対談 2015.12.04
世界が注目する味噌。口尾麻美さん×ミソスープユニット大晦日が語る「MISO SOUP」ニューウェーブ!
-
- 口尾麻美
- 料理研究家。北海道出身。トルコやモロッコ、バルト三国など、旅先で出会った料理をヒントに、家庭でも手軽に作れるレシピを数多く考案。「ミソスープもメニューに組み込んでいます」という料理教室は定期的に開催。『これだけで完全食 ミソスープ』(講談社)、『トルコのパンと粉ものとスープ: 粉もの文化の地に受け継がれる、素朴で味わい深い料理』(誠文堂新光社)など著書多数。好きなミソスープの具材は「ズッキーニ」。
-
- 笠木恵介(大晦日)
- 北海道出身。平日は米屋。コーヒー器具を使用してドリップするというユニークな方法で味噌汁を淹れるなど、ミソスープの新しい文化を作るユニット「大晦日」のメンバーとして活動中。紙コップに入った具なしのミソスープと、本格的な味わいのギャップにハマる人が続出。好きなミソスープの具材は「しじみ、ホタテ」。
- Love Me and Miso Soup.
-
- フクナガコウジ(大晦日)
- 神奈川県出身。普段はフリーランスのデザイナー。コーヒー器具を使用してドリップするというユニークな方法で味噌汁を淹れるなど、ミソスープの新しい文化を作るユニット「大晦日」のメンバーとして活動中。「街でコーヒーを片手に持つように、ミソスープを気軽に飲んでほしい」という思いから月に数回、移動式スタンドを都内にオープンしている。主な出没先は渋谷・原宿。好きなミソスープの具材は「最近は豚汁」。
東京下町のとある街角にひっそりと佇むアマノ食堂。この店に訪れるお客さんの“おいしいお話”を毎週お届けしていきます。第9回のテーマは「おみそ汁」。
2013年に「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録され、海外からも注目度高まるなか、味噌汁はマグカップや紙コップで“気軽に飲む”時代が来ているらしい! 今回はそんな味噌汁の新しい楽しみ方についてのお話です。
ゲストは2011年にいち早くミソスープレシピ本を出版された料理研究家の口尾麻美さんと、コーヒーをドリップするように味噌汁をつくるという斬新さが話題のユニット・大晦日。みそ汁界の新星ともいうべき2組が語る、新鮮なアレンジテクは今夜から真似したくなること間違いなしです!
ー まずは、みなさんの“ミソスープ活動”から。これまでどんなことをされてきたんですか?
私は2012年にミソスープのレシピ本を出版したことをきっかけに、PR活動としてミソスープBARをやりました。お酒やパンと一緒にミソスープを楽しんでもらうんです。1人なのでイベント的なことはあまりできてないんですよ〜。
僕らは2011年にコーヒー器具とインスタントの材料でミソスープを淹れたのが始まりで、それから2年半くらいブランクはあったんだけど、色々考えた結果「もっと本格的にやろう!」とリスタートしたのが昨年の年末ぐらい。インスタントは使わず、全ての行程を丁寧に、一杯ずつ淹れるスタイルを確立しました。
「お客さんたちには手軽に、僕たちは下ごしらえを丁寧に」
(大晦日・フクナガコウジさん)
片手でパンとか新聞を持って、もう片方に箸とかスプーンを持っていたら両手を使わないといけないから、片手で飲めるものを出そうというのが基本スタイルなんです。吸口は入れたりしますが具は入れないので、味噌と出汁で勝負です!
ドリップ式のスタンドは「LOVE ME AND MISO SOUP.」という屋号でやっています。
へぇ〜、おもしろい!私の本にも「ムッシュミソスープ」っていうキャラクターがいるんですよ。ほら、これこれ(といって著書を見せる)。
精力的に活動されていてすごいな〜。私はレシピ本っていうこともあって、家で手軽につくって飲んで欲しいという思いがあるんです。大晦日さんたちのスタイルは家で楽しむというよりは、飲みに行くという感じですか?
今はそうですね。でもゆくゆくはみんなに家で飲んでもらえるようにするのが、目指す方向ではあります。大きな活動としては、今年の8月に原宿で初めて自主的なイベントをやったんですけど、たくさんの人が来てくれて。
でも、「コーヒー屋と間違えて来た」という人も結構いたよね(笑)。
そうそう。だけど「味噌汁って、こんなおいしかったけ?」とか、200mlくらいの紙コップで出してたんですけど、外国の方からは「コレデ、グランデサイズ欲シイヨ!」っていう声もいただけて、予想以上に好評でした。
あはは。おもしろい!直接声が聞けるのは嬉しいですよね。
ー 家でも外でも「ミソスープを気軽に楽しんでほしい」という、共通した思いがある2組。そもそも、ミソスープを広めようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?
