対談 2015.09.20
大崎裕史さん×杉崎健二さん| 食の2大祭典「ラーメンショー」「肉フェス」を最大限に楽しむコツ
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- 大崎裕史
- 株式会社ラーメンデータバンク取締役会長。日本ラーメン協会発起人の一人で現理事。東京ラーメンショー実行委員長。1959年、ラーメンの地、会津生まれ。広告代理店勤務時代の1995年にラーメン情報サイト「東京のラーメン屋さん」を開設。「自称日本一ラーメンを食べた男」(2015年7月末時点で23,000杯実食)として雑誌やテレビに多数出演。著書に「無敵のラーメン 論」(講談社新書)「日本ラーメン秘史」(日本経済新聞出版社)がある。カップ麵監修やラーメン集合施設監修、ラーメンイベント監修などの実績多数。
- 「東京ラーメンショー」オフィシャルサイト
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- 杉崎健二
- AATJ株式会社代表取締役社長。ウドー音楽事務所にて演出家として活躍した後、2010年よりAATJ株式会社として国内外に渡ってコンサート企画・制作を行う中で、イベントブランド「Food Nations」を立ち上げる。肉料理に特化したフードイベントがなかったため、自ら肉料理店を選定し、日本の有名肉料理店、世界の肉料理店を集めた「肉フェス」という過去164万人を集客させる国内最大級フードイベントを作り上げた。「肉フェス」は、さらに百貨店内催事の「肉フェスマーケット」や新しいビアガーデンの形を提案する「肉GARDEN」やロックと肉を融合させた「肉ロックフェス」など、様々なブランドが生まれている。
- 「肉フェス」オフィシャルサイト
東京下町のとある街角にひっそりと佇むアマノ食堂。この店に訪れるお客さんの“おいしいお話”を毎週お届けしていきます。第5回のテーマは「フードフェス」。食欲の秋が到来、選りすぐりのおいしい食べ物に出会えるフードフェスが空前のブームになっています。
今回は、そんなフードフェスの中でも“ラーメン”と“肉”という、お腹が「グーッ」と鳴りそうなメニューについてのお話です。
ゲストは、「東京ラーメンショー」実行委員長の大崎裕史さんと、「肉フェス」を主催する杉崎健二さん。日本のフードフェスを牽引するお2人の“ラーメン”そして“肉”への想いを感じてください。
ー まずは今回初対面となるお2人に、それぞれが主催しているイベントについてお話を伺いましょう。
いつかラーメンショーを、世界中で開催できたら
(大崎裕史さん)
「東京ラーメンショー」はフードフェス界の大先輩です。今年で何年目の開催ですか?
「東京ラーメンショー」は2009年から始めて、今年で7年目ですね。ラーメンデータバンクという会社を立ち上げてからは10年になります。ラーメンに関することなら、ラーメンのためになることであれば、なんでもやりましょう!という会社で、東京ラーメンショーというイベントはその一環として、日本ラーメン協会と一緒に始めました。
「肉フェス」は2014年から始めたばかりなんですが、今年は肉フェスの他に、肉ガーデン、肉ロックフェスなど新しいイベントにも挑戦しています。もともとは、エンターテインメントの会社としてイベントをやっていたんです。大崎さんもだと思いますが、僕は食べることがとにかく好きなんですよ。中でも肉には目がないんですが、以前から「海外に比べて、日本で体感できる肉の食べ方って乏しいな…」と感じていて。もっと、世界中のおいしい肉や肉の食べ方を、日本人に知ってもらいたいな、と。そしてさらに、日本の良いところを世界にアピールできるイベントを作りたい。日本のブランド牛を海外に出していったらおもしろいんじゃないか。それをエンターテインメントとくっつけて世界に広げたいという想いから、肉フェスを始めました。大崎さんはどのようなきっかけで?
初開催の当時、地方ではラーメンのイベントがぽつりぽつりとはあったんです。でも日本一ラーメン店が多い激戦区なのに、東京での開催はまだなかった。それでやり始めたのがきっかけです。ラーメンの中でも“ご当地ラーメン”をより多くのひとに知ってもらおう、味わってもらおうと。ご当地ラーメンって、ラーメンの中でもとってもおもしろい部類だと思っているんです。あと、ラーメン店にひとりで入れない女性が多いと聞いたので、イベントであれば女性同士やカップルで行きやすいんじゃないかと。実際蓋を開けてみると、女性客はもちろん、意外にも70歳過ぎのカップルなど高齢の方にも来ていただいて。皆さんラーメンが好きなんだな、好きだけど行く機会がなかったのかな、というのを感じました。これは継続的にやっていくしかないなと思い今に至ります。
なるほど、確かにそうですね。肉フェスは開催期間が長いので、例えばSNSで「肉フェス来たよ」と誰かがアップすると「僕も行きたかった!」「じゃあ今度一緒に行きましょう!」と波及して、みんなが集まってきてくれる流れができつつあります。年配の方でも、主婦の方でも、みんな気軽に集まれる場になっているんじゃないかな…。それが、僕としてはうれしい限り。僕は、それを全部ラーメンショーから学ばせてもらいました(笑)。
とんでもない!今聞いてうちも参考にしようと思いました(笑)。東京ラーメンショーも、どんどん開催日数が長くなってきて、ありがたいことに出店数もお客さんも増えてきました。ここ数年は、海外からのマスコミの方やお客さんも多いんですよ。ラーメンは海外でもとても人気なので、いつかラーメンショーを世界中で開催できたらと思っています。
その時は、ぜひ肉フェスと一緒に(笑)!ただ海外展開となると、色々工夫が必要ですよね。アジアで開催しようとすると、どうしてもひとつの都市だけになってしまうじゃないですか。でもアメリカだったら、例えばテキサスでやって話題になれば全米ツアーへも展開できるし、経費も抑えられる。一年中、ラーメンショーと肉フェスが全米をまわっているとかおもしろそう。そういうツアーをやってみたいなと思いますね。ところで…大崎さんのラーメン好きは昔から?
