対談 2016.11.30
パクチーハウス×SHIBUYA CHEESE STAND|【第2回】可能性は無限大!?パクチーとチーズの知られざる魅力を語りつくす!
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- 佐谷恭
- 1975年神奈川県秦野市生まれ。幼い頃から積極的に国際交流をし19歳から旅を始め、現在までの訪問国数約50カ国。2007年それまでの旅の経験を日本社会に還元するため「旅人が平和を創る」という信念のもと株式会社旅と平和設立。2007年”交流する飲食店”パクチーハウス東京設立。2010年7月”パーティするように仕事する”PAX Coworkingを立ち上げた。著書に『ぱくぱく!パクチー』(情報センター出版局)、『つながりの仕事術「コワーキング」を始めよう』(共著、洋泉社)、『みんなで作るパクチー料理』(スモール出版)。
- パクチーハウス東京
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- 藤川真至
- 1981年岐阜県生。大阪外国語大学(現 大阪大学)イタリア語学科卒業。大学在学中のバックパッカー中に、イタリア・ナポリのピッツェリアに飛び込みで修業。また北イタリアで3週間ほどチーズ農家に住み込みで働く。帰国後、名古屋のレストランやドーナツ店のマネージャーとして勤務。2012年「街に出来たてのチーズを」をコンセプトにSHIBUYA CHEESE STANDをオープン。2016年12月「& CHEESE STAND」を富ヶ谷にオープン。他、オウンドメディア「CHEESE Media」なども手がけ、チーズの普及に努める。
- SHIBUYA CHEESE STAND
アマノ食堂に訪れる、お客さんの“おいしいお話”をお届けする「今週のお客さん」。前回に引き続き、対談のゲストは世界初のパクチー料理専門店『パクチーハウス』のオ−ナー・佐谷恭さんと、店内で作った出来たてのフレッシュチーズを堪能できる『CHEESE STAND(チーズスタンド)』のオーナー・藤川真至さんです。
“パクチーとチーズ”を好きになったルーツである海外旅先でのエピソードと、お店をオープンしたきっかけについて伺った第1回に続き、今回のテーマは「パクチーとチーズの知られざる魅力」。お店をオープンしてから大切にしているこだわりや、よりおいしく味わうための秘訣を教えていただきました!
ー『パクチーハウス』と『CHEESE STAND』は、パクチーとチーズそれぞれを代表する店と言ってもいいほどたくさんの方から注目されていますよね。オープンしたときから大切しているこだわりはありますか?
お店を開くなら場所は世田谷でと決めていたんです。開業する前から世田谷周辺に7年くらい住んでいて、この先もずっとこの付近に住むんだろうなって思っていたので…。藤川さんは、どうして渋谷を選んだんですか?
僕は“渋谷”という冠名詞を店名に付けたかったんです。それまでのチーズって“牧場”とか“北海道”というイメージが強かったんですよね。でももっとカジュアルに、いろんな人に食べてもらいたいという想いがあって。お店のコンセプトも“街に出来たてのチーズを”というフレーズを掲げているんです。
パクチーを単なる薬味から“主役”に。
「追パク」で店内は大盛り上がり!
(佐谷恭さん)
たまたま渋谷の神山町のエリアで探していたら、軽飲食可っていう物件を見つけることができて…。油は使用できないのですが、チーズ工房はOKだったんですよ。今までちょっと遠い存在だったチーズをもっと楽しいイメージで街に伝えていけたらいいなと思いながら、4年間やってきました。『パクチーハウス』の場合、どういうコンセプトを掲げているんですか?
『パクチーハウス』は、“薬味から主役へ”をキャッチフレーズにやっています。パクチーを育てる人がどんどん増えて、ゆくゆくはパクチーがどこに行っても生えているようなポピュラーな存在になってほしいって思っているんです。“パクチー0円社会”が僕の理想なんですよ!
