対談 2019.03.22
藤井快選手×杉本怜選手|【第1回】プロクライマーが語る! キツくても夢中になれる「スポーツクライミング」の魅力
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- 藤井快 選手
- 1992年静岡県生まれ。都内のクライミングジムで働きながらプロクライマーとして世界で活躍する「会社員クライマー」。国内最高峰の大会『ボルダリングジャパンカップ』では2016年から2018年にかけて男子史上初の3連覇を達成。
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- 杉本怜 選手
- 1991年北海道生まれ。名門高校から早稲田大学先進理工学部に進学。2013年、大学3年生で出場したW杯にて優勝を飾ったことから、卒業後はプロクライマーの道へ。「理系クライマー」と呼ばれることも。2018年、5季ぶりに『ボルダリングW杯』第6戦ナビムンバイ大会で優勝を果たした実力選手。
- 杉本怜Instagram
今回、アマノ食堂に訪れてくれたのは、プロフリークライマーの藤井快(こころ)選手と、杉本怜(れい)選手。いよいよ来年に迫った東京五輪。その正式種目として新たに加わったことで話題の「スポーツクライミング」の世界において、第一線で活躍する注目選手です。
そんなお2人を迎えてのトークテーマは「スポーツクライミングの魅力」。
スポーツインタビューではあまり聞けない!? 普段から仲が良いという藤井選手・杉本選手の対談だからこそ実現した、リラックスした本音トークをお楽しみください♪
―まずは、お2人がスポーツクライミングを始めたきっかけから教えてください。
僕は北海道出身で、小学3年のときに地元でクライミングを始めました。当時、「道立の体育館にクライミングウォールができた」という記事が新聞に載っていて、その記事を見た親から勧められたのがきっかけです。
怜くんは早くから始めたんですよね。それに比べると僕は遅めのスタートで、中学1年でした。その中学にクライミング部があったんです。
クライミング部って、当時は珍しくない?
登ることの面白さにハマった中学時代
(藤井快選手)
そうなんです。ほんとに偶然で。元々はテニス部に入ろうと思っていて、体験入部も行ったんですけど。たまたまクライミングをやってみたら「あ、楽しいかも」と思って。それで始めました。登ることが楽しくて仕方なかったです。
テニスからのクライミング…! 部活があってよかったね。
ほんとに。でもやっぱり中学からだと同世代の選手と比べて遅れを感じました。今は小学生からやっている選手もいっぱいいますよね。8歳以下でカテゴリーする「U-8」なんて、小学1年、2年生とか。今思えばすごいよ。
恐ろしい時代だよね。僕らが始めた時代って、言ってしまえば「指先の力だけ強ければ登れる」という時代だった。今は足や体幹も重要だし、全身をいかに駆使して登っていくかが問われる。
そうですね。昔は登れない壁があったら、「ただ強く持って、ただ強く跳んで」みたいな感じだった。まさに「気合で持て!」って(笑)。
そうそう。「ホールドを離すな!」みたいな感じだった。
怜くんはプロを目指そうと思ったのはいつ頃から?
うーん、実は大学1年くらいのとき、クライミングは大学卒業で一区切り付けて、就職して趣味でやろうかなと思っていた。
そうなんですか?
大会での勝利が
プロへの道を開いてくれた
(杉本怜選手)
でも、大学在学中に少しずつクライミングの成績が伸びて、大学3年のときにワールドカップで優勝したことが大きな自信になった。そこからはもっとクライミングに集中して、突き詰めていきたいという気持ちが出てきて、プロになった感じかな。快はどう?
僕は、スタートが遅かったので大会での活躍も遅咲きで、結果も全然出なかったんです。でも漠然と「世界に出て戦ってみたいな」という気持ちはあって。プロを意識したのは高校生くらいで「クライミングで食べていけたらいいな」と思い始めました。
快は本当に、努力して、努力して、今の地位を確立したんだなっていつも思うよ。選手としてすごく尊敬している。
ありがとうございます。甘い世界じゃないということも分かっていたので、僕は会社に所属してクライミングを続けるという形を選びました。今は、プロという形で活動できているので、会社のみなさんには感謝しています。
僕は就職せずにクライミングだけをずっとやってきたから、会社員とクライマーの両立はすごいと思う。会社員経験っていうのはクライミングにも活きていたりするの?
仕事とクライミングは似ている?
(藤井快選手)
うーん…、そうですね。「考える力」みたいなのは仕事で鍛えられたと思います。
考える力?
色々な考えを捻り出さなければいけない場面や、より良くするために自分がどう動いたら良いのか、考えて答えを出すという瞬間が多いという点で、仕事とクライミングは似ている部分があると思いました。
なるほどなぁ。快の話を聞いていたら、自分はまだまだ甘いと感じさせられる。一応、後輩だけど学ぶことがすごく多いよ。
いや、全然すごくないですよ。僕も怜くんからたくさん学んでいますから!
ほんとに!? え、例えばどんなこと学んでくれたの(笑)?
「ここ一番」ってときに本当に強いじゃないですか。怜くんは大切な瞬間に、絶対にできてしまう人。僕はどちらかというと、そういうのが下手な方で…。あとは仕事とかクライミング以外の活動を何でも1人でこなしてしまうところ!
