東京下町のとある街角にひっそりと佇むアマノ食堂。この店に訪れるお客さんの“おいしいお話”を毎週お届けしていきます。第8回のテーマは、2010年に新語・流行語対象のトップテンを受賞し一般的に使われるようになった「女子会」について。女性なら誰しも、１度は参加した経験があるのではないでしょうか。

今回は、「女とは何か？」を追求し続けているお2人に、女子会をしたくなるお店について語っていただきました。

ゲストは、著書『キャバ嬢の社会学』などで知られ、TVコメンテーターとしても活躍されている北条かやさんと、現役の美術大学生でありながらランジェリーブランドの代表取締役も務めるハヤカワ五味さんです。「女」であることと真剣に向き合っている彼女たちが求める女子会とは？

出会ってすぐに「ロリータ・ファッションが好きなんですよね？」と盛り上がり、意気投合。たった５分で友だち感覚になれるのは女子ならではなのかも。そんなお2人に、そもそも日常的に女子会をしているのか聞いてみましょう。

「もともとあった形に『女子会』って名前をつけただけ」

（北条かやさん）

学生時代はよく女子会をしていました。そもそも「女子会」という言葉は2008年頃から使われ、日経などでも取り上げられるようになったんです。なぜか「女子」っていうだけで先輩と後輩が仲良くなって、悩みを共有できたりするんですよね。だから「女子会」って言葉が広まったんだと思う。最近だとお仕事関係の人とする女子会が多く、女性の社会問題などを熱く語ることもあります。

私の大学は7割が女子だから、必然的に女子会になることが多いかな。仕事のスタッフと女子のみで食事に行くことも多いです。「今の女性が本当に求めているもの」を思いついたまま話して、そこからアイデアが生まれることもあるんです。学生時代はどんな女子会をしていたんですか？

大学院生のときに、動画配信サイトのユーストリームで“ダダ漏れ女子会”っていうのをやったんです。「女子会」と同じ2010年に新語・流行語にノミネートされた「ダダ漏れ」という言葉を使わせてもらい、当時通っていた京都大学大学院の社会学を勉強している子とか理系の子とか、タイプの違うメンバー５人で一緒に。寮の小さい部屋で鍋を囲みながら、ひたすら女性問題について切りまくるという女子会だったんですけど、それをリアルタイムで配信したんです。2011年当時、無名の学生にしては多い1000人近い人に見てもらうことができました。

「女子」っていうのをキッカケに、いろんなジャンルの子が集まれるんですよね。「経済について語ろう」って言われたら難しく考えてしまうけど、同じ経済の話をするとしても「経済について、女子会をしよう」って言われたら参加しやすい。

そうなんです。タイプが違うからこそ楽しくて、朝まで討論会になりました（笑）。でも最近は１対１とか少人数の方が楽しいし、深い話ができて充実するかも。

１対１も立派な女子会だと思う。大人数だと話したい話ができなかったりしますよね。

そうそう。少人数の方が盛り上がって饒舌になります。

 

ー どんな形でも「女子会」と呼ぶ今の時代の中で、お2人が選ぶお店とは？

「お店に気を使わず、長い時間を過ごせる場所」

（北条かやさん）

長い時間いられるところかな。

それはありますね。ゆっくりくつろぎたい。

私の場合、行くお店はけっこう限られていて。例えば原宿とかって混んでいるお店が多いじゃないですか。そうゆう場所はだいたい「このお店に行く」ってところが決まっているんです。「ここなら長居しても大丈夫」みたいな感じで。並んでいるお店だと気を使ってゆっくりできないんですよね。原宿のよく行く「カフェな」っていうお店は、私たちだけで貸し切り状態のことが多くて（笑）。本当にくつろげるんですよ。しかもドリンクをオーダーすると、一緒にオレオがついてくるの。その気遣いが好きで、そこは長居しちゃう。

その気遣い、私も好きです！もしヒートアップして多少声が大きくなっても、空いていたら気にならなくていいですね。

「他の人に話が聞こえないような、広々とした空間」

（ハヤカワ五味さん）

ぶっちゃけた話ができるように、あまり人のいないカフェが多いかな。フランクな話なら人が多いところでも良いけど、仕事の話をするときは空いているお店を選びます。下着ブランドのことなど、女性特有の胸の悩みとかを話したりするので、人が多いと話しづらい。

