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小野美由紀さん×野木青依さん|【第2回】広がる銭湯ブーム!入浴にとどまらない、今どき銭湯事情

  • 小野美由紀
    1985年、東京都生まれ。エッセイスト・小説家として活躍しており、恋愛や人間関係、家族についてのコラムが人気。エッセイ集『傷口から人生。〜メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった』(幻冬舎)、『人生に疲れたらスペイン巡礼』(光文社)、絵本『ひかりのりゅう』(絵本塾出版)など著書多数。最新作は銭湯を舞台にした小説『メゾン刻の湯』(ポプラ社)が絶賛発売中。
  • 野木青依
    1994年、宮城県生まれ。マリンバ奏者として活動しながら高円寺の銭湯「小杉湯」の番頭として日夜番台にも立つ。銭湯の浴場でマリンバ演奏を行う斬新な銭湯パフォーマンスが話題。全豪マリンバコンクール2018第3位・新曲課題最優秀演奏賞。渋谷のラジオ「渋谷の東北ユースオーケストラ」(水曜11:30〜)のメインMCとしても活躍中。

アマノ食堂に訪れる、お客さんの“おいしい話”をお届けする「今週のお客さん」。

ゲストは前編に続き、文筆家の小野美由紀さんと、マリンバ奏者で「小杉湯」の番頭としても働く野木青依さんです。

『銭湯の新しい魅力』をテーマに、お2人の銭湯愛について語っていただいた前編に続き、後編では、新しい楽しみ方が増えてますます魅力が深まっている、現在の銭湯についてお話いただきました。

 

***

—お2人は銭湯好きとしてだけでなく、新しい形で銭湯の魅力を伝えていらっしゃいますよね。小野さんは銭湯を舞台にした小説『メゾン刻の湯』(ポプラ社)を書かれたとき、どのような構想だったんですか?

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銭湯って「多様な場」ですよね。名前も家も知らない、背景や国籍も違う人々が1つのお湯に入って一緒にいられる、人の繋がりを作り出す場所だなって。だから『メゾン刻の湯』(ポプラ社)を書くと決めたときは、「私がフリーランスでライターをしていた当時、銭湯で孤独を癒された感覚を描きたいな」と思ったのが最初です。

モデルになった銭湯や、番頭さんはいらっしゃいますか?

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銭湯を舞台にした小説『メゾン刻の湯』(ポプラ社)

モデルは埼玉県川口市にある「喜楽湯」さんです。バンドマンとお笑い芸人の若い男の子2人がやっている銭湯なんですけど。

へぇー! バンドマンと芸人さんですか。

小説と同じように井戸水と薪焚きの昔ながらの老舗銭湯なんですけど、そこを若い2人が頑張って盛り上げようとしているところがいいなと思って。

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自分が救われた銭湯のこれからを支えたい

(小野美由紀さん)

「小杉湯」さんはすごく人気があるけど、銭湯って経営が大変で1週間に1軒ペースで潰れているのが現状。でも銭湯のように孤独を感じずにいられる温かい場所がなくなるのは寂しいじゃないですか。みんなに銭湯の良さを知ってもらいたくて、小説のモチーフにしたいなと思って舞台に選びました。

本当に心温まる、銭湯愛が伝わってくる小説でした。このお話には小野さんの実体験も詰まっているんですか?

かなり詰まっていますね。自分が銭湯に救われた気持ちの面もそうだし、実際にモデルになった「喜楽湯」さんで2日間働かせてもらって仕事面も体験しました。

銭湯のお仕事ってすごく大変ですよね。実際に働かれてびっくりされませんでしたか?

「銭湯の維持って、こんなに大変なんだ!」と思いました。シャワーの部品を外して錆びを取るとか、細かい作業がたくさんあるんですよね。

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「小杉湯」も深夜の閉店後から2時間くらいかけてみんなで掃除をするんですけど、たった1日サボってもダメなんです。本当に細かくみんなでケアして維持しています。その大変な部分も小説では描かれていましたね!

自分で言うのもなんですけど、「銭湯の良さ」みたいなものは物語で表現できたと思っているんです。銭湯って、「安心して1人でいられる場所」みたいな良さがありますよね。他人がいっぱいいて安心はするけど、その安心感の中で1人でもいられる場所ってそうそうないから。

本当にそう思います。あと銭湯って、泣いてもバレないじゃないですか。私は辛かった頃に銭湯で泣いちゃうことがよくあったんですけど、お湯に紛れてバレないから安心して泣けるなぁって。

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たしかに! あとカフェとかだとみんな他人なんだけど、銭湯は一緒のお風呂に入りに来た仲間みたいな感覚がありますよね。交流はあるけど1人でもいられる。 現代的な人間関係の在り方としてすごく良い。「エアご近所さん」みたいな感じがあって、そういうのを書きたかったんです。

 

—野木さんは、「小杉湯」でマリンバのライブパフィーマンスを行われていますが、普段演奏されるコンサートホールなどと比べていかがですか?

マリンバはパイプオルガンのような迫力ある音の響きが魅力の楽器なんです。なので、天井が高くて少しアーチ形になっている銭湯はぴったり。教会に似た作りをしているんですよね。

そっか、知らなかった! 聴いてみたくなりました。「銭湯ならではの響き」みたいなものもあるんですか?