やり方は違っても
お互いの将来にきっと活きる経験
(杉本怜選手)
僕は企業に属しているわけじゃないから、取材とかビジネス的なやり取りも全部自分でやらなきゃいけないのはたしかに大変。でも、今の経験や人脈って、数年後に自分が大会から退いたときに、そのまま生きてくるんじゃないかと思っている。
すごい、将来的なことまで考えてる。
将来的…、そうだね。ちょっとカッコよく言うと、そんな感じ(笑)。
将来について言うと、僕も家族や子どもができると考えたときに、少なくとも安定した収入がないと心配だと思っていて。だから手堅く就職、という選択をしました。
すばらしい! 日本のクライミング界は群雄割拠(※)の時代だし、いつ自分が試合に出られなくなるかわからない。路頭に迷わないようにしないとね。…って、クライミングの話じゃなくなってきたぞ(笑)!
(※)群雄割拠……多くの英雄や実力者たちが各地で勢力を振るい、互いに対立し合うこと。
―スポーツインタビューではなかなか聞けないお話が聞けて、嬉しいです! では、クライミングの話に戻りまして……。「クライミング強豪国」と言われる日本ですが、お2人から見てその強さの秘訣はどこにあると思いますか?
日本人って、性格もあると思うけど、“狭く突き詰めていく人”が多いように感じます。海外のジムだと、クライミングはフィットネスの1つとして考えられることが多いんだけど、日本はクライミング1本に集中してハマる人が多い。だからクライミングを研究して、突き詰めていくから、自然に強くなっていったという感じかな?
僕もそう思います。「そんなにやったら、そりゃ強くなるよ」みたいな(笑)。あとは単純にみんな好きなんですよね、クライミングが。
それはあるね。ただただ、クライミングが楽しいんだよ。
日本人クライマーは負けず嫌い、僕もそう。
(藤井快選手)
僕は自分にできないことがあるのが嫌なので、「あの人ができる動きを自分ができないのはなぜだろう?」と考えて、それを克服するための細かなメニューを練習に取り入れています。苦手を1つずつ潰していくイメージで。うん、僕みたいな人が日本人は多いのかなとも思います。
たしかに、マジメで負けず嫌いな人が多いのかな。一般のクライマーも普通に強いもんね。今日ここ(クライミングジム「B-PUMP」)で登っている一般の人たちも、相当レベルが高い。「会社員でこんなに強い人がいるのか!?」ってたまにびっくりする。
僕らが「この壁は難しいな」と思った壁を登っていたりして。コンペに出たら普通に勝てるんじゃない!? みたいな人、いますね(笑)。
―お2人もずっと夢中になっている「スポーツクライミング」、その魅力はなんだと思いますか?
魅力ですか。そうだなぁ、藤井快に出会えたことかな(笑)。
ちょっと! 何すか、それ(笑)!
クライミングが共通言語になって
たくさんの人を繋いでくれた
(杉本怜選手)
いや、冗談っぽく言ったけど、人との出会いは本当に大きいよ。クライミングを通じて日本だけじゃなく、世界にもたくさんの友達ができた。
確かに、そうですよね。
普段ジムにいるお客さんとかでも、実業家とか社長さんとか、「そんな仕事をしてたんですか?」みたいな人まで、たくさんの出会いがあった。普段はそんな機会がなくても、クライミングが共通言語になって、色々な話ができてしまう。それは大きな魅力かな。
他のスポーツと違って、一緒に課題に挑戦することもありますもんね。一緒にやるとやっぱり盛り上がるし、クライミング を通じていろんな人と交流を深めることができる。あとは、登ったときの達成感を共有できること! これは年齢も性別も関係ないですもんね。
そうそう。極端な話、小学生とおじいちゃんが一緒に登っているシーンもあるし。
僕も始めたばかりのとき、いろんな世代の方と一緒に登りました。小学生のときはジムに来るお客さんと登ったり、登りに連れて行ってもらったりもしましたね。そういうのは他のスポーツでは味わえないんじゃないかな。
クライミング自体、種類が色々あるのも面白いよね。例えば、僕らが大会から退いたとしても、アウトドアで、もっと大きな岩に登りに行くこともできる。
アウトドアクライミング、楽しいですよね。そういえば、外で“良い壁”を見つけると、ちょっと登りたくなりません?
めっちゃわかる(笑)! 僕はよく温泉で思う。露天風呂にゴツゴツした岩があるじゃん? 手を広げてお風呂に浸かりながら「あれ…このホールド、いいな」って。
ああ、露天風呂かー! 僕はテーマパーク行ったときに思います。パーク内の壁とか、アトラクションに並んでいるときに「ここ、ちょっと手が掛かるな…」とか、「ここは登れるな」とか(笑)。
そういうのもきっと他のスポーツにはない魅力のひとつと言えば、そうなの……かな?
ですね(笑)。
(後編に続く)
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続く後編では、藤井選手と杉本選手のちょっぴりプライベートな部分についてお聞きしました。遠征先で一緒に泊まった部屋で起きたできごとから、お2人の勝負メシまで!たっぷりお届けしちゃいます♪
公開日は4月1日(月)予定!どうぞお楽しみに♪
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(文/大西マリコ 写真/パタヤナン・ワラット (vvpfoto) 撮影協力/B-PUMP荻窪店)
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