パクチー0円社会!お金がかからないということですか。
その一環として、お店での追パク(=追加パクチー)は無料にしているんです。あと、声の大きさで盛られる量が変わるのがうちの店特有のルール(笑)。より大きな声で「追パクください!!」って言ってもらうと、コミュニケーションが生まれて盛り上がるし最高なんですよ。
最初にお店にお邪魔したとき、その様子を目の当たりにして「す、すごい…」って驚きましたよ(笑)。でもたしかに盛り上がりますよね〜。
そういうのを楽しんでくれる人もいるし、逆に嫌だと思う人もいるかもしれませんね。でも、いろんな人がいるから、考えても仕方ないなって(笑)。あと店名に“ハウス”を付けたのも理由があるんです。旅先で出会ったホームパーティーが開かれている家のように、お互いを紹介したり、誰かが知り合いを連れてきたら、そこからさらに繋がるような場になってほしくって。
遠い存在だったチーズを
より身近に感じてほしい
(藤川真至さん)
そこは通ずる部分があるような気がします。『SHIBUYA CHEESE STAND』の“STAND(スタンド)”には、ガソリンスタンドやコーヒースタンド…あとは、牛乳を売っていて毎日人が寄って飲む「ミルクスタンド」のように、ふらっと立ち寄ってもらえるようにしたいな…という意味を込めました。「チーズ=高級」っていう先入観をちょっとずつ変えていきたいですね。
藤川さんが実際に影響を受けたお店ってあるんですか?
特になくて、自分たちで考えてやっています。でも、お店を始める前に一度ニューヨークの「EATALY」(イタリア食材が豊富に揃う世界的展開の店)を見に行ったりはしました。そこで、お客様の目の前で、フレッシュチーズを作る様子を見せているのが人気なんだなって気付いて。「きっとこれなら日本でやってみても大丈夫だ!」って確信したんです。
ーパクチーとチーズをより身近に、たくさんの人にその魅力を知ってほしいという想いを大切にしているんですね。それぞれの食材の“意外と知られていない魅力”を教えてください。
パクチーは捨てるところが一つもない。
全てのパーツを楽しめる
(佐谷恭さん)
パクチーの魅力は「捨てるところがないこと」。葉っぱのイメージが強い食材ですが、花・茎・根っこ・種、全部食べられるんですよ。現代の食を考えるうえで、何も無駄にしないってことが素晴らしい。それに全てのパーツがそれぞれ違う味がするんです。
チーズの場合は、ユニークな種類がたくさんあることでしょうか。イタリアに行くと日本ではあまり見る機会が無いような「トレッチャ」という三つ編みのような形のモッツアレラチーズがあったりします。意外とまだ知られていない面白い形のものが結構あるんですよね。
発見が日々あるのが面白いですよね。僕、パクチーをこれでもかというくらい食べてきましたが全く飽きていないんです。パクチーっていわば“メディア”。パクチーに関わることで思いついたアイデアや、自分で作ったものは全てアウトプットしていきたいです。10年前、このお店を立ち上げるときはパクチーを知らない人だらけだったんです。周囲から「え?博打(ばくち)ですか?」なんて言われたりもして。
今でこそ“パクチスト”なんて言葉も出てくるほどブームになっていますけど、たしかに10年前はほとんど認知されていませんでしたよね。
そうそう。でも、2005年くらいから『パクチー協会』って勝手に作ってやっていたら、「種を植えたらいい感じに育ってきました」とか…連絡をくれる人が出てきたりしてね。段々と周りに人が集まってきました。たとえパクチー嫌いでも、何か発言をしてくれる人がいることでどんどん広がっていくし(笑)。パクチーって国でいうとインドみたいなものです。
インドですか?
インドって好きか嫌いかはっきり分かれるじゃないですか。“どっちでもない人”も本当はいるはずなんだけど、いろいろ衝撃的な体験が印象にあるから、みんなが注目しているし、何かそこに対して言いたくなるような…。パクチーもその地位を築き得るなって思うんです。
チーズは形も味も多種多様!
