美しさを兼ね備えた女流棋士・香川愛生 女流三段。お2人の年の差は、なんと53歳(!!) 世代を超え、将棋に魅せられたきっかけや、対局中の気になる“将棋めし”事情を教えてもらいました。全2回でお届けします。

 

棋士になったきっかけは?

 

—まずは、お2人が将棋の道を志したきっかけを教えてください。

加藤一二三

小学4年の時に

「将棋が自分の生きる世界」だと確信

(加藤一二三 九段)

小学4年生の頃に、新聞の将棋観戦記(対局結果を伝える記事)を読んで、「将棋というものは、一番良い手を指していけば勝てる世界」だと悟ったんですね。同時にこれこそが“私の生きる世界”だと思いました。

加藤先生の1324回勝利という記録は本当に偉大で、同じ棋士としてとても尊敬しています。

私が将棋を始めたのは、小学3年の時。同級生が休み時間に将棋をやっていましてね。そこにまぜてもらったのがきっかけです。始めたばかりの頃はなかなか勝てなくて、どうしても悔しくて…。負けず嫌いなのでどんどんハマっていきました。

将棋は誰に教えてもらったんですか?

私、調布市出身なんですけど、たまたま将棋が盛んな地域で。有段者の方が集まる同好会やクラブ、教室がたくさん点在している地域なんですよ。そこで地元のおじいちゃんたちに教えてもらったりしました。

道場は初心者の方は入りにくいイメージがありますが、実際はそんなことないですよね。将棋との出合いの場になることも多いです。

 

棋士以外に憧れた職業とは?

 

—もし、お2人が棋士になっていなかったら、将来は何を目指していましたか?

えーっと、そうですね…。それでも、やっぱり、答えは「棋士」ですね! 棋士として過ごしてきたなかで、素晴らしく充実した将棋を指してこられた自負がありますから。

私は、学校の先生やゲームクリエイターに憧れていました。

ほう! それはなぜですか?

将棋って平安時代から続く娯楽で、私はあくまで“やらせていただいている”立場だと思っているんです。

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ゼロから生み出す

ゲームクリエイターは神様

(香川愛生 女流三段)

今ゲームを作っている方はゼロから生み出していますよね。「神様」というのは言い過ぎかもしれないですけど、こんなに面白くて、たくさんの人が楽しめるものを作り出していることへ圧倒的なリスペクトがあるんです。

なるほど、なるほど。神様といえば、私はキリスト教徒ですが、仮に神父になったとしても自分よりも優れた神父たちがたくさんいて落ち込むと思うんです。古典から現代の聖教を読んでいますけど、きっと私は平凡な話しかできない。受け売りになってしまうような気がします。だから、神父になりたいとまでは思わないかもしれません。

いえいえ、先生の訓えを聞きたい人はたくさんいると思いますよ?私も聞いてみたいです!

そうですか?では、これはかなり自信がある話なんですけど(笑)、私は小学校1年の時にチューリップの花を描きました。シンプルだけど美しく咲いている花を見て、「世の中は、単純に考えることで幸せを掴めるのでは?」と、その時に悟ったんです。今でも真理だと思いますし、7歳でこれに気付けたのは早かったですね。

すごく早熟というか、哲学のようなお話ですね…! さすが加藤先生。

 

一番印象に残っている対局は…

 

—63年間のプロ棋士生活で数々の記録を残してきた加藤九段と、今年でプロ歴10年を迎える香川女流三段。お2人がこれまでで印象に残っている対局を教えてください。

私が記録係をした対局で、「千日手(せんにちて ※1)」があって。持ち時間が3時間の対局なので本当は夕方には終わる予定だったんですけど、終局の時間は23時でした!なんだか忘れられずにずっと覚えていますね。

※1…同じ局面が繰り返し現れてしまうこと

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千日手は、指す方も、記録係も体力を使いますよね。

今でも夢にもみて、ゾッとします(笑)。加藤先生はいかがですか?

私は42歳で名人のタイトルを獲った対局(※2)です。名人は将棋界で最高のタイトル戦なのですが、99.9%負けている将棋を逆転して、その勝ち方が劇的でした。これは神様の計らいだと思いましたね。

※2…82年の第40期名人戦で、9連覇中の中原誠名人に対し、千日手・持将棋局を含む「十番勝負」の激闘の末に勝利。

今でも将棋指しの間で語り継がれる名対局ですよね。記録係として、一番近いところで見たかったくらいです(笑)。棋士として円熟するには広い視野を持つ柔軟さも必要な要素になると思うので、記録係はとても良い勉強になります。

 

プロ棋士の気になる食事事情!

 

—最近では、対局中の食事“勝負めし・将棋めし”にも注目が集まっています。加藤先生は、いつも「うな重」を注文されていて、もはやトレードマークのようです。

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40年間食べ続けた「うな重」

(加藤一二三 九段)

千駄ヶ谷にある将棋会館の近くにあるうなぎ屋さんによく行きます。対局の日は、昼食も夕食も、「うな重」と決めています。それを30歳くらいから約40年間続けてきました。

飽きることはないんですか?

さすがにそろそろ卒業かなと思っています。でも、番組のロケで食べたうなぎがとてもおいしかったので(笑)、やっぱり3日に1回は食べられると思いましたね!香川さんは何を食べられますか?

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女流の棋戦は、持ち時間が短くて、お昼頃が勝負時になることが多いです。重いものを食べてしまうと集中力が途切れてしまうので、お蕎麦や雑炊など消化に良いものをいただきますね。トップの先生でも、「対局中の食事は味がしない」とおっしゃる方がいますが、加藤先生はいかがですか?

対局中でも、食事をまずいと思ったことはありません。いつも胸がワクワクして、おいしく食べています。

素晴らしいですね。私は緊張感と疲労で味がわかないことがあるので、羨ましいです。

新婚の頃は、妻がお弁当を作ってくれることもありました。60歳を過ぎてからもお弁当(お重)を作ろうということになって持たせてくれて、5階の対局室まで娘が届けてくれて。

愛妻弁当、素敵です! どんな献立だったんですか?

私は、お肉や野菜が好きなので、牛肉やアスパラ、わかめと柚子の酢物とか。あとは、対局で地方に行く時には、パウンドケーキを必ず鞄に入れて持たせてくれました。

パウンドケーキ!ご家族の支えも大きかったんですね。私はプロになった中学3年の頃、びっくりするくらい好き嫌いが多くて、野菜も大嫌いでした。それが、普及活動やタイトル戦の行く先々でおいしい料理をいただくようになってから食に関してかなり積極的になりました。今では好き嫌いもほとんどなくなったんですよ。

確かに、食事は地方へ行く時の楽しみのひとつですね。「今日のご飯は何にしようか♪」って、いつも心を躍らせているんです。

 

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ーお2人の対談後編は8/8(水)に公開予定です。将棋への熱い想いや、気になる恋愛観について。お楽しみに♪

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