たしかに。身体についての話って、他の人に聞こえるかも？って思ったら話しづらいですもんね。「女性性」について分析したり、「女性についてどう向き合っていくか」のスタンスについて熱く語るので。他のお客さんとの距離があって広々としたお店の方が落ち着きます。話し込んじゃうと2時間が30分くらいの感覚になっちゃうから、お店に気を使わずにゆっくりいられるかも大事なポイント。

あとは、八王子駅周辺のカフェに行くことが多いです。八王子駅からバスで２０分くらいのところに大学があるから、授業のあとに友達と一緒に行きます。

友達と行くときは、どんなお店を選ぶんですか？

盛り上がっちゃうので、少しくらいなら騒いでも大丈夫なお店を選びます。あとはリーズナブルなお店かな。紅茶1杯でねばっちゃいます。

わかる！ポットの紅茶だと少しずつ注げるから、１杯で長居できますよね。

カフェはごはんも食べられるし、サラダだけでもいいし、お茶だけでもいい。みんなが自由に選べるところが好き。

なるほど。私は、男の人が苦手なことの多い、多国籍料理に行くことが多いんです。この間は新宿にあるタイ料理の「バンタイ」に行きました。

たしかに、好きなものを食べに行くときは女同士の方が楽しいかも。

「男の人って、ナンプラーとかパクチーが苦手な人が多い」って言っている友だちがいて。だから、女同士で行くお店は、男の人を誘いにくいお店かもしれません。

私の周りだと、焼肉に行きたがる女の子が多い。男の人と一緒に行くとニンニクが気になったり、いっぱい食べられなかったりするらしいんです。

それある！

あとはパフェとかも。

スイーツ男子が増えているとも言われますが、甘いものが苦手な男の人は、やっぱり多い印象ですよね。

でも、パフェに付き合える男の子なら混ざっても、女子会って呼んじゃうかも。

 

ー もし“女子会を自分でプロデュースする”なら、どんなお店にしたいかを聞いてみましょう。

「少しずつをたくさん楽しめるお店」

（ハヤカワ五味さん）

“かわいいもの”や、“流行っているもの”が好きだけど、自分で探したり行列に並ぶほどでもないって思っている人が多いと思う。

わかります。そこまでするほどではないけど、かわいいし流行っているから気になる、みたいな対象。

だから、かわいいものを少しずつ集めたコースがあったらいいな。ごはんからデザートまで、自分で選ばなきゃいけないんじゃなくて、お任せで出してくれるお店とか。女心を刺激するポイントを散りばめたおまかせコース。

ミニサイズのスイーツがいっぱい！とかもいいですね。女子は「一口分けて」が好きだから、いろんな種類を出してくれると嬉しい。

コースの時間設定は2時間くらい。写真を撮ったり、食べて感想を言いあったり、ゆっくりできるプランがいいです。あと、1品の量が多いと食べきれないから少量ずつは大事。

量が多いと、見ただけでおなかいっぱいになっちゃったりしますよね。

普通のコース料理だと、2品目のスープですでにおなかいっぱいだったりします。

そう思うと、実はメニューを見ているときが一番楽しいかも。

たしかに。メニューは写真付きの方がワクワクして楽しいですよね。

その時はいっぱい食べられる気になるんですよね！

私は事前にホームページで写真とかを見て、「これ食べよう」ってリサーチしてから行くんです。想像することで楽しみが増えるから。

わかる気がします。

仕事にも共通していて、新しいことを考えているときってワクワクするんですよね。まだ経験したことのない、大企業にはできないものを作りたい。という思いもあって、自分や身近な人の“コンプレックスを自信に変える”ためのリサーチが好きなんです。食べ物も、食べたときをイメージしてワクワクする気持ちが好き。でも実際はおなかいっぱいで食べられなくて…。残りを食べてくれるから、一緒に行く友だちや彼氏は太っていきます（笑）。