必ず自分の好きなものに出会える
(藤川真至さん)
なるほど(笑)。でもそれで言うと、僕たちは逆かもしれないですね。ブルーチーズは好みが分かれそうですが、モッツァレラに関しては日本人で嫌いな人ってあまりいない。みんなに愛されるからこそ、僕はやろうと思ったんですけどね。
…と言いつつね、僕も『日本パクチー狂会』の会長としては「パクチーが嫌いな人は世の中にはいないはず!」という立場を取ってますのでね。みんなに愛されたいというのが本音なんですけど。
ああ、そうなんですか(笑)!
(パクチー嫌いな人は世の中にはいないはず!と語る佐谷さんがご用意してくれた「パク天」は一度食べたら癖になるお店の看板メニュー)
お店に来てくださるお客さんでも半分くらいは「最初はパクチーが苦手でした」「びっくりしました」っておっしゃる方が多いんですよ。でも、食べているうちに気づいたら好きになっていたって人もいて。
それって、お店をやっている立場からしたら本当に嬉しいですよねぇ。僕もパクチー大好きですよ。
そう。だから、苦手って言う人みんなに「あ、そうですか!“まだ”なんですね〜。でも大丈夫ですよ!3回食べてみてもダメだったら相談してください!」って言ってます(笑)。
ー普段なにげなく食べていたパクチーとチーズですが、合わせる食材次第で楽しみ方も一気に広がりますね。最後に、お2人がおすすめしたいメニューやポイントはありますか?
たくさんの変化を楽しめるチーズは
やっぱりおもしろい
(藤川真至さん)
お店のメインメニューは、モッツアレラやリコッタなどのフレッシュチーズです。フレッシュチーズって、出来たてが一番おいしいんですよ。熟成させたチーズは“製品”なんですけど、フレッシュチーズは“素材”だと思っています。だから、前菜にもデザートのトッピングにもなるし、「カチョカバロステーキ」というチーズのステーキで、メインディッシュとしても出されるようなお料理もある。たくさん変化できる素材なので、チーズっておもしろいなぁ〜って思っています。これからもチーズの新しい食べ方をどんどん紹介していきたいですね。
パクチーは根っこが一番おいしい!
全パ−ツのおいしさを知ってほしい
(佐谷恭さん)
僕は“パクチーの全パーツを使う”っていうのがとにかく目標なんです。パクチーって捨てるところが一つもないんですよ。スーパーで売っているパクチーは、根っこが切ってあるんです。でも、パクチーって葉っぱと根っこ…どちらか一方だけ残しますってなったら「迷わず根を残したほうがいい!」というくらい、根がおいしいんですよ。だから、最近マニアックな人は「パクチーは根がおいしいんだ!」ってブログに書いていたりしますね(笑)。
パクチーの根っこ、本当においしいですよね〜。
そうなんですよ。先日、ニューヨークのオイスターバーに行ったときに、パクチーの新芽が出てきたんです。メニューにも書いてなかったし、食べるまでわからなくて…。食べているうちに「あっ、パクチーだ!」って気付いて、その場でシェフを呼んで「僕も東京でパクチー専門店をやっているんだよ!」と自己紹介したら喜ばれました。パクチー愛は国境を超えるんですね。
ーさて、お話はまだまだ尽きませんが、そろそろ〆のお時間。本日は、旅好きなお2人にもぴったりな一品。世界三大スープとして知られ、本場タイが原産国のスパイスとハーブを使用した「トムヤムクン」(※アンテナショップで購入可能)をご用意しました。
おぉ〜!辛さもちょうど良いですね!
さっぱりとした風味もあっておいしいですね。フリーズドライ、旅行にも持っていきたいなぁ〜。
きっとトムヤムクンってパクチー料理とすごく合いますね。カットしたモッツァレアを入れても、まろやかになっていいかも。
そうですね。このトムヤムクンにパクチーを入れたり…、パク天(先程、ご用意頂いた看板メニュー)と一緒に食べても、絶対おいしいですよ〜。そもそも、トムヤムクンのだしも、パクチーの根っこからできていますよね。どんどん植える人が増えて、パクチーの根っこから味わってもらえる人が増えたらいいなぁ…って心から思いますよ。
そういう風に食材の可能性がどんどん広がったら、さらに専門店って面白くなりますよね!
撮影協力/パクチーハウス東京
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