対談 2016.09.19
bar bossa・林伸次さん×わいん厨房たるたる・伊藤博之さん| 【第3回】1杯目は“ど真ん中”から。失敗しないワインの選び方
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- 林伸次
- 1969年、徳島県生まれ。渋谷のワインバー「bar bossa(バールボッサ)」オーナー。レコード屋、ブラジル料理店、バーテンダー修行を経て、1997年渋谷に「bar bossa」をオープン。ソフトな雰囲気と的確なアドバイスから相談が絶えず、林さんに会いに訪れる常連も多く、お店で年間6000人のお客さんと出会う。電子メディア『cakes』で連載中の恋愛コラムも人気。著書『ワイングラスのむこう側』(KADOKAWA)、『バーのマスターはなぜネクタイをしているのか -僕が渋谷でワインバーを続けられた理由』(DU BOOKS)がある。新刊『バーのマスターは「おかわり」をすすめない 飲食店経営がいつだってこんなに楽しい理由』(DU BOOKS)も発売中。
- bar bossa
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- 伊藤博之
- 1967年、埼玉県生まれ。銀座のワインバー「わいん厨房たるたる」オーナーソムリエ兼シェフ。素材メーカーに研究者として勤めていた際に行ったフランス出張でワインの魅力に目覚め、以降ワインバーやフランス料理店で修行を積み、2000年に「わいん厨房たるたる」をオープンする。ワインに関する豊富な知識と丁寧でわかりやすい説明に定評があり、伊藤さんに会えば必ず好みの1本が見つかる。著書に『男と女のワイン術』(日本経済新聞出版社)、『男と女のワイン術 2杯め -グッとくる家飲み編』(日本経済新聞出版社)がある。
- わいん厨房たるたる Facebookページ
アマノ食堂に訪れる、お客さんの“おいしいお話”をお届けする「今週のお客さん」。ゲストは、渋谷「bar bossa」オーナーの林伸次さんと、銀座「わいん厨房たるたる」のオーナーソムリエ兼シェフの伊藤博之さん。
対談の第1回は、夜な夜なお店で繰り広げられる人間模様、第2回はお客さんに愛される「可愛がられ力」についてお話を伺いました。最終回の今回は、一流のバーテンダー&ソムリエに聞きたい「ワイン」のお話。初心者はまず何を選べばいい?家でも気軽に楽しめるワインは?知ればもっと楽しくなるワインの世界にご案内します。
ー ワインに詳しいお2人を迎えたからには、人間模様のお話だけではもったいない!そこで、「和食」と相性がよく、家庭の食卓に取り入れやすいおすすめワインを教えてもらいました。
料理の味を邪魔しない
ミネラルがある「甲州ワイン」
(林伸次さん)
和食なら日本の「甲州」や「ロワール」の白ワインも合うと思います。あと、「ヴィーニョ・ヴェルデ」というポルトガルのワインを合わせるのも面白そうですね。どれもミネラルがあって、極端に酸味が強かったり甘過ぎることがないので和食の素朴な味を邪魔しません。
ミネラル感は「塩っぽく感じる」というか、それによってキリッと引き締まるというか。まるで硬水のような感じですよね。
うわ!伊藤さん、説明お上手ですね!ソムリエでこんなに説明の上手な方、僕初めて会ったかも。
毎日お店でやってるからですよ(笑)。日本人にワインを飲ませてやる!っていう気概でワインの世界に入りましたからこれぐらいは話せないと。でも、ミネラル感って、本当にワインの中で大事な要素なんですよね。
そうそう、ミネラル感がないとシャバシャバになっちゃうんですよね。ぼんやりした味になってしまうというか。ミネラル感が強いというのは、お水でいうと「コントレックス」などの硬水に近いですね。ワインの場合もそれで口当たりがかなり変わるので。
わからなかったら、まずは“ど真ん中”を
おすすめは手軽に手に入る「ボルドー」
(伊藤博之さん)
じゃあ僕は赤ワインのおすすめにしようかな。まずはボルドー。「ボルドー」と書いてあるものなら、スーパーやコンビニで1200〜1300円で手に入るようなものでも十分。家庭の食卓っていろんなものを食べるし、1本のワインを2〜3日かけて飲むこともあるから、なるべく“味わいの中央値”に近いものを飲むといいですね。
すごい良い答えだと思います!あぁ~、邪魔しないっていうのは和食にも家庭の料理にも合わせるポイントですねぇ。