「実は私、味噌汁があんまり好きじゃなかったんです」
(口尾麻美さん)
子どもの頃、食が細くて。汁物を飲むとお腹が膨れちゃうから、味噌汁を飲まなくなってしまったんです。
えぇ〜!そうなんですか!?
でも大人になって数年前にフランスに行ったとき、飛行機に乗ったら乗務員さんが「ミソスープ」を配ってたんです。東京〜パリ間でミソスープが出るの、ご存知ですか?
パリに行ったことないんでわかんないです(汗)。
乗務員さんが「ミソスープです」って言って、紙コップに入った具なしの味噌汁をくれたんですね。それがすっごくおいしくて!でも味噌汁って日本の伝統的なものだから気軽に楽しむものではないっていうのが自分のなかにあったんですけど、「紙コップで具なし」っていう手軽さがかなり衝撃的だったんですよね。そこからこの本を作ろうと思いました。ちなみにエールフランスの味噌汁は、和食と洋食のどちらにも合うオリジナルのミソスープなんですって。
へぇ〜!それ、僕らが今やっていることとほぼ一緒ですね!
私はマグカップとスプーンで飲んだり、パンやワインに合わせたりっていうレシピを提案してるんですよ。
僕らも8月のイベントは「パンとミソスープ」っていうテーマだったんです。ハード系のフランスパンに合わせて。
そうそう!合いますよね。あとミソスープにスパイスを足すのも好きです。大晦日さんたちのミソスープに目覚めたきっかけは何だったんですか?
僕らは、というかとくに僕が、コーヒー好きで。ここ2年くらい、日本にどんどんコーヒースタンドが増えてきてるじゃないですか。そのときにふと「コーヒーより先に、日本に根付いたほうがいいものがあるんじゃない?」と思って。その思いとコーヒー好きが化学反応を起こして、ドリップ式のミソスープが生まれたんです。
この人、コーヒー器具とかめちゃめちゃ詳しいんですよ。
妊婦さんが出先でよくカフェイン抜きのコーヒーを頼んでるけど、「外でほっと一息つける飲み物って、コーヒーしかないのかな?」と違和感を感じていたんですよ。だったら「味噌汁、最初からカフェイン入ってないですから!」と思って。豆乳で割ったりすれば、塩分はあるけどカフェラテとかに近いホッとできる飲み物になるし。「あぁ〜」って声がでるような、アレですね(笑)。
私も飛行機で飲んだとき、「ああ〜っ」て思わず声出ちゃいましたね。しみるぅ〜って(笑)。忘れてたなこの感じ、って思いました。
ドリップで味噌汁つくるとか、ふざけてるようなイメージがあると思うんですけど、この方法だと味と香りが全然違うんですよ。鰹節をフィルターの中に入れて、昆布でとったお出汁でドリップしてるんですけど、飲む直前に鰹節を入れるんで香りも豊かですごくおいしくなるんです。
お店で一杯ずつ入れてくれるコーヒーって、味も香りも全然違いますよね。それをそのまま味噌汁に踏襲できないだろうかと。
あと、単純に作り置きしておくと温めるたびに蒸発して塩分が高くなってしまうんですよね。一杯ずつ入れることで塩分がいつも同じ濃度になる。鍋でつくると麹のつぶつぶが下に沈んじゃって最後まで飲めないじゃないですか。でも僕らは一杯ずつお味噌をとくので麹を全部食べられるんです。
すごい〜!すごくいろいろ考えて活動されているんですね。きっと、飲んだ人にもその想いが伝わっているんでしょうね!