中学生時代、アメリカでハンバーガーを
食べて衝撃を受けた
(大崎裕史さん)
そうですね。喜多方ラーメンで有名な所の隣町に生まれ育ったのと、親父がラーメン好きだったこともあって、小学生の頃から大好きでした。当時からよくラーメン店へ連れて行ってもらっていたんです。そのせいか、今でも食べて一番ホッとするのは、喜多方ラーメンですね。
かなり前からなんですね。僕は、中学生の頃にホームステイでアメリカに行ったときに、ハンバーガーを食べて衝撃を受けたんですよ。日本ではまだ、マクドナルドの1号店ができたかできないかくらいの時代。そのホームステイ先の人たちが、毎週バーベキューをやるわけです。それからアメリカの食や、文化がすごく好きになって。その思い出から、大人になって毎週のようにバーベキューをやっていました。その後、日本でもTボーンステーキが食べられるようになって、熟成肉ブームがきて…最近は、国内でもさまざまな肉料理を楽しめるようになってきましたね。
ー お2人からはラーメン&肉への“愛”をすごく感じますね!でも、いつもラーメン&肉ばかり食べているというわけでは…ないですよね?
1カ月で食べるラーメンの量は70杯前後!
(大崎裕史さん)
もちろんそうですけど、人並み以上にラーメンを食べていると思いますよ。外食の半分はラーメンですから(笑)。1カ月間で平均65〜70杯は食べています。毎日、昼だけで2〜3杯。地方に行った時は週末に6〜7杯まとめて食べる時もありますし。
そんなに!?
ラーメン好きにはたまらない仕事ですけど、そうじゃなかったら大変でしょうね。でもラーメンに限らず、イタリアンでも中華でもなんでも、とにかくおいしいものが好きです。実はスイーツも大好き(笑)。和菓子も好きだし、もちろんケーキも…最近だとかき氷も。年齢とともに甘いものは減らさないと、とは思うんですけどね。ラーメンは仕事だから減らすわけにはいかないので、ラーメン以外の食事の量で制限するという感じです。杉崎さんも肉の食べすぎで注意されることもあるんじゃないですか?
僕、Facebookで毎日お肉料理をアップしているんですよ。だから「こんなに肉ばかり食べて大丈夫か!?」って、周囲からかなり心配されています。肉はほぼ毎日食べていますが、そんなにたくさんの量を食べているわけではないので大丈夫なんですけどね。あと、僕もスイーツ大好きなんですよ!最近は体型も気になるし、あまり食べ過ぎないようにはしてますけど…食事の後のスイーツ最高ですよね〜。
何か、いい歳した男2人で女子会みたいな会話してますね(笑)。
ですね(笑)。まぁでも、気にしつつもおいしいものはやっぱり食べたいですからね。僕の場合、外食も多いですが、バーベキューが好きなので自分で食材や道具を用意してしょっちゅうやっています。牛タン1本買ってきて、ダッチオーブンに塩を入れて塩釜焼を作ったり。
それ、いいですね。おいしそう!
肉フェスの中に、僕の会社で出している「肉料理研究所」というブースがあるんですよ。そこで、僕が考えた料理もこれから出していきたいなと思っていて。実現したら、大崎さんにもぜひ食べてほしいです。
今は、鶏も豚も“熟成”がトレンド
(杉崎健二さん)
ちなみに今、どんなラーメンが流行っているんですか?
今流行りつつあるのは、貝ですね。貝ダシ。僕らは「シェル(貝)ラーメン」なんて呼んでいます。ハマグリとかアサリとかシジミとか。アサリやシジミは味噌汁の出汁としては昔からありますけど、そのような出汁を使ったラーメン店がぼちぼち出始めているので、もっともっと増えるといいなぁと思います。肝臓にやさしい感じもありますし(笑)。飲んだ後のラーメンは良くないとか、太るのはラーメンのせいとか、ラーメンはなにかと悪者にされがちですが、そんなことはないとわたしが身をもって証明します。年間800杯食べても、人間ドックで異常はないですから!肉の流行はどうですか?熟成肉ブームは今後も続くのでしょうか?