あと、食卓の上とは言ったものの、週末や休みの日にはダラダラごはんを食べるシーンもあるじゃないですか。おつまみにドライフルーツやナッツなんかを軽く用意して。そんな時はチリワインなんかがおすすめですね。チリの「メルロ」というワインなら、赤ワインが苦手な人でも渋みが柔らかいので飲みやすいと思います。
いいですね、チリワイン。
何を飲んでいいかわからなかったら、まず飲むべきは“ど真ん中”を飲みましょう、と僕は常々言ってるんですよ。白も赤も。そこから「ちょっと物足りないからもう少し渋いほうがいいな」「もっとマイルドなほうが好きだな」とか、自分の好みの方向性がわかってくる。それは店でも同じで、まずは“ど真ん中”を飲んでもらって要望があれば我々にぶつけてほしい。正直、ワインの銘柄や産地なんて覚えてなくてもいいんですよ。まずは基準の味を知ることが大事。
ー ワインの話で盛り上がるお2人の姿から、お店に人が集まる理由がわかりますね。そんなお2人のバーテンダーとソムリエという仕事は、まさに「天職」。最後に、この仕事に就いて良かったと思う瞬間について聞いてみました。
お店での出会いが積み重なって
どんどん「関係性」ができていくこと
(林伸次さん)
バーテンダーをやっていて良かったと思うのは、「今度結婚します」とか「お店始めました」とか色んなことを報告しに来てくれる人がいることですかね。一緒に喜びをわかちあえるというか。
嬉しいですよね。もちろん家族でもないし友達とはまた違うかもしれないけど、仲間っていうか。うまい言葉が見つからないですけど「切っても切れない関係」なんですよね、常連さんと店の人間は。
わかります。店の人間からすると嬉しいし、ありがたいことですよね。
一緒に「喜び」を共有したい
仲間のひとりに加えてもらえること
(伊藤博之さん)
プライベートなことって、別に店の人間に知らせなくてもいいじゃないですか。それでもわざわざ話してくれる。良いことがあると真っ先に誰かに報告したい時ってあるでしょ?そういう時、仲間のひとりに加えてもらえるのが僕はとても嬉しい。冥利に尽きるっていうのかな。あと、お店を介して触れ合う人が活躍している姿を見るのって良いですよね。すごく刺激を受けるんです。「僕も頑張ろう!」って。
テレビに出てたりすると嬉しくなりますよね。大都会の中で、例えばコンビニの店員とお客さんってまず会話しないじゃないですか。でも小さいお店の中で、お酒を介して話をすることが積み重なっていくうちに徐々に関係性ができていくっていう…。僕がこの仕事で好きなところは、この距離感ですね。
そうですね、わかります。
それに、やっぱりお酒の存在も大きい。お酒があるからこそ密な話ができるってところ、ありますからね。
そこが例えば牛丼屋だったら多分ないだろうし、お蕎麦屋さんでもないでしょうしね。
—さて、お話は尽きませんが、そろそろ〆のお時間。本日の〆の一品は、濃厚でしっかりとした味わいの「焼きなすとトマトのクリームパスタ」です。
フリーズドライはお湯の量が大事だね。あ!これ、クリームも入ってるんですね?トマトの酸味だけだと少し酸がきついところにクリームを入れてまろやかにしてるんですね。これは子供が喜びそうだな〜。
伊藤さんの食レポが上手すぎて、もう何も言えないですよ。伊藤さんだけ台本もらってたりしないですよね(笑)!? でもこれ、おいしいなぁ。お酒を合わせるなら新大陸の濃い「シャルドネ」ですかね。
チリの「シャルドネ」とかよく合うんじゃないですかね。トマトの酸味があるから赤ワインを合わせるという手もありますね。カリフォルニアやチリの「ピノノワール」というワインがあるんですけど、あれも酸味があって合うかもしれない。
あと、カットした生野菜を上に乗せても相性良さそうですね~。クリーミーな感じだから、しゃぶしゃぶみたいな感じで豚肉と野菜と一緒に食べても悪くないと思いますよ。
野菜と一緒に食べたら栄養面でもバランスが良さそうですね。ソースがドレッシング代わりになって、きっとおいしいと思います!
—本日は楽しいトークをありがとうございました。またのご来店をお待ちしております。
撮影協力/bar bossa
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[第3回]1杯目は“ど真ん中”から。失敗しないワインの選び方
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