「ミソスープのファーストウェーブは、室町時代。
武士たちが熱中症対策として飲んでいたんです」
(大晦日・笠木恵介さん)
ミソスープって今、サードウェーブだと思ってるんですよ。ファーストウェーブは室町時代に武士たちが熱中症対策として味噌汁を飲んでいた。今でいうスポーツ飲料みたいな使い方をしてたのかな。そこから江戸時代に根付くまでがファーストウェーブ。セカンドウエーブはインスタント。粉からはじまって生味噌とかもありますけど、単身者がひとりで飲むにはいいけど本格的ではないよねっていう。
それはそれでおいしから、セカンドウェーブも好きなんだけどね。
うん、そこから飲みやすさはそのままで、中身のおいしさや本格的さにこだわったのが僕らのサードウェーブ。って、僕らが勝手に流れを作っただけなんだけど(笑)。
そうなんですね〜!コーヒーとか、最近サードウェーブって言葉よく聞きますよね。
そうなんです。西海岸やNYのコーヒースタンドからインスピレーションをもらっています。コーヒーのサードウェーブの象徴ともいえる「ブルーボトルコーヒー」が2月に来た、まさにその日に僕らもミソスープスタンドを始めましたから(笑)。ブルーボトルが清澄白河にオープンする日に、僕らは“日本のブルックリン”蒲田でやってましたよ。
(ブルーボトルコーヒーみたいに)行列はできなかったけどね…。
ー ミソスープ愛で話が盛り上がる2組。お話を聞いていると、普段何気なく飲んでいる味噌汁がトクベツなものに思えてくるから不思議です。そんな3人に、「インスタント味噌汁をもっと楽しむ方法」を教えてもらいました。
「ひと手間加えることでおいしいミソスープになる」
(口尾麻美さん)
ちょっとひと手間加えることでおいしいミソスープになると思います。例えば、豆乳や牛乳をプラスすると、まろやかになっておいしいんですよ〜。あと、トマトジュースもおすすめ。
豆乳、おいしいですよね!かなり多い量を入れてもおいしいですよ。ちなみに僕たちのメニューにも、豆乳と味噌を合わせた「ソイオレ」というのがあって、一番人気なんです。ちなみにこれにラー油とごまをかけると担々麺みたいな味になっておいしいんですよ〜。
お湯で割ってハチミツとローストアーモンドをクラッシュしたやつを入れたりとかもおいしいよね。
そういうのはパンにしか合わせられないけど、ウマいね!
私はミソスープにお酒を合わせちゃいます。あとチーズとも相性いいんですよ。パルミジャーノをおろしたものや、チーズを別に置いといて食べつつミソスープを飲むとかも好きです。
チーズ、すごく合いますよね!
お酒との相性いいよね、塩分もあるし。
僕は、インスタントはけっこう完成されたものだと思ってて。インスタントはインスタントでうまい。僕の答えとしては、「裏面をきちんと読んで、ちゃんと指示通りに作りましょう!」かな(笑)。
あはは。そうそう、そのままでおいしいようにきちんと作られていますもんね。
「若い人にもたくさん飲んでもらいたい。
最近は若い人が味噌汁を飲まなくなっているから」
(大晦日・フクナガ コウジさん)
ー いつもお湯を注いで飲むだけだったインスタント味噌汁に、こんなにアレンジの幅があったなんて驚きですね!これなら毎日飽きることなく楽しめそう。ちなみに味噌汁を生活に取り入れると、どんないいことがありますか?
飲むと体が温まるので、朝の一杯におすすめ。健康面でいうと、食事の最初に飲むと消化力が高まります。味噌は発酵食品なので、美肌やアンチエイジングも期待できると思いますよ。あと、具沢山にすれば栄養バランスも良いうえに、マグカップで食事完了できる。忙しい現代人の味方です!
説得力は大事ですよね。味噌汁が体にいいということはみんななんとなく知っていると思うんで、それをレシピ本だったり僕らの気軽に飲めるミソスープスタイルだったりというのを入り口にして、若い人にもたくさん飲んでもらいたい。最近は若い人が味噌汁を飲まなくなっているから。
たしかに。私もオシャレにしたらもっと飲んでくれるかもっていうのがあって、とくに女性を意識してこの本を作りました。自分のなかではマグカップや紙コップで飲むのはスープだと思っていたから、味噌汁もスープみたいに「もっとカジュアルにオシャレに楽しもうよ!」っていう気持ちがあります。それに共感してくれる人が増えるといいな。
ー さて、話は尽きませんがそろそろ〆のお時間。最後に、今後の活動や目標を聞きました。
私はミソスープBARをまたやりたいなと思っています。あとは、もっと気軽にミソスープを飲む文化が広がれば良いなぁって。マグカップや紙コップで飲むときって、お碗で飲むのとは別のおいしさがあるから、やったことない人はぜひ試してみてほしいです。
「朝のオフィス街をミソスープ片手に歩いてもらいたい」
(大晦日・笠木恵介さん)
僕らは近々、オフィス街で朝限定のイベントをやろうと思っています。平日の出勤前って今はみんなコーヒーカップをもって出勤してるけど、それが全部ミソスープにならないかなって(笑)。
いいですね〜!ちなみに将来は、店舗とか考えてらっしゃるんですか?
できたら面白いですね。どうかなー(笑)。
ー 将来、カフェでコーヒーの代わりにミソスープで休憩する日も近いかもしれませんね!さてミソスープトークのあとは、〆の一品のお時間。本日の〆は、濃厚な赤だしが効いた「まごころ一杯 えのき汁(※販売終了)」です。
乾杯!あぁ〜、癒される〜。やっぱり声出ちゃいますね(笑)。
おいしい!お酒のあとに飲みたい味です。
ー 素敵なトークをありがとうございました。またのご来店をお待ちしています!
企画協力/鯰組、なんてんcafe
関連記事
RELATED ARTICLES