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6月に開催された「小杉湯」でのマリンバパフォーマンス(撮影/Gota Shinohara)

あります、天井から音が降ってくるように感じるんです。目の前に音がそのまま来るというよりは、上に音が響いてくれるのでホワーッとシャワーみたいに音が落ちてくるというか。お客さんはみんな「音を浴びているみたい」と言ってくれます。

「音を浴びている」って、すごく素敵な表現ですね。

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音楽を通して銭湯を好きになってもらいたい

(野木青依さん)

だからよく「音浴」と呼んでいて。「音浴しましょう」みたいに使っています。

身も心も温まる感じですね! 銭湯で演奏することで、音楽きっかけで銭湯に初めて来る方もいらっしゃるでしょうね。

そうなんです。銭湯に来たことがないという方も、演奏をするから、音楽が好きだから、という理由で来てくださる方が多くて。

銭湯の魅力も伝わるし、お客さんも新しい世界を知れて、みんなハッピーですよね。

常連さんも、今までお湯の良さはわかっていたけど、「こんなに天井が高かったんだ」って、マリンバの音を通じて銭湯の建築について新たな気付きがあったりするみたいで。

そういう楽しみ方もあるんですか。演奏をきっかけに色々なことが広がっていますね。

銭湯も幸せ、私も幸せで、お客さんも今まできっかけがなかったところに行って幸せ、みたいな。イベントを点で終わらせたくないので「銭湯でやっている」ということも大事にしていきたいと思っています。

—それぞれの方法で広めている、銭湯の魅力。確実に多くの人の元へ届いていますね! 最近の銭湯ブームを肌で実感することはありますか?

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とにかく最近は、若いお客さんが本当に多いです。特にここ数か月は夕方に来られる女性グループが多いなぁと感じています。

「飲みに行く前にひとっ風呂!」みたいな感じですかね。最高ですね。「小杉湯」さんは清潔だし配慮が行き届いているから女性が行きたくなる気持ち、すごくわかります。

嬉しいです。うちのように若い人が「来る」銭湯も増えましたけど、「働いている」銭湯も増えましたよね。

その流れ、感じてます。代々木上原に「BathHaus(バスハウス)」というワーキングスペース兼銭湯が最近できたんです。それも若い女の子がクラウドファンディングで資金を集めてやっていて、すごくおしゃれな建物なんですよ。

銭湯とワーキングスペース、仕事が捗りそうですね!

面白いですよねぇ。あと個人的には、タトゥーOKの銭湯が増えたなという感じがしています。

たしかに! うちもタトゥーOKです。そうすると外国の方も来やすいからか、最近外国のお客様も増えています。時代の流れって感じがしますよね。

銭湯って維持が大変だから、気軽に「やめないで」とは言えないけど、こうやって若い世代や海外の方にまで銭湯がどんどん広まって、この古き良き文化が未来に繋がっていったらいいなと思いますね。

本当にそう思います。銭湯は「生活の場」で、日々の楽しみにしていらっしゃる方もたくさんいます。私も銭湯に救われたので、ずっと絶えることなく続いていってほしいです。

 

—小野さん、野木さん、素敵なお話をありがとうございました! 対談後は、アマノフーズの「甘酒」でほっと一息。今日は爽やかな牛乳割りでどうぞ♪
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すごくスッキリしてる!

甘酒って、牛乳で割るとこんなに爽やかなんですね。

お風呂上がりに飲みたい〜♪

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* * *

この対談を読んで、「銭湯デビューしたい!」と思った方も多いのでは?そんな銭湯初心者の方へのお2人からへのアドバイスは「お気に入りのマイ銭湯を見つけること」。

小野さんは「建物の古い感じや、サウナの有無」がポイントで、野木さんは「水風呂の有無と番台のおばあちゃん」をポイントにお気に入り銭湯を見つけているそう。

みなさんも、ぜひ「マイ銭湯」を見つけて、素敵な銭湯ライフを楽しんでくださいね。
本日は楽しい対談をありがとうございました。またのご来店をお待ちしています。

 

【Information】
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メゾン刻の湯(小野美由紀 著)
「“正しく”なくても“ふつう”じゃなくても懸命に僕らは生きていく」銭湯×シェアハウスを舞台に描く、希望の青春群像劇。好評発売中!
■価格:1,620円 ■発行:ポプラ社

\  漫画化決定! /
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9月初旬、角川書店のウェブコミック誌「コミックブリッジ」にてコミカライズ開始!
詳しくはサイトをチェック!
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「野木青依・マリンバライブ@小杉湯」
2019年8月31日(土)11:00〜親子向け公演、13:00〜一般向け公演

野木青依×Vegetable Record「Song for 小杉湯」
…小杉湯の館内音楽も担当。詳細・音源はこちら
取材・執筆/大西マリコ 撮影/パタヤナン・ワラット(vvpfoto) 撮影協力/小杉湯  ヘアメイク(野木青依)/SAYAMI 衣装(野木青依)/工藤葵(あおにさい酒店)

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