私の周りの人も太っていきます（笑）。

最近20歳になって、お酒を飲めるようになったんですけど、おつまみ系って少量で出てくるから楽しいなって思います。

１品が少量だからいろいろ食べられるんですね。お酒を飲む人にはお酒の種類が多くて食事は少なめ、とかが良さそうですね。

そうですね。1軒目でごはんを軽く食べてから、帰りにお寿司屋さんに寄ったり。お寿司は、もう一皿食べようかな？って悩めるし、出てくる量も想像つくし。

食べたい分だけ食べられるのっていいですね。

家で作ると、自分で量を調整できるから、友だちを呼んでみんなで作ったりもします。

いっぱい食べなきゃいけない雰囲気のお店はプレッシャーになっちゃいますよね。

うん。量は食べられないくせに、いろいろ食べたいのが女子心なのかも。

やっぱり、「少しずつ食べられる女子会コース」がいいですね！

内装とかはどんなお店にしたいですか？

「日本人独特の、謙虚なこだわり。そんなお店」

（北条かやさん）

テーブルとか食器とかの小物が重要かも。かわいいっていう直感的な。色だったり素材だったりの統一感。

さりげないセンスの良さ？

そうなんです。「あれ？何かいいな」って直感的に感じるくらいの控えめな雰囲気が好き。

日本人っぽい気づかいのあるお店って良いですね。きゃりーぱみゅぱみゅの演出を手がける増田セバスチャンがプロデュースしていることでいま大人気の「カワイイモンスターカフェ」って、世界観がすごく個性的で斬新なカフェだと思うんです。飛び抜けたハイセンスとコンセプトで、異世界に連れてってくれるような非現実を味わえる。そんなテーマパークのように楽しめるお店も素敵だけど、女子会用のお店をプロデュースするなら小物に少しだけこだわっている。そんな、主張の控えめなお店にしたい。

たしかに。作り込んでいるお店ってテーマパークっぽいですよね。

テーマパークって楽しくて好きだけど、ゆっくり深い話をするなら作り込み過ぎてない方が良いかも。

そうそう。テーマパークに行きたいわけではなく、話がしたいんです。

観光としては良いけど、普段の女子会だと落ち着かないかも。

だから、ちょっと気を使っているくらいがちょうどいい。新しく女子会用に作ったお店よりも、古くても一部の内装にこだわっていたり、小物にこだわっていたり。季節のお花が飾られているだけでも良いんです。

派手すぎるお店だと、そんな場所にいる自分に落ち着かないかも。

うん。くつろげるかは重要ですよね。あとはテーブルが広いと嬉しいな。

あっ、わかります。女子会兼仕事の話をしていると、パソコンを出したくなる。言葉だけで伝えるよりも、映像と一緒に伝えた方がイメージの共有がスムーズ。常にパソコンを持ち歩いてるんです。

わかります。パソコンとか、好きな本を出して並べたくなりますよね。

だからテーブルは広めが嬉しいですね。

そうなんです。

少量ずつ食べられて、“押し付けのない、でも少しのこだわりが見える広々としたお店”が、理想的な女子会をするお店ですかね。少しのこだわりは何でも良い。季節を感じさせてくれる演出や、食器を統一していたり、ソファの座り心地が良い、など。お店のちょっとしたこだわりに気付いたときの嬉しさを大切にしたいですね。

そうですね。しかも混んでないお店！

 

ーさて、「女」について分析しつつ意気投合しているお2人ですが、そろそろ〆のお時間。最後に「女子会」に大切なことを聞いてみましょう。

くつろげる空間＝感覚が一緒の人と行く。お店選びはもちろんだけど、結局は一緒に過ごす人ですよね。

そうですね。

私は大学でグルメサークルに入っているんです。お金がなくても食事にはお金をかけたい子たちが集まっているから、気兼ねなく行きたいお店に誘える。そんな、食や空間を同じ感覚で楽しめる相手がいることが大切かな。出張の宿泊代はネットで安いところを探したり漫画喫茶に泊まることもあるけど、「食」にはこだわりたい。

私も「食」の優先順位が高い。でも私は相手に合わせるタイプなんです。食事をするエリアだったり食べたいものを聞いてくれて、お店を決めてもらうことが多いかも。一緒に行く人がお店を選んでくれたことに感謝しながら、一緒に楽しむことが大切かな。

私は「それならいいお店ありますよ」って、提案するタイプかも。

私たち相性いいですね。

うん。心地いい空間が生まれそう。

 

ー本日のお食事の〆は、三ツ星キッチンパスタシリーズから「焼なすとトマトのクリームパスタ」と「3種のチーズのクリームパスタ」です。

見た目がかわいくて写真を撮りたくなる！いただきま〜す。

いただきます。おいしい！お湯かけるだけなんていいですね。オフィスに生ものを置くとダメにしちゃって怒られるから、インスタントは嬉しい！

小腹が空いたときにすごくいいですね。

 

ー大盛り上がりの女子会トークをありがとうございました！またのご来店をお待ちしております。

撮影協力/なんてんcafe