そうですね。鶏も豚も熟成が流行ってきています。熟成肉は今、日本だけじゃなくニューヨークやフランスなど世界中でブームです。ただ、アメリカはドライエイジングで日本はウェットエイジングと、調理法が違う。その違いも楽しんでもらいたいですね。肉フェスに出店している肉料理店のなかでも、日々お肉の研究をしている料理人の方々がいらっしゃるんですが、そういった、日本発の熟成方法というのも世界に広めたいですね。お肉は屠殺(とさつ)して、しばらく置いてからの方がアミノ酸が出ておいしいというのは、大昔から知られていたんです。それが熟成だと言われ出したのは割と最近のことですけど。
ラーメン業界でも今、低温調理のチャーシューがものすごく増えているんですが、中にはほとんど半生状態で出てくるような店もあって。トレンドを追うあまり、勉強不足だったりスキルが追いついていなかったり…というケースがたまにあります。言葉がひとり歩きして、ただ「熟成にすればいい」というのは本質的じゃないと思うし、作る側には「肉の熟成方法をきちんと勉強してから出してくださいね」と思います。ラーメンや肉料理に限らず、食を提供するすべての作り手に通じることですが、食材を活かす調理方法をきちんと知ることが大事ですよね。
ー 食いしん坊のお2人による功績によって、現在日本各地で大小さまざまなフードフェスが生まれています。ベテランでありながらも精力的に“ラーメン”と“肉”の探求を続けるその姿が、とてもかっこよく見えます。さて、話は尽きませんがそろそろ〆のお時間。最後は、主催者であるお2人に「東京ラーメンショー」「肉フェス」をより楽しむコツをお聞きしました。
「何人かでシェアして食べると、
何種類ものラーメンを楽しめる!」
(大崎裕史さん)
基本的にラーメンってお店に食べに行くと、ひとり1杯食べなきゃいけない。東京ラーメンショーの場合は、第一幕・第二幕で20ブースずつ出しているので、つまりは20種類のラーメンがあるわけです。1人で20種類はさすがに食べられないので、複数の友達同士でそれぞれが違うラーメンを持ち寄ってシェアして食べていただくと、何種類ものラーメンを楽しむことができるのでおすすめです!さまざまな地方の色々なラーメンを味わってみて、その後、実際にその土地へ行って食べてみるという楽しみもあります。
1杯の量はどれくらいなんですか?
だいたい通常の丼の2/3くらいで、やや少なめです。普通の人でしたら、頑張れば3杯はいけます。ステージイベントもやっているので、たくさん食べたらそれを観ながら休憩して、また食べる、ということもできますよ。
「メニューに合う地ビールとの
コンビネーションも楽しんでもらいたい」
(杉崎健二さん)
肉フェスには、炭水化物がほぼないんです。なぜかというと、お客さんには何種類ものお肉を楽しんでもらいたいから。会場にはそれぞれのメニューに合う地ビールも用意しているので、そのコンビネーションも楽しんでもらいたいですね。あとは、何種類か買ってみんなで持ち寄り、シェアして食べるというのはラーメンショー同様におすすめです。ステージイベントなど、お客さんに楽しんでもらえる環境作りにも力を入れています。素晴らしい環境で、おいしいお肉とお酒を楽しんでもらえたら!
ひとつの場所にラーメンや肉料理の名店がたくさん並ぶのは、イベントの醍醐味ですよね。
そうなんですよね!フードフェスの魅力って、まさにそれに尽きると思います。肉フェスには、大使館も出店するんですよ。西アフリカのトーゴ大使館の出店はおそらく日本で唯一、トーゴ料理を食べることができる機会だと思いますよ。
【information】
▶︎肉フェス ODAIBA 2015 秋
[開催日時]2015年9月18日(金)〜9月27日(日)
10:00〜22:00(最終日のみ21:00まで)
※ラストオーダーは各日終了10分前
[場所]お台場 シンボルプロムナード公園 夢の広場(住所:東京都江東区青海1)
[公式サイト]https://nikufes.jp/
▶︎東京ラーメンショー2015
[開催日時]2015年10月23日(金)〜11月3日(火・祝)
10:00〜21:00(ラストオーダー20:30予定)
※10月27日、28日と11月3日は18:00まで(ラストオーダー17:30)
第1幕:10月23日(金)〜 10月28日(水)
第2幕:10月29日(木)〜 11月 3日(火祝)
[場所]駒沢オリンピック公園 中央広場 (住所:世田谷区駒沢公園1-1)
[公式サイト]http://www.ramenshow.com/
ー 本日の〆は、「シェルラーメン」にも通ずる「ほたてのお吸いもの(※販売終了)」。上品な香りが鼻をくすぐる、大人テイストな一品です。
すごい!ほたての香りがしっかりとしていますね。良い香りで、食欲をそそられます。
ー 興味深いトークをありがとうございました。またのご来店をお待ちしています!
企画協力/鯰組、なんてんcafe
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